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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第79号:今年のヴァルトビューネはラトルの「第9」 ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

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2013年6月13日 (木)

ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

ヴァルトビューネ・コンサート2013は、ラトルの「第9」
 今年のヴァルトビューネ・コンサートは、6月22日にサー・サイモン・ラトルの指揮で行われ、メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」、ベートーヴェン「交響曲第9番《合唱付き》」が演奏されます。ソリストは、前者がクリスティアン・テツラフ、後者がカミッラ・ティリング、ナタリー・シュトゥッツマン、ジョゼフ・カイザー、ドミトリー・イヴァシチェンコです。合唱は、サイモン・ハルシー指揮のベルリン放送合唱団が務めます(© EuroArts)。

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ウィーンへのツアー
 ベルリン・フィルは、6月3日から6日までウィーンに演奏旅行を行いました。会場は、楽友協会ではなくコンツェルトハウス。ブーレーズ「ノタシオン」、ブルックナー「交響曲第7番、マーラー「交響曲第2番」が、ラトルの指揮で3晩にわたって演奏されています。マーラーのソリストは、サラ・フォックス(ソプラノ)とアンネ・ソフィー・フォン・オッター(メゾソプラノ)。合唱は、ウィーン・ジングアカデミーが担当しました(© Markus Weidmann)。

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 最新のDCHアーカイブ映像

ベルリン・フィル ストラディヴァリ・ソロイスツをDCHで!
2013年5月25日

【演奏曲目】
タリス、バーバー、バッハ、モーツァルトの作品

ベルリン・フィルハーモニック・ストラディヴァリ・ソロイスツ


 アントニオ・ストラディヴァリは、今日に至るまでもっとも著名な弦楽器の制作者として知られています。北イタリアのクレモナで工房を営んだ彼は、そのヴァイオリンの響きによってひとつの神話となりました。ストラディヴァリは使用する木の強度やニスの種類などにおいてさまざまな実験を繰り返し、その結果生まれた音色は、世界中の音楽家やコレクターを魅了し続けています。
 今回のファミリー・コンサートでは、ベルリン・フィルハーモニック・ストラディヴァリ・ソロイスツが、マシュー・ハンターの司会のもと、世界最大級ともいえるストラディヴァリウスのコレクションの音色を披露します。演目はタリス、バーバー、バッハ、モーツァルトです。

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ブロムシュテットのベートーヴェンとニールセン
2013年5月25日

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第4番
ニールセン:交響曲第5番

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット


 近年ベルリン・フィルへの客演が増えているヘルベルト・ブロムシュテット指揮の演奏会です。1806年に書かれたベートーヴェンの交響曲第4番は、第3番と第5番という2つの巨大な作品の影に隠れがちで、今日に至るまで演奏頻度も稀な部類に入ります。しかし、それは残念なことです。この第4番では、第3番《エロイカ》で獲得した音楽的成果がしっかりと受け継がれ、またドラマチックな第5番《運命》とは反したリラックスした明るい音が奏でられます。第4番を作曲当時のベートーヴェンについて、同時代の人はこう形容しています。「冗談をよく言い、陽気で快活。生きる喜びに溢れ、機知に富み、辛辣な調子も稀ではない」この楽聖の別の側面を知るのにふさわしい作品と言えるかもしれません。
 メインの演目はデンマークの作曲家、カール・ニールセンの交響曲第5番。後期ロマン派と現代の間に位置する時代に、極めて個性的な道を歩んだニールセンは、1891年から1925年までの間に6つの交響曲を作曲しました。中でも、多彩な打楽器が用いられるこの交響曲第5番は傑作の呼び声が高い作品です。ブロムシュテットはこれまで2度に渡ってニールセンの交響曲全集を録音し、この作曲家の作品解釈ではスタンダードともいえる評価を確立しています。

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ラトルの「ブル7」。今秋の来日公演と同じプログラム
2013年5月31日

【演奏曲目】
ブーレーズ:《ノタシオン》抜粋
ブルックナー:交響曲第7番

指揮:サー・サイモン・ラトル


 ラトルがブーレーズとブルックナーという、彼らしいコンビネーションのプログラムを指揮します。今秋の来日公演では、これと同じプログラムが演奏される予定です。
 ブルックナーの交響曲は、近年ラトルが徐々に力を入れているレパートリーで、これまで第4番《ロマンティック》、第9番が演奏・録音されています。後者は第4楽章完成版という彼らしいヴァージョンの選択でしたが、今回は版の問題は少ない作品ゆえ、オーソドックスな演奏となっています。ちなみに、前回彼がこの曲をベルリン・フィルと演奏したのは、2007年です。

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 これからのDCH演奏会

今シーズン最後の生中継。ラトルのブリテン「戦争レクイエム」
日本時間2013年6月16日(日)午前3時

【演奏曲目】
ブリテン:戦争レクイエム

独唱:エミリー・マギー、ジョン・マーク・エインズリー、マティアス・ゲルネ
ベルリン放送合唱団(合唱指揮:サイモン・ハルシー)
ベルリン大聖堂少年合唱団(合唱指揮:カイ・ウーヴェ・イールカ)
指揮:サー・サイモン・ラトル


 自己の人生と特別な形で結び付き、生涯の友となるような芸術作品があります。サイモン・ラトルにとって、ベンジャミン・ブリテンの戦争レクイエムはまさにそのような例で、彼はこの作品を繰り返し上演してきました。ブリテンは反戦への激しい訴えの中で、ラテン語の死者のミサのテキストと、第一次世界大戦末期に25歳で戦死した「戦争詩人」ウィルフレッド・オーウェンのショッキングな詩とを並列させたのでした。「私のもっとも重要な作品の一つとなるだろう。破壊への憎しみに溢れたこの偉大な詩は、このレクイエムに一種の釈義を形作っている」とブリテンは語っています。
 スコアの表紙には、オーウェンの一節が書き記されています。「私の主題は戦争であり、戦争の悲しみである。詩はその悲しみの中にある。詩人の為しうる全てとは、警告を与えることである」。1962年5月30日、コヴェントリーに新しく建てられたカテドラル(第二次世界大戦中、ドイツ軍によって爆撃)で行われたこの曲の初演は、圧倒的な成功を収めたのでした。
 初演の5日前、「ロンドン・タイム」紙で長年音楽評論の主任を務めたウィリアム・マンの記事が掲載されました。「レクイエムの新作はヴェルディ、フォーレ、モーツァルトのそれと常に比較される。ブリテンはこの課題を新鮮で繊細な方法で解決した。これは生者に慰めを与えるレクイエムではなく、死者の安息を助けるわけでもないが、人間の野蛮行為の非難へあらゆる生者の魂を揺り動かすだろう。紛れもなくブリテンの傑作である」。ブリテンの集大成ともいえるこの作品を、ラトル指揮ベルリン・フィルと豪華歌手陣による演奏でお聴きください。

生中継:2013年6月16日(日)日本時間午前3時

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 アーティスト・インタビュー

クリスティアン・ティーレマン(後半)
「車で言えば、ベルリン・フィルはポルシェです」
聞き手:エファ=マリア・トマジ(ベルリン・フィル、ヴァイオリン奏者)

【演奏曲目】
ヴェルディ:聖歌四篇
バレエ音楽(《マクベス》、《ドン・カルロス》、《オテロ》)

指揮:クリスティアン・ティーレマン


 前回に引き続き、クリスティアン・ティーレマンのインタビューをお送りします。ティーレマンの語りで特徴的なのは、内容以上に、彼のキャラクターが面白いということです。押しが強い一方でユーモアもあり、強烈な面とソフトな面とが絶妙なミックスで共存しています。同世代の指揮者のなかでも、特に存在感の強い彼ですが、その秘密は、この個性的なパーソナリティにあるようです。ビデオはドイツ語ですが、一見をお勧めします。

エファ=マリア・トマジ 「ヴェルディのオペラは、《マクベス》にしても《ドン・カルロ》にしてもよく知られています。しかしバレエ音楽は演奏されませんね。なぜでしょう」

クリスティアン・ティーレマン 「考えてもごらんなさい、《マクベス》にバレエ音楽が合いますか。合いませんよね。大体これは、改定後に付け足した場面です。《ドン・カルロ》の場合は、最初から付いていますが、いずれにしても“バレエ音楽が必須”というパリ・オペラ界の事情=外面的理由によります。しかし興味深いことに、ヴェルディは決してやっつけ仕事にしていません。素晴らしい音楽を書いているのです。
 ベルリン・フィルのメンバーも、ほとんどが彼のバレエ音楽を弾いたことがないようですね。チェロの(シュテファン・)コンツさんは、ウィーン国立歌劇場のエキストラとして《ドン・カルロ》のバレエ音楽を弾いたことがあると言っていました。しかし、大概の人は経験がない。それはやはり、オペラのストーリーを停滞させ、その部分だけ異質な感じがするからなのです」

トマジ 「《オテロ》のバレエ音楽は、《ファルスタッフ》を書いた後の作品のようです。そうした時間的な差もあります」

ティーレマン 「パリで《オテロ》が初演された時に、付け加えられたのですね」

トマジ 「音楽的に見て、“強制的に書かされた”という感じがしますか」

ティーレマン 「いや、しません。音楽的な無理や不都合はまったくありません。私が今回、バレエ音楽を拍手なしで連続的に演奏するのも、大きな流れを作りたいからです。拍手があると、どうしても個々の印象がまばらになり、緊張感も途切れてしまいます。しかし一緒に演奏すれば、1曲のシンフォニーを聴くような感覚が生まれるのです。
 先ほど言ったとおり、このプログラム(前半に「聖歌四篇」、後半にバレエ音楽)のアイディアは、聖チェチーリア管の事務局長のものだったのですが、私は最初提案された時、“うまく行かないだろう”と言いました。前半と後半で、音楽的に差がありすぎるからです。しかし何回かやってみて、素晴らしい組み合わせであると確信するようになりました。聴衆にとっても、ヴェルディがどれほど異なったスタイルで書いたか、そしてそれがどれほど高いレベルのものであるかを理解する機会になるでしょう。とりわけベルリン・フィルが弾くのであれば、それはなおさらはっきりすると思います。
 ところであなたたち、弾いてみて難しかったでしょう?こういう作品は、大概の奏者が油断するものなのですが、実際に弾いてみると難しい。同時に、オーケストレーションが非常に優れています。初期や中期のヴェルディは、“オケは大したことがない”と考え勝ちですが、とんでもない話です。バランス感覚に優れ、音色も繊細です。テンポや表情も、非常に明確に指示されています」

トマジ 「ティーレマンさんは、“ワーグナーとの人生”という本を書かれ、すでにベストセラーになっていますね。ワーグナーの続編は、ヴェルディでしょうか」

ティーレマン 「本の方は、おかげさまで第2刷に達しています。自分でも驚いているのです。ヴェルディの方は、まだ本になるほどではありませんね。ただ、私は皆さんが思っている以上に、ヴェルディを指揮してきたのです。今後は、イタリア・オペラの回数も増やしていきたいと思っています。ドレスデンのオペラでも、《マノン・レスコー》をやることになっています。
 指揮の世界というのは不思議なもので、ある時期までは特定のジャンルで成功することが必要です。私の場合は、割と早い時期からワーグナーやR・シュトラウスといったヘビーな分野で認められました。今は、その方向を少し緩めて、ライトなもの、イタリア・オペラへと幅を広げたいと思っています。ライトなものは、例えばドレスデン・シュターツカペレのジルベスター・コンサート(注:毎年オペレッタを扱っている)でやっています」

トマジ 「カルロス・クライバーは、ベルリン・フィルがロールスロイスのようだ、と言ったそうです。その意は、“すごい車だが、運転するのが難しい”ということなのですが、ティーレマンさんはいかがでしょう」

ティーレマン 「ベルリン・フィルは、ポルシェですね。もちろんポルシェも扱うのが難しい車なのですが、なにしろしっかりしている。そして性能がいい。また、一度その扱い方を理解すれば、乗りやすい車です。オケそのもののキャラクターはともかくとして、伝統を持つオーケストラは通常“難しい”とされます。ウィーンがそうですし、ドレスデンがそうです。しかし一度どのように接すればよいかが分かれば、難しいということはありません。そこを理解することが肝心なのです。大事なのは、“勘”がマッチするかです。結局オーケストラと一緒に仕事できるかは、その勘がお互いに合うか、ということなのです」

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ヤンソンスが、バイエルン放送響との契約を延長
 マリス・ヤンソンスが、バイエルン放送響との契約を2018年まで延長した。業界関係者の間ではヤンソンスの延長は予想されたことで、バイエルン放送響がミュンヘンに新コンサートホール建造を希望していることと関係していると言われる。なおヤンソンスは、6月4日に「音楽のノーベル賞」と呼ばれるジーメンス音楽賞を受賞している。
 同時に同オケでは、現オーケストラ事務局長シュテファン・ゲーマッハーの後任として、ニコラウス・ポントが就任することが発表された。ポントは、2008年よりバイエルン放送響のプランニング・ダイレクターを務めていた(© Manu Theobald)。

クリスティアン・ツィメルマンが携帯盗み撮りにプロテストしてコンサートを中断
 クリスティアン・ツィメルマンが、エッセンで行われたリサイタルの途中で、観客が携帯で映像撮影していることを発見。止めるように呼びかけたところ応じなかったため、演奏を中断して舞台を立ち去った。
 しばらくしてから舞台に戻ると、「自分はYouTubeに映像が載ったために契約を失ったことさえある。YouTubeは音楽を破壊するのです」と話しかけ、演奏を続行したという。

アレクサンダー・ペレイラが次期ミラノ・スカラ座総裁に決定
 ミラノ・スカラ座の2015年からの総裁に、アレクサンダー・ペレイラが就任することが決まった。ペレイラは長年チューリヒ歌劇場のインテンダントを務め、2012年からはザルツブルク音楽祭の同ポストにある。
 ペレイラは、スカラ座役員会の「全員一致」のもとに選出されたという。他の候補には、ミラノ・ピッコロ劇場のセルジョ・エスコバル、ネザーランド・オペラのピエール・オーディが挙がっていた。現総裁のステファヌ・リスネルは、年棒がきわめて高いことで批判の対象となっていたが、ミラノ市長ジュリアーノ・ピサピアは、ペレイラの年棒は「リスネルの4分の3程度」と発表している。
 一方ザルツブルク音楽祭役員会では、“ペレイラが他のポストを兼任することは許可できない”と発表していた。ちなみに、彼のザルツブルクでの契約は、現在のところ2016年まである。

ブルーノ・バルトレッティが死去
 イタリアのオペラ指揮者、ブルーノ・バルトレッティがフィレンツェで死去した。享年87歳。バルトレッティは、1953年にデビューし、コペンハーゲンとシカゴのオペラハウスの音楽監督を務めている。最後の演奏は、2011年2月のフィレンツェにおける《マノン・レスコー》だったという。

ネゼ=セガンがロッテルダム・フィルとの契約を延長
 ヤニック・ネゼ=セガンが、ロッテルダム・フィルとの契約を2018年まで延長することになった。彼は2008年にゲルギエフの後任として現職に就いている。今後は、ブルックナーとシューマンの作品を集中的に取り上げてゆくほか、ドイツ・グラモフォンへの録音も続行するという。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2013年7月12日(金)発行を予定しています。


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