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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第90号:ドゥダメル、シューベルトを語る! ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

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2014年1月10日 (金)

ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ジルベスター・コンサートが急遽DCHで中継決定!

2014年のヨーロッパ・コンサートは、お膝元ベルリンで開催。指揮はバレンボイム!

2014年5月1日

【演奏曲目】
ニコライ:《ウィンザーの陽気な女房たち》序曲
エルガー:《ファルスタッフ》
チャイコフスキー:交響曲第5番
指揮:ダニエル・バレンボイム

 今年のヨーロッパ・コンサートの会場、指揮者、プログラムが発表になりました。会場は、2000年以来14年ぶりにベルリン・フィルハーモニー。これはベルリン・フィルの本拠地であるこのホールが、今シーズン開場50周年を迎えたためです。
 また指揮者は、バレンボイムが担当します。彼は1964年6月に、ブーレーズの指揮でピアニストとしてデビューしました。その意味で、同様に50周年を祝う機会となります。
 プログラムは、生誕450周年となるシェイクスピアにちなむ英独の作品と、チャイコフスキーの「交響曲第5番」となっています。

ベルリン・フィル公式サイトの記事を読む

エリザベス女王より、ラトルにメリット勲章が授与

 サー・サイモン・ラトルが、エリザベス2世よりメリット勲章を授与されることになりました。メリット勲章は、文化、政治、学術で功績を収めた人物に贈られる勲章で、イギリスの勲章としては最高クラスに数えられるものです。受章者は騎士団に所属し、その定員が24名に限られていることから、きわめて高い栄誉とされています。音楽家ではこれまでエルガー、メニューイン、サザーランドが受章しています。
 ラトルは、「勲章を与えられることは、私の人生でもっとも驚くべき事件のひとつです。これまでの受章者のリストを見たときには、圧倒されました。今でも圧倒されています。素晴らしい栄誉で、深く感動しております」とコメントしています。

 最新のDCHアーカイブ映像

ジルベスター・コンサート2013の映像が期間限定でアップ

【演奏曲目】
ブラームス:ハンガリー舞曲第1、3番
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
ヒンデミット:交響的舞曲第3番
ドヴォルザーク:3つのスラブ舞曲
ハチャトゥリアン:《ガヤネー》より4つの舞曲

ピアノ:ラン・ラン
指揮:サー・サイモン・ラトル

 2013年12月31日、ベルリン・フィルのジルベスター・コンサートが、デジタル・コンサートホールで初めて中継されました。プログラムは、今年も舞踏音楽をテーマとしています。お馴染みのブラームス、ドヴォルザークの舞曲集に加え、ヒンデミットの交響的舞曲、そしてハチャトリアンのバレエ音楽《ガヤネー(ガイーヌ)》より、有名な〈剣の舞〉を含む4つの舞曲が演奏されています。指揮は、首席指揮者のサー・サイモン・ラトルです。
 一方スペシャル・ゲストは、スター・ピアニストのラン・ラン。ラトル&ベルリン・フィルとのCDがリリースされた、プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」での登場です。技巧性の高い作品だけに、ラン・ランの持ち味が存分に発揮されています。
 この映像は、1ヵ月間の期間限定公開となりますので、お早めにご覧ください。

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ボザール・トリオのM・プレスラーが90歳でベルリン・フィルにデビュー
日本時間2014年1月12日(日)午前4時

【演奏曲目】
モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番
ショスタコーヴィチ:交響曲第11番

ピアノ:メナヘム・プレスラー
指揮:セミヨン・ビシュコフ

 ピアニストのメナヘム・プレスラーは、音楽界の「生きる伝説」と言っても過言ではない存在です。17歳でデビューを果たし、サンフランシスコのドビュッシー・コンクールで優勝(そのときの審査員のひとりは、フランスから亡命したダリウス・ミヨーでした)。その後、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団との共演でソロ・ピアニストとしての国際的なキャリアを歩み始め、1955年夏にタングルウッドでピアノ三重奏団のボザール・トリオを結成。実に53年間に渡って活動をすることとなります。室内楽の分野でこれほど長い間、国際的な活動をしたグループは例がありません。現在90歳のプレスラーが今回セミヨン・ビシュコフ指揮ベルリン・フィルの定期演奏会に登場します。モーツァルトのピアノ協奏曲第17番において、至芸ともいえる演奏を聴かせてくれるはずです。
 後半はショスタコーヴィチの交響曲第11番。後のロシア革命につながる1905年の「血の日曜日事件」を描写した作品で、作曲当時の「ハンガリー動乱」との関連性も指摘されています。「私はショスタコーヴィチのようにソ連時代の集団テロを経験したことはないが、彼が生きた当時の環境や彼自身に身を重ねることはできる」とビシュコフは語ります。1980年代、カラヤンはビシュコフ指揮ベルリン・フィルのショスタコーヴィチ録音を聴いて、彼を自らの後継者候補のひとりに挙げたと言います。迫力みなぎるショスタコーヴィチ演奏にご期待ください。

生中継:日本時間2014年1月12日(日)午前4時

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ラトル指揮のレイト・ナイト・シリーズ第2回は、フランス音楽がテーマ
日本時間2014年1月12日(土)午前6時30分

【演奏曲目】
ラヴェル:マダガスカル島先住民の歌
デュティユー:ザッハーの名による3つの詩節
ドラージュ:4つのインドの詩
イベール:ディヴェルティメント

ソプラノ:リサ・ミルン
チェロ:ソレーヌ・ケーマレック
指揮:サー・サイモン・ラトル

 第2回レイト・ナイトでは、サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルのメンバーが「フランスのエスプリ」をテーマにお届けします。ラヴェルの《マダガスカル先住民の歌》は、1925年から26年にかけてエヴァリスト・パルニーの詩に曲付けしたもので、ラヴェルは作品について「この歌は劇的で、実のところ官能的な新しい要素を導入していると思う。一種の四重奏を形作っており、声がその中心的な楽器となっている。何よりも重要なのは簡素なことである」と書き記しています。続くデュティユーのチェロ・ソロのための《ザッハーの名による3つの詩節》は、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチの主導によりスイスの指揮者パウル・ザッハーの70歳の誕生日に合わせて書かれた作品。SACHERの6つの頭文字に因んだeS (=E♭), A, C, H, E, Re (=D)の音が、各詩節をつなぐ役割を果たしています。このほか、ラヴェルの弟子だったモーリス・ドラージュが1912年インドへの旅行中に作曲した《4つのインドの詩》、軽妙な味わいを持つイベールのディヴェルティメントと、才気に富んだプログラムをお楽しみください。

生中継:日本時間2014年1月12日(土)午前6時30分

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メータのブルックナー「第9」
日本時間2014年1月19日(日)午前4時

【演奏曲目】
クラム:《いにしえの声》
ブルックナー:交響曲第9番

ソプラノ:マーリス・ペーターゼン
指揮:ズービン・メータ

 1月のハイライトは、メータ指揮のブルックナー「交響曲第9番」でしょう。ベルリン・フィルの主要レパートリーであるこの曲は、最近ではラトルが第4楽章完成版で指揮しています。メータは、2012年には「交響曲第8番」を振っており、今回さらにブルックナーの大曲に臨みます。
 プログラムの前半では、クラムの《いにしえの声》が演奏されます。この作品は、ロルカの詩を題材として1970年に作曲され、ソプラノの超絶技巧を求めます。当晩は、バロックから現代ものまで幅広いレパートリーを持つマーリス・ペーターゼンが独唱を務めます。

生中継:日本時間2014年1月19日(日)午前4時

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 アーティスト・インタビュー

グスターボ・ドゥダメル
「大人は、すでに体験したものを思い返して、憧れるものですが、若い人はまだ経験したことのないものに憧れるのです」
聞き手:エディクソン・ルイス(ベルリン・フィル コントラバス奏者)
2013年12月6日

【演奏曲目】
ストラヴィンスキー:小管弦楽のための組曲第1、2番
シューベルト:交響曲第4番
ベートーヴェン:交響曲第4番

指揮:グスターボ・ドゥダメル

 12月に客演したグスターボ・ドゥダメルとエディクソン・ルイスの対談をお届けします。両者は、共にベネズエラのエル・システマの出身。ここでは、友人同士のリラックスした対話が聞かれます。
 後半では、シューベルトが未体験の悲しみを予感して作品を書いた、ということがテーマになっています。それをドゥダメルは、題字にもある通り「未来への憧憬」と捉えています。これに対するものとして、大人の「過去への憧憬」が存在するわけですが、30歳を越えた彼自身は、これまでの自分のキャリアを、どちらの視点から捉えているのでしょうか。

(ドゥダメルとルイスが、フィルハーモニー内の「フィルハーモニッシェ・ゲマインシャフト(サロン)」に入ってゆく)

エディクソン・ルイス 「さあ、こっちです」

ルイス 「(部屋を見せながら)これが収集品です。バーンスタインの本…」

グスターボ・ドゥダメル 「カラヤンの胸像」

ルイス 「これはフルトヴェングラーのタイプライターです」

ドゥダメル 「本当に?」

ルイス 「本当ですよ」

インタビュー開始

ルイス 「ベートーヴェンやシューベルトの曲を演奏する時は、ベルリン・フィルはどのように反応しますか。例えばショスタコーヴィチやプロコフィエフ、ラテン・アメリカを演奏する時と比べた場合に」

ドゥダメル 「ベルリン・フィルは、これらの作曲家では、作品でどのようなことが問題になっているかをよく分かっています。これは非常に重要なことです。彼らは単に音符を弾けるというだけでなく、作曲家自体をよく知っているのです。それは“伝統”と呼ぶこともできますが、彼らはどこで呼吸すべきか、フレーズのどこにタメがあるかをよく理解しているのです。オーケストラはそれを直感的に行うことができます。
 同時にそれは、解釈の問題でもあります。指揮者の解釈だけではありません。もちろん指揮者はアイディアを持ち込むわけですが、演奏の結果には指揮者とオーケストラの両方が関与しています。様々なアイディアについて意見交換しあい、その積み重ねとしてひとつの解釈が生まれます。音楽を作り上げていく上で面白いのは、まさにこの点です。私は、オーケストラが作品を非常によく理解しているということを感じます。そしてその土台の上で、作品はまったく違う解釈になり得るのです。例えばよりヴィブラートを多くするとか、よりゆっくりとしたテンポを取るとか、幅広い響きにするとか、オーケストラに提案します。しかし、どの作品にも独自の核があって、そこから様々な解釈を引き出すことができるのです」

ルイス 「独自の色合い、特色ですね」

ドゥダメル 「そしてこの伝統は、オーケストラのなかで世代を越えて受け継がれてゆきます。驚くべきなのは、個々の楽員たちが、非常に異なった国から来ているということです。もちろん“ドイツ人はこの伝統のなかで育った”とは言えるでしょう。しかし他の団員たちも、その伝統を吸い込んで、自分のものにしています。例えば君は、ベネズエラ出身ですね。でも、ベルリン・フィルの伝統を吸収しています。そこです。
 もうひとつ、私はいつも若いオーケストラに言うようにしています。シューベルトがこの交響曲を書いた時、彼はフリーの作曲家で、非常に若かった。具体的な注文があったから書いたのではありません。作曲家として名を成したいから、そして音楽をすることが楽しいから書いたのです。有名なシューベルティアーデというのがありましたよね。これは音楽家や知識人が、音楽を楽しむために開いたのでした」

ルイス 「皆で室内楽を演奏したり、歌を歌ったり。詩人もいた…」

ドゥダメル 「その事実は、作品自体と切り離すことができません。そうした背景や人間関係が、すべて作品のなかに反映されているからです。音楽とは、非常に総括的なものと言えるでしょう。そのことを考えに入れなければならない。人間の本性そのものです。音楽のより深い意味とは、このことだと思います」

ルイス 「シューベルトのこの交響曲では、私はとても好きなパッセージがあるんです(コントラバスを取って弾く)」

ドゥダメル 「一番下のバスのラインに、このようなフレーズが隠されていて、それがメロディーに展開して行くというのは驚きですね。若い人間のメランコリーというのは、非常に突き刺さるような強さを持っている…」

ルイス 「どこか熱を帯びていますね」

ドゥダメル 「その熱というのは、まだ体験したことのないものに向けられていますね」

ルイス 「憧れです」

ドゥダメル 「その通り。普通大人は、すでに体験したものを思い返して、憧れるものですが、若い人はまだ経験したことのないものに憧れるのです。それがこのメロディーのなかには感じられる。ほとんど子供じみていると言ってもいいくらいシンプルなメロディーですが、そこに非常に深いものがあります」

ルイス 「このパッセージを弾くと、いつもゾクゾクするのです」

ルイス 「ひとつ個人的な質問したいのですが、今君は30代になってどう感じていますか。エル・システマから巣立って、――イエス様とマリア様のおかげで――世界的な指揮者になったわけでしょう?僕たちは、君がそうなったことを、今でも本当に誇りに思っているのですよ」

ドゥダメル 「でも僕は、ひとりでそうなったわけではないのです。オーケストラがいるからそうなれた」

(ルイス、“そんなことはない”、という身振り)

ドゥダメル 「もし僕がフィルハーモニーの舞台にオケなしでひとりで立って身振りしたら、皆変人だと思いますよ」

ルイス 「僕たちは、アブレウ先生が言ったことをよく聴いて、それを守ったと思います。つまり“成功しても、それに甘んじてはいけない。そして失敗しても、くじけてはいけない”ということです」

ドゥダメル 「まったくその通りです」

ルイス 「僕は君の友人としてだけでなく、客観的に言いたいのですが、君はその教えを本当によく聴いて、ここまで来たと思います。君は皆の手本です。一緒に演奏できて、本島にありがたく思っています」

ドゥダメル 「こちらこそ、ベルリン・フィルと仕事させていただて、僕にとってこそ名誉です。ベルリン・フィルは世界のオーケストラです。ドイツだけでなく、世界が見上げる存在です。ここに来られることは、本当に幸せなことです」

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

2015年のウィーン・フィル、ニューイヤー・コンサートは、メータ指揮
 来年のウィーン・フィル、ニューイヤー・コンサートの指揮者が、ズービン・メータになることが発表された。メータは、1990年、95年、98年、2007年に続き、5回目の登場。ボスコフスキー、クレメンス・クラウス、マゼール等、同コンサートを最も多く指揮した指揮者のひとりに数えられる。ウィーン・フィルは、招聘を「メータは、現代の最も重要な指揮者であるのみでなく、偉大なヒューマニストである」と理由付けている(写真©Wilfried Hösl)。

クロアチアの指揮者、ミラン・ホルヴァートが死去
 1月1日、指揮者のミラン・ホルヴァートがグラーツで死去した。享年94歳。ホルヴァートは、アイルランド交響楽団、ORF交響楽団、ザグレブ・フィルの首席指揮者として活躍。オーストリアとつながりが強く、グラーツ芸術大学で指揮法を教え、ファビオ・ルイージの師としても知られる。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2014年1月24日(金)発行を予定しています。
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