【コラム】Akira Kosemura第36回 細い糸に縋るように Akira Kosemuraへ戻る

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2012年7月12日 (木)

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[小瀬村 晶 / AKIRA KOSEMURA]

1985年生まれ、東京在住の音楽家。2007年にSCHOLE INC.を設立。
これまでに国内外の音楽レーベルから数多くの作品を発表しているほか、TOSHIBA, NIKON, nano・universe, JOURNAL STANDARDといった企業サイトのサウンドデザインやアパレルブランドとのコラボレーション、さらにはドキュメンタリー作品「ウミウシ 海の宝石」の音楽、ケンタッキー・フライドチキンTVCMの楽曲制作、キミホ・ハルバート演出・振付によるダンス公演「MANON」の劇伴を手掛けるなど、様々な分野での楽曲提供・コラボレーションを行っている。
コンサート活動も行っており、これまでにOTODAMA SEA STUDIOや中洲JAZZフェスティバルにも出演、2011年には全国7都市 / 中国5都市を巡るピアノコンサートツアーを開催し、日中両国にて高い評価と成功を収めた。
また自身の音楽活動と並行し、音楽レーベルschole recordsを運営、数多くの作品に携わっている。
最新作は、2枚組80分の超大作「MANON」オリジナル・サウンドトラック。




今回でこの連載も36回目を迎えるわけですが、これまで月に一度更新してきたということで、連載開始からなんと丸三年を迎えたことになります。
三年ということは、いま僕は27歳なので、24歳から連載してきたわけですが、歳を重ねるにつれて段々と文章の雰囲気が変わってきているように思います。
たった三年なんて、と思っていましたが、読み返してみるとこうも人間は印象が変わるものなのですねぇ。不思議です。
それにしても、音楽家のコラムというのは、そもそも正直あまり面白いものではないと僕は思っているので、よくもまあ三年もの間、細々と続いているものだなぁと思います。
これが風景画家とか、カメラマンとかだったら、きっと旅人のようなコラムが書けるのかなぁなんて思うのですが、音楽家にとっての主な仕事は、スタジオにいることなわけですから、まあそんなに素敵な日常を送っているわけでもないわけで、その狭くて薄暗い日常のなかで、たまに差し込むちょっとした光を音楽にできれば・・・くらいの感覚で、それこそ細い糸に縋るように生きているわけです。
つまり、そんな人間にはそれなりの文章しか書けません。音楽だけで精一杯です。とほほ。

という自虐発言はこのへんにして、なぜこんなことをお話しているかというと、今月は本当に話の種が見つからなくてほとほと困ってしまっていたからなのです。
どこかにヒントは転がっていないものかとぐるりと自分の周りを見回してみたところ、ありましたありました。意外と身近なところに転がっていましたねぇ。いえ、転がっていたというよりは、寝そべっていましたねぇ。

今回は僕の奥さんについて、お話したいと思います。

僕の奥さん(仮名:幸子)は僕とは違い、外に仕事に出ているので、毎日それなりにお疲れで帰ってくるのですが、まず自宅に帰ってきて最初にすることは、ごろんです。
ごろんというのは、うちの言葉で、ベッドに横になる(ごろんする)という意味を表すのですが、帰ってくるなり着ていた服はそこらへぽいっとして、猫の素早さで家着に着替えると、文字通りごろんするのです。
そのまま携帯電話などで遊びながらしばらく休息すると、むくっと起き上がり大好きな某女性アイドルグループの踊りの練習を始めます。
これがなかなかのもので、新曲がリリースされるたびに、ほぼ完コピで振付けをマスターしてしまいます。とても満足そうです。
その後は、人並みにご飯を作ったり、お風呂に入ったりして、テレビなどを観る事もあるのですが、12時前にもなると、今度はのび太並みの素早さで寝てしまいます。
これは本当に驚きで、さっきまで会話していたと思ったのに、返事が返ってこないなぁと思ったらもう大体寝てます。冗談かと思って揺すってみても、まったく起きません。驚きです。
まあここまでは、よくある話かなぁとも思うのですが(違う?)、幸子のすごいところはむしろここからなのです。
だいたい2時くらいには僕も眠り支度に入っているわけですが、そのくらいの時間になると、週に二回くらいの割合で、幸子が急に喋り始めます。
つまり、寝言です。
急に訳の分からない言語をものすごく流暢に話し始めることもあれば、日本語の場合もあります。
訳の分からない言語については、だいたいこんな感じ → あqswでfrgtyふじこlp; ということで省略するとして、日本語でもなかなか面白い発言を繰り出してきます。
あるときは、急に大きな声で「美味しかった!!」と言われたので、びっくりしつつも、「美味しかったの?」と聞き返してみると、やはり「美味しかった!!」と返ってきました。そして口をもぐもぐさせているのです。これは明らかになにか美味しいものを食べているご様子。さすが、幸子。幸せな奴です。
続いては最近のこと。僕がなかなか寝付けないときになんとなく深夜にやっていた映画を観ていたところ、今度は急に「その女、ほんとうるさい!!」と言われてしまいました。ん?その女?そう思ってテレビを見返すとそこにはキャメロン・ディアスが。
ああ、なるほどねぇ。たしかにキャメロン・ディアスがユアン・マクレガーに対してかなりまくし立てています、もちろんテレビのなかで。僕はすぐにテレビを消しました。
次の朝、幸子に向かって、昨日「その女、ほんとうるさい!!」って言ったの覚えてる?と聞いてみると、もちろんすっとぼけた顔で、「え?なにそれ?」という感じ。寝言の事はいつも一切覚えていません・・・

こういったエピソードであれば、まだいろいろと思いつくのですが、もうすっかり十分な文字数に達しているので今回はこの辺で。

また気が向いたら、もしも奥さんが怒らなかったら、そのうちに。


  http://www.akirakosemura.com/
  http://www.scholecultures.net/





Akira Kosemura 今月のオススメ

Keith Kenniff 『Branches』

現代音楽とエレクトロニカが交錯する地点があるとすれば、アメリカ人音楽家キース・ケニフも、間違いなくその一人。そんな彼が、CMや映像用に提供した作曲群をまとめたこのアルバム、繊細なアコースティック・ピアノから、ノイズをはらんだラップトップ系楽曲まで、優雅な中にも幅広く。(HMVレビュー)






Akira Kosemura 最新作

Akira Kosemura 『MANON』  [2012年05月23日 発売]

18世紀フランスロマン主義文学の名作「マノン・レスコー」(アベ・プレヴォー原作)を、キミホ・ハルバート演出・振付によって現代にも重なるアレンジを施したダンス公演「MANON」。本公演の劇伴を担当した小瀬村 晶による書き下ろし楽曲、2枚組 全80分に及ぶ超大作のサウンドトラック。

風の様に天真爛漫で、終いには自分が巻き起こす竜巻に巻き込まれ死を迎えるマノンと、彼女との出会いから運命に翻弄されつつもマノンを愛し続けるデ・グリュー。二人の壮絶な恋愛劇を、時に美しく、時に儚く、そして時に残酷に、運命に翻弄される二人の人生に呼応するように書き下ろされた音楽からは「生きることへの喜びと、生き抜くことへの困難さ」という、現代にも通じる普遍的なテーマへと重なっていく。
前作のオリジナル・アルバム『how my heart sings』は、自身のピアノ演奏に重きを置いた飾らない演奏によるシンプルで美しいピアノ・アルバムだったのに対して、今作では、演奏家に白澤 美佳(ヴァイオリン)、人見 遼(チェロ)、良原リエ(アコーディオン)、三沢 泉(マリンバ・パーカッション)、高坂 宗輝(ギター)、荒木 真(フルート)、Shaylee(ボーカル)を招き、様々な顔を持った楽曲アレンジを施している。さらには、ギミックの効いた電子音楽や、ノイズ・ミュージックなど、これまでの小瀬村 晶作品では見受けられなかった作風も大胆に散りばめられており、オリジナル・アルバムとはまたひと味もふた味も違った、職人としての側面も垣間みれる充実の作品に仕上がった。
舞台作品のサウンドトラックでありながら、一音楽作品として非常にエキサイティングな聴覚体験が続く全80分、19曲を完全収録。

※舞台作品としての一連の流れを徹底した美意識で追求した本作は、小瀬村 晶 本人の希望によりCDフォーマットのみでの発売となります。



次回へ続く…(8/10更新予定)。






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