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Ma Vlast: Kubelik / Czech Po (1991 Tokyo)

Smetana (1824-1884)

User Review :5.0

Item Details

Genre
:
Catalogue Number
:
ALT098
Number of Discs
:
1
Label
:
:
International
Format
:
CD
Other
:
Live Recording,Import

Product Description

1991年11月2日土曜日、サントリーホールでおこなわれた演奏会を、NHKがライヴ収録した音源のCD化。前年の“プラハの春”音楽祭で、42年ぶりに祖国に帰ってチェコ・フィルを指揮、素晴らしい『わが祖国』を聴かせてくれたクーベリックですが、そのライヴ盤は、音質的には少々物足りなかったというのが正直なところです。

 今回登場するライヴ録音は、NHKの録音技術の高さとALTUSのマスタリングのセンスの良さが相乗効果を発揮した優れたもので、各楽器の質感・量感・レンジ感とも申し分なく、満員のサントリーホールの適度な残響もあって、惚れ惚れするほどの美音から、強大で凶暴なトゥッティにいたるまで、どこをとっても見事というほか無い響き具合に驚きを禁じえません。
 ヴァイオリン両翼型のオーセンティックな楽器配置がもたらすパースペクティヴの面白さもきちんと再現されており、クーベリックならではのテンポの急変や思い切った表情の変化といった、接続曲的なシチュエーションの強調表現が、無類の立体感を伴って聴き手に迫ります。『高い城』冒頭のハープからゾクゾクするような美しさですが、やはり『わが祖国』はこうでなくては!

第1曲『高い城(ヴィシェフラド)』
プラハの南、モルダウ河のほとりの崖の上に建つヴィシェフラド城は、10世紀後半に建設された中世ボヘミア王国の城で、そこではかつて伝説の吟遊詩人ルミールが、英雄や愛について歌っていました。 曲頭のハープの動機は、この吟遊詩人ルミールのハープを表したもので、以後、『わが祖国』全体を通じて変形使用されることとなり、この連作交響詩が、あたかも吟遊詩人によって歌われたボヘミアの物語であるといった様相を呈しています。
 クーベリックのアプローチは、そうした重要な意味合いを持つ動機を大きく美しく鳴らすことにより、情熱的で幻想的な物語の開始にふさわしい存在感を印象付けます。

第2曲『モルダウ(ヴルタヴァ)』
『わが祖国』を代表する人気作で、単独で演奏される機会の非常に多い作品でもあります。内容的には、チェコの中央部を流れる大河モルダウとその周辺の景観を描写したもので、変化に富む水の流れと、民族舞曲や月夜の水の精、聖ヨハネの急流などが描かれており、最後には循環動機でもある『高い城』の主題をモルダウの主題にかぶせて輝かしく終わります。チェコの人々や自然について大変美しく描いた音楽であり、クーベリックの祖国への熱い思いが、単なる旋律美に終わらない太く幅広い音楽の流れを感じさせてくれて素晴らしい仕上がりです。

第3曲『シャールカ』
恋人の裏切りから、なぜか全男性への復しゅうを誓ってしまった女傑シャールカ率いる女性の軍隊と、男性の軍隊との戦いを描いた作品で、同じ題材のヤナーチェクのオペラも有名です。シャールカ討伐に向かったツティラートが、色香と酒によって簡単に負かされてしまうといったストーリーが、スメタナの音楽では最後の勇猛果敢な音楽に象徴されるようにきわめてシリアスなものとして描かれています。
 クーベリックのここでの演奏は、鬼気迫るほどの激しさが備わった凄まじいもので、最後の追い込みなどまさに圧巻。大迫力ぶりをストレートに伝える音の良さも魅力です。

第4曲『ボヘミアの牧場と森から』
きらきらと輝く陽光を受けた緑の平原、収穫祭を思わせる農民たちの楽しげな踊り、森にそよぐ風や小鳥たちのさえずりがあるときは陽気に、あるときは淋しげに描かれる『モルダウ』に次ぐ人気作。
 クーベリックの演奏は、作品の牧歌的な特質を伸びやかに描きながらも随所に深い陰影を感じさせる見事なもので、チェコ・フィルのキラキラと輝く弦や、しっとりとした木管群の美しさ、語り口のうまさはさすがというほかありません。

第5曲『ターボル』
免罪符販売を非難したことによってローマ法王から破門され、やがて虐殺されることになるチェコの宗教改革運動家、ヤン・フスの衣鉢を継いだ急進的グループ「ターボル派」を中心に巻き起こったフス戦争を描いた作品。スメタナはフス教徒たちの信条を民族主義の旗印として捉え、主題に彼らの賛美歌(コラール)を用いることで、チェコの歴史上、最大の民族的盛り上がりを見せた出来事を叙事詩的壮大さをもってダイナミックに描き上げています。
 演奏は恐ろしいほどの迫力に満ちたもので、クーベリックが顔を真っ赤にして足を踏ん張り、オーケストラから強烈な音楽を引き出していた実演での様子がまざまざと思い起こされます。

第6曲『ブラニーク』
前曲からつながっているこの作品は、ボヘミアのブラニーク山に眠る救国の騎士たちの伝説を描いており、主要主題には第5曲のターボルの主題が用いられて、チェコの危機を救う英雄の存在を強く印象付けます。
 実際の戦争では、十字軍のたび重なる侵攻を撃破しながらも、結局は内部分裂によって敗戦を迎えることになる彼らの戦いぶりを考えると、スメタナの描写は少々理想主義的美化が過ぎるようにも思えてきますが、この曲集が、吟遊詩人ルミールによって語られるチェコについての幻想的な物語である点、『ターボル』と異なり、フス教徒ではなく伝説上の存在である騎士たちに戦いがシフトしている点を考慮すれば、スメタナの設定は当を得たものと言えるのではないでしょうか。
 クーベリックの演奏は、前曲に続いて何かがのり移ったかのような圧倒的な激しさをみせ、その荒れ狂う音の奔流のもたらす陶酔と、後半の美しいホルンや木管セクションとのコントラストには驚くべきものがあります。最後の『高い城』の動機がこれほど胸に迫る演奏は、クーベリックといえどもほかにはありませんでした。

・スメタナ:連作交響詩『わが祖国』全曲
 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
 ラファエル・クーベリック(指)

 録音:1991年11月2日、サントリーホール(NHK収録)

CDは国内プレスとなります。

Track List   

スメタナ:連作交響詩『わが祖国』全曲<br>ラファエル・クーベリック(指揮)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団<br>1991年11月2日、サントリーホール(NHK収録)

  • 01. Vysehrad
  • 02. Vltava
  • 03. Sarka
  • 04. Z ceskych luhuv a Hajuv
  • 05. Tabor
  • 06. Blanik

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Comprehensive Evaluation

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有名なモルダウ以外は今まであまり聴いたこ...

投稿日:2018/02/16 (金)

有名なモルダウ以外は今まであまり聴いたことがなかったのですが、最近になってようやく連作6曲がすべて魅力的であることを教えてくれたクーベリック氏の名演奏CDです。25年前のこの演奏会に行けなかったことが残念です。

テリーヌ さん | Hyogo | 不明

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確かにクーベリック&ボストン響の方が落ち...

投稿日:2014/03/12 (水)

確かにクーベリック&ボストン響の方が落ち着いていて音楽的にいいかもしれない。が、人間の感性的にはやっぱりこっちでしょう。

ムサイシス さん | 三重県 | 不明

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これぞ、愛国音楽。そこにアイデンティティ...

投稿日:2014/02/02 (日)

これぞ、愛国音楽。そこにアイデンティティーを見出すものたちのみにしか為し得ない音楽。このような奇跡的な演奏が東京でなされ、遺されたということの妙に感謝したい。本演奏はNHKからも映像が出されている。そちらと合わせて楽しまれることを是非オススメする。冒頭ビシェフラドの穏やかな表情から、クライマックスの鬼神のごとき形相のクーベリック。それに応えたチェコフィルメンバー達の終演後の晴れやかな表情・・・。いずれも素晴らしい。なお、本演奏に下らない評論家氏の解説は不要。この御仁、国民国家や愛国心を「卑しいもの」と捉えているようで、ロイヤルコンセルトヘボウのロイヤルという呼称にもいちゃもんをつける程度の低い「教授様」である。とにかく、ブックレットなどには目を通さず、CDをかけ、一気に聞きとおされることをオススメしたい。

大審問官 さん | 静岡県 | 不明

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