ウンベルト・エーコ

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バウドリーノ 下

ウンベルト・エーコ

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784000244282
ISBN 10 : 4000244280
フォーマット
出版社
発行年月
2010年11月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
357p;20

内容詳細

皇帝率いる軍勢と共に、バウドリーノと仲間たちはいよいよ東方への旅に乗り出すが、待ち受けていたのは思いもかけない運命だった…。史実とフィクションを織りまぜながら紡ぎ出す破天荒なピカレスク・ロマン。

【著者紹介】
ウンベルト・エーコ : 1932年、北イタリアのアレッサンドリアに生まれる。世界的な記号論学者にしてヨーロッパを代表する知識人。評論・創作に幅広く活躍する

堤康徳 : 1958年生まれ。イタリア文学研究者。東京外国語大学大学院修士課程修了。慶応義塾大学、上智大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • のっち♬ さん

    フリードリヒの死を契機にバウドリーノは司祭ヨハネを求めて仲間たちと東洋へ向かう。道中は異形の怪物が跋扈。腹部に性器、片目の巨人、無頭人などの種族の風貌や文化も奇天烈だ。ヒュパティアの登場で物語は益々ファンタスティックに屈折し、悉く痛切な結末を迎える主人公の恋愛や次々と去る仲間たちがロマンティックな哀感を醸し出す。それは信仰が性愛や死と密接に絡んでいる証左でもあり、人のあらゆる絆を引き裂くのが嘘の本質なのだろう。フリードリヒの死の真相まで存分に読者を惹きつける。運命は生粋の嘘つきに嘘以外への情熱を許さない。

  • ケイ さん

    エーコのファンタジックなストーリーには、無理に風刺を探してしまう。記号学者でもある彼がこの時代を描いた理由、バウドリーノの語りから浮かび上がらそうとした物は?と。 単純に楽しんでしまえばいいものを。本を閉じてもしばし考え込む。そう、歴史家なんて自分側に都合のいい事実を並べ立て書き上げるペテン師だ。宗教家は、民衆にありがたい嘘を作り上げて信心を駆り立てる。権力者は自分が権力を持つ根拠を捏造する。パウドリーノが見た東方はどれほど真実だったのだろうか。薬が見せた夢か妄想か、あるいは見たと信じたい嘘だったのか…。

  • 三柴ゆよし さん

    バウドリーノと11人の仲間たちは、詭弁家ゾシモスに持ち逃げされたグラダーレ(聖杯)を求め、東方の地上楽園へと旅立つ。上巻が歴史小説なら、下巻は澁澤龍彦『高丘親王航海記』を髣髴させるゆるふわな幻想旅行記であり、スキアポデスや無頭人、一角獣にバジリスクにマンティコアといった、オリエンタルの怪物たちがぞろぞろ登場する。バウドリーノが怪物軍団を率いて凶悪な白フン族に立ち向かう、まさかの妖怪大戦争まで勃発して、頁を繰る手が止まらない。最後の最後で、エーコのドヤ顔を拝むことになるとは思わなんだが、とにかく楽しかった。

  • ネムル さん

    ドンキ・ホーテだか某ギリシャ古典だかを、カルヴィーノ・シブサワ経由でアレンジした挙げ句、結局テリー・ギリアム化しちゃったったー、という嘘から出たマコトのアホ文。徹頭徹尾、嘘をつくことの愉悦に満ちた作品、堪能した。とはいえ、中世の意識においてヒュパティアやスキアポデスがどれだけ「嘘」であったのか不明瞭なあたり、一層エーコの巧緻を感じる。また、嘘つき・法螺吹きが誠実に真実を言おうとした時の2度の悲劇を見るに、中世と現代を串刺しにしたような視座の鋭さも見える。さすがエーベルト・ウンコ先生、鋭くもずるいやつだ。

  • Shin さん

    上巻から下巻の前半まではバウドリーノに何かの「寓意」を重ねようと身構えながら読んでいたのだが、途中から物語じたいのもつ蠱惑的な雰囲気に全て委ねながら作品世界に没頭した。バウドリーノはホラ吹きながら悪人ではないと思うのだけれど、その辿りついた運命はあまりにも過酷で、何よりも歴史として記述されることはない、という冷徹な(しかしながら賢明な)評価が下されるところが切ない。エーコの小説はいずれも再読必須だと思うけど、この本は自分がうんと(ホラと真実の区別がどうでもよくなるくらいに)歳を取ってからまた読んでみたい。

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