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2010年11月10日 (水)
小瀬村晶 Akira Kosemura [producer / composer / schole records A&R] 東京在住の作曲家、音楽プロデューサー、ピアニスト。 国内外の音楽レーベルから作品を発表する傍ら、広告 / ファッション / フィルム / 舞台など、特定の分野に限定されることなく多方面で活動を展開するアーティスト。 schole recordsを主宰していることでも知られ、これまでに数多くの若手アーティストを発掘、主に海外のアーティストを中心にプロデュースも手掛けている。 最新作は、schole recordsからの「grassland」(2010年発表) |
今月は、映画「13日の金曜日」を最初から順を追って少しずつ観直していた。
僕にとってこの映画は、幼少期に見せられた結果、以来“世界で最も恐ろしいもの”として記憶に植えつけられているものだったので、大人になった今、果たしてそれがどの程度のリアリティのある恐怖だったのかを知りたかった。そして、あの恐ろしいホッケーマスクの男=最恐の化け物を克服してしまいたかった。 観直しながら、あのホッケーマスクの男が現れるのを、いまかいまかと待っていたのだけど、なかなか彼は出てこない。それどころか、記念すべき一作目の犯人はなんとジェイソンの母親ではないか。 結局、一番恐ろしいのは人間なのかもしれない、などと軽い衝撃を受けつつ、ラストシーンでの映画史に残る衝撃的なカットを目の当たりにして、この映画がいまでも語り継がれるホラー映画の名作の一つであることに納得した。 いまではよく使われる手法である、犯人視点のカメラを使って、いまかいまかと観客の恐怖心を煽る手法もとても効果的に使われていて、終始ハラハラした。 DVDには、制作者達による、20年後の作品解説もあって、それもとても興味深かった。映画作りって本当に面白そうだなぁと思う。 だが、いまだあのホッケーマスクの男は現れていない… 二作目を借りてくる。すると、今作ではちゃんとジェイソンが登場した。だけれども、ジェイソンはまだ、古い布切れを頭に被っているだけで、さほど恐くはない。よくあるホラー映画の、狂った殺人鬼のような感じで、実際、主人公とも普通に格闘している。全然最恐じゃない。 主人公がジェイソンを撃退することに成功して終わる。結局、ホッケーマスクは登場しない。 三作目。前作通り、ジェイソンが登場。マイケル・ジャクソンに憧れたようなファッションのチンピラが出てきたりもした。すると、登場人物の一人の持ち物のなかに、ようやくあのマスクがあるではないか。三作目にしてようやく登場したそのマスクにちょっと興奮しつつ、いつものごとく、恐怖の夜が続いていく。 映画の後半でようやくマスクを手にしたジェイソンは、それを被るようになるのだけれど、ここまでくるのには、僕が想像していたよりもはるかに時間が掛かった。 「13日の金曜日」のトレードマークでもある、ホッケーマスクの化け物が、まさか三作目の終盤でようやく誕生するとは思いも寄らなかった。 映画自体は、途中から一作目のオマージュのような内容になっていて、終盤のカメラワークでは、ほとんどすべて一作目を模倣していた。一作目、二作目同様に、全然最恐ではないジェイソンと主人公との格闘の末、ジェイソンを撃退することに成功、幕を閉じる。 以降の作品では、完結編と題された四作目でジェイソンの宿敵になる主人公トミーが登場、彼がジェイソンを惨殺してシリーズは幕を閉じる。 と思いきや、新13日の金曜日として五作目が登場。しかし、今作では模倣犯の犯行だったという幕切れ。 六作目では、四作目で確かに死んだはずのジェイソンの墓地に雷が落ちて、なんと復活を遂げる。 この辺りから、もはや人間でなくなったジェイソンはほぼ、最恐の化け物と化していて、異常な怪力を使うようになる。当初の「13日の金曜日」とは、はっきりいってすでに別物の映画になっている。 七作目では、もうネタ切れなのか、超能力者 vs 怪力の化け物ジェイソンの図式で物語が進行する。 連作して作られたオリジナル版としては最後になる、八作目では、ジェイソンは海を渡ってニューヨークまで来てしまう。この頃には、走って逃げる登場人物を歩いて追いかけるジェイソン、にも関わらず、なぜかジェイソンのほうが足が速いという。もはや最恐である。 その後、時を置いて、九作目、十作目と映画は作られているけれど、もはや当初の面影は微塵もないのではないかと思われる。九作目では、特殊部隊との葛藤、十作目では、ジェイソンは宇宙へ行くらしい。 一連の流れを追って「13日の金曜日」を鑑賞してみた結果、途中からは、時折チャーミングな動きをするジェイソンもいたりと、はっきりいってそんなに恐い映画ではなかった。80年代後半の作品には、恐いというよりも、その時代特有の雰囲気に懐かしみすら感じ、ハロウィンと同様、古典的なイベントの一環のような形で作られ続けたこの映画を、僕はすっかりポップコーンを齧りながら、当時のハリウッドの映画館で上映されていたことを想像し、友人とわくわくしながら映画を楽しんだのです。 昔は13日の金曜日になると、決まってテレビでこの映画を放映していたんだけど、もうそういう雰囲気ではないのかなぁと、ちょっと寂しくも思ったり。 http://www.akirakosemura.com/ http://www.scholecultures.net/ |
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次回へ続く…(12/10更新予定)。
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