1965年１月19日ローマ生まれ、小さいときからクラシック・ピアノを習い、やがてミラノのヴェルディ音楽院を1983年に卒業、その後、多くのジャズ・フェスティヴァルに参加し、次第にその名を高めていった。

　1987年には第11回ミュジカル・レヴューの「新人」部門賞を受賞し、1991年にはイタリアのジャズ専門誌「ムジカ・ジャズ」のスペシャル・ポールの第2位に選出された。
　ファラオはレコーディングに参加したクラウディオ・ファソリ、ロベルト・ガトー、フランコ・アンブロゼッティをはじめとして多くの欧米のミュージシャンと共演しているが、1997年4月にニューヨークで録音されたフランコ・アンブロゼッティ名義の『Light Breeze』ではジョン・アバークロンビー、ミロスラフ・ヴィトウス、ビリー・ドラモンドらと共演、ニューヨークの息吹を感じて更なる展開を見せ、1998年4月にはドイツのエンヤ・レーベルに待望の初リーダー・アルバム『Black Inside』を吹込んだ。この作品は当時ニューヨークでもっとも多忙だった先鋭的な2人、ジェフ・ワッツ(ds)と、ヨーロッパとアメリカをまたにかけて活躍中だったアイラ・コールマンという最高のバックを得た「ニューヨークへの挑戦」とも言うべき作品だった。

ファラオは1998年9月にはパリ市主催の「マーシャル・ソラール」賞を受賞、ヨーロッパでの名声も高まった。その後もアクティブな活動を続けたファラオは共演経験の多いダニエル・ユメールと、ジェニー・クラーク亡き後ヨーロッパ最高のベーシストの一人、ジャンージャック・アヴェネルとの至高のトリオで、1999年10月にパリ郊外で録音された『Border Lines』を発表、日本のジャズファンにファラオありと印象付けた。この作品でヨーロッパ最高のリズムを得たファラオは「ニューヨークへの挑戦」とはまったく違うアプローチで「ユーロトリオ」の優れた演奏を見せつけた。アメリカに生まれたジャズがヨーロッパで身に付けた感性によってどう変化するか、ミシェル・ペトルチニアーニがそうであったように聞き比べるのも楽しい。

2000年8月発表の最新作『Thorn』は、ジャック・デジョネットのプロデュースを得て、ファラオに新たな展開をもたらした。ドリュー・グレスの戦闘的なベースにデジョネットの縦横無尽のドラミングが絡みつく中を骨太なフレーズで中央突破するファラオはまさにローマ帝国の無敵の軍団を背に背負った感じを抱かせる。

　2000年を越えてからヨーロッパ各地での活躍をバックに、2002年5月、パーカッションを5曲に加えた変則トリオ編成で『Next Stories』を吹き込み、続いて、Bob Berg を加えたFarout Quartetで『Far Out 』を録音。この作品を引っさげての2003年6月来日となるが、なんとBob Bergが不慮の交通事故で亡くなった。今回の来日によって“ローマジャズの皇帝”、アントニオ・ファラオの全貌が明らかになる。今後、さらなる活躍が期待されるファラオである。

＜録音履歴>
1984 C. Fasoli Quartet & Quintet - INPUT - Bull Records
1986 R. Gatto - NOTES - Gala Records
1986 C. Marcotulli - FLYING - Fonit Cetra
1987 A. Golino - FIRST FLIGHT - Dire
1989 A. Golino - CHINA - Heron Music
1991 A. Faraò Quartet - VIAGGIO IGNOTO - D.D.D.
1995 E. Apostolidis Quartet - IMAGINARY DIRECTIONS - G.L.M.
1996 A. Faraò Quartet feat. F. Ambrosetti - EXPOSE - Dischi della Quercia
1998 F. Ambrosetti - LIGHT BREEZE - Enja Records
1998 S. Tranchini - RADIO SUITE - Red Records
1998 A. Faraò (with Ira Coleman and Jeff "Tain" Watts) - BLACK INSIDE - Enja Records
1999 Farao-Humair-Avenel-BORDERLINES-Sketch
2000 A.Farao-THORN-Enja Records