キコ・ルーレイロ & ファビオ・リオーネ インタビュー!
2013年11月22日 (金)
Kiko Loureiro(G)、Ricardo Confessori(Dr)
もはやラウドパークの常連と言っても良いブラジルの Angra。残念ながら2012年にヴォーカリストの Edu Falaski が脱退をしてしまったのだが、現在は、あの Rhapsody of Fire のヴォーカリスト Fabio Lione を迎え各国のフェスティヴァル出演やツアーを行っている。これはメロディック・パワーメタルファンにはたまらない組み合わせ。幸運なことに、この布陣でラウドパークの出演が実現。ギタリストの Kiko Loureiro、そして Rhapsody of Fire の Fabio に話を聞くことができた。そして何と、次の Angra のスタジオ・アルバムに Fabio が参加?正式メンバー?そんな話し合いを含んだ貴重なインタビュー!
- --- Dr. Mikannibal (以下、Dr.): 日本へようこそ。日本は何回目ですか?
-
Kiko Loureiro(以下、Kiko) :何度目だろう、わからないほどたくさん来てるよ。10回〜15回くらいじゃないかな。去年も来たし、2006年、2010年にもラウドパークに出てる。
- --- Dr. : 日本の印象はいかがですか?
-
Fabio :日本の文化もオーディエンスも大好きだよ。スシもね。
- --- Dr. : 日本のオーディエンスは他の国と違いますか?
-
Fabio :うん、もちろん違う。特に南米やスペインなどのラテン系のオーディエンスと比べるとね。彼らはとてもアグレッシヴで大騒ぎするんだよ。日本人はもっと静かで真面目だろ。
- --- Dr. : デビューアルバムから20年が経ちますが、当時を振り返ってみてどうですか。
-
Kiko :年をとったね。20年というと長い時間だけど、当時のことは詳細まで全部覚えてるよ。ホテルやスタジオや、その時の会話に至るまで。それぞれのアルバムのレコーディングについてすべて細かく覚えているんだけど、時間の概念を喪失しているというのかな。改めて振り返ってみると、実に長い時間が経過していると気づくんだ。その時自分がどんな気持ちであったのかとか、バンドのメンバーとの関係について考えてみると、確かに当時俺は21歳で、今とは違って皆若かったなと思う。経験もなくてね。それ以外は、そんなに年月が経ったという自覚がないよ。それが年をとるということかな。
- --- Dr. : "Angels Cry" の20周年記念ツアーを収録した CD と DVD が11月に日本で発売されますが、ここでも Fabio が歌っていますね。最近のライブは殆どあなたが歌っているのですか?
-
Fabio :うん、そうだよ。この DVD が素晴らしいのは、Tarja (ex-Nightwish) や Uli Jon Roth のような特別ゲストを迎えたり、特別なセットリストがプレイされているところさ。ステージもとてもユニークだよ。クラシックの楽器を使ったりね。あのツアーのエネルギーが封じ込められてるというのかな。プレイもタイトだし。これは俺にとって最も重要なことなんだけど、普通に音楽を聞きたければ家で聞けば良いんだ。でも「ショウ」が見たいのだとしたら、それはただ音楽を聞くという行為だけじゃなく、視覚的な面も非常に重要になる。DVD を見てもらえばわかるけど、俺たちはただ黙々と上手に楽器を演奏しているわけじゃない。エネルギーを持って、楽しみながら演奏しているんだ。これはバンドにとって大切なことだよ。
- --- Dr. : 最初にコラボレーションをしたのはいつですか?
-
Kiko :70000 Tons of Metal という、アメリカの船上フェスティヴァルでだよ。Fabio はキャリアもあり、彼の歌も好きだったし、彼も俺たちのことを知っていたので、彼を誘ってみたんだ。そしたら引き受けてくれてね。そのフェスで2回のショウをやったんだけど、エネルギーであるとか、彼との関係などもすべてうまく行ってね。バンドのメンバーも皆彼のことを気に入ったし、とても心地が良かった。その後、別のフェスティヴァルでも歌ってもらったんだ。それから各地のプロモーターから声がかかってね。フェスティヴァルというのはそこに参加した人しか見られないものだからね。それじゃツアーをやろうという話になった。なのですべてが有機的につながって行ったというのかな。一回目のショウがうまく行き、それじゃ二回目をやってみよう、やがて多くのプロモーターから依頼を受けてチリ、コロンビア、ブラジル、メキシコなどをツアーして、それもうまく行ったから、それじゃ DVD をやろうという感じさ。最初は船上フェスティヴァルだけのつもりだったのだけど、あれはそんなに大きなフェスじゃないよね、2000人くらい?
- --- Dr. : それはあなたたちにとってもファンにとっても素晴らしいことですね。
-
Kiko :曲が良くて、さらに良いエネルギーがあれば、それをファンに伝えるのは簡単だからね。
- --- Dr. : 新たな専属ヴォーカリストを迎える予定はありますか?
-
Kiko :Fabio がいるからね。
- --- Dr. : Fabio がバンドに正式加入する予定はあるのでしょうか。
-
Kiko :それについては、まだあまり話しあってないね。とても事がうまく進んでいるし、年末に向けてまだショウの予定もあるし、DVD のプロモーションもあるしね。その後は、やはりアルバムを作るのが自然の流れだよね。新曲を書いたり。もうすぐその時がくるだろうけど、その事について Fabio に相談しようと思ってたんだ。アルバムで歌いたいか、っていう話は2,3ヶ月後にするつもりだったのに、なんか君の前で今話しちゃってるね(笑)。
- --- Dr. : Fabio は世界で最高のシンガーの一人ですからね。
-
Fabio :どうもありがとう。
- --- Dr. : あなたは歌手として正式な訓練を受けているのですか?
-
Fabio :いや、人生の中でレッスンを受けたのは10回だけだよ。オペラのレッスンをね。俺の声質はとてもオペラにあっているらしい。(イタリアのオペラ歌手 Luciano) Pavarotti のスタイルさ。
- --- Mirai Kawashima(以下Mirai) : イタリア人は、元々高音域を歌うのに優れているというのを読んだことがあるのですが。というのも、ベルカント唱法は...
-
Fabio :いや、イタリア人というのはフルヴォイスで歌うのが好きなんだよ。胸に響かせるんだ、ミックスヴォイスを使わずに。太い声のまま高音まで持っていくんだよ。普通は低音では太くても、高くなるに連れてどんどん声は細くなっていく。最も難しいのは、太いままで高音に持っていくこと。だけどもちろん人間には限界というものがある。フルヴォイスで持っていける最高音というのがね。イタリア人やラテンの人たちは、いつでもフルヴォイスで歌おうとするんだ。鼻に響かせるような声の出し方が好きじゃないんだ。
-
Fabio :そうそう、知らない? Eros Ramazzotti。凄く有名な歌手なんだけど。
- --- Mirai : 非常に興味深いお話なのですが、残念ながら時間が無くなってきてしまいました。
- --- Dr. : では最後になりますが、あなた(Kiko)のソロライブ DVD がリリースされますね。このコンサートは、ロック、アコースティック、ブラジリアン・ジャズの3つの要素から構成されているそうですが、あなた自身、どのような音楽から一番影響を受けましたか?
-
Kiko :一番はロックだけど、俺はブラジルで育ったからブラジルの音楽も大好きで、ブラジリアン・ジャズはずっとプレイしてきたんだ。ギターの練習は最初、アコースティック・ギターでやっていたから、これも取り入れたかった。このコンサートでは、俺と関わりが深い3つの違った側面を見せたかったんだ。
Fabio Lione(以下、Fabio):俺は2回目だよ。
Kiko :もっと音楽に集中してくれるよね。日本人の素晴らしいところは、大きな歓声をあげていても、アコースティックの曲になると、静かにしてくれるところさ。MCもきちんと静かに聞いてくれるだろ。ラテン系の奴らはそんなことお構いなしに大騒ぎだからね。日本人は "Carry On" のような曲では歓声をあげたりジャンプしたりしていても、バラードになると「良し聞こう」という感じになるから素晴らしいよ。
Fabio :俺は初めて "Angels Cry" を聞いたときのことを覚えてる。ドイツで、Sascha (Paeth)と一緒にいたんだ。とても印象深かったよ。
Kiko :Sasha は "Angels Cry" のアシスタントプロデューサーだよ。Charlie Bauerfiend がメインのプロデューサーだった。Sasha はその後素晴らしいプロデューサーになったね。
Fabio :Rhapsody のプロデュースもしてもらったし、Edguy、Kamelot とかもやってるよね。彼は人間としても素晴らしい。
Kiko :彼は当時、まだアシスタントだったのだけど。
Fabio :2000人くらいだね。それからバンドが40くらいだから、ミュージシャンとスタッフが300人。
Kiko :そうだね。DVD はとても美しい仕上がりになってるよ。とても良いエネルギーを持ってるね。長くバンドを続けていると、エネルギーを保つのが大切になる。力があれば、エネルギーが湧いてきて幸せな気分になるだろ。俺たちは曲に自信がある。メンバーそれぞれが曲を書いているけど、曲はその時々の俺たちの気持ちの表れさ。メンバーの間で化学反応も起こるし。
Fabio :これまでもとてもうまく行ってるからね。バンドがハッピーなのが一番だよ。みんなも喜んでるし、その方向で今後もやって行くと思うよ。
Kiko :余計な期待やプレッシャーを誰にもかけずに事を進めて行くというのも大事なことだよ。一つ一つショウをこなして、DVD をリリースして、ファンの声を聞いてね。Angra と Fabio の共同作業がどのくらい好意的受け止められているのかを聞いてさ。
Fabio :最も重要なことは、俺が歌うか歌わないかじゃないんだ。バンドとして良いアルバムをリリースすることが何より大切なことだよ。シンガーが誰であってもね。
Kiko :Fabio が歌えば良いアルバムになると思うけど...
Kiko :彼の声は曲作りのインスピレーションになるんだよね。バリトン、テノールのイタリアのオペラシンガーのような声だろ。
Kiko :君の声域はテノール?
Fabio :そうだよ、だけどバリトンに近いテノールなんだ。
Kiko :低い音域だね。
Kiko :Eros Ramazzotti みたいな歌い方だろ。
Kiko :日本ではあまり知られてないのかな。とにかく鼻がつまったみたいな声で歌うんだよ。
Fabio :それからもちろんイタリア語の発声の仕方と歌というのも関係がある。イタリア語というのは、鼻腔への共鳴を、思いっきりバンと前に出すというのかな。他の言語はもっとスウィートだろ。
Kiko :ポルトガル語やフランス語は発音の位置が奥だね。
Fabio :なので、イタリア人というのは、自然に頭の後ろなどに、声を思いっきり響かせるポジションが元々出来ているんだ。つまりファルセットの場合でも、イタリア人は声を響かせるコントロールができやすいということだよ。鼻ではなくて、頭の後ろに響かせるやり方。顔の前に響かせるというのはテノールだね。
言語による発声の違いは非常に興味深い。元々クラシックのオペラにおける唱法は、イタリア語を背景に発達したものだ。そしてヘヴィメタルのハイトーン唱法とオペラ唱法との近似性はしばしば指摘されるところ。つまり、イタリア語を母国語とする人間は、それだけでいわゆるヘヴィメタル的な歌唱法を行う際に有利である可能性があるのだ。ずっと昔、テレビでシブがき隊の薬丸氏が、アメリカ人から英語を習うという番組をやっていた。いくらアメリカ人のように発音しようとしてもうまくいかない薬丸氏は、「アメリカ人と日本人じゃ筋肉が違うんだよ!」とギブアップ。それに対しアメリカ人講師は「ソンナコトナイヨ、ダレデモキンニクハイッショ。」と反論していた。だが、私は薬丸氏の見解が正しいと思うのだ。実際言語によって発声法というのは大きく異なる。日本語と英語というまったく異なる言語を生まれた時からずっと話していれば、当然発声に関わる筋肉の発達状況は変わってくるに違いない。発声方法の相違と一言に言っても、そこには多数の要素がある。口の形、舌の位置はもちろんのこと、喉仏の位置、声を響かせるポイント、そして口内での発音の位置。口内での発音の位置というのはわかりにくいかもしれない。Kiko が「ポルトガル語もフランス語も発声される位置は後ろの方」と言っている通り、言語には発声される位置の相違がある。試しにア・エ・イ・オ・ウとゆっくり発音してみて欲しい。演劇部がよくやる発声練習のアレである。ア・エ・イ・オまでは、発音の位置がどんどん喉の方に移っていくのが実感できるはず。そして多くの人が、ウでまた前に戻るだろう。これは英語などの "u" と日本語の"ウ"の発音の違いのせいである。英語における "u" は "o" よりもさらに奥で発声される。なので、a-e-i-o-uというのは、本来発声位置がどんどん深くなっていく順なのだ。そして言語全体で見ても口の前の方で発声する傾向にある言語と、奥の方を使う言語がある。つまり、日本語と英語を例にとれば、その差はLとRの区別の有無、英語の方が母音の数が多いというような表面的な部分だけではなく、そもそも体の使い方からしてまったく違うのだ。そして、西洋音楽における「良いヴォーカル」という基準の中で、日本語というまったくの異言語を話し育ってきた我々日本人が勝負するには、そもそもの喉回りの発達の仕方の部分でハンディキャップを背負っていると言えるのである。日本人の発声が絶対的に悪いと言っているのではない。ロックやヘヴィメタル、あるいはオペラなど、西洋の美学は西洋の言語を背景に発達したものであるから、その基準では日本人は不利だということ。そしてその正反対の位置に、オペラを産んだイタリア語を母国語とするイタリア人がいるのではないか。イタリア人は、先天的にヘヴィメタルヴォーカリストとしての素養を多く持ち合わせているのではないか。Fabio が言うように、イタリア人は日常の会話を通じて、声を存分に響かせる訓練を毎日自然にしているのではないか。その辺り、世界最高峰のイタリア人ヘヴィメタル・シンガーに、もう少し深く聞いてみたかったのだが、無念のタイムアップとなってしまった。
少々話が難しくなってしまった気もするが、そんな貴重な Angra と Fabio のコレボレーション、ブラジルはサンパウロにおけるライヴ模様を収めた CD、DVD がリリースされる。今回の Fabio の話を念頭に置いて「Angels Cry - 20th Anniversary Tour」の CD を聴き、DVD 見れば、きっと新たな発見があるはず!彼はイタリア人の意地にかけて、高音域もフルヴォイスで挑んでいるのだ!
川嶋未来/SIGH
https://twitter.com/sighmirai
http://twitter.com/sighjapan
SIGH 関連 Links
|
|
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
%%header%%
%%message%%
2CD
%%header%%
%%message%%
%%header%%
%%message%%
%%header%%
%%message%%
ROF 最新ライヴアルバム!
Live: From Chaos To Eternity
Rhapsody Of Fire
価格(税込) :
¥3,143
会員価格(税込) :
¥2,891
メーカー取り寄せ
%%header%%
%%message%%