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【連載】Lamp 『遥かなる夏の残響』(第2回) Lamp 『遥かなる夏の残響』へ戻る

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2011年6月27日 (月)













  大好評だったLampの連載コラム『東京ユウトピア通信』が、
  月1回の新連載としてタイトルも新たに再スタート。
  『遥かなる夏の残響』第2回です。    





60年代後半にリリースされた作品には、多かれ少なかれサイケデリックな雰囲気が注入されている。ラブ&ピースでサマー・オブ・ラブな雰囲気。
当時は、今の様に色んなカルチャーが混ざり合っていた時代ではなかったわけで、皆がヒッピー若しくはヒッピー風だったわけです。日本にもそういう文化が入ってきました。
若い人は、これがどんなんだかわからないでしょうね。
まあそういう僕もまだ生まれてなかったんですけど。
今回も、前回に引き続き、60年代後半の名作をいくつか挙げて、それについて思うことをとりとめもなく書いてみたいと思う。


まずは、スコットランド出身のドノヴァン。彼の1966年のアルバム、『Sunshine Superman』。
ドノヴァンは、ビートルズとも交流があったし、当時けっこう売れていたようで、名前くらいは知っているという人も多いと思う。時代に上手くフィットし、ヒッピー・ムーヴィメントの恩恵を受けた一人だった。
彼は、インドの導師マハリシ・ヨギの教えを受けるため、68年かな、インドに赴いたのだが、そのインド滞在をホワイトアルバム制作前のビートルズと共に過ごしたんですね。その時、ビートルズのメンバーにスリー・フィンガー・ピッキングを教えたそうで、そこから、「Julia」や「Blackbird」、「Dear Prudence」「Happiness Is A Warm Gun」が生まれた。のだと思う。そう考えると、ドノヴァンはすごい。そして、こんな名曲を作ったジョンとポールはもっとすごいな。
僕の場合、映画で使われていた「Season Of The Witch」という曲がかっこよくて気になり、『Donovan's Greatest Hits』というベスト盤を購入したのがきっかけとなった。高校の頃だったと思う。その後、少しずつアルバムを聴いていった。
アルバム単位で考えると、サイケな曲が飛びぬけて良い『Hurdy Gurdy Man』や、エレキトリック・サイドとアコースティック・サイドの2枚組大作『A Gift From A Flower To A Garden』なども大好きだが、トータルで考えると『Sunshine Superman』が一番、ということになる。このアルバムは、収録曲のバランスも良く、ドノヴァンの入門盤としてもうってつけのアルバムではないだろうか。
収録曲の中で、特に好きなのが、「Ferris Wheel」。イントロからもうなんとも言えない気持ちになる。展開もなく単調で、そういう意味ではなんてことない曲なのだが、僕はなぜだかこれが一番好き。
室内楽のような管弦楽器のアレンジ響きがたまらない「Legend Of A Girl Child Linda」やバート・ヤンシュに捧げた?少しジャジーな「Bert's Blues」もかっこいい。
アルバムを通してインド楽器が積極的に使われているのも、雰囲気を出すのに一役買っている。


次、行きます。
ピンク・フロイドの1stアルバム『The Piper At The Gates Of Dawn』。
これは文句なし。全ての60年代ロックファンを虜にする作品。
当時、在籍していたシド・バレットの音楽性が色濃く出たアルバム。この人の歌声がとにかくかっこいい。
僕は、このアルバムを聴いたのはけっこう最近なんですね。プログレ時代のイメージから、ピンク・フロイドっていうだけでどうも手を出せずにいた。
そんな僕が言うのも何だけど、超重要作品です。
僕は多分、ピンク・フロイドというよりシド・バレットの音楽が好きなんだと思う。
この音楽を上手く説明できないけど、サイケデリック・ロックといえば、これ。
音がぐわんぐわん言ってます。曲を飛ばすことなんてまずない。
関係ないけど、シド・バレットのソロ・アルバムはプログレ・コーナーに置いてほしくないなぁ。お店のジャンル分けのコーナーの話しです。おかげでシド・バレットの音楽に出会うのが遅くなった。参加メンバーを考慮してのことだと思うけど、音楽の内容からすれば、SSWファンの方が飛びつくでしょ。


次は一転して、明るく爽やかなマーク・エリック、1969年リリースの『A Midsummer's Day Dream』。
聴けばわかりますが、サイケ感ゼロです。
しかし、アルバムタイトルは「真夏の白昼夢」とサイケな雰囲気。時代性を意識してなのかわからないけど、良いタイトルですね。昨夏の『八月の詩情』を出そうと思ったとき、この『A Midsummer's Day Dream』という言葉と勝手に通じ合っていました。
内容は、『Pet Sounds』を作る前の明るいビーチ・ボーイズの音楽の質を高め、さらにポップに仕上げた感じ、かな。
魅力はとにかくそのポップ度。非常に気に入っています。
コーラスやホーン、ストリングスが多いのもすごく良いんだ。
冒頭の「California Home」からラストの「Lynn's Baby」まで、お楽しみいただけます。


次はビートルズの『Abbey Road』について。
もうこの頃のビートルズには、サイケな雰囲気はほとんどなくなっている。
メンバーのファッションもそれまでとはがらりと変わって、今から考えれば、70年代に向かい始めていた。もっと意識が別のところに向かっていたんでしょうね。
このアルバムの制作時期にはメンバー同士が不仲になっていたはずなのに、この音楽から感じられる一体感と充実感、そして、この完成度は一体何なのでしょうか。
このアルバムを作って本当に良かったと思う。
まず、僕が良かった。
さて、1969年9月リリースのこのアルバム、明らかに他のバンドの同時期の作品とは違う70年代っぽい音を出している。それに、それまでのビートルズの音とも違っていて、アルバム自体の完成度がもう感動的なほど凄すぎるんだけど、コーラス・ワークという面から見ても、充実した作品だと思う。
「You Never Give Me Your Money」のコーラスアレンジ、多分その場でぱっと歌ってハモっているんだと思うけど、それがすごくきれい。
「Because」や「Sun King」でのコーラス多重録音、これにはうっとりします。これが可能になったのは、きっと「1969年だから」なんでしょうね。どちらも本当に大好きな曲。こういう時間や空間の彼方に連れて行ってくれる音楽は、人生で一番大切。
そして、コーラスという面で一番好きなのが、「Polythene Pam」から「She Came In Through The Bathroom Window」のコーラス。ふわふわと抑揚がすごい。こんな風に出来たら良いねなどと、僕らもレコーディング最中に聴き返したりしていた。「Octopus's Garden」の掛け合いコーラスにも同じようなものを感じます。
もうね、これ出してビートルズが解散して、この後、世の中はどうなるんだろうって、寂しくなるわけですよ。
ラストの「The End」で「おれたち10年間、色々あったね」って、こっちも涙が出そうになるんです。


次は、シンガー・ソング・ライター、ニック・ギャリーの1969年の『The Nightmare Of J.B. Stanislas』。
この人もはじめに紹介したドノヴァンと同じスコットランド出身のミュージシャンで、音楽からも都市グラスゴーの匂いがします。と言いつつ、グラスゴーがどんなところかよく分からないんですけど。でも、そんな感じではある。
内容は、フォーキーなサイケ・ポップ〜ソフト・ロックといった感じ。録音はフランスで行われたそう。
とにかくメロディが良くて、ものすごくポップ。それでいてサイケな雰囲気があるからもう言うことなし。そして、何より声と曲が良い。当時、マイナーなアーティストで売れなかったそうだけど、ちゃんと宣伝して売ったら、売れるよ。これは。
個人的には、冒頭のタイトル曲の他、「Can I Stay With You?」「Ink Pot Eyes」「David's Prayer」辺りのメロディアスで切ない曲が特に好き。
一人で過ごす夕刻あたりに聴くと、何ともいえない気分になります。


最後はペルーのウィー・オール・トゥゲザーというバンド。1972年の1st、その名も『We All Together』。
これだけ欧米のバンドじゃないし、60年代後半の作品じゃないし、どういうこと、って思いますよね。
いや、この内容があまりにも素晴らしいサイケ・ポップで、60年代後半としか思えないサウンドだから、上記作品と一緒に紹介してしまうわけです。
このバンドを初めて聴いた時は、本当に衝撃を受けた。
こんな良いアルバムがあったんだ。しかも南米のバンドだ。という感じで。
全ビートルズ・ファン必聴の作品。
音を聴けば、すぐに、メンバーが大のビートルズ・ファンだとわかる。実際、ポール・マッカートニーやバッド・フィンガーのカヴァーも収録されているし。
ビートルズ本位で、ラトルズとかエミット・ローズとかユートピアとかスタックリッジとか聴くなら、ウィー・オール・トゥゲザーを聴いて欲しい。
逆に、「なんだカヴァーなんか収録しているのか」と残念に思う向きもあるかもしれないけど、内容が良過ぎて、聴いている内に、ビートルズ・フォロワーとかカヴァーとか、そういう部分がどうでも良くなって来ます。僕がそうでした。
単純に、内容が良いので、サイケ・ポップ・ファンにもお薦めします。
彼等の2nd「We All Together 2」(1974年)は、この1stをさらに進化させた形で、全てオリジナル曲で占められている。こちらもお薦め。


(文/Lamp 染谷大陽)


Lamp プロフィール

Lamp

染谷大陽、永井祐介、榊原香保里によって結成。永井と榊原の奏でる美しい切ないハーモニーと耳に残る心地よいメロディーが徐々に浸透し話題を呼ぶことに。定評あるメロディーセンスは、ボサノバなどが持つ柔らかいコード感や、ソウルやシティポップスの持つ洗練されたサウンドをベースにし、二人の甘い声と、独特な緊張感が絡み合い、思わず胸を締めつけられるような雰囲気を作り出している。 日本特有の湿度や匂いを感じさせるどこかせつない歌詞と、さまざまな良質な音楽的エッセンスを飲み込みつくられた楽曲は高い評価を得ている。これまでに6枚のアルバム(韓国盤を含む)をリリース。

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CM情報

佐々木希さん出演のサントリー“カクテルカロリ。”CMソング「ロマンティックあげるよ」(アニメ「ドラゴンボール」エンディング曲)をLamp の榊原香保里さんが歌っています。



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商品ページへ   Lamp  『東京ユウトピア通信』
    [ 2011年02月09日 発売 / 通常価格 ¥2,500(tax in) ]     

どこを切っても現在進行形のバンドが持つフレッシュネスに溢れている。
真っ先に"成熟"を聴きとってしまいがちな音楽性にもかかわらず、だ。
そんな人達あんまりいない--そしてそこが素敵です。

- 冨田ラボ(冨田恵一) -
前作『ランプ幻想』では文字通り儚く幻想的な美しさと、巷にあふれるサウンドとは一線を画す質感を持った世界を作り上げ、あらたなポップスのフィールドを更新する傑作を作り上げた。2010年夏に発売された限定盤EP『八月の詩情』では、夏をテーマに季節が持つ一瞬の儚さを切り取った詩とその情景を見事に表現したサウンドが一体となり、より濃密なLampの世界を持つバンドの新たな可能性を提示した。そして待望のニュー・アルバムとなる今作『東京ユウトピア通信』は、EP『八月の詩情』と同時に並行して制作され、丁寧に1年半という時間を掛けて作り上げられた作品。そのサウンドは新生Lampとも言うべき、より強固なリズムアレンジが施され、これまでのLampサウンドを更に昇華させた独自の音楽を作り出している。冬という季節の冷たさと暖かさや誰もが一度は通り過ぎたことがある懐かしい感覚、どこかの街のある場所での男女の心象風景などこれまで同様に物事の瞬間を切り取った美しい歌詞を、新しいサウンドの乗せて編み上げた8曲の最高傑作。現在の音楽シーンにの中でも極めて独自な輝きを見せる彼らの奏でる音は、過去や現在を見渡してもLampというバンドしか描けない孤高のオリジナリティーを獲得し、新たな次元に到達している。



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※次回に続く(7/20更新予定)




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