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2013年8月26日 (月)

ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

ベルリン・フィルの2013/14年シーズンがスタート!
 8月23日に、ベルリン・フィルの2013/14年シーズンが開幕します。オープニングでは、首席指揮者サー・サイモン・ラトルの指揮により、モーツァルトの後期3大交響曲が演奏されます(「これからのDCH演奏会」参照)。
 新シーズンのテーマは、「フィルハーモニー50周年」。「カラヤン・サーカス」の俗称で知られるフィルハーモニーは、1963年10月15日にカラヤン指揮のベートーヴェン「交響曲第9番」で開場されました。今年は、その設立50年目となります。ベルリン・フィルでは、これに関連した演奏会を、10月を中心に行うことを予定しています。ハンス・シャルーン設計のフィルハーモニーは、50年経った現在も、そのモダンな輝きをまったく失っていません。戦後ドイツの建築史においても特筆に価する建物と言えます。
 演奏会では、首席指揮者サー・サイモン・ラトルの他、アバド、アーノンクール、バレンボイム、ヤンソンス、メータ、ハイティンク、ネルソンス、ドゥダメル、ハーディング、ネゼ=セガン等の有名指揮者が演奏。また、クシシュトフ・ウルバンスキ、カール=ハインツ・シュテフェンスがデビューを飾ります。ソリストでは、バレンボイム、内田光子、ソル・ガベッタ(デビュー)、ヒラリー・ハーン等が登場する予定です。

年間プログラムはこちらから

ソニーのテレビ、BDプレーヤーでのDCH視聴がさらに便利に
 ソニー機器にプリインストールされている「ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール」操作画面が新しくなりました。このアプリケーションでは、曲目やアーティストの検索がより便利・簡単になっています。
 ソニーの液晶テレビ〈ブラビア〉や、マルチチャンネル・インテグレートアンプ、ブルーレイディスク・プレーヤーなどのインターネット対応機器とご家庭のテレビの組み合わせなどにより、デジタル・コンサート・ホール(DCH)をぜひお楽しみください。
 対象商品は、下記のリストをご参照ください。ご利用方法は、www.digitalconcerthall.com/jaでユーザー登録を行った後、ソニー機器のメニュー画面より、「ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール」を選択。表示される案内に従ってください。すでにDCHのアカウントをお持ちの方は、同様にメニューからDCHを選択し、機器とアカウントの紐付けを行ってください(現在、下記ソニー機器でご利用の方も、紐付けの手続きが必要となります。それ以外のソニー機器でご利用の方は、これまでの操作画面が引き続きお使いいただけます)。

■対象となるソニー機器(2012年・2013年発売製品)
・液晶テレビ〈ブラビア〉
HX950シリーズ /HX850シリーズ /HX750シリーズ /HX65Rシリーズ /EX750シリーズ /EX550シリーズ /EX540シリーズ/X9000シリーズ/X9200Aシリーズ/W900Aシリーズ/W802Aシリーズ/W650Aシリーズ/W600Aシリーズ
・ブルーレイディスクプレイヤー
BDP-S590/BDP-S190/BDP-S1100/BDP-S5100

ベルリン・ムジークフェスト2013が開幕
 ベルリンの音楽シーズン開幕を告げる「ムジークフェスト・ベルリン」が、今年も開催されます。20世紀音楽を重点的に取り上げる音楽祭として知られていますが、今年は生誕100周年のルトスワフスキや、ヤナーチェク、バルトークの東欧音楽に光が当てられます。客演指揮者・オーケストラは、ヤンソンス指揮バイエルン放送響、ガッティ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ヘラス=カサド指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ、サロネン指揮フィルハーモニア管、エマール独奏ヨーロッパ室内管。地元ベルリンからは、ラトル指揮ベルリン・フィル、バレンボイム指揮ベルリン・シュターツカペレ、ヤノフスキ指揮ベルリン放送響、ソヒエフ指揮ベルリン・ドイツ響他が参加します。

プログラムの詳細はこちらから

 これからのDCH演奏会

シーズン開幕演奏会は、モーツァルトの3大交響曲
日本時間2013年8月24日(土)午前2時

【演奏曲目】
モーツァルト:
交響曲第39番変ホ長調
交響曲第40番ト短調
交響曲第41番ハ長調《ジュピター》

指揮:サー・サイモン・ラトル

 ベルリン・フィルの2013/14シーズンは、サー・サイモン・ラトル指揮によるモーツァルトの「3大交響曲」で幕を開けます。
 モーツァルトの最後の3つの交響曲の作曲動機は、音楽学者のアルフレート・アインシュタインによれば、「依頼でも直接的な目的でもなく、永遠性への哀願だった」。音楽史に残る交響曲の傑作を書き上げたいと望んだモーツァルトが、永遠に「神に愛でられし者」になったという美化されたイメージは、今も一般に根強く残っています。
 しかし、フリーメイソンの盟友ミヒャエル・プフベルクに宛てた手紙で言及しているように、彼はこれらの交響曲を3つの「カジノのアカデミー」のために作曲したようです。いずれにしろ確かなことは、モーツァルトが古典派交響曲の最高傑作を作り上げたことで、この3つの作品には編成も含めて際立った相違が見られるように、彼はそこに自分のあらゆる作曲技法を注ぎ込んだのでした。
 第39番変ホ長調は、驚くべき輝きと生気に溢れた一方で、薄暗くデモーニッシュな表情を持つことから、E・T・A・ホフマンは「冥府の深みへと導く音楽」と評しました。人気の高い第40番ト短調は、建築のように調和の取れた傑作として知られ、ドラマチックな短調の楽章に挟まれた叙情的なアンダンテは、聴き手につかの間の休息をもたらします。そして、形式的にも作曲技法的にも名人芸が駆使された第41番《ジュピター》は、18世紀の器楽音楽の真髄と言えるでしょう。ラトルとベルリン・フィルによるシーズンオープニングの演奏会にどうぞご期待ください。

この演奏会をDCHで聴く!

アーティスト・イン・レジデンスのゲルハーヘル、マーラーを歌う
日本時間2013年9月9日(月)午前3時

【演奏曲目】
ルトスワフスキ:交響曲第2番
マーラー:《さすらう若人の歌》
ヤナーチェク:グラゴル・ミサ

ソプラノ:リューバ・オルゴナソヴァ
メゾソプラノ:藤村実穂子
テノール:スチュアート・スケルトン
バリトン:クリスティアン・ゲルハーヘル
オルガン:クリスティアン・シュミット
ブルノ・チェコ・ フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:ペトル・フィアラ)
指揮:サー・サイモン・ラトル

 ベルリン音楽祭の一環で行われる当演奏会では、中欧を代表する3人の作曲家の作品が取り上げられます。1970年3月、ベルリン・フィルがヴィトルト・ルトスワフスキの交響曲第2番を演奏した際、聴衆からはブラボーとブーイングの嵐が吹き荒れました。ここに聴かれる異色の響きは当時、聴衆の広い理解を得るには至らなかったのです。この作品は2部構成で、ためらうようで挿話的な前半に対し、後半ではせき立てるように音楽が進みます。
 グスタフ・マーラーの《さすらう若人の歌》は、ソプラノ歌手ヨハンナ・リヒターとの自身の失恋を素材にした歌曲集。1896年3月、ベルリン・フィルによるオーケストラ版の初演では、マーラーが自費でオーケストラを借り入れ自作を紹介しようとしたものの、この演奏会への関心が低かったのと同様、批評も芳しいものではなかったようです。「マーラー氏に才能がないと否定はしない。ただ、狂わんばかりに奇抜さを追い求めなければいいのにと思う」(「音楽時報」)
 これら2作品とは対照的に、レオシュ・ヤナーチェクのグラゴル・ミサは1927年の初演で大成功を収めました。ヤナーチェクは教会スラヴ語の典礼文に曲を付けましたが、このミサは古風でも反動的でもなく、ドラマと生命力に満ちあふれています。作曲家のヒューマニズム、汎スラヴ主義の世界観を表したものといえるでしょう。サイモン・ラトルはかねてよりこの作品を得意としており、ベルリン・フィルでの演奏は13年ぶりとなります。どうぞご期待ください。
生中継:2013年9月9日(日)日本時間午前3時

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 アーティスト・インタビュー

ヤープ・ファン・ズヴェーデン(後半)
「私は指揮者とは、前に立つ仕事というよりは、オケと一体化する仕事だと考えています」
聞き手:クリストフ・シュトロイリ(ベルリン・フィル、ヴァイオリン奏者)
2013年5月10日

【演奏曲目】
バルトーク:管弦楽のための協奏曲
ブラームス:交響曲第1番

指揮:ヤープ・ファン・ツヴェーデン


 ヤープ・ファン・ツヴェーデンのインタビュー後半です。今回は、彼が主に活動するアメリカのオーケストラ事情がテーマとなっています。スポンサー、寄付金によって運営される米国の音楽団体について、指揮者の立場から語っています。社会的、経済的事情を理解した、現実的な考えが表れていますが、同時に客演オーケストラとの付き合い方について語った後半部分でも、ファン・ツヴェーデンのフレキシビリティが聞かれます。そうした「実務肌」は、彼がコンサートマスター出身であることとも関係しているでしょう。

クリストフ・シュトロイリ 「あなたはハーグ・レジデンティー管の首席指揮者をしていらっしゃいましたが、その後、ダラス響の首席指揮者もされています。アメリカとヨーロッパのオーケストラでは、どんな点が違うでしょうか」

ヤープ・ファン・ツヴェーデン 「ハーグの後には、オランダ放送フィルの首席指揮者も務めていました。アメリカでは、シカゴ、フィラデルフィア、ニューヨーク、クリーヴランドでも指揮させていただいています。
 アメリカとヨーロッパの違いは、芸術的なこともそうですが、組織だと思います。ヨーロッパでは、オーケストラは国や地方公共団体、あるいは放送局などが運営・補助していますよね。ところがアメリカでは、基本的に企業や個人からの寄付金によって運営されています。集まったお金で団員の給料を払ったり、ホールを借りたりするわけです。2008年に金融危機が起こりましたが、これはアメリカのオーケストラにとって大きな打撃でした。というのは、それによって寄付金が集まらなくなってしまったからです。ダウ・ジョーンズの平均株価が下がると、それに従ってオーケストラの収入も減る、と言われています。アメリカ人はお金を銀行に預けるということはしなくて、貯金の代わりに株式に投資するのが普通だからです。フィラデルフィア管とデトロイト響は、本当に深刻な打撃を受けました。最近は少し良くなってきていますが、それでも多くの団体が苦労しています。
 しかしアメリカのシステムが良いのは、地元の企業等が直接オーケストラに寄付しているので、市民との関係が非常に緊密だということです。ヨーロッパ以上に、市民がオーケストラに近いと感じます。一番良いのは、その両方の側面を取り入れることでしょうね。つまり、半分は公共機関からの補助、半分は寄付金というミックスです」

シュトロイリ 「あなたは、ヨーロッパで以上にオーケストラの面倒を見なければならないのですね」

ファン・ツヴェーデン 「そうです。舞台上のことだけでなく、地域活動をしたり、スポンサーと話したりする必要があります。フェスティヴァルや特別なプロジェクトの推進が実現できるように、あるいは良いソリストや客演指揮者を呼べるように、私自身が努力しなければなりません。セールスマンであるとさえ言えます。でも、それは大丈夫です。ヨーロッパの指揮者は、それはやりたくない、という人もいます。しかし、芸術的な面とビジネスの面のバランスが取れているのであれば、私は何とかこなせますね(笑)」

シュトロイリ 「今回のプログラムは、ブラームスの交響曲第1番です。ベルリン・フィルにはブラームスの偉大な伝統があります。しかしあなたも、ハイティンクのもとでコンセルトヘボウ管で素晴らしいブラームス・サイクルを演奏した経験を持っていますね」

ファン・ツヴェーデン 「私にとって、ブラームスは私のなかに流れる血だと思っています。あなた方にとっても、そうでしょう。私の作品観について言えば、ブラームスは少し劇的に演奏されすぎるような気がします。個人的には、多くの柔らかい部分があると思いますし、指揮する時には、刺々しくない、甘美な響きを織り込みたいと考えています。
 その際重要なのは、客演したオーケストラの伝統を尊重するということです。私は自分がやりたいように常に進める、という考えの持ち主ではありません。ベルリン・フィルならば、ベルリン・フィルの素晴らしいブラームスの伝統があると思います。演奏では、それにうまく反応して、新しいものを生み出してゆきたい。指揮者もオーケストラも、常に与え、貰い合って対話しています。いわば50分のラブ・アフェアであって、あなたたちと出会い、コミュニケーションしてゆく過程で、素晴らしいものが出てくると思うのです。私は指揮者とは、前に立つ仕事というよりは、オケと一体化する仕事だと考えています。音楽をするというのは、そうした時に最高のものとなるのではないでしょうか」

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

レジーナ・レズニックが死去
 8月9日、アメリカのメゾソプラノ歌手レジーナ・レズニックが、91歳で死去した。60年代のメットを代表する歌手として知られ、1959年から70年の間に、この劇場で90回出演。カルメンだけで、28回歌っているという。またバイロイト音楽祭では、1953年にクレメンス・クラウスの指揮でジークリンデを演じた。その他、クリテムネストラ、クイックリー夫人、エルダ、フリッカ等の役柄で活躍。デッカにカルメン(シッパース盤)、クリテムネストラ(ショルティ盤)、CBSにクイックリー夫人(バーンスタイン盤)の名演を残している。

スパス・ヴェンコフが死去
 ブルガリアのテノール歌手スパス・ヴェンコフが、84歳で亡くなった。ヴェンコフは、始め法学を学んでいたが、やがて声楽に転向。1975年にトリスタンでドレスデン国立歌劇場にデビューし、国際的なキャリアをスタートした。1977年には、ウィーン国立歌劇場に登場。その後、この劇場を中心にワーグナー・テノールとして活躍した。1984年にオーストリアの市民権を獲得。1993年に引退するまで、トリスタン、タンホイザー、ジークムント、ジークフリート等の役柄を歌っている。

ヴェンゲーロフが、モナコの国境税関でミニ・コンサート
 モナコ(EU非加盟国)とフランスの国境で、マクシム・ヴェンゲーロフが税関検査に会い、楽器の所持者であることを示す書類の提出を求められた。その際、自らのヴァイオリンを取り出して見事に演奏し、持ち主であることを証明した。『フランス・ミュジク』誌によると、ヴェンゲーロフは書類を携帯していなかったため、税関吏に詰問されたが、ユーモアを発揮。見事に演奏して、その場を切り抜けたという。

オーストラリア『ライムライト』誌が「ばかげたオペラの筋書き」ワースト・テンを発表
 オーストラリアの音楽専門誌『ライムライト』が、「ばかげたオペラのプロット」のワースト・テンを発表した。コルンゴルト、マイアベーア、ドニゼッティ等の珍品オペラが並ぶなか、第1〜3位に食い込んだのは、ヒンデミットの《ヌシ・ヌシ》、モーツァルトの《カイロの鵞鳥》、カタラーニの《ワリー》。第1位に輝いた(?)ワリー以外は、ほとんど上演される機会のない作品ばかりだが、台本はオペラの成功のカギ。今回挙げられなかった作品以上に救いのないリブレットは、他にも多数存在すると思われる。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2013年9月13日(金)発行を予定しています。

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