【特集】 幻の和製ブラジリアン・グループ NOVOの秘宝が再び 邦楽オススメ再発・CD化作品へ戻る

解説　（麻生雅人）

　ノーヴォの中心人物の横倉裕は、成蹊高校在学中にボサノヴァ愛好家とともにセルジオ・メンデス＆ブラジル66スタイルのグループ、ザ・マザーズ・ウォーリーを結成。1970年には第4回全日本ライトミュージック・コンテストに出場して注目を集めた。このザ・マザーズ・ウォーリーが、メンバー･チェンジを繰り返すうちにノーヴォへと発展したという。メンバーは、藤川あおい（ヴォーカル）、横倉裕（キーボード、ヴォーカル）、大木秀康（ベース）、清水薫（ドラムス）、安井克己（パーカッション）の5人。藤川あおいはノーヴォ加入前から、中学生時代に女子ばかりによるセルジオ･メンデスのカヴァー･バンドを組んでいたという。
　しかしノーヴォは、1973年に2枚のシングル盤に収められた4曲を残して活動を停止してしまう。4曲とは、ジョアン・ドナート作の「You Are The Sea」（ヴァウテル・ワンデルレイが「The Sea is My Song」として発表）、村井邦彦作曲・山上路夫作詞の「愛を育てる」、横倉裕のオリジナル「白い森」と「この星の上で」。「白い森」のシングル盤にはセルジオ・メンデスが推薦文を寄せていたそうだが、当時、アマチュアからプロに至るまでセルジオ・メンデス＆ブラジル66のスタイルを模したグループが日本で数多く登場する中、セルジオが心から信頼を寄せていたのは横倉裕だけだったようだ。
　ところで、グループ名になっているポルトガル語のノーヴォ（Novo）とは、“新しい”を意味する男性名詞だ。年を表わすアノと合わせればアノ・ノーヴォ（新年）、“やり方”、“スタイル”“粋”などを意味する俗語の女性名詞ボッサに合わせれば、ボッサ・ノーヴァ（新しいやり方。日本では「ボサノヴァ」や「ボサノバ」とも記される）となる。
　“新しい”という言葉を冠したこのグループは、実際、1970年代初頭の日本ではまだ普遍的ではなかったコード進行や音の構成を駆使した、斬新なサウンドを聴かせていた。その新しさは当時のマーケットにはすんなりと受け入れられなかったものの、約20年の時を経て、1996年にコンピレーションCD『ソフトロック・ドライヴィン（キング編）＊恋の246』に収録されるや、支持はまたたくまに広まった。2003年には、この4曲に加え、70年代初頭に録音されたままお蔵入りになっていた音源を含めたCD『ノーヴォ・コンプリート』が発売された。そしてあれから早、10年。今回、なんと2曲の新録音を加えた新装盤『LOVE IS THERE-NOVO COMLETE WORKS』が届けられた。
　ノーヴォがこうして時を経ても今なお支持され評価が高まりつづけているのは、彼らの表現の向こう側に見え隠れする「まだそれが一体何なのかよくわからなくても自分を魅了してやまない何かを見つけてしまったらそれを追求せざるを得ない情熱」や、理解されようがされまいがとりあえず行動したことが、多くのリスナーの共感を呼んだのだろう。「NOVOと聴きたい10枚」では、そんなノーヴォの姿勢やスピリットにも通じる作品を10点、選んでみた。

麻生雅人 推薦　「NOVOと聴きたい10枚」

幻のグループ・NOVOが残した秘宝がボーナストラックを追加して再び。