きのこ帝国が大好きで、『愛のゆくえ』が大好きで、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』を観に行きました。新たに大好きな映画がまた一つ増えました。 きっときのこ帝国というバンドもこうして私と同じくさまざまな出会いを経て形を変えてきたのだろうとな、と想像します。 アルバムアートワークが格好良く、ぜひ現物を手に取って欲しいアルバムです。なにか人生というものについて向き合うような、個人の枠を飛び越えた社会の中で響く曲が多いような気がします。

ストーリー性のあるMVも含めて素敵な曲だと思います。桜を歌った曲は多くあれど、桜が咲く前の予感的な淡い感情を歌った曲はこれだけなような気がします。 ぼやけた世界は別れの前の寂しさと覚悟によく似あっていて、滲んで消えそうな儚い歌声が美しいです。

『夜が明けたら』、ライブの終盤で聞いたのをよく覚えています。ハスキーな声が荒ぶりながら、諦めながら、涙声で明日に期待してしまうのを鳥肌を立てながら聞いていました。アウトロの音、何かが終わるような始まるような忙しなく騒がしい音が大好きです。 緊張と緩和、全体を通して心を掴んで離さない緊迫した一枚です。

『春と修羅』、こんな曲をライブで聞くことができなかったことが悔やまれます。もちろんこの曲は彼らの過去の一点でしかないのでしょうけれど、それでもどうしたってこの曲は眩しく美しく聞こえる彼らの一つの境地だと思います。こんな歌を大声で歌う人が私の人生にいたということがとても私にとっての一つの救いでした。 『夜鷹』から始まって『明日には全てが終わるとして』で終わるこのアルバム。最初から最後まで最高です。ノイズの中に、優しい歌声の中に、様々な感情を見つけてしまう一枚です。

個人的にきのこ帝国の中で一番好きでよく聞いた円盤です。『海と花束』、そう口上してから歌い出す佐藤さんの姿が思い浮かびます。不穏な音と美しく悲しい情景に飲み込まれてしまう、強い求心力のある曲です。 『パラノイドパレード』も『Flower girｌ』もその浮遊感に全て任せたくなるような世界観がお気に入りの曲です。 少ない曲数ながら違う世界を追体験できるようで、繰り返し聞いてしまいます。

きのこ帝国との出会いとなったアルバムでした。ラジオから流れるお洒落で気怠いクロノスタシスをきっかけに知ったので、こんなに多彩な曲を歌うのか、と驚きました。ノイジーな音、時にアグレッシブでフラジャイルで多感な歌詞、シューゲイザーと言う言葉も知らなかった私にとって何もかもが新鮮で格好良かったです。 ヒリつきながら音楽を求める姿に胸がドキドキしてきのこ帝国が大好きになりました。ぜひ聞いてほしいです。

サウンドの印象、楽曲の世界感、色んなものが大きく変化したアルバムだと思います。明らかにアウトプットの仕方が変わっているのに、そのどちらも極めて魅力的なのが彼らの持つ表現力の現れだと感じます。 『ハッカ』『スカルプチャー』などより具象にフォーカスした楽曲も増え、その中に小説のようなストーリーを感じられるのもこのアルバムが好きな理由です。きのこ帝国の新たな一面を見せてくれる曲ばかりだと思います。

このアルバムを聞いて、何か万感の思いで10周年ツアーに参加しました。夢見るころを過ぎた私の耳に、とても静かでとても優しい歌に聞こえました。金木犀の香りを感じるたびにこのバンドの事を思い出しますし、時が経っても忘れられません。このアルバムを最後に活動休止してしまいましたが、きのこ帝国の先を期待してしまう曲たちです。

シューゲイザーやポストロックを基調としたサウンドで、まだまだ若いのに完成度も高く、もうすでにしっかりとした世界を持っていてその世界にぐっと引き寄せられる。