ブゾーニ:『ファウスト博士』(3CD)
ヴォルフガング・コッホ、ネトピル&バイエルン国立歌劇場
1916年に着手されながらも未完に終わってしまったブゾーニ[1866-1924]のオペラ『ファウスト博士』は、ファウスト伝説やファウストにまつわる話をもとにブゾーニ自身が台本を書いたもので、ユニークで刺激的な話となっています。
悪魔メフィストフェレスとの契約により、魔術師となったファウストは、招かれた公爵の結婚式の宴から公爵夫人を略奪し、やがて妊娠させると彼女を捨ててしまい、その後、生まれた子供の死体がファウストのもとに送られると、やがてファウストも死を迎えるというものです。
こうした筋書きのためか、ファウスト役はバリトンによって歌われ悪の側面も強調され、一方、メフィストフェレス役はミーメよろしくキャラクター・テノールによって歌われて狂言回し的な雰囲気を演出するといった具合に、ベルリオーズ、グノー、ボーイトといった作品での「ファウスト役=テノール」「メフィストフェレス役=バリトン」という伝統を覆した配役によっているのが印象的。
作品は、ファウストの死のあたりで未完に終わってしまったため、その後のメフィストフェレスによる嘲りなどをめぐる、弟子のヤルナッハと音楽学者のボーモントの補筆完成ヴァージョンの作風が対照的なこともあってか、このアルバムでは、ブゾーニが書いた部分だけを演奏しています。
指揮のトマーシュ・ネトピルは1975年生まれのチェコ人。2002年フランクフルト・ ショルティ国際指揮コンクールで優勝し、2010年には急逝したマッケラスの代役でベルリン・フィルを指揮、ドヴォルザークの交響曲第7番とマルティヌーの歌劇『ジュリエッタ』抜粋を演奏して見事成功を収め注目を集めています。
2007年には指揮者として初来日し、NHK交響楽団と共演。日本でも着実に知名度をあげ、2009から2012年にかけては、プラハ国民劇場の芸術監督を務め、その後、ヨーロッパ各地のオーケストラや劇場に出演して活躍の幅を拡大、コンサートにオペラに高い評価を受けています。(HMV)
【収録情報】
・ブゾーニ:歌劇『ファウスト博士』
ファウスト博士:ヴォルフガンク・コッホ(バリトン)
ヴァグナー/幽霊の声:スティーヴン・ヒュームズ(バス)
メフィストフェレス:ジョン・ダスザック(テノール)
パルマ公:レイモンド・ヴェリー(テノール)
パルマ公妃:カテリーネ・ナグレスタッド(ソプラノ)
進行役:アルフレッド・クーン(バス)
自然科学者:アドリアン・セムペトレーン(バス)、他
エルマー・シュローター(オルガン)
バイエルン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
トマーシュ・ネトピル(指揮)
録音時期:2008年6月28日
録音場所:ミュンヘン、バイエルン国立歌劇場
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)