浜松市楽器博物館コレクションシリーズ53
美しいアップライトピアノ〜連弾の悦び〜
世界的に見ても珍しい、博物館の収蔵楽器を実際に専門の演奏家が演奏し、その楽器の生まれた時代の音楽とともに伝える浜松市楽器博物館コレクションシリーズの53作目。
一般家庭で身近な楽器として親しまれている楽器、アップライトピアノ。グランド・ピアノに比べて音色やタッチ、響きなどの点で劣る家庭用の楽器と思われがちなアップライトピアノの起源は古く18世紀半ばにまでさかのぼり、ドビュッシーやショパンはアップライトピアノ独特の軽いタッチや甘い音色を積極的に奏で、シューマン夫妻は子供が生まれて以降、小さいながらも愛らしい音のするアップライトピアノを好むようになった。
コンサートホールできらびやかに輝く音楽とは違った存在の、家庭内の時間を潤すアップライトピアノの音楽。それはたとえば、供に捧げられた近代フランスの連弾曲、あるいは何百万ものピアノ学習者が憧れ奏でた『乙女の祈り』、そしてブルグミュラー・・・。懐かしい音色が胸に秘めた思い出をくすぐり、新たな驚きとともに楽器の可能性をおしえてくれるアルバムの登場。(ALM Records)
【収録情報】
1. ドビュッシー:4手のための小組曲 (1889)
2. フォーレ:4手のための6つの組曲『ドリー』 op.56 (1893-97)
3. ボンダジェフスカ=バラノフスカ:乙女の祈り (1856)
4. プーランク:4手のためのソナタ (rev.1939)
5. フランセ:4手のための『ルノアールによる15人の子供の肖像』 (pub.1971)
6. ブルグミュラー:25の練習曲 op.100より3曲 (c.1851)
7. ラヴェル:『マ・メール・ロワ』 (1908)
小倉貴久子(アップライトピアノ)
羽賀美歩(アップライトピアノ)
【演奏】
1,5,7:Prima/小倉貴久子 Seconda/羽賀美歩
2:Prima/羽賀美歩 Seconda/小倉貴久子
3:羽賀美歩
6:小倉貴久子
【使用楽器】
2,6:エラール (Erard c.1822)
7:ジラフ・ピアノ (Giraffe Piano c.1830)
1,3:ギルソン (Gilson c.1860)
4,5:バロワ?(エラール) (Barois? (Erard) c.1880)
録音時期:2014年4月22-25日
録音場所:浜松市、アクトシティ浜松音楽工房ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
発売元:浜松市楽器博物館
販売元:コジマ録音
【小倉貴久子 Kikuko Ogura】
東京藝術大学を経て同大学大学院ピアノ科修了。アムステルダム音楽院を特別栄誉賞を得て首席卒業。第3回日本モーツァルト音楽コンクール、ピアノ部門第1位。1993年ブルージュ国際古楽コンクール、アンサンブル部門第1位。 1995年同コンクール、フォルテピアノ部門第1位と聴衆賞受賞。様々なコンサートシリーズを展開する一方、ソロ、室内楽、協奏曲なドバロックから近現代まで幅広いレパートリーで活躍。浜松市楽器博物館主催の多くのコレクションシリーズの録音やレクチャーコンサートでの演奏も高い評価を得ている。これまでにCDを40点以上リリース。それらの多くが各新聞紙上で推薦盤、「レコード芸術」誌で特選盤に選ばれている。CD『イギリス・ソナタ』は平成24年度文化庁芸術祭レコード部門「大賞」受賞。著書にカラー図解『ピアノの歴史(CD付き)』(河出書房新社)。校訂楽譜『ジュスティーニ:12のソナタ集第1、2巻』(カワイ出版)。共著に『よくわかるピアニスト呼吸法』(ヤマハミュージックメディア)。監修に『よくわかる! 4コマピアノ音楽史第1、2巻』(ヤマハミュージックメディア)。NHKラジオ第2『芸術その魅力』(2014年7月〜9月放送)で「モーツァルトが出会った音楽家たち」の講師を務める。シリーズコンサート『小倉貴久子の「モーツァルトのクラヴィーアのある部屋」』を好評展開中。東京藝術大学古楽科非常勤講師。
【羽賀美歩 Miho Haga】
名古屋市出身。東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒業。同大学院音楽研究科修士課程古楽科フォルテピアノ専攻修了。これまでにピアノを浅井潤子、故堀江孝子、播本枝未子、佐藤俊の各氏、また作曲を寺西誠氏、室内楽を山崎伸子氏、フォルテピアノを小倉貴久子氏に師事。2歳よりヤマハにて音楽教育を受け始め、4歳でピアノを、6歳で作曲を始める。テレビ朝日系列局『オリジナルコンサート〜私たちの創った音楽〜』に出演し、また台湾、フランスなど、海外公演を含む多数コンサートにて、自作の曲を演奏する。修士課程においては、一般的にあまり取りあげられることのない作曲家のピアノ作品について、作曲時の演奏を再現するべく、様式の考察および当時使用されたと考えられるオリジナル楽器やそのレプリカ等を使用し、演奏研究を行った。同時にショパンのピアノ作品をはじめ、室内楽ならびに歌曲作品についても広く研究し、歌曲作品を含めたプログラムでのリサイタルも行う。2011年クレムスエッグ城国際フォルテピアノコンクール第2位。2013年ブルージュ国際古楽コンクールフォルテピアノ部門第3位。伴奏ピアニストとしては第21回奏楽堂日本歌曲コンクールにおいて優秀共演者賞受賞。現在は古楽器フォルテピアノ奏者としての活動のほか、器楽や声楽の伴奏ピアニストとしても多数の演奏家と共演している。(以上、ALM Records)
貴重な楽器の魅力を優れた演奏で聴かせるシリーズ。今回は通常の演奏会では聴くことのできないアップライトピアノ。軽いタッチや独特の音色をショパンやドビュッシーも愛したという。ふくよかで甘い響きは、楽曲の違う一面を引き出す。意外にも豊かな表現力を持つジラフピアノも聴きもの。(堀)(CDジャーナル データベースより)