「ベルリン・フィル・ラウンジ」第33号:ゲルギエフ、10年ぶりにベルリン・フィルへ帰還!
2010年12月21日 (火)
ベルリン・フィル関係ニュース
今年のジルベスター・コンサートは、ドゥダメルとガランチャの強力2大スターで 恒例のジルベスター・コンサート、今年はグスターボ・ドゥダメルが初めてこの大役を担い、フランス、スペインものの華やかなプログラムを指揮します。ソリストには、現在オペラ界で最大の人気を誇るエリナ・ガランチャが登場。《カルメン》や《サムソンとダリラ》等のオペラから、有名アリアを披露する予定です。 当日は、ARDドイツ第1放送により生中継が行なわれますが、日本での放送は1月22日(土)午後10時よりNHK・BShiで放映される模様です(NHKウェブサイトによる発表)。 【演奏曲目】 ベルリオーズ:序曲《ローマの謝肉祭》、《ファウストの劫罰》より抜粋 ビゼー:歌劇《カルメン》より抜粋 サン=サーンス:歌劇《サムソンとダリラ》より抜粋 ファリャ:バレエ音楽《三角帽子」より抜粋 メゾソプラノ:エリナ・ガランチャ 指揮:グスターボ・ドゥダメル 朗報!デジタル・コンサートホールが日本語が完全日本語化。検索機能も充実 この11月より、デジタル・コンサートホールのサイトが、日本語でご利用いただけるようになりました。これまでは英語とドイツ語のみでしたが、今後は演奏会のプログラムのみならず、操作メニューや支払い方法まで、日本語でより簡便にご覧いただけます。 日本は現在、ドイツ本国に続きデジタル・コンサートホールの利用者が最も多い国です。ベルリン・フィルでは、50年以上にわたる日本との関係に感謝する意味も込め、ウェブサイトの日本語化に踏み切りました。皆様にベルリン・フィルの演奏をより身近に感じていただけることを祈っております。 またこの機会に、サイト全体が一新されました。ご利用の方はお気づきと存じますが、すでに8月のシーズン開幕と共にラウンチしています。当サービスが開始してから2シーズンが経過し、すでに70本以上の演奏会がオンディマンドで再生可能。今回は特に検索機能を充実させ、アーティストや演奏曲目を迅速に探し出せるようになっています。「1回券(9,90ユーロ=1,100円)」から、お試しにぴったりな「30日券(29ユーロ=約3,200円)」、1年存分に楽しめる「12ヵ月券(149ユーロ=約16,650円)」までを揃えて、皆様のお越しをお待ちしております。今後もwww.digital-concert-hall.comをぜひご利用ください。 フィルハーモニーで、「マーラー展」開催 マーラーとベルリンのつながりは、ウィーンやハンブルク等とは比較になりませんが、それでもベルリン・フィルは演奏史上、重要な役割を果たしています。マーラー自身、1895年に交響曲第2番《復活》の初演をベルリン・フィルで行ない、交響曲第3番のベルリン初演も、作曲家指揮の当団によるものです。現代では、クラウディオ・アバド以来、楽団の中心的レパートリーとなり、サー・サイモン・ラトルのもとでさらに解釈の発展を見せています。 ベルリン・フィルでは、こうした背景から「彼の時代は来た―グスタフ・マーラー展」を開催することになりました。フィルハーモニーのフォアイエで行なわれる展示では、マーラーの生涯と作品、ベルリン・フィルにおける上演史がたどられています。生涯と作品のコーナーは、パリの「マーラー音楽メディア資料館」による作成。開催期間は2010年12月5日より2011年1月31日までとなっています(月曜から金曜:15時から18時、土日祝日:11時から14時。コンサート開催時は開演から1時間半前に開場)。 次回のDCH演奏会
ゲルギエフ、10年ぶりにベルリン・フィルへ帰還! (日本時間12月23日午前4時) 今シーズン、ベルリン・フィルではロシア音楽をテーマのひとつとしていますが、現代ロシア指揮界を代表する存在として真っ先に挙がるのが、ヴァレリー・ゲルギエフでしょう。今回は、2000年以来、10年ぶりのベルリン・フィルとの共演となります。この冬、最も聴き逃せない演奏会のひとつと言っても過言ではありません(ちなみに前回は、クリスティアン・ツィンマーマンとの共演でラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、ショスタコーヴィチ「交響曲第9番」ほかのプログラム)。今回は、ムソルグスキーの傑作《展覧会の絵》での出演。作曲家が友人の画家・建築家ハルトマンの作品に霊感を得て書いたこの作品は、本来ピアノ作品ですが、様々な指揮者や作曲家が管弦楽化を試みています。今回ゲルギエフは、最も広く親しまれているラヴェル編曲版で演奏。また彼は、シチェドリンの珍しい管弦楽作品「交響的ディプティク」も取り上げます。これはベルリンはおろか、ドイツで一度も上演されたことのない作品であり、興味深いものとなることが予想されます。 またラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」では、デニス・マツーエフがベルリン・フィルにデビューします。マツーエフは、1998年にチャイコフスキー・コンクールに優勝してから、国際的に知られるようになったイルクーツク出身のピアニストです。あらゆるピアノ作品のなかでも最も難易度が高いとされる本作で、どのような演奏を聴かせるのか、大いに期待がつのります。 なお放送2日前より、こちらからリハーサルの模様が無料でご覧いただけます。 【演奏曲目】 シチェドリン:交響的ディプティク(ドイツ初演) ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ムソルグスキー:《展覧会の絵》 ピアノ:デニス・マツーエフ 指揮:ヴァレリー・ゲルギエフ 放送日時:12月23日(木)午前4時(日本時間・生中継) この演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く! アーティスト・インタビュー
ヘルベルト・ブロムシュテット 作品解説:ブルックナー「交響曲第6番」(前半) 「ブルックナーの偉大さとは内面の偉大さであり、高貴さなのです」 (定期演奏会2010年6月月2〜4日) 【演奏曲目】 ベートーヴェン:ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための3重協奏曲 ブルックナー:交響曲第6番 ヴァイオリン:ダニエル・スタブラヴァ チェロ:ルートヴィヒ・クヴァント ピアノ:マルティン・ヘルムヒェン 指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット 今回のインタビュー(2号連続)は、少し趣向を変えて、ヘルベルト・ブロムシュテットによるブルックナー「交響曲第6番」の作品解説をお届けします。これは彼が今年6月に客演した際、デジタル・コンサートホールの休憩時に放送されたもので、ブロムシュテットは作品の内容、意味、楽曲構成について語っています。ブルックナー指揮者として広く知られる彼ならではの、含蓄に満ちた言葉が関心を誘います。とりわけ2連譜と3連譜を掛け合わせた主題を説明する部分、またブルックナーの偉大さを語る言葉は強い説得力を感じさせます。 ヘルベルト・ブロムシュテットによる解説 「これから皆さんは、ブルックナーの交響曲第6番を聴かれます。これはお客様には、大きな山に登るようなものかもしれません。でも心配しないでください。そこからは素晴らしい景色が見えるのですから。ブルックナーについては、多くの誤解が流布しています。多くの人が「作品が長すぎる」と言っているのです。優れた音楽家のなかにも、同じ意見の人は少なくありません。ブラームスがそのひとりです。彼はブルックナーの交響曲を「死ぬのを拒み、のたうちまわる大蛇」と呼んでいます(彼はとても変わったユーモアの持ち主でした)。しかし実際には、ブルックナーの音符には、ひとつたりとも余分なものはありません。彼の交響曲は、平均すると70分くらいの長さです。ベートーヴェンの交響曲第9番より長いということはありません。しかし分数で考えるのは止めましょう。巨大な作品であることは確かですが、それは物理的な長さの問題ではなく、内容的な偉大さの問題だからです。そこで提示されている内容が大きいので、規模も長くならざるを得ない。ブルックナーの交響曲は村の教会ではなく、大聖堂だと言ったら分かりやすいでしょうか。 交響曲第6番は、始まりからして少し変わっています。普通、ブルックナーの交響曲はトレモロで始まり、その直後に素晴らしい主題が登場します。しかしここでは、弦のリズム、刻みで始まる。タッタ・タタタ、タッタ・タタタと、ほとんどモールス信号のようなリズムです。これはブルックナーらしいリズムで、2つの部分からなっています。つまり付点の付いた2連譜のリズムと、3連譜のリズムです。彼はこの組み合わせをあらゆる作品で行なっていますが、ここではそれがもっとも小さな単位で表れています。その後に第1主題が登場しますが、これはチェロとバスに与えられています。ブルックナーは低音域で主題を提示するのが大好きでした。この主題ですが、最初の部分は2連譜のリズムです。しかし後半の部分は3連譜で構成されています。これが弦の刻みのリズムと重なるわけで、両方が2−3の対置で作られているのです。 一方第2主題は、3連譜のモードで作られています(1つの楽章には、大体3つの大きな主題が存在します)。ここに別の旋律が2連譜のモードで重ねられます。これは割り切れないリズムなので、弾く側にしてみると縦の線を揃えるのが難儀です。作品のなかに、リズム的なコンフリクトが組み込まれているのですね。この作品があまり演奏されないのは、ひょっとするとこうした難しさに理由があるのかもしれません。第2主題は、第1主題が音程の跳躍を特徴としていたのに対し、段階的に音階を滑らせるものとなっています。つまり歌謡的です。第3主題はまったく性格が異なったもので、付点を特徴としています。この3者が展開部で複雑に組み合わされるのですが、ここでも2―3の対立が大きな意味を持ち、さらに込み入って展開されます。 第2楽章はゆっくりとした楽章です。ブルックナーは普通第2楽章に緩徐楽章を持ってきています。例外もあり、例えば第8交響曲では第3楽章がアダージョになっていますが、ここでは古典交響曲と同じように第2楽章です。まさに大聖堂と呼ぶべき世界で、高貴な雰囲気に溢れています。楽章の最初には、「非常に荘厳に」と書かれています。ゆっくりとはしていますが、退屈ではありません。常にリズムの変化があるからです。旋律は至福の極みで、気高い性格を持っています。このような雰囲気な作り出せるのは、ブルックナー以外にはないと思えるほどです。祭壇の前に立っているという感じですが、宗教的な音楽題材、つまりコラールやグレゴリア聖歌は用いていません。純粋に神聖な雰囲気をかもし出しているのです。第3主題は、非常に短い葬送行進曲です。悲劇的に大きな表情を持った音楽ではなく、哀悼の思いに満たされた調子です。この部分を、ブルックナーは自分の葬式で演奏することを望みました。実際に1896年に亡くなった時、ウィーン・フィルがウィーンのカールス教会で演奏しました。ウィーン・フィルは当初、ブルックナーの音楽を理解せず、演奏することを拒みました。しかし最後には理解して、演奏したのです。楽章の終わりは、2分間にわたるピアニシッシモです。非常に深く、言葉にできないほどの偉大さに溢れています。偉大な作品を「静かに」書くというのは、どういうことでしょう。その素晴らしい例がまさにこれです。「偉大さ」とは速いことでも、大音量であることでも、長大なことでもありません。偉大さは内面の偉大さであり、考えの偉大さ、高貴さなのです。ブルックナーは、その意味でまさにマイスターと言える存在でした(後半に続く)。」 ブロムシュテットのブルックナー「交響曲第6番」をデジタル・コンサートホールで観る ベルリン・フィル演奏会批評(現地新聞抜粋)
マーラー・ツィクルス《巨人》はまたしても好評。「彼らが最高の演奏をする個所は、高貴な表層の下に真のエモーションを発見する個所なのである」 (2010年11月4・5日) 【演奏曲目】 ラフマニノフ:交響的舞曲 マーラー:交響曲第1番《巨人》 指揮:サー・サイモン・ラトル ベルリン・フィルは11月にオーストラリア・ツアーを行ないましたが、その直前に演奏されたマーラーとラフマニノフのプログラムも、好評を博しています。このところラトルとベルリン・フィルは絶好調で、彼らの独自のサウンドが完成してきた印象。それがよく表れているのが、マーラー《巨人》と言えるのではないでしょうか。ベルリンの批評家の言葉も、透明感のあるシルキーな響きが躍如している様子を裏付けています。この調子で、今後のマーラー・ツィクルスの出来にも期待したいところです。 「ラトルは物語性に満ちた《巨人》を、詩的な調子で丁寧に語りだす。自然の囁き、鳥のさえずり、そしてそれらが徐々に静寂に消えてゆく姿は、心に染み入る調子で味わい深く演奏された。彼はまぎれもなく天才的なマーラー指揮者である。マーラー・ツィクルスの続編に大いに期待したい(2010年11月7日付け『ベルリナー・モルゲンポスト』クラウス・ガイテル)」 「ラトルとベルリン・フィルは、オーストラリア・ツアーの前にマーラーとラフマニノフのプログラムを演奏した。この水準がツアー中にも実現されれば、かの地での大変な評判を呼ぶだろう。1940年に作曲されたラフマニノフの《交響的舞曲》は、後期ロマン派的な甘美な作品だが、そのサウンドはアメリカ人なら“リッチ”と呼ぶに違いない。アメリカのトップ・オーケストラにとっては、その演奏能力を誇示するために最適の作品だが、これに対し(今回この作品を初めて演奏する)ベルリン・フィルは、“完璧”である以上に価値のあることを示した。つまり彼らは、“個性的”なのである。彼らが最高の演奏をする個所は、ラトルがリズムを意識的に強調し、突然アクセントを加え、高貴な表層の下に真のエモーションを発見する個所なのである。一方、マーラーの交響曲第1番からは、生の喜びが横溢する。第1楽章はまるで春の情景のようで、花々が咲き誇る草原をカメラでズームするような感覚におそわれる。蝶々の踊り、蜜蜂の囁き、小鳥のさえずりがすべて見えてくるが、そうした細部の生き生きとした様子が、全体の流れのなかに完璧に収まっている。続く農民の踊りにはエネルギーが充満し、団員たちが踊りだしそうだ。葬送行進曲にさえも苦味はなく、ため息の動機にも光が宿る。これはオーストラリア旅行への希望に満ちた足取りを象徴しているようであった(2010年11月5日付け『ターゲスシュピーゲル』フレデリク・ハンセン)」 この映像をデジタル・コンサートホールで聴く! ドイツ発最新音楽ニュース
本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。 ルネ・フレミングがシカゴ・リリック・オペラのクリエイティヴ・コンサルタントに ソプラノのルネ・フレミングが、シカゴ・リリック・オペラの芸術的コンサルタントに就任することになった。『シカゴ・トリビューン』紙によると、契約は5年で、フレミングはプログラムのプランニングや青少年教育活動に関与してゆくという。オペラ歌手が劇場の経営に関係することは必ずしも例外的ではなく、これまでにもプラシド・ドミンゴやビヴァリー・シルズなどがマネージメントに関与している(写真:© Andrew Eccles/Decca) スイスのテノール、ユーグ・キュエノーが108歳で死去 様々な長老役で知られるユーグ・キュエノーが、108歳で亡くなった。キュエノーは、1902年の生まれ。1943年に実質的なオペラ歌手としてのキャリアは停止したが、その後もグラインドボーン、ミラノ・スカラ座、ロイヤル・オペラなどに小さな役で登場し、人気を博した。1987年には、85歳でメットにもデビューしている。 シャイーのデッカとの契約が延長 リッカルド・シャイーが、すでに28年にわたるデッカとの契約を延長した。今後は、ヒンデミットの「コンツェルトムジーク」、ヴェルディの「レクイエム」、ブラームスの交響曲の他、ベートーヴェンの交響曲全集をライプツィヒ・ゲヴァントハウス管と録音するという。両者はこのベートーヴェン・ツィクルスで、パリ、ロンドン、ウィーン等に客演する予定。 ©2010 Berlin Phil Media GmbH, all rights reserved. |