ブラームス：ヴァイオリン・ソナタ第1番、第2番、第3番、ストラヴィンスキー：協奏的二重奏曲、ディヴェルティメント、他　ユーディス・シャピロ、他（2CD）

20世紀中葉のロサンジェルスを魅了した
ユーディス・シャピロを王道レパートリーで聴く

ユーディス・シャピロ[1914-2007]はニューヨーク州バッファローに生まれたヴァイオリニスト。ソリスト、室内楽奏者、オーケストラのコンサートマスターとして、また古典から現代音楽、更にはポップスや映画音楽まで、多彩な分野で人々を魅了しました。先に発売されるアルバム「ユーディス・シャピロの芸術」に続く本作では、クラシック音楽のソリストとしての演奏をたっぷりと聴かせます。
　シャピロは12歳でバッファロー・フィルと共演、カーティス音楽院でエフレム・ジンバリストに学びました。1941年にロサンジェルスに移り、ハリウッドの映画スタジオ史上初の女性コンサートマスターとなって20年余りにわたって数々の映画のサントラ録音に参加しました。その一方で1943年にはアメリカン・アート四重奏団を結成し、第1ヴァイオリンとして東海岸のジュリアード弦楽四重奏団に匹敵する評価を獲得。1950年代にはRCAビクター交響楽団のコンサートマスターとして、ヤッシャ・ハイフェッツのラロ：スペイン交響曲やツィゴイネルワイゼン等の録音に参加。更にロサンジェルス室内管のメンバーとして現代音楽の演奏に意欲的に取り組み、特にストラヴィンスキーはシャピロを非常に高く評価しました。ソリストとしては、フリッツ・ライナー、ユージン・グーセンス、ウィリアム・スタインバーグらの指揮で演奏、またアルトゥール・シュナーベル、リリー・クラウス、ルドルフ・フィルクシュニー、そしてブルーノ・ワルターのピアノと共演しています。
　このアルバムではまずブラームスの3つのヴァイオリン・ソナタが聴けるのが嬉しいところ。中庸からほんの少し速めに保たれたテンポ、情熱的な場面でも揺るがない造形感覚はブラームスにうってつけ。ストラヴィンスキーの2作品は作曲者の監修の元に行われたステレオ録音。ブラームスで見せた音楽的なセンスはストラヴィンスキーの擬古典的作品にもマッチしています。シャピロはブロッホ、バルトーク、ミヨーといった民族性が重視されるレパートリーにも見事に適応しており、「どんな曲でも求められる通りに演奏できた」という評判を裏付けます。民俗的な激しい表現の中にも気品を感じさせる瞬間があるのも魅力で、彼女が高い人気を得ていた一因と推測されます。ピアノのバーコヴィッツはピアティゴルスキーと、ブルックス・スミスはハイフェッツと繰り返し共演している名手です。
　ボーナス・トラックのように置かれた最後の2曲は一転ポップスの世界。映画スタジオで活躍したシャピロに相応しいムードたっぷりの音楽です。「Biddulph」の解説書の中ページは通常モノクロですが、このアルバムではシャピロが使っていたピエトロ・グヮルネリの写真を4ページにわたって掲載。入れ込みようが伝わります。（輸入元情報）（写真 輸入元提供）


【収録情報】
Disc1
1. ブラームス：ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 Op.78『雨の歌』
2. ブラームス：ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調 Op.100
3. ブラームス：ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調 Op.108
4. ブロッホ：バール・シェム組曲（1. 懺悔／2. 即興（ニーグン）／3. 歓喜）

Disc2
5. バルトーク：狂詩曲第2番 Sz.89,90
6. バルトーク：ルーマニア民俗舞曲 Sz.56（セーケイ編）
7. ミヨー：ブラジルの郷愁 Op.67
8. ラヴェル：カディッシュ（『2つのヘブライの歌』第1曲）
9. ストラヴィンスキー：協奏的二重奏曲 (1932)
10. ストラヴィンスキー：ディヴェルティメント (1934)（『妖精の口づけ』より　ドゥシュキン編）
11. クライスラー：わが瞳に輝ける星（ウェストン編）
12. ハインツ・プロヴォスト：間奏曲（ウェストン編）

　ユーディス・シャピロ（ヴァイオリン）
　ラルフ・バーコヴィッツ（ピアノ：1-8）
　ブルックス・スミス（ピアノ：9,10）
　ポール・ウェストン＆ヒズ・オーケストラ（11,12）

　録音：
　1957年／モノラル　初出：Vanguard VRS-1009 (HO-8P-1936/37)、VRS-1023 (J8-OP-1837/38)：1-8
　1962年／ステレオ　初出：Ava AS-15 (HPS-157/58)：9,10
　1958年／ステレオ　初出：Columbia CS-8042：11,12

　復刻プロデューサー：Eric Wen
　復刻エンジニア：David Hermann
　マスタリング：Dennis Patterson