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2013年3月5日 (火)
-- 郷太さんにとって、本作を制作するにあたってのテーマ、またはキーとなる出来事などはありましたか?
西寺郷太(以下、西寺): 前作《GO》から丸4年。社会的にも、個人的にもあまりにも色々あったんですけど、2009年春から、昨年3月までの三年間、TBSラジオ「小島慶子 キラ☆キラ」でラジオのレギュラー出演を続けたこと、その放送開始直後に敬愛するマイケル・ジャクソンが亡くなって、本を2冊書いたり、ほぼすべてのマイケル関連作のライナーノーツを書いたり、連載やメディア出演が増えたりというのが、やはりその中でも大きかったですね。特に、マイケルが亡くなってからの1年間はもうほんとに断崖絶壁に立たされるほど、プレッシャーと仕事量がはんぱなくて。
そう考えると、やはり「西寺郷太」としては、「キラ☆キラ」をはじめとする「ラジオ」への濃密な関わりと、「マイケルを巡る狂騒を越えて」という側面が、今作の「キー」になっていると思いますね。
それまでの自分はテレビや報道、いわゆるオフィシャルな発表というものに基本的に文句を言う立場だったわけです。野党といいますか。「年代の表記が違う」とか、そういうシンプルなものに始まって、特にマイケルはものすごくいい加減な報道のされ方をされてたこともあり、「少年虐待疑惑」のいい加減な伝播の仕方などには何年も何年も超、怒ってたんです。「ちゃんと伝えろよ!」と・・・。
でも、「マイケルの死」以降は、僕自身がオフィシャル的な立場、与党として発信する役割になった。「では、郷太さん、お任せました」とあらゆる角度から次々に言われ、これまでの自分の発言に責任をとるためにも、「矢面に立つ」ことから逃げるわけにはいけなくなった。でもマイケルにはあらゆる意味で本当に感謝しているんです。こういう経験を味あわせてくれたことが本当に自分を成長させてくれましたから。
日本の、この世代の音楽家として、自分やノーナにしか出来ないことを思いっきりやりきる!その空気読まない感じは、元々あったんですが(笑)、「ポップ・ミュージックのスポークスマン」として、受け継いで「伝えてゆく」姿勢、その辺が改めて固まった強さのようなものは《POP STATION》の軸にありますね。
-- アルバムの制作時期・期間は?またアルバム制作のスタイルで、これまでと異なる点はありましたか?
西寺: 実際にプロデューサーの冨田さんも含め、僕と奥田でデモ曲集めをしてミーティングをはじめたのは2012年の初夏でしたから半年、という感じでしょうか。
アルバムの話は、2011年くらいから、そろそろ・・・、って感じだったんですけど、全然イメージ湧かなくて。ともかく3人とも外仕事が充実していて、ありがたいことにとても忙しかったんです。それも、それぞれが単に「各現場で必要とされる」というレベルではなく、僕ならプロデューサーとして、奥田・小松もバンドマスターなど「責任者」の役割も果たしていますから、ともかく目の前にある山を必死で越える状態で。
あまりにもノーナ3人それぞれと冨田さんのスケジュールが合わないので、伊豆のキティ・スタジオに2度合宿に行って、生ドラムをはじめとするレコーディングやアレンジを詰める作業もしました。空気感変わるので楽しかったですよ。
-- オリジナル・アルバムとしては約4年ぶりとなる本作ですが、その間に洋楽カヴァー・アルバム『Choice』シリーズを2作、手掛けられています。『Choice』制作は本作にも影響を与えているかと思いますが、それはどのようなモノでしたか?
西寺: 《Choice》シリーズ2枚は、本当に音楽人生のご褒美、夢のような音楽体験でしたね。ビルボード・レコードにも感謝してます。まさに先ほど言った「ポップ・ミュージックのスポークスマン、西寺郷太」のシンガーとしての実践編として、ライナーノーツも書かせてもらいましたし。
冨田謙さんとは、鍵盤奏者としてデビュー直後からサポートもお願いしている深い関わり合いだったんですが、プロデューサー冨田謙とノーナ、という自分の中での最強タッグを組めたのはここからで、《POP STATION》の前哨戦にも最適でした。
そもそもアイズレー・ブラザーズにせよ、ジャクソン・ファイヴ、ビートルズやストーンズ、ワム!など、例は山ほどありますけど昔から優れたカヴァー・ヴァージョンが大好きなんですよ。黒人音楽を白人が、またその逆が、というのがズレた魅力を生むのと同じで、日本人である僕らにしか出せない良い意味でズレたニュアンスも必ずある。メンバー間で選曲の段階から「わちゃわちゃ」話し合ったりも楽しかったし、ともかく悪いことひとつもないプロジェクトでした。評判やセールスも良かったんで、ライフワークのようにまた続けて行きたいです。
-- 収録曲「P-O-P-T-R-A-I-N」は、TBSラジオ『ザ・トップ5』のテーマ曲として郷太さんが制作した楽曲が元となっていますが、NONAの曲として再構成する際に苦労した点は?
西寺: この曲は「ザ・トップ5」のジングルに、4年前に僕が作った別の曲のAメロを奥田のアイディアで合体させ、その上で新しいブリッジ部を作り完成させたんですよね。実際パズルのような状態で、歌詞やアレンジはアルバム中、一番苦しんだかもしれません。
この曲のテーマはラジオと、2009年から始めたTwitterでの多くの人との直接的なコミュニケーションです。そのふたつが確実に自分の「血の巡り」を良くしてくれましたから。
自分のことを思い返すと、小中学生の時、ほんとに辛かったんですよ。肝心なところで、友達と話が合わなくて。ファミコンや漫画にさほど興味がないかわりに、音楽と読書だけには異常な情熱を示した中学生でした。皆が尾崎豊さんを聴きながら「ビーバップ・ハイスクール」を読んでいる横で、プリンスの「パレード」聴きながら「月刊 文藝春秋」を貪り読んでるような(笑)。それなりに仲良くはしてましたけど、今のようにネットやハッシュタグもないし、ほんとに文化的な意味では超・孤独。凄いストレスだったんです。当時の京都は、おそろしいほどのヤンキー文化でしたから。
そんな時、ラジオのDJが流すポップソングを聴いて、なんというか「呼吸」が出来たというか。当時は「FM STATION」などの全盛時でエアチェックが生きがいでした。
「P-O-P-T-R-A-I-N」は、若い世代にも、僕らの同世代、例えば子育てしてる主婦の人などは自分の思い通りに動けないわけですけど、そういう人にも、ラジオやTwitterで「繋がる」心地よさみたいなもの、たいしたことはないけれど、自由にどこまでもいける、というちょっとしたウキウキ、「POP」が何か絶望のようなものを救うパワーになる、というメッセージが届くように。とは言え、説教臭くならずリズム重視、そのバランスが難しかったですね。
-- 8曲目に収録の「WEEKEND」は、サブタイトルが(P-O-P-T-R-A-I-N Part II)となっています。 アルバム冒頭の「P-O-P-T-R-A-I-N」との関係性を教えてください。
西寺: アイズレー・ブラザーズや、スティーヴィー・ワンダーの時代って二部構成の楽曲って多かったんですよね。ジョージ・マイケルの「I WANT YOUR SEX」も、同じテーマで第三部まである。そういう同じテーマでの組曲的なイメージってアルバムの醍醐味だと思っていて。
《POP STATION》、〈P-O-P-T-R-A-I-N〉ってのはかなりタフなテーマだと思っているので、パート3、4ってあってもいいなーって思ってます。
-- 「GOLDEN CITY」ではレーベルメイトでもある一十三十一さんがデュエットというカタチで参加されています。参加の経緯をお聞かせください。
西寺: そもそも僕と小松が一緒に飲んだりしてて酒が進むと、5年くらい前から「日本の女性シンガー、今、ナンバーワンは一十三十一だよね」なんて、ぐだぐだそんな話ばかりしてたくらいのファンだったんです(笑)。同じ徳間ジャパン所属だったんですが、なかなか彼女も出産とか挟んで会う機会がなくて、残念だなと思っていたら、僕らのいるビルボード・レコードからアルバムをリリースすると。縁があるなぁ、と。アルバム「CITY DIVE」も最高でしたし。彼女もノーナを「いいな」と思ってくれてたみたいで、最近は奥田と冨田さんも彼女のサポート・ミュージシャンに加わったので、《POP STATION》の主要4人が全員一致でデュエットするなら「十一ちゃんだね」ってことで。
9月末に、広島でたまたま僕が弾き語りで参加したイベントがあり、その夜にアルバムに軽く誘ったんですよね。「いい曲出来たら参加してほしい」って。ただ決定打になる曲がなかなか思い浮かばないのと、スケジュールのタイトさで今回は無理かもって一時期は思いました。アルバム最終段階の1月末には、仕事でモスクワにマイケルがテーマのシルク・ドゥ・ソレイユを観に行くことにもなっていましたし。残念ながら次回かもな、と。
正月越えて、そこまで出来かけていた9曲で今回は出そうよって声もあったんですが、血が騒いできて皆に反対されてもいいや、と駄目元で作ったのが〈ゴールデン・シティ〉でした。意外にメンバーからの反応も凄い良くて、十一ちゃんとレーベルのスタッフが代々木上原でミーティングする予定の日にたまたま僕がそばにいたりの偶然もあり、最後はとんとん拍子で進みました。結果、モスクワへの旅で僕が色々刺激を受けたこともあり、歌詞も書き直して、ふたりでベストな状態で歌えて。アルバムが完全に「完成」したって感じで。なんか色々意味があったなー、と。
-- アルバム・ラストの「休もう、ONCE MORE」ではメンバー3人ともがリード・ヴォーカルをとられていて、その雰囲気からバンドとして最良の状態にあることが伺える1曲だと感じました。
奥田さん、小松さんのヴォーカルが聴けるのは珍しいことだと思いますが、歌入れの際のお2人の様子はいかがでしたか?
西寺: 楽しそうでしたよ。奥田や小松も、この4年、それぞれ堂島孝平くんや、佐野元春さんなど色んなライヴで歌う機会が増えたみたいで、信じられないほど上手くなってて。もともと歌心はふたりともあったんですが。今回のアルバムではほとんど全曲ふたりのコーラスが入ってます。やっぱり、歌うと「ノーナ!!!!」って感じが、ものすごい増すんですよね。
-- そのほか、レコーディング時の思い出深いエピソードがありましたらお聞かせください。
西寺: うーん、奥田が割と最初の段階からパーフェクトな曲を2曲デモで作ってきてたんですよね。「ミスター・メロディ・メイカー」「ネヴァー・エヴァー・レット・U・ダウン」になり収録されたんですが、アレンジ含めあまりにも良過ぎて焦りました(笑)。今までは、奥田の曲はアルバムの最後とかに出てくることも多かったんで。もちろん嬉しい悲鳴というか、「ええ曲作り過ぎやでー!」みたいな(笑)。
-- メンバー個々でもそれぞれポップスの世界で職人的に活動しているNONAの皆さんですが、NONA REEVESとして定義する“ポップス”とは?
西寺: 完璧な明るさの中に、何故かほのかにせつなさが漂っているもの。そして、究極のドライな悲しみの中に、ほのかに希望の光が見えるもの。
-- では最後に、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします!
西寺: アルバムを気に入ってくれた人は、ツアーもありますので、ぜひノーナのライヴを体感してほしいな、と思います。
NONA REEVES 『POP STATION』 [2013年03月06日 発売]
プロデューサーに冨田謙を迎え、ポップ魂を放射状に発信するリード曲「P-O-P-T-R-A-I-N」から、ノーナならではのやさしいメッセージを込めた「休もう、ONCE MORE」、さらにビルボードのレーベルメイトでもある一十三十一とのデュエット曲「GOLDEN CITY」も含む全10曲。あらゆる困難を超えて、「楽しい!」を解き放つ、これが極限ポップ・ミュージックだ。
【HMV ONLINEオリジナル特典】
NONA REEVES 『POP STATION』をHMV ONLINE/HMV MOBILEにてお買い上げの方に先着で「直筆サイン入りCDジャケット」をプレゼント!※アルバム『POP STATION』のCDジャケットにメンバー3人のサインが入ったモノとなります。
※先着ですので、なくなり次第終了となります。ご了承ください。
※特典の有無は商品ページにてご確認ください。
※店舗ではお付けしておりません。
収録曲
- 01. P-O-P-T-R-A-I-N
- 02. Weee Like It!!!
- 03. Never Ever Let U Down
- 04. ECSTASY
- 05. GOLDEN CITY feat. 一十三十一
- 06. Mr. Melody Maker
- 07. マンドリン・ガール
- 08. WEEKEND (P-O-P-T-R-A-I-N Part II)
- 09. 三年
- 10. 休もう、ONCE MORE
【NONA REEVES プロフィール】
[関連リンク]
NONA REEVES オフィシャルサイト
西寺郷太 Twitter
奥田健介 Twitter
Live 情報
EVENT LIVE 『NONA REEVES presents WAW -We Are the World- 2013』■ 3/31(sun) SHIBUYA O-EAST 問:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
■ 5/31(fri) EBISU LIQUIDROOM 問:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
『NONA REEVES 2013 POP STATION TOUR』
■ 3/27(wed) Billboard Live OSAKA 問:Billboard Live OSAKA 06-6342-7722
※ツアー初日3/27大阪公演のみ入場者全員特典としてPOP STATIONスペシャルアナログ盤プレゼント!
■ 6/4(tue) 名古屋CLUB QUATTRO 問:サンデーフォークプロモーション 052‐320‐9100
■ 6/7(fri) 福岡BEAT STATION 問:BEA 092-712-4221
■ 7/7(sun) Billboard Live TOKYO 問:Billboard Live TOKYO 03-3405-1133
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ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
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POP STATION
NONA REEVES
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