シューマン：交響的練習曲、ベートーヴェン：エロイカ変奏曲、ハイドン：アンダンテと変奏　アックス

エマニュエル・アックス／変奏曲集
ハイドン、ベートーヴェン、シューマン作品集

ポーランド人の両親のもと、ウクライナに生まれたエマニュエル・アックス[1949- ]は、アメリカ国籍の実力派ピアニストで、高度な演奏技術に裏打ちされた端正な演奏スタイルにより、作品本来の姿を大切にした演奏を聴かせてくれる希有な存在。
　磨き抜かれた美しい音と、説得力ある声部バランス、趣味の良いフレージングと、多彩な表情の変化を可能にする俊敏なテクニックは、素材の変容に意味を見いだす音楽でもある変奏曲というジャンルにはうってつけ。しかもプログラム構成も凝ったものとなっています。
　最初のハイドン「アンダンテと変奏」は、親しい友人の死を悼んで晩年のハイドンが書いた佳作。死への悲しみを描くヘ短調の主題と、故人の思い出を描くヘ長調の柔和な主題というふたつの素材による変奏曲を、アックスが端正に聴かせます。
　2曲目はベートーヴェンの『プロメテウスの創造物』の主題による15の変奏曲とフーガという力作。交響曲第3番『英雄』に主題が使用されたことから『エロイカ変奏曲』とも呼ばれる作品で、練り上げられた変奏技法とフーガを組み合わせたベートーヴェンの自信作となっています。アックスはベートーヴェンの楽譜を丁寧に描きあげ、多くの情報をすくい上げることで変奏曲本来のおもしろさが情報量の多さに比例することを示すかのようです。
　最後はシューマンの『交響的練習曲』。マーラーが『大地の歌』第1楽章にその主題を引用したことでも知られるこの作品の持ち味のひとつが、シューマンらしい厚みのある音色の発展と変化でしょうか。アックスはここでも不要な思い入れに走らず、あくまでもシューマンの描くテクスチュアに誠実に迫って行きます。（ＨＭＶ）

【収録情報】
・ハイドン：アンダンテと変奏 ヘ短調 Hob.XVII-6
・ベートーヴェン：『プロメテウスの創造物』の主題による15の変奏曲とフーガ 変ホ長調 op.35（エロイカ変奏曲）
・シューマン：交響的練習曲 op.13

　エマニュエル・アックス（ピアノ）

　録音時期：2012年6月
　録音方式：ステレオ（デジタル／セッション）