HMVインタビュー:山内直己 ダンス&ソウル・インタビューへ戻る

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2012年2月2日 (木)

interview

soul over the race

壮大なるビジョンを掲げ、世界基準の音楽レベルを追求し、世界へ誇れるソウルミュージックを日本から創出する"SWEET SOUL RECORDS"。その熱い志と、聴く者を虜にする心地よい生音が話題を呼び、SWEET SOUL RECORDSのファンは日に日に数を増し話題を集めています。そして、SWEET SOUL RECORDSの看板タイトル"SOUL OVER THE RACE VOL.2"が遂にリリース。日本から始まるオーガニックブームの火付け役となる大作のリリースに伴い、SWEET SOUL RECORDSのエグゼクティブプロデューサー山内氏にインタビューを行いました。揺るぎない流儀と、音楽愛に満ちた壮大なビジョン。その熱い思い、是非ご覧下さい。(西崎信太郎 Urban NEXT)

--- まずは"SWEET SOUL RECORDS"のレーベル・コンセプトなど、教えて頂けますか?

変わらず言い続けている事があるんですけど「CDをリリースする事が目的ではなく、SWEET SOUL RECORDSというフィルターを通して良質な音楽を拡散することにより、アーティスト達の活躍の機会を増やせる良きプラットフォームを創造する事を目指す」という認識を持ってレーベル運営に取り組んでいます。これだけ色々と情報が溢れている中で、"SWEET SOUL RECORDS"という僕らのフィルターを通して、Soul、Jazz、R&Bという生音ベースを中心とした、アーティストの息づかいや想いが感じられる作品のCDをリリースし続け、HPから情報を発信したり、本当に良い作品を埋もれさせずに世の中にどんどん発信して拡散していく事がアーティスト達の活躍に繋がると信じています。

--- 生音にこだわる理由は?

単純に「生音って気持ちいい!」っていう率直な気持ちもあるんですが、それは音質的な表現に加え、人力によって生み出される、グルーヴという視点とも考えられます。今はコンピューター上で簡単に音楽を作れる時代ですが、演奏をするプロフェッショナルとして素晴らしいミュージシャン達がいて、コスト削減や様々な理由で彼らの活躍の機会が制限されている事も事実だと思うんです。そんな素晴らしい方々の活躍する機会が少なくなる事にとても危機感があって、才能のあるミュージシャンの存在も音楽ファンの皆様に認知して頂きたいなと思っています。音楽はコミュニケーションであり、ミュージシャンが一人一人想いを込めてアンサンブルをする事によってうまれる絶妙な息づかいはデスクトップ上では表現しきれず、それが新しいグルーヴにつながると思うんです。僕達が作る作品は、日本のアンダーグラウンドで活動している素晴らしいアーティスト達やトップ・ミュージシャン達と一緒にレコーディングをして、彼らが活躍出来る機会をどんどん作っていって「生音って本当に素晴らしいんだよ!」という思いを発信していきたいので、生音にはこだわりがありますね。

--- 手間や予算もかかる事ですし、実際に生音って減ってきていますもんね。

コンピューター上で音楽を作る事に関して、僕は全く悪い事だとは思っていません。でも、スタジオに入って生で音楽を作るっていう事自体が音楽の一つの行為であり、価値がある事で、それがアーティストやミュージシャンのレベルをあげる事にもつながると思います。そしてアーティスト達がスタジオでアンサンブルをし、真剣にに音楽と向き合っている姿に何か感じるものがありますし、そういう行為を積み重ねることで良い作品が出来るんじゃないかって思っています。もちろん、100%生音!とこだわるつもりはないのですが、基本はミュージシャンとアーティストが一緒に曲を作っていくというスタンスで勝負していきたいですね。あとはSoulやJazz、R&Bといったブラックミュージックをプレイできるミュージシャンの技術レベルは本当に高いです。ソウルクラシックという時代に培われた文化って物凄く濃厚ですよね。その伝統の文化を学び、通ってきている方達の素晴らしい技術は、やっぱり正当に評価したいと思いますね。

--- 熱い思いですね!まだまだこだわりは沢山ありそうですが。

あとは、真似したくないっていう思いもあるんです。僕らはカバーをやっていますし、ブラックミュージックをリスペクトしていますが、決してソウルミュージックは黒人だけの音楽ではないと思っているんです。日本人の中にもあるものだと思っていますし「僕らでもここまで出来るぜ!」っていう想いや技術をどんどん作品に詰めていって、"新しい日本のソウル"っていうスタイルを作り上げていきたいです。

--- その1つの集大成が、今回リリースされた『SOUL OVER THE RACE VOL.2』という事ですね。今作が2作目ですが、この『SOUL OVER THE RACE』に込めた思いを教えて下さい。

「魂は人種を超える」っていう理解でタイトルネームを付けたんですが、日本人にも黒人に負けないくらいのソウルがあるし、全世界共通でソウルというものが存在するので、日本のアーティストを世界へ輩出するっていう目的を持って取り組んでいます。実際にこの作品をリリースする事によって、UKやフランスなどなど世界各地からメッセージが届くようになりました。世界に共通する言語で、世界に通用する音楽を作って、素晴らしいアーティストを輩出して、日本のアーティストが世界の音楽シーンを目指せる道を作ってあげたいんです。僕らのアルバムに出演する事によって、新たなるステージがどんどん広がり、世界で活躍していくというキャリアパスを作るのが僕らの役目だと思っています。

--- 実際に、海外のラジオ局から『SOUL OVER THE RACE VOL.2』に収録されている楽曲がプレイされたとお伺いしました。

UKの有名なラジオ番組で『SOUL OVER THERACE』のVol.1が何度かピックアップされたりして、ヨーロッパ各地でかなり反響が大きくて色々な動きがありました。今回の『SOUL OVER THE RACE VOL.2』も、UKに色々とプロモーションをしているので、早速ラジオプレイの依頼が増えてきています。

--- 既に、先程おっしゃられたビジョンが現実化してきていますね!

凄く面白いのが、海外のアーティストがSWEET SOUL RECORDSのサイトを見て「俺のCDもリリースしてくれ!」っていうコンタクトが増えてきているんです。Twitterで、ベトナムの方からSWEET SOUL RECORDSの事がツイートされていたり(笑)。

--- 先程のお話にあった、ネット環境の進化によってもたらされた情報過多による弊害とは逆で、これだけ世界がフラット化しているからこそ、良い音楽を発信していればこれまでには無い面白い反応も増えてくるんですね。それでは、少し今回の『SOUL OVER THE RACE VOL.2』の内容について。Vol.1とVol.2の大きな違いは?

前作のVol.1は"AOR"というジャンルが主体の選曲で、みなさんがよく知っている曲の元ネタが多かったですね。例えば、Eric Benetが「Georgy Porgy」をカバーしていたり、「Open Your Eyes」も色々な人がカバーしていたり、メローでライトな楽曲がメインでした。そういったポイントで見ると、今回のVol.2は"盛り上がる"っていうテイストを持つ楽曲を意識して選びました。攻撃的な楽曲もありますし、勢いのある曲が多いですね。ジャンルで言うと"レアグルーヴ"になるんですが、Vol.1と比べるとラインナップ的には玄人向けな楽曲が多いかもしれません。でも、前作とはあらゆる面で異なる要素を出せたので、面白いアルバムになっていると思います。

--- 今作は4人のヴォーカリストが参加されていますが、誰がどの曲を歌うかっていう事はどのように決めたんですか?

Vol.1の時もそうだったんですが、下北沢にあるソウルバー"リトルソウルカフェ"の宮前さんという方にご協力を頂きました。まず、今回のアルバムのコンセプト等を伝えて、内容に沿った楽曲をどんどん選んでいき、最終的にカバーする楽曲を決めて誰がどの曲をカバーしたら、その曲の持っている歌詞の意味や曲の良さを表現できるかっていう話を徐々に詰めていきました。それからミュージック・ディレクターに相談してアレンジを決めていくイメージで最終決定しました。

--- 候補曲ってどれくらいの楽曲数があったんですか?

500曲とか(笑)。とにかく楽曲を沢山聴いて、その中から選びました。

--- 最終的に選ばれた楽曲の決め手は?

楽曲の善し悪しと言うよりは、今回参加したアーティストがどれだけ表現出来るか、っていう基準で選びました。でも、何より聴いて下さる方々にいかに楽しんで頂けるかっていう部分は常に意識している事ですね。

--- 話がちょっと戻りますが、今作『SOUL OVER THE RACE VOL.2』に、この4人のヴォーカリストを選んだ基準は?

オーディションです。まず最初に書類審査を行って、書類を通過した方にアカペラで歌を披露してもらって、最後に渋谷のPLUGというライブハウスで一般のお客さんも集めて公開オーディションをやりました。

--- 新しい才能にフォーカスすることは大切な事ですからね。

「きっかけがないから」とか「活躍出来る場がないから」っていう外因的理由でアーティストの道を諦めてしまうのはもったいないですしね。事実、実力を持ったシンガーがまだまだ沢山いますし。

--- 山内さんから見る、今回参加されたヴォーカリストの魅力はいかがですか?

4人とも本当に素晴らしいです。日之内は言わずもがな、日本の音楽シーンの一線で活躍している実力派シンガーですし、澤田かおりはSWEET SOUL RECORDSの姉妹レーベルLIFESOUND RECORDSに所属する一押しのアーティストです。fasunとSayumiは若手期待のシンガーで、2人とも歌唱力は素晴らしいです。fasunはオーディションでホイットニーのバラードを歌ったんですが、審査員みんな息をのんでました。Sayumiは海外経験が長いので英詞の深い理解から生まれる表現が心揺さぶります。

--- 4人で12曲という内容も、当初からの構想で?

制作過程の色々な部分を考慮すると、本当は10曲にしたかったんです。でも、せっかくアルバムに参加してくれるんだから、少しでも多くの曲で各々の魅力を表現して欲しいっていう気持ちがあるんです。僕達の軸は、才能を持ったアーティストを世に出していきたいっていう思いなので、このアルバムが正にそのコンセプトを軸にした作品なんです。

--- 『SOUL OVER THE RACE』と言えば、このジャケットのデザインも魅力の1つだと思います。

前回と同じくDRAGON76さんにデザインして頂きました。今回のアルバム内容のコンセプトを伝えて、ダンサブルな雰囲気を出して頂きました。Vol.1は内容とリンクする色合いのメローなテイストと、生バンドとボーカルで皆がグルーブしているイメージを表現して作って頂きましたが、今回は内容とリンクする明るいイメージで皆が踊り出しちゃうような雰囲気を表現してもらいました。今回はジャケットに東京タワーがあったり、『SOUL OVER THE RACE VOL.2』の「Soul」の「O」の文字が日の丸をモチーフにしていたりと、より日本発信という意味合いがジャケットにも表現出来たと思います。

--- 一見すればお洒落な1枚のCDにすぎないかも知れませんが、内容を紐解いていくと一貫したブレないコンセプトが細部にまで浸透している素晴らしいCDですね。SWEET SOUL RECORDSさんと言えば、『SOUL OVER THE RACE』シリーズ以外に『SOUL LIGHTS』というシリーズもリリースされました。このCDには何やら面白いアイデアが仕掛けられていますね。

音楽って何だろうって考えた時に、コミュニケーションであり、メッセージを伝える事だっていう捉え方があると思うんですよ。『SOUL LIGHTS』シリーズは、これまでに『LOVE, SOUL LIGHTS』と『WINTER, SOUL LIGHTS』の2タイトルをリリースしていますが、『SOUL LIGHTS』に、混沌とした世界をソウルの光で照らしていくというメッセージが込められています。このCDを作ったきっかけは、個人的な思いを相手に伝える為に作ったCDなんですが、相手に気持ちを伝えやすいように中にメッセージカードが入っているんです。音楽と共に、自分の気持ちを相手に伝えるというとてもシンプルな事です。でも、僕はこのスタイルが売れる事が正しい事だって思いますし、1つの愛のカタチだと思います。

--- CDという物が、時代と共に価値観も変化していく中で、より人間らしい暖かさを表現する事は大事ですよね。

CDという意味合いが稀薄化しているので、何か意味を持たせたかったっていう気持ちはありました。やっぱり気持ちを渡したいし伝えたいので、物を渡すというよりは、渡す気持ちが大事かなって思います。「ありがとう」とか「好きだよ」とかっていう気持ちをCDというモノにのせて表現できるので、告白するには最高なんじゃないかなって思いますよ(笑)。

--- メッセージカード封入という、CDというツールがもたらす新しいスタンダードになって欲しいですね!

自分一人で聴くのではなくて、その先の可能性もつくりたいなって思っているんです。手紙がCDに入っていたら思い入れも強くなるだろうし、思いだした時に楽しいかなって思いますよね。

--- 山内さんご自身、CDというメディアに対して強い思いがあるんですか?

僕達は、CDを売っているというよりCDがチケットだと思っているんです。ソウルの世界を一緒に作っていく為に、チケットを買って頂いているっていう認識なんです。CDというメディア自体にはまだまだ可能性があるんじゃないかって思っていますけど、そこに固執しているわけではないです。ただ、クリエイティブなデザイン等を表現するにはリアルな物の方が面白いなって思いますね。CDの需要そのものが今後増える事は考えにくいかも知れませんが、だからこそ新しい事に挑戦していきたいって思っていますし、その答えの1つがメッセージカードを添えるっていう事で、「LOVE, SOUL LIGHTS」でチャレンジしてみました。

--- CDにメッセージカードが封入されているアイデアは、今まで有りそうで無かったアイデアかも知れませんね。この『SOUL LIGHTS』シリーズは、今後も色々なコンセプトで打ち出そうと?

この『SOUL LIGHTS』シリーズは、基本的に各々の作品にメッセージが込められているんです。例えば「一緒にダンスしようぜ!」とか「愛しています」とか「クリスマスを一緒に過ごそう!」とか。次は『DANCE, SOUL LIGHTS』というタイトルを考えていますが、『URBAN, SOUL LIGHTS』や『SUMMER, SOUL LIGHTS』など、切り口は色々とありますよね。収録曲も、これまでにリリースされた2作品とも5曲というコンパクトな作りなので、リリースが比較的楽に出来るというメリットもありますから、とにかく沢山のリリースをしていきたいですね。これだけ素晴らしいアーティストが沢山いるという事を、後世にちゃんと残したいですから。

--- 『SOUL OVER THE RACE』、『SOUL LIGHTS』、そしてSWEET SOUL RECORDSから発信される良質なブラックミュージックの行方が楽しみです!最後にSWEET SOUL RECORDSの今後の展望を教えて下さい。

パッケージやプロダクトを作ると言う事にとらわれないでプラットフォーム作りという一貫した目的を常に掲げ、リアルの世界やウェブの世界を含め、アーティストが活躍出来るモデルを作り上げたいですね。

新譜Soul Over The Race Vol.2
前作“SOUL OVER THE RACE VOL.1”は、国内そして海外で5000枚のセールスを記録!「ソウルは国境を超越する」「世界に通用するアーティストを日本から発掘する」という揺るぎない信念に基づいてSWEET SOUL RECORDSが提案するオーガニック・ソウル・カバー・プロジェクト最新作!下北沢の著名ソウル・バー“リトルソウルカフェ”の宮前氏が選曲を監修。70〜80年代のメロウ・ソウル/レア・グルーヴ中心にセレクトされた本作は、繊細でラグジュアリー、そして前作以上にダンサブルでみずみずしい躍動感に満ちたリアルなソウルが脈打っている。収録シンガーは日之内エミ、澤田かおりといった日本のR&B/ソウル・シーンを席巻している最注目アーティストに加え、昨年6月に行われたオーディションを勝ち抜いた強者達。更に今作では中村亮、SOKUSAI他、海外でスティービー・ワンダーやジョン・レジェンド等と共演した次世代を担う日本人若手トップミュージシャンが参加している。


profile

山内直己
LIFESOUND, INC.代表取締役/ SWEET SOUL RECORDS エグゼクティブプロデューサー /クリエイティブディレクター/ STUDIO TERRANOVA プロデューサー。
東京出身、シルク・ドゥ・ソレイユで知られる、芸術とエンターテイメントの町モントリオールで学生時代を過ごす。帰国後、上智大学経済学部を卒業。在学中には成績優秀者のみにおくられる、学業奨励賞を受賞。早期卒業制度を利用し、経済学部初の3年で大学を卒業する。大学在学中にWEBデザイナー育成のパイオニアであるデジタルハリウッドにてインターネットにおけるデザインを学ぶ。 新卒で「バズソリューション・クチコミメディア事業」、「ウェブデザイン/CMS事業」を主軸に展開するIT系企業に入社。入社当時3名というアーリーステージでインターネット事業の立ち上げを経験。ディレクター・プロデューサーとしてビジネスの根幹となるWEBサイトの構築に携り、同社の制作事業の立ち上げに従事。同社退社後、ライフサウンド株式会社を設立。代表取締役に就任アーティストやクリエイターが活躍できるプラットフォームの構築をミッションとし、インターネット事業、フォトスタジオ運営と音楽事業を手掛ける。音楽レーベルのSWEET SOUL RECORDSのリリース作品、SOUL OVER THE RACEは日本にとどまらず、世界でもセールスを記録。SWEET SOUL RECORDSは「SPREAD REAL MUSIC」をコンセプトに日本から発信する新しいソウルのプロモーションのプラットフォームとして世界から注目されている。姉妹レーベルLIFESOUND RECORDSには今ブレイクが最も期待されているアーティスト「澤田かおり」が所属。アーティスト・クリエイターが活躍できるプラットフォームの創造をモットーに日々精力的に活動している。