訃報：ボビー・ブランド 点鬼簿へ戻る

2013年6月24日 (月)

大物ブルース/ソウル・シンガー、ボビー・ブランドが6月23日（日）、メンフィスの自宅で亡くなったそうです。享年83歳。ボビーの息子によると進行中の病気の合併症で亡くなったとのことです。

アメリカ黒人社会で絶大なる支持を集め、“ブルーなフィーリング”を歌わせたら天下一品の名士、ボビー"ブルー"ブランド。 天性的なブルー・ヴォイスとゴロゴロいう「うがいシャウト」と呼ばれるダイナミックな唱法を武器に、若い頃はブルースにゴスペルのスタイルを持ち込み、人々を鼓舞するようなダイナミックなシャウトで魅了。 ベテランの域に入ってからはそこに円熟味が加わり、聴く者を癒すような懐の深さでブルースの素晴らしさを表現。 日本ではそれほど知名度が高くありませんが、ボビーは63もの曲をチャートインさせたという記録があり、シンガーとしてはサム・クックやレイ・チャールズ、ブルース界においてはB.B.キングと並ぶ偉大なるアーティストなのです。

ボビーは1930年にテネシー州ローズマークで生まれ、47年に母と共にメンフィスに移住。 ゴスペル・グループのメンバーとしてキャリアをスタートさせ、その後、メンフィスの歓楽街のビール・ストリートに出入りし、その通りの名前を取ったビール・ストリーターズ（ロスコー・ゴードン、ジョニー・エース、B.B.キングらがいた） の一員としても活躍。

1951年、アイク・ターナーの口利きでモダン・レーベルで初のレコーディング。1952年にデュークと契約するも翌年から兵役を務めることに。1955年に復員し、再び音楽活動を再開。 そこから1973年にABCに買収されるまでデュークで黄金時代を築きます。 エリック・クラプトンのレパートリーとしても知られる「Farther Up the Road」（1957年）を皮切りに、「Little Boy Blue」（1957年）、「I'll Take Care of You」（1959年）、「Cry Cry Cry」（1960年）、「I Pity The Fool」（1961年）、「Turn On Your Love Light」（1961年）、「That's the Way Love Is」（1962年）などヒット曲を挙げたらきりがないほど。

ブランドは、デューク消滅後、そのままメジャーのABCの専属となり、MCAも含め10枚以上のアルバムを残します。1974年のシングル「Ain't No Love In The Heart Of The City」は、ジェイ・Zが「Heart of the City (Ain't No Love)」（カニエ・プロデュース）でサンプリングしたことでも知られています。ややポップよりだったABC時代を経て、 1985年にはZ.Z.ヒルらが所属していたマラコと契約。傑作『Members Only』をはじめ、マラコ・サウンドとの相性は抜群で、第二の黄金期を迎えることとなります。 90年代後半までコンスタントにアルバムを発表、最後の作品は2003年の『Blues at Midnight』。 1992年にはロックの殿堂入り、1997年にはグラミーのLifetime Achievement賞を受賞しています。

これまでに日本へ3度来日しており、1978年にクラレンス"ゲイトマウス"ブラウンと共にジャパンツアーで来たのが初。最後は1998年。 近年は病気療養中とのことでした。

長きに渡り己の喉だけで勝負をしてきたシンガーズ・シンガー、ボビー・ブランド。 改めてご冥福をお祈りいたします。