バイエルン放送交響楽団 in Japan 来日記念特別提携マガジン第1号
2012年11月12日 (月)
バイエルン放送響がHMV ONLINEでオンライン・マガジンを展開
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ベートーヴェン全曲ツィクルスでの来日を機に、全3号掲載。多彩な情報をお届けします!
11月23日から12月2日まで、マリス・ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団が日本公演を行います。このツアーは、ベートーヴェンの交響曲全曲が演奏される大掛かりなものですが、オーケストラではこれを機に、HMV ONLINE上で日本のファンのためのオンライン・マガジンを展開することになりました。11月12日から12月16日の期間、全3号にわたり、バイエルン放送響に関する様々なニュース、ツアー・レポート、自主レーベルBR Klassik関連の話題などを、提供してまいります。バイエルン放送響をより多面的に楽しむサイトとして、ぜひご利用ください。
この期間HMV ONLINEでは、BR Klassikレーベルのタイトル(旧譜。新リリース分は除く)をセール価格でご奉仕いたします。さらに、本ページの批評家推薦盤コーナーで紹介されたタイトルについては、特別価格が適用されます。BR Klassikレーベルのハイレベルな録音の数々を、お楽しみください(写真:© Astrid Ackermann)。
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バイエルン放送響は、これまでにも数限りない来日公演を行っていますが、今回のツアーでは、ベートーヴェンの交響曲全曲ツィクルスというたいへん大きなプロジェクトを行います。日本の聴衆は、我々のオーケストラにとって極めて重要であり、少なからざる団員が、日本に友人を持っています。今回HMV ONLINEの協力のもと、このマガジンを展開することになりましたが、それは日本の皆様に、我々のオーケストラのことをさらに親しく、友人のように感じていただけたら、と考えたためです。
今回は来日記念盤として、ベートーヴェン交響曲全集のCDがリリースされます。ツアーの演奏会と共に、こちらも皆様にぜひお聴きいただきたいと思っております。
来日直前!11月8日、ミュンヘン特別演奏会レポート
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先週の木曜日11月8日に、ミュンヘンのヘラクレスザールで、バイエルン放送響の特別演奏会が行われた。これは、『南ドイツ新聞』が支援するクリスマス基金のチャリティ・コンサートで、指揮はマリス・ヤンソンス。曲目は、ベートーヴェンの交響曲第2番と第6番《田園》である。その間をはさんで、パリ在住の日本人作曲家、望月京の新作《Nirai》が世界初演された。
望月は東京藝術大学卒業後、パリ国立高等音楽院で学び、ヨーロッパですでに確固たるキャリアを築いている作曲家。ドイツ、フランスの放送局、フェスティヴァル等より作品を委嘱され、とりわけベルリンでは、現代音楽フェスティヴァル「メルツ・ムジーク」や、ベルリン・コンツェルトハウス管などで作品が初演されている。今回のバイエルン放送響からの委嘱は、ドイツのトップクラス・オーケストラからのものであり、望月のキャリアにとっても重要な位置を占めるものだろう。その《Nirai》だが、周りを囲むベートーヴェンの曲をつなぐ役割を果たすもので、第2交響曲のモチーフとなっている2度音程をもとに発想されている。さらに自然の音響を連想させる響きが、第6交響曲と関連を示している。作品は、聴衆よりたいへん好意的に受け止められた。
一方のベートーヴェンは、来日公演の「ゲネプロ」と呼ぶべき上演。10月18・19日に演奏された《英雄》、11月15・16日取り上げられる第7番と共に、準備の最終段階となるものである。実はミュンヘンでは、ベートーヴェンの全交響曲がヤンソンスの指揮で一括上演されたことはこれまでにない。今回の東京の演奏会のみで、おのずと日本公演のウェイトの大きさが感得される。第2番、第6番とも、ピリオド演奏が一般化している現代においては、いわゆる「伝統的な」アプローチだが、大時代的な鈍重さはまるでない。むしろ、清新で活力に満ち、たいへん今日的な印象を与える。
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なおこの演奏会は、この夏死去したクルト・ザンデルリングに捧げられている(写真©BR/Markus Dlouhy)。
この演奏会の全体は、BR Klassikのラジオ・ウェブサイトにおいて2012月11月17日までオンディマンド・ストリーミング(無料・登録等不要)としてお聴きいただけます!
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バイエルン放送響2012/13年シーズンの演奏会
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2012/13年シーズンは、アーティスト・イン・レジデンスにクリスティアン・ゲルハーヘル、イェフィム・ブロンフマンを招聘。プログラム上では、2013年に生誕100年を迎えるブリテンに焦点が置かれます。出演指揮者は、首席指揮者マリス・ヤンソンスの他、サー・サイモン・ラトル、ズービン・メータ、ヤニック・ネゼ=セガン、アンドリス・ネルソンス、リッカルド・ムーティ、ダニエル・ハーディング、ベルナルド・ハイティンク、エサ=ペッカ・サロネン、リッカルド・シャイーと一流どころが揃います。ソリストには、ラン・ラン、ヨーヨー・マ、マクシム・ヴェンゲーロフ、ギドン・クレーメル、フランク・ペーター・ツィンマーマン、ジャニーヌ・ヤンセン、クリスティアン・テツラフ等が登場します。
プログラムの頂点は、ヤンソンス指揮によるベートーヴェンの交響曲、ブリテン「戦争レクイエム」、チャイコフスキー《悲愴》、メシアン「トゥーランガリラ交響曲」、ベルリオーズ「幻想交響曲」、ハーディング指揮によるシューマン「『ファウスト』からの情景(ゲルハーヘル独唱)」、ネルソンス指揮によるドヴォルザーク「交響曲第8番」、メータ指揮によるチャイコフスキー「交響曲第5番」、シャイー指揮によるリスト「ファウスト交響曲」、ムーティ指揮によるシューベルト「ミサ曲第5番」、ラトル指揮によるシューマン「交響曲第2番」等となります。
こちらから、シーズン・プログラムがPDF形式でダウンロード可能となっています。
BR KLASSIKとは?
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バイエルン放送協会が運営する BR Klassikは、2009年のスタート以来、すでに数十のタイトルを誇る本格的なレーベルです。現首席指揮者ヤンソンスの他、過去の首席指揮者や有名ソリストの録音が次々とリリースされていますが、ここではレーベルの背景をバイエルン放送響事務局長のシュテファン・ゲーマッハー氏が語っています。
ゲーマッハー氏は、オーストリア出身。ザルツブルク音楽祭で経験を積んだ後、ベルリン・フィルのプログラム部長として活躍し、2008年よりバイエルン放送響の事務局長(インテンダント)を務めています。
―BR Klassikは、バイエルン放送協会に所属する音楽団体のレーベル、と考えていいのですね。
シュテファン・ゲーマッハー 「イエスであり、ノーです。というのはBR Klassikというのは、バイエルン放送協会(Bayerischer Rundfunk = BR)のクラシック・チャンネルそのものの名称だからです。以前、バイエルン放送にはBayern 4というラジオ・チャンネルがあり、これは文化に特化したものだったのですが、10年ほど前にクラシック専門のチャンネル(テレビおよびラジオ)として独立しました。クラシック・レーベルは、その一部となります」
―ラジオ・チャンネルとしてのBR Klassikでは、バイエルン放送響を初めとして、バイエルン放送合唱団、ミュンヘン放送管弦楽団等の演奏会が中継されているのですね。
ゲーマッハー 「そうです。しかしもちろんそれだけではなく、有名なバイロイト音楽祭や、バイエルン国立歌劇場、バンベルク交響楽団などの公演も中継されます。我々の定期演奏会は、すべてラジオ/インターネットで生放送されています。日本でも、www.br.de/radio/br-klassik にアクセスすれば、いつでも聴けるのですよ!一部の定期は、ストリーミングとして期間限定で提供されるので、日本の夜中に起きて聴かなくても大丈夫です」
―ラジオ・サイトの利用方法については、当マガジンの第2号で詳細に扱いたいと思いますが、レーベルでは、ラジオ用に収録されたものをパッケージ化しているわけですね。
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―ライブ演奏の出来が良かった時に、発売を検討する、という方針なのですか。
ゲーマッハー 「その側面もあります。もちろん今回のベートーヴェン全集のように、元々発売することが決まっている場合もあります。しかし、例えば昨年冬に上演されたハイティンクのマーラー:交響曲第9番は、演奏があまりに素晴らしかったので、“これは出そう!”と急遽決定したのです」
―原則的にライブ録音だということですが、ライブ音源そのままですか。それともパッチ・セッションなどを行っているのでしょうか。
ゲーマッハー 「1回きりの演奏会を、修正なしで出しているのではありません。リハーサルからゲネプロ、2回の演奏会を収録し、編集したものをリリースしています。ですから、通常のレコード制作のプロセスと基本的には変わりありません。我々の場合、放送局にクラシックのトーンマイスターとして、特別に優れた人々が所属しています。例えばヴィルヘルム・マイスター氏の名前は、日本のレコード・ファンならばよくご存知でしょう」
―制作は、オケのなかで行っているのですか。つまりゲーマッハーさんをはじめとする、楽団のトップ・マネージメントが直接関わっているのですか。
ゲーマッハー 「そうです。レパートリーについては、もちろんヤンソンスの意向が大きいですが、同時に私と広報・マーケティング部が意見交換し、決定します。それとオケの外部に、放送合唱団、放送管などを含めたBR Klassikの全体をまとめるCDビジネス管理部門(放送局所属)があり、そこが販売の実務を請け負うわけです。カヴァーや写真のデザイン、ブックレットの編集から、皆オケのなかでやっているんですよ」
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ゲーマッハー 「録音は、バイエルン放送響が第1線を担っている存在だということを世の中に伝えるツールです。ですので、今後も特に大事にしてゆきたいと考えています」
―レコード・ファンとしては気になるのですが、アーカイブ録音も継続されるのでしょうか。
ゲーマッハー 「こちらも、バイエルン放送響の歴史をマークする分野として、重視しています。例えばコンドラシンのライブなどは、大変貴重なものですし、クーベリック、ヨッフムのものなども、まだ発掘できるものがあるでしょう。
―BR Klassikでは、今後はバイロイトやバイエルン国立歌劇場の録音も出してゆくのでしょうか。
ゲーマッハー 「それは放送局内部の団体ではないので、ちょっと難しいですね。基本的にバイエルン放送協会のオケ・合唱団のみ、ということになります。ただ、アーカイブに膨大なマテリアルが眠っていることは間違いありません」
―今後の発売タイトルを教えていただけますか?
ゲーマッハー 「ご存知の通り、今回の日本公演を機会に、ベートーヴェン交響曲全集が発売されます。また、東京のサントリー・ホールでの演奏会は、NHKにより収録される予定で、これもDVDでBR Klassikから出す予定です。音声の収録は、バイエルン放送協会からエンジニアが参加して行われます」
―興味深いお話を、どうもありがとうございました。
(写真:© Astrid Ackermann)
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ベートーヴェン:交響曲全集
バイエルン放送交響楽団
バイエルン放送合唱団(合唱指揮:ミヒャエル・グレーザー)
クラッシミラ・ストヤノヴァ(ソプラノ)
リオバ・ブラウン(アルト)
ミヒャエル・シャーデ(テノール)
ミヒャエル・フォレ(バリトン)
指揮:マリス・ヤンソンス
BR KLASSIK 批評家お薦めの1枚
バイエルン放送響のベスト録音はこれだ!
本コーナーでは、有名評論家の鈴木淳史、広瀬大介、片桐卓也、吉村渓、青澤隆明、舩木篤也の各氏に、バイエルン放送響のベストCDを挙げていただきます。毎号2枚の紹介で、計6タイトル。この6枚は、HMV ONLINEでは当マガジン掲載期間中(11月12日〜12月16日)、特別価格でお求めいただけます。
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クーベリックの後を継ぎ、バイエルン放送響首席指揮者が内定していたコンドラシン。その決定を促したであろう演奏の一つが、このフランクの交響曲だ。久しくCD化が実現しなかったアナログ時代の名盤である。
コンドラシンの演奏といえば、荒々しく迫る緊張感だ。モスクワのオーケストラを振った録音では、ソリッドすぎる音響と緊迫した運びのせいで、聴いていて胸が締め付けられるような心地さえしたものだ。
そんなドSな音楽をやる指揮者を迎えるのは、高い技術力を持ち、明朗で丁寧な響きで知られるバイエルン放送響。まさに水と油だが、その音楽は両者の持ち味が拮抗、あるいはコントラストをなす希有な名演となった。
歌いたいオーケストラと、直線的にキメたい指揮者。その相克によってもたらされるギクシャク気味に悶える第一楽章のヘ長調の副主題は、フランク作品に秘められたエロティシズムを香り立たすかのよう。
この楽章の展開部や最終楽章では、まさしくコンドラシンならではの強烈な金管が一直線に放たれるが、そこは声部コントロールに長けたオーケストラ。緊迫感を損なわず、知的かつスタイリッシュな音楽となって響く。
この録音から一年後、コンドラシンは北ドイツ放送響でマーラーを振った日の晩に心臓発作で急死する。その死がなければ、バイエルン放送響シェフとしてショスタコーヴィチやマーラーの素晴らしい演奏を披露したはず。何ともいたたまらない気分になる。 (すずき あつふみ 音楽評論)
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悠揚迫らざる、構えの大きな音楽。こう書くのはいとも簡単だが、そのような音楽をオーケストラで実際にあるがままのかたちで鳴らすためには、指揮者・演奏家それぞれに、その「構え」をしっかりと築き上げることができるだけの強い意志の力と確かな技倆がともなわなくてはならない。誰もがおいそれと手がけられるような曲ではないだろう。ベルナルト・ハイティンクは、バイエルン放送交響楽団という最高のパートナーとともに、ブルックナーという、仰ぎ見るような巨峰へと歩みを進める。筆者は個人的に、ブルックナーが築いた数々の巨峰の中でも、もっとも登るのに難儀であり、それゆえに登り切ったときの達成感もひとしおなのが、この「交響曲第5番」であるとおもっている。とりわけ、あの《第9》を意識するかのような前楽章の引用に始まり、複雑な二重フーガが、数々の手順を踏まえつつもついにその輝かしい頂点へと達する第4楽章は、知れば知るほどに、勉強すればするほどに、「完璧」という言葉以外の形容が見つからない。チェロとコントラバスによって奏でられるフーガ主題。およそフーガとしては扱いづらい、オクターヴの跳躍を含む難解な主題を見事にまとめてみせるブルックナーの音楽に、指揮者とオーケストラは正面から向き合い、スコアに在る音を、木訥な旋律はそのままに、複雑な音の絡みは見通しよく、すべてを「完璧」に鳴らしてみせる。再現芸術のひとつの極北がここにある。 (ひろせ だいすけ 音楽学・音楽評論)
読者プレゼント:ヤンソンスのサイン入りCD!
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本オンライン・マガジンでは、毎号読者プレゼントを実施します。第1回の賞品は、マリス・ヤンソンスのサイン入りのCD(3名様。タイトルはお任せください)。以下のクイズの回答を、ご住所・ご氏名をご記入の上2012年11月23日までに info@amadigi.com までお送りください(メールアドレスはこのキャンペーンだけに使用されるもので、他の目的では使用されません)。
質問:
バイエルン放送響で、首席指揮者に選出されながら、実際には就任することのなかった指揮者は次のうち誰でしょう。
A:キリル・コンドラシン
B:オイゲン・ヨッフム
たくさんのご応募をお待ちしています。
TDKオーケストラコンサート2012 ベートーヴェン交響曲全曲演奏会
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ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60
ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 「英雄」 作品55
【11月27日(火) 19時開演 サントリーホール(第2日)】
ベートーヴェン:交響曲第1番 ハ長調 作品21
ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調 作品36
ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67
【11月30日(金) 19時開演 サントリーホール(第3日)】
ベートーヴェン:交響曲第6番 へ長調 「田園」 作品68
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
【12月1日(土) 19時開演 サントリーホール(第4日)】
ベートーヴェン:交響曲第8番 へ長調 作品93
ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付」 作品125
【12月2日(日) 15時開演 横浜みなとみらいホール】
ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調 作品36
ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付」 作品125
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クリスティアーネ・カルク(ソプラノ)、藤村実穂子(アルト)、ミヒャエル・シャーデ(テノール)、ミヒャエル・フォレ(バス)
マリス・ヤンソンス(指揮)バイエルン放送交響楽団&合唱団
その他の日本公演スケジュール
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ベートーヴェン:交響曲第1番 ハ長調 作品21
ベートーヴェン:交響曲第8番 へ長調 作品93
ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67
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ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
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ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」序曲
ベートーヴェン:交響曲第8番 へ長調 作品93
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
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マリス・ヤンソンス(指揮)バイエルン放送交響楽団
次号の「バイエルン放送交響楽団 in Japan 来日記念特別提携マガジン」は、2012年11月23日(金)発行を予定しています。
©2012 Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks, all rights reserved.
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