【インタビュー】坂本美雨 ジャパニーズ・ポップス・インタビューへ戻る

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2010年5月13日 (木)

interview

5/19にThe Shanghai Restoration ProjectのDave Liangをプロデューサー/コンポーザーに迎え制作された、1年半ぶりのNewアルバム『PHANTOM Girl』をリリースする坂本美雨さん。 これまでのイメージをサラリと塗り変える軽やかさと無邪気さ、そしてポップな響きを持つこのアルバムが、 Daveとの共同作業によりどのようにして作られたのか、そして「PHANTOM Girl」とは一体何なのか、お話を伺いました。 インタビュー中、自身の発する一言一言にじっくりと向き合い、また、時に少女のような振る舞いを見せる坂本さんは、まさにこのアルバムが放つキラメキそのもの。初回盤にも収録されている、アルバムの魅力、そして坂本美雨という女性の魅力を最大限に引き出している、アートディレクター・森本千絵による映像作品も必見です。


イマジネーションのきっかけは同世代の女のコ



-- 今回の作品は「ファントムガールのサウンドトラックをイメージして制作された」ということで、まずは「ファントムガール」についてご説明いただけますか?

坂本美雨(以下 坂本)  「ファントムガール」というのは、このアルバムの最初からコンセプトとしてあったわけではなくて、むしろ一番最後に付けられたんですけども、「ファントムガール」が何かというのを説明すると…、人が生きてく上で、日常の中では忘れ去られているけども、ふとした瞬間に体の中から飛び出てくる衝動とか、本当の気持ち、本能、自分だけの聖域、の象徴ですね。それがこの生き物(=ファントム)なんです。

最初は、The Shanghai Restoration ProjectのDave Liangと共作を始めるにあたって…、 都会で働く自分と同世代のある女の人の1日を時系列に書き出して、そこからイメージを膨らませて アルバムの骨格を組み立てていったんですね。朝起きてから寝るまでを。 「このリズムは電車っぽい感じがするね」「じゃあアルバムのこの辺に入れて“通勤”っていう感じにしよう」みたいな。サウンドトラックのように音で肉付けしていったんです。
そこに歌詞を乗せていく段階になって、1日のストーリーなんだけれども、その現実世界そのものというよりは、その架空の女の人が持っている…衝動とか、その人が社会で生きているそのままではなくて、本当のその人の姿、素の彼女はそうじゃないんじゃないか、みたいな想像が膨らんでいきまして。 その素の彼女は、ふとした瞬間に大好きな人のところにふぁーっと駆け出して、飛んで会いに行って耳たぶを噛む、っていう(笑)。 PVではそうなっているんですけども、そういう衝動みたいなものをとても大事に持っているコなんじゃないかって。

実際みんなそうなんじゃないかと。 そういう“本人”がみんなどこかに眠っていて、現実世界ではそれは抑制されているけども…。 歌詞を書くうちにそんな物語が出来上がってきて、友人のアートディレクターの森本千絵ちゃんと一緒に話してるうちに、こういう生き物(ファントム)を描いてくれて、PVの物語も出来上がって、 最後にその生き物、というか現象に「ファントムガール」っていう名前を付けたんですよ。

-- 名前が一番最後なんですね。

坂本  はい。迷って迷って付けました。

-- 他にも候補の名前はあったんですか?

坂本  そうですね…、「モンスター」みたいなインパクトのある響きが良かったんですけども、 モンスターだとすでにいろんなイメージがあって…、響きを優先して「ファントム」に決めましたね。 あと、「初恋」というのもありました(笑)!

-- やはり「ファントムガール」ということは、最初からアルバムのイメージは男性ではなく女性だったと。

坂本  そうですね、女のコ、のイメージでしたね。

-- その「架空の女性のストーリー」を作っていく上で、モデルとなる方はいらっしゃったんですか?

坂本  いなかった、ですね。ただ場面場面ではいる時もあって…、モデルというよりはシチュエーションですね。 ダンサーの知り合いのコがいて、ダンスがとても好きで、 でも職場ではそういう自分は全然出せなくって、ダンスの稽古場に入った途端に急に解放されて大泣きしたっていう話を聴いていて。 例えばそういう状況で毎日一生懸命仕事をしていて、ギュウギュウの満員電車の中で音楽を聴くとして、 そのコがどういう気持ちになったらいいな、とか。 自分では会社勤めっていう経験はないですけど、この社会で女の子が生きていくのはしんどいな、というのは思っているので。

-- 現代の女のコに向けて、という意味合いがあるということですね。

坂本  そうですね。でも完成した音に関しては、もちろん男性やどんなジェネレーションの方にも、 とは強く思っているんですけども。 イマジネーションのきっかけは、同世代の女のコですね。

-- なるほど。ところでこのファントムという生き物、ファントムちゃんは、 前作『ZOY』のジャケットと関連しているという…。

坂本  twitter見てますね(笑)?

-- 拝見させていただきました(笑)。で、このファントムちゃんの名前は“ZOY(ゾーイ)”と。

坂本  “ZOY”ですね。

-- そのストーリーもアルバム全体のコンセプトが出来上がってから?

坂本  そうですね、それは撮影中に森本千絵ちゃんが気付いたというか。 前作のジャケットの小さな女のコは想像妊娠していて、よく見ると中身がぬいぐるみだったり、 自分の大切なものをお腹にいっぱい詰め込んで妊娠しているっていうビジュアルで。 そこから産まれたのがこのコだったんじゃないかな、と(笑)。 2人で「そうだね!繋がってるね!」って(笑)。 千絵と一緒にモノ作りするのも長くて、アルバムも4作目なので、 2人の友達関係の間でもいろいろ繋がっていることはあるし、同じ時をすごしてお互い創作をしているから、 何か繋がっているところは出てきますね。

-- PVの撮影もすごく楽しそうでしたね。ファントムちゃんと並んで踊っていて。 ジャケットの方では坂本さんが被られてるんですよね?

坂本  ええ、そうですね。PVの方ではダンサーの女性が被ってるんですけども…、まあ、あまり被ってるって言い方はしたくないんですけど(笑)。

-- 中の人などいないと(笑)。

坂本  (笑)。ジャケットの方は、撮影が終わったあとに「じゃあ私も入ってみる」って遊んでた時のポラロイド写真なんですよ。本当は別の写真をアルバムジャケットにするつもりでいたんですが、こっちになりました。

-- 実際、ファントムちゃんは重いんですか?

坂本  重いです(笑)!

-- (笑)。ミニファントムちゃんもいますよね。

坂本  いますね。“大・中・小”と。

-- “小”は頭の上に乗せてましたよね。“中”は手にはめられるタイプですか(笑)?

坂本  そうですね(笑)。




ファントムちゃん比較画像



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profile



坂本美雨 [MIU SAKAMOTO]

1997年1月Ryuichi Sakamoto featuring Sister M名義で「The Other Side of Love」を歌う。 1999年映画「鉄道員」の主題歌「鉄道員(TETSUDOIN)」をリリース。 同年6月、現地の高校を卒業すると共に、本格的に音楽活動を開始。 1999年9月アルバム「Dawn Pink」リリース。 2005年11月ホンダ企業CM環境・安全編に使用される『The Never Ending Story』リリース。 2006年5月アルバム「Harmonious」リリース。 2007年3月YEBISUのビール「YEBISU THE HOP」のTVCM出演、話題となる。 2007年12月アルバム「朧の彼方、灯りの気配」リリース。 2008年11月アルバム「Zoy」リリース。 音楽活動と平行して、舞台出演、他アーティストへの歌詞の提供、テレビのナレーションや、ラジオのナビゲーター、またエッセイや映画評などの執筆活動などを行う。 2003年、初の詩画集『aqua』を出版、ネコの絵本の翻 訳本を2冊出版。2007年には絵本「せかいでいちばんあたまのいいいぬ」を母・矢野顕子と共同で翻訳。 2003年より自らのジュエリーブランド『aquadrops』のプロデュースも手がけている。 また、舞台「竹中直人の匙かげん」やダンス公演に出演するなど、演劇活動も行う。