トップ > 音楽CD・DVD > ニュース > クラシック > 「ベルリン・フィル・ラウンジ」第84号:ゲルハーヘル、マーラーを語る(前半)

「ベルリン・フィル・ラウンジ」第84号:ゲルハーヘル、マーラーを語る(前半) ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

%%header%%閉じる

%%message%%

2013年10月4日 (金)

ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

来日記念ダブル・キャンペーン!DCH新規利用者登録で、48時間お試しチケット全員プレゼント&ベルリン・フィル来日公演に抽選6名様ご招待
この11月、ラトル指揮ベルリン・フィルの来日公演が行われます。デジタル・コンサートホール(DCH)ではそれを記念して、新しく利用者登録をされた読者の方全員に、48時間お試しチケットをプレゼントいたします(登録は無料)。さらに、応募者のなかから抽選で、11月18・19日に行われるサントリー・ホール(東京)での来日公演演奏会に、計6名様をご招待いたします。DCHのお試し視聴+チケット・プレゼントのダブル・キャンペーンです。

応募(利用者登録)方法:
@日本語版DCHの「チケット&クーポン券」のページを開いてください。
A右上の「クーポン券・優待券をお持ちの場合」の空欄に、英字半角でJAPAN2013を入力し、「クーポン券のコードを発信する」をクリック。
B利用者登録のフォームが表示されますので、各欄を入力後、「利用規約に同意します」をチェックして、「登録する」を押します。
C直後にメールアドレスに確認メールが届きますので、中に記載されているリンクをクリックしてください(必須)。

★お試しチケットの有効期間は、最初の映像を観始めた段階でスタートします。来日公演招待プレゼントへの応募は、上記の登録手続きを済ませれば、自動的に完了します。
★48時間チケットのプレゼントは、2013年9月20日より11月30日まで。来日公演招待プレゼントをご希望の方は、11月4日までにご応募ください(48時間チケットのプレゼントは、11月31日まで受けられます。ご利用はおひとり1回のみ)。
★来日公演招待券の当選は、11月9日までに当選者ご本人にご連絡させていただきます。なお、招待券の他人への譲渡・売却はできません。

皆様のご登録、ご応募を心よりお待ちしております。

キャンペーン応募(DCH利用者登録)はこちらから

 最新のDCHアーカイブ映像

ペンデレツキ《ルカ受難曲》を聴く!
2013年9月21日

【演奏曲目】
ペンデレツキ:《ルカ受難曲》

ソプラノ:クリスティーネ・リボール
バリトン:ヤロスラフ・ブレク
バス:シュテファン・クレム
語り:ダニエル・オルブリフスキー
指揮:アントニ・ヴィット

 1933年にポーランドのデンビツアで生まれたペンデレツキは、国際的名声を収め、その作品がしばしばコンサートのプログラムに載せられる数少ない現代作曲家の一人です。同じポーランド人作曲家のルトスワフスキと同様、エモーショナルな表現主義への追求が、彼の中心的なテーマであり続けています。「私は作曲家として、音楽がどんどん複雑な方向へ向かうことを阻止したい」と彼は1987年に独『シュピーゲル』誌へのインタビューで語りました。
 ペンデレツキは、無調の究極を極めたいわゆるトーン・クラスターの書法で知られており、そのもっとも卓越した例が、1966年3月30日にミュンスター大聖堂で初演された《ルカ受難曲》(ルカ福音書による主イエス・キリストの受難と死)です。当時32歳だった作曲家は、この成功により一躍人気を獲得したのです。
 今回指揮を務めるアントニ・ヴィットは、かつてペンデレツキに作曲を学んでおり、彼の作品解釈の権威として知られています。《ルカ受難曲》の最後では、もう一度合唱が登場し、光り輝くホ長調に上っていく中、「希望」や「救済」というメッセージを伝えて締めくくられます。この畢生の大作が、国際的なソリストとベルリン・フィルによって上演されるたいへん貴重な機会でした。

この演奏会をDCHで聴く!

ハーディングのマーラー「第10番」(クック版)
2013年9月28日

【演奏曲目】
マーラー:交響曲第10番(クック版)

 ダニエル・ハーディングは、そのキャリアの初期、ふたりの偉大な指揮者の庇護の元にありました。ひとりはサー・サイモン・ラトルで、バーミンガム市響の音楽監督だった当時、ラトルは弱冠17歳のハーディングの録音に感銘を受け、すぐに彼をアシスタントとして起用します。もうひとりはクラウディオ・アバド。ベルリン・フィルの音楽監督だった彼のもとでハーディングは研鑽を積み、1996年にベルリン・フィルへのデビューを果たしました。現在スウェーデン放送交響楽団の音楽監督、ロンドン交響楽団の首席客演指揮者などを務めるハーディングは、もっとも将来性豊かな若い世代の指揮者のひとりに数えられるでしょう。
 今回演奏されるグスタフ・マーラーの交響曲第10番は、ウィーン・フィルやロサンゼルス・フィルのデビューといった、重要なキャリアの節目でハーディングが指揮してきた作品です。1910年の夏、マーラーは交響曲第9番の終楽章と音楽的に結びつきの強い、この第10番の作曲を開始しました。妻アルマとの結婚生活の危機に衝撃を受ける中、作曲は進められますが、翌年5月、未完成のままマーラーは世を去ったのでした。作品は断片的ではあるものの、第1楽章のアダージョのみ総譜の草稿として残されました。イギリスの音楽学者デリック・クックによる補筆完成版は、専門家の間で議論の余地は残されていますが、今日もっとも広く演奏されているものです。

この演奏会をDCHで聴く!

 これからのDCH演奏会

ゲーベルが、ベルリン・フィルデビュー!
日本時間2013年10月5日(日)午前3時

【演奏曲目】
ルベル:組曲《四大元素》
モーツァルト:4つの管弦楽のためのノットゥルノニ長調
カンナビヒ:2つの管弦楽のための交響曲ハ長調
J ・Ch・バッハ:歌劇《ゴールのアマディ》より序曲と組曲

 ピリオド奏法の第一人者ラインハルト・ゲーベルがベルリン・フィルにデビューを果たします。ゲーベルは1973年に古楽器アンサンブル「ムジカ・アンティクヮ・ケルン」を結成し、30年以上にわたって率いてきました。今回のプログラムでは、「モーツァルトがどのような音楽から影響を受けて大家へと成長したか」に焦点が当てられます。
 ハイドンより1年年長のクリスティアン・カンバビヒ(1731-1798)は、マンハイム楽派を代表する一人。シュターミッツの後を継いで、マンハイム宮廷楽団の楽長としても活躍しました。モーツァルトにも強い影響を与えた作曲家として、全部で90曲近い彼の交響曲から1曲が演奏されます。続くヨハン・クリスティアン・バッハは、1735年に大バッハの末子として生まれ、父親の死後、ポツダムのフリードリヒ2世の宮廷に仕える年長の兄カール・フィリップ・エマヌエルから作曲を学びました。後にミラノやロンドンで活躍したコスモポリタンであり、モーツァルトも尊敬する作曲家でした。お聴きいただくのは、1779年にパリで初演されたオペラ《ゴールのアマディ》より序曲と組曲。それと併せて、モーツァルトがザルツブルク時代の1770年代末期に書いた「ノットゥルノ KV286」をお聴きいただくことで、 これらの作曲家がモーツァルトの音楽に残した跡をはっきりと感じ取れるのではないでしょうか。

生中継:日本時間2013年10月5日(日)午前3時

この演奏会をDCHで聴く!

シュテフェンスが、ベルリン・フィル・デビュー!
日本時間2013年10月12日(土)午前3時

【演奏曲目】
ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番
シューベルト:
劇付随音楽《ロザムンデ》序曲
交響曲第3番ニ長調
B・A・ツィンマーマン:
大管弦楽のための1楽章の交響曲(1953年の第2稿)
チェロと小管弦楽のためのカンタータ《カント・ディ・スペランツァ》

チェロ:ルートヴィヒ・クヴァント
指揮:カール=ハインツ・シュテフェンス


「ベルリン・フィルはもっとも重要な奏者の一人を失った。しかし、音楽界は意欲にあふれたマエストロを獲得した!」。2007年、カール=ハインツ・シュテフェンスが当時ソロ・クラリネット奏者だったベルリン・フィルを退団し、ハレ歌劇場の芸術監督に就任した際、『ターゲスシュピーゲル』紙はこう評しました。その1年後、シュテフェンスは《フィデリオ》を振ってベルリン国立歌劇場にデビューし、2009/10シーズンからはラインラント=プファルツ国立フィルの音楽監督に就任、以降ミュンヘン・フィルやバンベルク交響楽団など著名なオーケストラに客演してきました。今回、その彼が古巣のベルリン・フィルに指揮者としてデビューを果たします。
 プログラムに並ぶのは、ベートーヴェンの《レオノーレ》序曲第3番とシューベルトの劇付随音楽《キプロスの女王ロザムンデ》、そして親しみやすい民謡調のメロディーにあふれた交響曲第3番。その間に挟まれる形で、ベルント・アロイス・ツィンマーマンの大管弦楽のための1楽章の交響曲、そしてチェロと小管弦楽のためのカンタータ《カント・ディ・スペランツァ》という強烈な表現力を持つ20世紀の作品が演奏されます。後者で独奏を務めるのは、ベルリン・フィル第1ソロ・チェリストのルートヴィヒ・クヴァント。シュテフェンスと旧知の音楽家たちとの息のあった演奏をお楽しみください。

生中継:日本時間2013年10月12日(日)午前3時

この演奏会をDCHで聴く!

 アーティスト・インタビュー

クリスティアン・ゲルハーヘル(前半)
「私は、“自分はあの時こうして苦しんだから、この歌が感動的に歌えるんです”みたいな言い方はしたくないのです」
聞き手:アルブレヒト・マイヤー(ベルリン・フィル、ソロ・オーボエ奏者)

【演奏曲目】
ルトスワフスキ:交響曲第4番
マーラー:《さすらう若人の歌》
ヤナーチェク:グラゴル・ミサ

ソプラノ:リューバ・オルゴナソヴァ
メゾソプラノ:藤村美穂子
テノール:ステュアート・スケルトン
バリトン:クリスティアン・ゲルハーヘル
合唱:プラハ・チェコ・フィルハーモニー合唱団
指揮:サー・サイモン・ラトル

9月初頭に行われた演奏会から、クリスティアン・ゲルハーヘル(今シーズンの「アーティスト・イン・レジデンス」)のインタビューをお送りします。このコンサートでは、マーラーの《さすらう若人の歌》が歌われましたが、ゲルハーヘルは演奏者と作曲家の間にある「感情移入の問題」について語っています。リート歌手として、どの程度作品に没入するべきなのか、という問題ですが、ここで彼は、「自分は個人的n感情に溺れるような歌い方はしない」と語っています。
 興味深いのは、ゲルハーヘルの地の声です。歌手としての声色(ターンブル)は、貴公子然とした美声ですが、話すときの声はむしろ田舎風。バイエルン訛もあって、意外な印象を受けます。歌手には、フィッシャー=ディースカウやハンプソンのように、地声と歌の声音がほとんど変わらない人もいますが、ゲルハーヘルは別のタイプのようです。

アルブレヒト・マイヤー 「《さすらう若人の歌》とは、元々オーケストラ伴奏で書かれた作品ではないのですね」

クリスティアン・ゲルハーヘル 「これはまずピアノ伴奏のために作曲され、後でマーラー自身によりオーケストレーションされました。彼の管弦楽伴奏の歌曲のなかでは、最もピアノで演奏するのに適した作品ではないかと思います。《亡き子を忍ぶ歌》は、完全にオーケストラのために作曲された歌曲集で、マーラー自身によるピアノ伴奏版はありません。しかし他の作品には、すべてマーラー自身のピアノ譜があります。最初にそれを作ったか、後から作ったかは色々ですね。《大地の歌》にでさえ、ピアノ版があります。《さすらう若人の歌》の場合、内容的な差はほとんどありません。私はピアノ版もオケ版も、どちらも素晴らしいと思います。どちらがいいというのではなく、各々の良さがあるのです」

マイヤー 「この作品を初めとして、マーラーの作品には多分に自伝的な側面があります。彼は作曲家として以上に、指揮者として活躍していたわけですが、アルマと結婚する前は、様々な恋愛経験を持っていました。この曲には、その失恋の経験が反映されていると言われています」

ゲルハーヘル 「マーラーは、自伝的側面から作品が解釈される作曲家の筆頭でしょう。シューマンと同じくらいにです。私はシューマンの方が、むしろそうするべきだと思います。というのはマーラーの場合は、彼自身が意識していなかった革命的な側面があると思うからです。「交響曲第8番」と「リュッケルト歌曲集」、《亡き子を忍ぶ歌》を除けば、彼の歌曲の歌詞は非常にシンプルです。《大地の歌》も含めて、民謡的で、分かりやすい。間違えて解釈の仕様がないくらい、簡単な詩です。彼は本来バラバラな民謡を組み合わせて、新しい詩に仕立て、そこに新しい意味を与えたのでした。
 とりわけそれは、《大地の歌》の〈告別〉について言えるでしょう。ここでは、テクストの各部分は、まったく関係のないもので、すべてはマーラー自身の連想によって結び付けられたのでした。しかもそれは、ある物語を語ろうとするものではなく、瞬間の心的状況を捉えたものです。そうしたリネアルでない(物語として展開しない)、状況的な詩と音楽の造形というのは、ずっと後の時代の文学、あるいは音楽に特徴的なものなんですね。マーラーは、そうした作曲の仕方が、非常にモダンだったということを、意識していなかったと思います。少なくとも、我々が後から知るような形の新しさとしては、認識していなかったでしょう」

マイヤー 「ただ、今回のあなたの演奏を聴いていると、非常にマーラーの世界に没入して、それを感じ取っているように聴こえますが」

ゲルハーヘル 「《さすらう若人の歌》の場合は、実際に自伝的な要素があります。彼は当時、カッセルの劇場で歌っていたヨハンナ・リヒターという歌手に恋していたのでした。『子供の不思議な角笛』を手本として自分で歌詞を書き、その失恋の経験を音楽にしています。でも私自身は、舞台で自分自身をさらけ出す、という歌い方をしないと思いますし、そうするべきではないと思っています。というのは、私自身の恋愛経験というのは、もう何十年も前のことですし(笑)、今では幸せに結婚しています。他のことでは悩みはたくさんありますけれど、恋のことで悩む年齢ではない。この曲を歌いながら、“ああ、あの時ナントカ嬢はつれなかった”、“私があの時木陰で聞いたのは、ツグミの鳴き声だった”などと思って歌ってはいません(両者爆笑)」

マイヤー 「私は器楽奏者として、まさにそこのところがぜひ知りたかったんです。どうやって感情移入しているのか、と」

ゲルハーヘル 「オペラと歌曲演奏、という違いでもあると思います。というのは、オペラではやはりある役になりきる、という側面がありますが、コンサートでは違います。歌手は一種音楽に乗り移って歌うわけですが、同時に、その音楽を外から聴いている立場でもあるのです。聴衆の側に立って聴いている部分さえあります。それはシューマンの歌曲で長い前奏や後奏があり、ピアノに聴き入っている、という意味ではなく、自分自身の歌、さらに言えば音楽そのものを外から聴いているのです。
 私が演奏する作品の解釈は、私の個人的な感情である必要はありません。表現するために必要なのは、一般的な人生経験であり、例えば文学作品などに接して得た、“感情への理解力”ではないかと思います。私は、“自分はあの時こうして苦しんだから、この歌がこのように歌えるんです”みたいな言い方はしたくないのです」(後半に続く)

この演奏会を聴く!

 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ザルツブルク音楽祭の次期インテンダントは、ヒンターホイザー
 2016年10月からのザルツブルク音楽祭のインテンダントに、マルクス・ヒンターホイザーが就任することが決定した。彼の契約は、2021年9月までの5年間となる。同時に、音楽祭総裁は、現職のヘルガ・ラーブル=シュタードラーが3年延長となり、2017年9月まで留任する。
 ヒンターホイザーは、2017年の音楽祭より実権を握るが、それまでの2015年、16年のインテンダント職は、ラーブル・シュタードラーと演劇部門長のスヴェン=エーリク・ベヒトルフが兼任する。なお、現職のアレクサンダー・ペレイラは、2014年の音楽祭の後、ミラノ・スカラ座総監督に就任する(写真:ヘルガ・ラーブル=シュタードラー© Patricia Weisskirchner)。

サロネンがフィルハーモニア管のポストを延長
 エサ=ペッカ・サロネンが、フィルハーモニア管の首席指揮者兼芸術顧問のポストを2016/17年シーズンまで延長した。彼はこのポストを2008年、クリストフ・フォン・ドホナーニより受け継いでいる。

ピンチャーが、アンサンブル・アンテルコンタンポランの芸術監督に
 9月27日、ドイツの作曲家・指揮者マティアス・ピンチャーが、アンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督に就任した。ピンチャーは、1971年マール生まれ。デトモルトとデュッセルドルフでギエルヘア・クレーベ、マンフレート・トロヤーンに師事した彼は、ドイツの若い世代の作曲家としては、最も有力なひとりとされている。

ヒリヤード・アンサンブルが、2014年末で解散
ヒリアード・アンサンブルが、2014年12月20日のロンドンでのコンサートを最後に、解散するという。しかし、その前の2013年12月11日には、アンサンブルの創立40周年を祝う演奏会が行われる。
 ECMでは、この機会に「イル・コール・トリスト」と名付けられた記念アルバムを発売する。内容は、16世紀のマドリガルとのこと。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2013年10月18日(金)発行を予定しています。

©2013 Berlin Phil Media GmbH, all rights reserved.

DCHアーカイヴ検索