ジブリ学術ライブラリー: 堀田善衛　時代と人間

堀田善衞（ほった よしえ）は、芥川賞を受賞した小説「広場の孤独」などで知られる「戦後派」の一人で、鋭敏な国際感覚をもとに文明批評的な考察を深めた作家です。
もともと宮崎駿監督やスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは堀田氏を非常に尊敬し、作品も熱心に読んでいましたが、堀田氏とスタジオジブリとの出会いは、『天空の城ラピュタ』（１９８６年）制作当時にさかのぼります。当時、徳間書店で『天空の城ラピュタ ＧＵＩＤＥＢＯＯＫ』を編集していた鈴木が制作現場で頑張っている宮崎監督を励ましたいとの思いで堀田氏に原稿を依頼しました。「アニメーションを作る人々へ」と題されたこのエッセーから堀田氏とスタジオジブリの交流が始まったのです。
その後、堀田氏と宮崎監督は『時代の風音』（ＵＰＵ、現在は朝日文庫）で司馬遼太郎氏を交えて鼎談し、新年に堀田氏の自宅へ挨拶にうかがうのが恒例になるなど、その交流は一層深くなりました。

宮崎監督は、今回の企画に関して次のような言葉を寄せています。
「堀田さんは、海原に屹立している巌のような方だった。潮に流されて、自分の位置が判らなくなった時、ぼくは何度も堀田さんにたすけられた」。

今回全６巻で収録されるのは、１９９２年に放送された「ＮＨＫ人間大学　時代と人間」全１３回に加え、長編「審判」をめぐるドキュメンタリー「作家が語る自作への旅」や、中村元、桑原武夫、大江健三郎といった現代を代表する知性との対談など、ＮＨＫのライブラリーに残る貴重な映像。また映像だけにとどまらず、ラジオ出演時の音源や貴重なラジオドラマなどを収録したＣＤが特典として付属します。
同時期に徳間書店から復刊される、現在は入手困難な著書「路上の人」「聖者の行進」、「ＮＨＫ人間大学 時代と人間」のテキストと合わせて、時代に不透明感を感じている多くの人の助けになるべく、映像と音で作家・堀田善衞の全貌を捉えた決定版ビデオグラムとなっています。