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2011年8月2日 (火)
HMV ONLINEオリジナルの不定期連載『歌謡曲番外地 HMV ONLINE編』、今回はシリーズの企画・監修を務める高護(こう まもる)氏に代わり、アーカイヴァー/ライターの鈴木 啓之(すずき ひろゆき)氏が執筆!【第3回】 サンディー・アイ
ハワイアンミュージックを中心としたアーティスト活動をはじめ、フラ・カルチャーの伝道師としても知られているサンディー。これまでの音楽活動は幅広く、78年には、アガサ・クリスティー原作の映画『ナイル殺人事件』のイメージソング「ミステリー・ナイル」を“サンディー・オニール”名義で歌い、翌79年、今度は“サンドラ・ホーン”名義で、TVアニメ『ルパン三世』のエンディング・テーマ「ラヴ・スコール」をヒットさせた実績もある。この辺り、ある世代にとっては強く耳に残っていることだろう。
そのきっかけとなったのは、76年に「グッドバイ・モーニング」で世界歌謡祭に出場し、グランプリと最優秀歌唱賞を受賞したこと。その後、80年には細野晴臣のプロデュースによるアルバム『イーティン・プレジャー』を日本とイギリスでリリースして話題になった。YMOのチャンプルー・サウンドが表現された傑作であり、細野氏が提唱したコンセプトは“歌う兼高かおる”であったというから面白い。
兼高かおる、ご存知だろうか? かつて日曜の昼間に『兼高かおる世界の旅』という紀行番組があり、ナレーターの芥川隆行を相手に取材フィルムを見ながらおしゃべりする趣向で人気を得ていた。これはかなりレベル高めの喩えであると同時に、音楽界の天才のひとりである氏が、国際的な活躍を見せることになる彼女の素質を早くから認めていたことの証明といえる。
さらには、久保田麻琴と共に結成した“サンディー&ザ・サンセッツ”としての活躍も記憶に鮮明である。氏と出会うきっかけが坂本九だったという話は意外だ。以前から親交のあった九ちゃんに紹介され、彼女がNHKのラジオ番組『若いこだま』(75〜76年)のパーソナリティーを務めていた時のゲストの一人として久保田に出会ったのが最初だったそう。81年からの活動では、ヨーロッパやオーストラリアでのツアー敢行、シングル「スティッキー・ミュージック」が豪各地でチャート1位を獲得するなど、海外での活躍も目覚しく、正に細野氏が描いたコンセプト通り。国内でも、85年にポーラ化粧品のキャンペーンソングに起用された「だって夏よっ」をヒットさせている。
そんな彼女が、実は76年以前、既にアルバムを出していたことをご存知だろうか。それが、75年に東宝レコードからサンディー・アイ名義で出された『Sandi Ai』である。そもそもグラビアアイドルの先駆け的な存在として人気があった彼女だけに、LPに針を落としたファンは、その音楽性の高さに驚かされたことと思う。その幻のデビュー・アルバムが、この度、実に36年ぶりに復刻されることとなったのだ。
最初に出されたのはシングル「くちづけは許して/恋の仲直り」で、続いてアルバムが、さらにアルバムからのシングル・カットとして「愛のメロディー/日曜日の午後」も出された。シングル4曲を含むアルバムの全12曲中、9曲の作曲や編曲を手がけたのは葵まさひこ。コーラスグルーブ、ハニー・ナイツのリーダーを経て、作・編曲家として活躍したことで知られる。作曲の代表作に、平浩二の「バス・ストップ」や、テレビ主題歌「ウルトラマンA」など。アレンジでは、加藤和彦&北山修の「あの素晴らしい愛をもう一度」や、つのだ☆ひろの「メリー・ジェーン」などが有名。84年に47歳の若さで他界したが、健在ならばさらなる活躍を遂げていたことだろう。
葵をメインライターとして生み出された様々な楽曲の魅力が、サンディーの秀でた歌唱力によって存分に活かされているこのアルバムで、もうひとつ特筆すべきなのが、シンガーソングライターのりりィが参加していること。歌を通じて親交を深めたふたりが、りりィのヒット曲「私は泣いています」をイメージして作ったというのが、「日曜日の午後」という曲である。サンディーの作詞、りりィの作曲。そしてもう一曲、りりィが作詞している「愛のメロディー」は、サンディーのテーマソングとも言うべき象徴的な一曲だ。
LPでは、A面にあたる6曲がオリジナルで、B面はジョン・レノン作曲の「ラブ」や、映画音楽の「ロミオとジュリエット」といった洋楽曲のカヴァーで構成されており、歌の巧さが際立っている。まだ彼女自身がプロデュースを手がけるまでには至らなかった時期の作品ではアルガ、デビュー・アルバムとしては上々の出来映えといえる。その後の活躍ぶりを思いつつ、36年前の歌姫の美声に改めて耳を傾けてみて欲しい。
平成以降の活動を振り返っておくと、90年にはソロ活動を再開し、ディック・リー&久保田麻琴のプロデュースによるアルバム『マーシー』がアジア各国でリリースされた。日本のスタンダードのほか、インドネシア民謡など、従来のアジア色をさらに色濃く感じさせるアルバムであった。94年のアルバム『ドリーム・キャッチャー』では、服部良一音楽祭の優秀アルバム賞を受賞し、翌95年には、日本人アーティストでは初となる、マレーシア版のグラミー賞、マレーシア音楽産業賞(AIM)特別賞を獲得した。
76年の世界歌謡祭で知り合ったというブラジルの女性コーラスグループ「トリオ・エスペラン」に提供した曲『WATASHI』が、ブラジルやパリで評判となり、96年には、ブラジル音楽を採り入れたアルバム『WATASHI』が誕生。最近ではセリーヌ・ディオンがこの曲を気に入り、2008年のジャパンツアーを収録したアルバム『JUST WANT TO START AGAIN』の中でもアカペラで歌われている。以降は自身のルーツでもあるハワイ・タヒチ音楽系のアルバム制作や、Fuji Rock Fesをはじめとする多くの野外フェスにも出演し続けており、2001年に設立されたフラ・スタジオの門下生は既に800名を超えたという。
フラの伝統を継承する役割を務めている功績が称えられ、2005年にはフラ・カルチャーを伝導する最高位の称号「ウニキ・クム・フラ」をハワイの先人達から授けられた。2009年から2010年にかけては、渋谷BUNKAMURAのオーチャードホールで、150人のダンサーが出演するスーパーレヴューの主演と演出を大成功させた実績もある。今夏はこのアルバム復刻のほかにも、ハワイ音楽の作品集『Sandii’s Hawai’i 5th』と、ウクレレの達人たちの名演奏に乗せた『サンディーズ昭和ハワイアン-UkuleleDreaming2-』のリリースが続いており、正に「だって夏よっ」状態。夏はサンディーの季節なのだ。
ところで、サンディー・アイのレコードを出していたレーベルが、東宝レコードであったことは実に興味深い。文字通り、映画会社を母体としたそのレーベルは70年に発足し、同年10月に発売された第1回新譜は、黒沢年男、酒井和歌子ら、当時の東宝や宝塚の専属スターが顔を揃えた。その後、約10年間に亘って、『ゴジラ』や『太陽にほえろ!』といった、映画やTV作品のサントラ盤をはじめ、歌謡曲やフォーク系まで、幅広いジャンルの作品がリリースされた。ノヴェルティソングや外国人枠も豊富で、何かと話題に事欠かないレーベルなのである。
好評を得ている〈歌謡曲番外地〉シリーズの既発アルバムにも、東宝レコードのコンピ4タイトルがあるので、ここで紹介させていただいちゃいます。まずは、女優篇2タイトル。
1枚は『不良少年 さすらい』のタイトルで、テレビの学園青春シリーズでお馴染みの青木英美、スポ根ドラマ『金メダルへのターン』に主演した梅田智子のほか、九ちゃんの奥さんとなった柏木由紀子、60年代後半から東宝若手女優の2トップだった酒井和歌子と内藤洋子の作品が収められた贅沢な1枚。
もうひとつは『あなたって凄いのね』と題して、エミー・マーガレットや松島トモ子、いぬいなおみらの作品を集めたマニアック・テイスト。殊に、ザ・テンプターズの映画にも出演していた、聖ミカの幻のシングルが聴けるだけでもお値打ちモノだろう。しかも作曲を筒美京平が担当している。他にも、都倉俊一、山屋清、平尾昌晃、いずみたくと、作家陣の顔ぶれも豪華である。
後発の2枚は、映画・TV篇の『銭ゲバ大行進』と、ヴァラエティ篇の『お尻の歌だもんネ』。タイトルだけでその壮絶な内容がお判りいただけると思う。前者は唐十郎による表題曲のほか、鹿島とも子、水森亜土ら、いい意味でのクセモノ揃い。二代目・若大将ことランチャーズの大矢茂のソロ作品は今やこの盤でしか聴くことが出来ない。『若大将対青大将』の主題歌として、劇中では加山雄三と一緒に歌われる「アダムとイヴのように」は本当に名曲なので、未聴のかたはぜひ!
後者はタイトルが示す通りのノヴェルティソング集だが、東宝レコードの真の面白さはこの一枚にこそ詰まっている。「天才バカボン」の歌でお馴染みのアイドル・フォーによる表題曲のほか、香山リカ(リカちゃん)、益田喜頓、黒沢年男、雷門ケン坊、鳳蘭、大地真央ら、全く訳の分からない布陣。目玉は田中邦衛のデビュー・シングル「ひとりぼっちの君よ」であろう。これを聴かなきゃ一生の損です。
以上の4タイトルはすべてシングルのAB面を完全収録している。もはやオリジナルのアナログ盤で揃えることはほぼ不可能に等しい。御用とお急ぎでない向きはぜひポチッとどうぞ。絶対に後悔はさせません!!
- 鈴木 啓之(すずき ひろゆき) -
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鈴木 啓之(すずき ひろゆき) プロフィール
アーカイヴァー。1965年東京生まれ。テレビ番組制作会社勤務、中古レコード店経営を経て、ライター&プロデュースを手がける。主に歌謡曲・テレビ・映画などについての雑誌への寄稿や、CDやDVDの監修・解説など。著書に「王様のレコード」(愛育社)、「昭和歌謡レコード大全」(白夜書房)ほか。ラジオ番組『週刊メディア通信』(ミュージックバード)、『エキスポ・ジェネレーション』(スターデジオ)、『ラジオ歌謡選抜』(FMおだわら)にレギュラー出演中。『歌謡曲番外地 HMV ONLINE編』バックナンバー
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