【コラム】Akira Kosemura第10回 細い糸に縋るように Akira Kosemuraへ戻る

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2010年5月10日 (月)

連載「細い糸に縋(すが)るように」
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小瀬村晶 Akira Kosemura
[producer / composer / schole records A&R]

1985年生まれ、東京都在住。 国内外の音楽レーベルから作品を発表する傍ら、CM音楽の制作、映画やダンス公演、アパレルブランドへの楽曲提供など、多方面で活動を展開するアーティスト。 schole recordsを主宰し、多くのアーティストを輩出、複合メディア「Clarity x Leaf disc」クリエイティブディレクターを努める。 2008年『Tiny Musical』を発表後、ヨコヤマアヤノ(舞踊)千葉祐吾(映像)と共に、全国各所でライブパフォーマンスを展開。 2009年には、ポラロイド写真をテーマにしたピアノアルバム『POLAROID PIANO』をリリース。その他、ライブミニアルバムや、サウンドトラックも発表。 2010年2月にこれまでの集大成となる作品『grassland』を限定生産盤(CD+DVD)と通常盤(CD)にて発表。



春がとことことやってきた。

季節の匂いのなかでも、僕は春が一番好きだ。
芽吹きや、息吹の香りとでもいうのか、少し生温かくて、鼻に残るうっとりとした春特有の香りが、僕は一年中で一番好きだ。

職業柄、4月になると新入社員が入ってきて….というような世界に属していないので、僕が春を感じられるのは、おおむね、こうした些細な“匂い”でしかない。

それでも僕はこの“匂い”というものにはとても敏感なところがあって、だからか、桜の花を見つけるより前に、朝起きて窓を開ければ、それが春かどうか分かる。
春が僕のベランダにやってきていると、なんだかとても嬉しい気持ちになる。

僕にとってそれは、忘れかけていた昔観た映画のワンシーンを思い出したような感覚、に似ていると思う。


映画館の話をしよう。

映画館、僕はあの場所がとても好きだ。
渋谷にあるような、雑居ビルにある小さな映画館も悪くはないけれど、マイカルとかTOHOとかがやっている、アミューズメント的な、建物が大きくて、広い映画館がいくつも入っていて、ポップコーンが美味しい、あの映画館が好きだ。

そういう映画館は、休日の昼間や、水曜日はものすごく混み合っているんだけど、夜になると、けっこうがらがらになってしまう。
そういうほとんど人がいなくなった、だだっ広い映画館の一番後ろの席から映画を観るのが、僕はとても好きだ。

はっきりいってしまうと、どんな映画をやっているかはもうあまり問題ではなくて、その空間に座って映画を観ている行為が好きだといっても間違いはない
と思う。

僕がまだ小さな頃、横浜の映画館なんかは、一度チケットを買って中に入ると、何度でも同じ映画を観る事ができた。
だから、適当な時間に入っては最後まで観て、そのまま座っていればまた同じ映画が最初から始まるので、今度は最初から観ながら、途中まで観たら出て行く、というようなことができた。

近頃はそういう映画館が無くなってしまって、それはそれでとても悲しい。


また春の話をしよう。

春になると、なにかが始まるような気配がする、もしくはなにかを始めるにはちょうど良い気がする。
今年も春先から僕のまわりが徐々に慌ただしくなっていくような感じがあって、いつのまにか面白い話がいくつか湧いて出てくるようになった。

音楽というのは、とても流動的で、感覚的で、結局のところ気持ちに左右され易いものなので、春というのは、音楽を作ることにはとても向いているような気がする。
だからか、春が近づくにつれて、いつの間にか友人達と新しい音楽を作り始めていたりする。

音楽が生まれていく瞬間。
春の匂いがする瞬間。

気がつく頃には、終わってしまっているという意味でも、とても似ているのかもしれない。

とりとめのない4月の午後。


http://www.akirakosemura.com/
http://www.scholecultures.net/




 
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scholeより発表された二枚のアルバムが多くの人々に支持され、最近ではポラロイド写真をテーマにした完全即興演奏によるピアノアルバム『Polaroid Piano』の発表、さらに自身の作品だけにとどまらず、映像作品「ウミウシ 海の宝石」への音楽提供や、ケンタッキーTVCMの音楽制作、nano universeやTOSHIBA REGZAのウェブサイト音楽、アパレルブランドへの楽曲提供など、ますます活動の幅を広げる気鋭のアーティスト、Akira Kosemuraが自身のレーベルscholeからリリースする三枚目のアルバム『grassland』。 多くのゲストミュージシャンを迎え入れて制作された本作、これまでの作品が光と影、両方を持っていたとしたならば、今作は最も光に満ちあふれている。その濃い密度で紡がれた音楽は、これまでの集大成といえるだろう。 また、今作は通常のCD盤に加え、限定生産盤としてミュージックビデオ作品を七作収録した豪華CD + DVDパッケージ盤も同時リリースとなる。小瀬村のこれまでの作品のなかから、四人の映像作家がそれぞれ楽曲を選び制作された映像作品集は、デビュー当初より小瀬村の作品ヴィジュアルを支えているSCHOLE INC.の面々に加え、ロンドンから Mario Cavalliを監督に迎えて製作された三作品もパッケージ。一つの到達点を迎えた彼の今後に、大いに期待が高まる作品となった。


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次回へ続く…(6/10更新予定)。


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