SUIKA ご存知？

2010年11月8日 (月)

ご存知？SUIKA

SUIKAというアーティストがいるのをご存知だろうか？
店舗に行けば、おそらくHIP HOPコーナーにカテゴライズされるだろう。

このSUIKAというアーティスト、もちろん根っこにあるのは間違いなくHIP HOP。
しかしHIP HOPというカテゴリー内で説明するには、あまりにも異質で自由な活動をしている。

今回で、5枚目のアルバム発売になるが、まだ知らない方もいるかと思うので、プロフィールから説明させて頂こう。

A Hundred Birds等での活動も有名なキーボーディスト、タケウチカズタケ。
ソロ活動、サムライトループスでの活動で、HIP HOPシーンで知らない人はいないだろうラッパータカツキ。この人はウッドベースを弾きながらラップする事でも有名だ。
独特な声質とピュアなメッセージをうたうラッパー、ATOM。
女性のポエトリー・リーディングといえばこの人、toto。女性の優しさ、円さと強さが強烈な魅力となっている。
そしてカホン等のパーカッションを操る、高橋結子。
さらに4thアルバム以降はベーシスト石村順を迎えた6人で制作している。

その独特な編成、そしてメンバーそれぞれの異色な背景を見れば、SUIKAがいかに異質かわかっていただけるのではないだろうか？
ターンテーブルではなく、キーボード、パーカッション、ベース、サンプリングをミックスしたオリジナルサウンドは唯一無二。
生音なしでは作れない、温かい世界観を構築している。

そして二人のラッパーと、ポエトリー・リーディングが生み出すリリックの素晴らしさ！
タカツキと言えば、03年のド名盤『東京・京都・NY』（残念ながら現在廃盤）を筆頭に、日本のラップシーンにおいて、当初から独特な存在感を放つラッパーだし、ポエトリー・リーディングのtotoは文字通り、ポエトリー=言葉のみで戦ってきた人だ。

SUIKAを説明する上で、もう一つ重要なキーワード「新宿スポークン・ワーズ・スラム」を少し紹介しておこう。
現在は休止中だが、新宿ライブハウスにて夜な夜な行われていた「ことばのトーナメント」。
ことばと声を使った表現ならどんなスタイルでもOKで、パフォーマンスは5分以内。
毎回8名～12名による１vs１のトーナメント方式で行われた。

フリースタイルMCバトルと似てはいるが、HIP HOPというフォーマットには捉われない「ことばのトーナメント」だった。

これの初代MCがATOM、初代SSWSグランドチャンピオンがタカツキだ。
このことからも、SUIKAというアーティストのリリックがいかにヤバいか想像していただきたい。

随分と前置きが長くなってしまったが、そんなSUIKAの5枚目のアルバム『スイカ夜話』がリリースされる。

「スイカ夜話」というと、毎回2〜3組のゲストアーティストを招いてスペシャルセッションを行い、不定期ながら好評を博しているSUIKA主催と同名。
二階堂和美、降神、小林大吾、環ROY、GAGLE、鎮座DOPENESS、イルリメ、サイプレス上野とロベルト吉野、STERUSS、Romancrew、HARCO、リクオ、saigenji、金佑龍（from cutman-booche）等、ジャンル問わず様々なアーティストを迎えて行われている。

そのアットホームでリピーターも多い、スイカ夜話をCDに閉じ込めたのが、このアルバムと言えるだろう。

ゲストには、SUIKA同様HIP HOPシーンの中で異彩を放ちまくる降神、これまたSUIKA同様HIP HOPに留まらない活動が魅力的なイルリメ、HIP HOP愛に溢れまくったサイプレス上野らが参加。

中でも2MCが揃っての録音が数年ぶりという降神との約15分（！）にも及ぶ大作「タマキハル with 降神」は、やばいでしょう。
押し寄せる言葉の波の一粒一粒を落とさぬように拾い集めると脳内に広がる、一大ファンタジックHIP HOP絵巻。
ヘッドフォンで聴くことをオススメします。

前作に続き、アートワークは「オーディオヴィジュアル」がヒット中の詩人・小林大吾が手がけ、SUIKAの持ち味を最大限に引き出した特製紙パッケージ＆ブックレット仕様となっている。

パッケージを含めた全てから放たれるSUIKAのアートを感じて欲しい。