HMVインタビュー: PLAID

2011年9月15日 (木)

interview

Plaid

ブラック・ドッグ・プロダクションズとして活動し、UKテクノの黎明期に数多くの革新的な作品を発表してきたエド・ハンドリーとアンディ・ターナーにより結成されたプラッド。今回8年ぶりとなる美しく幻想的なオリジナル・アルバム『Scintilli』のリリースにあたりメンバーのエド・ハンドリーにお話を伺った。

僕がアルバムについて纏めるとしたら、「キラキラしているサウンドのアルバム」ということになるかな。(笑)


--- メンバーのアンディとはイギリスの田舎にあるサフォークの同じ高校に通っていたとお聞きしましたが、最初に出会ったきっかけは?

エド・ハンドリー: 2人ともブレイクダンスをやっていて、お互い入っていたクルーがライバル同士だったんだ。アンディの方が1年上だから学年は1つ上だったんだ。僕は友達と一緒にブレイク・ダンスのクルーに入っていて、アンディも彼の友達と一緒に似たようなクルーに入っていた。だから初めて出会ったのはブレイクダンスのバトルでなんだ。校庭のね(笑)その後に僕達がそれぞれ所属していたクルーが1つになり、本格的に友達になったというわけさ。

--- その時の相手の印象を教えて下さい。

エド・ハンドリー: 僕達はお互い性格がかなり違うんだ。でもコンビとしては良い組み合わせだと思う。当時、2人とも、同じ感じの音楽、つまり初期のヒップホップのサウンドが大好きだった。
僕がロンドンに移住して、アンディがその後を追って来るようなかたちになった。その時に、Black Dogというバンドを結成した。僕達が初めて一緒に活動したバンドだ。お互いのテイストは多少違っているんだけど、二人で作業すると上手くいくんだ。

--- プラッドの活動はサウンド・トラックの制作や映像作品など多岐にわたっていますがオリジナル・アルバムをもっと早く出すという考えはなかったのでしょうか?

エド・ハンドリー: 他のプロジェクトを手掛けている時は、その活動で充分満足していたんだ。僕達はファースト・アルバム『Mbuki Mvuki』を1991年にリリースした。かなり昔のことだね。それから今まで結構たくさんのアルバムをリリースしてきた。だから、ここ数年は、アルバムをリリースするという事は僕達にとってそれほど重要なことではなかったんだ。他の分野、例えば映画音楽を手掛けたり、他のミュージシャンとコラボしたりする事に楽しみを感じていた。それは自分達が音楽に対して興味を持ち続け、新しい事を学ぶ為だったからだと思う。自分達が慣れ親しんでいる分野を出て、初めて新しい何かを学ぶ事ができると思っているから。プラッド以外の活動は、僕達にとって、色々な可能性を試す良い機会になった。だけど、またプラッドとしてのアルバムを作ることができて嬉しく思っている。多くの意味でプラッドとしての音楽制作は一番楽しいと言える。他の人の為にデザインする制作ではなく、自分だけのインプットとしてできる制作だからね。とてもパーソナルな作品ができるから、そういった意味も含めて、一番楽しい制作と言えるんだ。

--- 今作のタイトルを“Scintilli”に決めた理由を教えて下さい。またこの言葉に込めたメッセージは?

エド・ハンドリー: 『Scintilli』はラテン語できらめきという意味があって、僕達はこの言葉の響きが好きだったんだ。音楽によって内面に起こるセンセーションと共通するものがあると思う。

--- 今作で伝えたかった事、テーマ等はありますか?

エド・ハンドリー: 一つの明確な事ではないんだ。伝えたい事は曲によってそれぞれあると思う。その伝えたい内容もリスナーの解釈によって違ってくるものだから、「アルバムを通して伝えたい、一貫したテーマ」というのは特にないんだけど、僕達が過去数年で経験してきた様々な事や、色々な音楽的な出会い、例えばガムランと一緒に活動したり、映画音楽の制作をしたりという様な経験がこのアルバムの構成要素になっていると思う。ただ、アルバムの内容が叙情的なものではないから、受け止め方はリスナー次第ということになるね。

--- このアルバムは繊細なメロディーや美しく複雑なリズムがとても印象的でなエレクトロニック・ミュージックだと思うんですが、貴方はこのアルバムをどのような作品だと感じていますか?

エド・ハンドリー: 僕達はトラックの一つ一つに密接に関わってきたから、アルバムがどのような作品であるかをまとめるのは僕達にとっては難しいことだ。もちろん僕達にとっては特別なものだし、アルバム全体としては、多くのアルバムがそうであるように、その制作過程における、僕達の経験や感情の遍歴を表したものだと思う。だから全体的にはとてもデリケートな響きをもった作品で、プロダクションはクリアでクリーンだと思う。僕達は輝くような、キラキラしたサウンドを意識的に作ろうとしていた。それがアルバム・タイトルの意味だからね。曲を書いている時に強調したかったのはそういうものだった。だから、僕がアルバムについて纏めるとしたら、「キラキラしているサウンドのアルバム」ということになるかな。(笑)

--- 微かに差し込まれる人の声がとても気になりました。この声は誰の声なんですか?

エド・ハンドリー: 人工的につくられた機械の声だよ。全て合成された声なんだ。

--- では誰か特定の人の声というわけではないのですね?

エド・ハンドリー: 声だけを聴いてみると、人の声でないということが分かると思うんだが、ミックスされた曲だと聴き分けるのが難しいよね。

--- すべて合成とは驚きです!

エド・ハンドリー: 良かった、それが狙いなんだ。

--- 35 summersのPVを見ましたがとても日本的な物を感じました。初回限定盤の特典も「Muda na Mono」(無駄な物)という名前ですし、日本の文化が本作に影響を与えたという事はあるのでしょうか?

エド・ハンドリー: 僕達は過去数年間で日本に滞在したことが何カ月もあるから、日本には沢山の影響を受けていると思う。映画『鉄コン筋クリート』や『ヘブンズ・ドア』のサントラも作っていたし、東京に長い間滞在して、東京という町に夢中になっていた時期があった。東京で音楽活動をしながら、日本の文化を吸収していた。僕達は昔から日本に惚れ込んでいた。だから日本の影響は確かにあるけれど、それは何年も前からの話だね。僕達が初めて日本に行ったのは90年代の初めで、それ以来、映画の関係などで毎年行っているからね。あのPVは確かに日本的な要素があるけれど、それが具体的にどんな影響なのかというのは言葉に表せないな。ただ日本で過ごした時間がとても長いから全体的に日本的な影響があるということだね。

--- 最後にメッセージをお願いします。

エド・ハンドリー: この質問にはいつも悩まされるんだよね(笑)。メッセージは常に音楽の中にあると思う。メッセージを表す助けになるような言葉は思い付かないから「音楽を聞いてください」と言う以外のメッセージはないかな。

新譜Plaid / Scintilli
UKテクノの黎明期に数多くの革新的な作品を発表してしてきた重鎮ユニット、プラッドが8年ぶりとなるオリジナル・アルバムを遂に完成!エレクトロニカ、ブレイク・ビーツ、デトロイト・テクノを融合させた彼ら特有のオリジナル・サウンドを残しつつ、メロディアスで緻密に組み立てられたサウンドと美しく複雑なリズムで構成された芸術的な一枚!


プラッド、来日公演決定!!

PLAID scintilli tour
日程: 2011.12.3(土)
場所: @ shibuya WWW
時間: open/start 23:30
前売りチケット: 5,000円

 詳しく(ビートインク)


profile

ブラック・ドッグ・プロダクションズとして活動し、UKテクノの黎明期に数多くの革新的な作品を発表してきたエド・ハンドリーとアンディ・ターナーにより結成されたプラッド。ビョークのワールド・ツアーに同行し大きな話題となり、数々の傑作アルバムを世に送り出してきた。その後も『鉄コン筋クリート』『ヘブンズ・ドア』など映画作品の音楽を担当するなど活躍の場は多岐に渡る。オリジナル・アルバムとしては約8年振りとなる『シンティリ』これまでリリースしてきた全てのアルバムに一貫しているメランコリーなサウンドは今作でもしっかりと確認できる。「多くの時間と労力を注いだこの作品は、この先のせわしない音楽再生デバイスから受けるテンションにも打ち勝って、長く聴き続けられる音楽になるだろう」とプラッドは語る。独自の世界観をより鮮やかに表現し、これまでのキャリアが凝縮された彼らの集大成ともいえる作品となっている。

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