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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第99号:ベルリン・フィル特別寄稿「カラヤンの映像作品論」 ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

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2014年8月9日 (土)

ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

DCHでユニテル映像によるカラヤン・シリーズがスタート
 2014年7月16日、ヘルベルト・フォン・カラヤンが没後25周年を迎えます。デジタル・コンサートホールでは、これを記念してカラヤンが60〜70年代に残したユニテル制作の映像を連続公開します。
 内容はユニテル・アーカイブの全容で、約40のタイトルが網羅されています(コンサート映像およびドキュメンタリー)。オリジナルのほとんどが35ミリフィルムで収録されており、それを初めてHDクオリティで起こしたものがアップされます。これまでユニテルの映像は、DVDで発売されていますが、HDのソフトは存在しません。オンディマンド・ビデオとしての公開も初めてで、HDの高画質でカラヤンの映像が観 られるのは、DCHが初めてとなりま す。
 嬉しいのは、DCHユーザーであれば、通常のチケットでこのシリーズも自由に観られること。特別なチケットを追加購入する必要は、ありません。DCHでは、現在200本以上の映像が視聴可能ですが、カラヤン・シリーズは、それをさらに魅力的にするものと呼べるでしょう。
 デジタル・コンサートホールでは、2008年よりベルリン・フィルの演奏会を定期的に中継していますが、2年前から90年代のアバド時代、2000年代初頭のラトルの映像(ユーロアーツ)もアップされています。今回さらに、60〜70年代のカラヤンの映像が加わることになり、80年代を除いたベルリン・フィルの映像作品が、ほぼ網羅される形になります。
 タイトルは、新しいライブ中継のないオフシーズン中を利用して、8月末までに8回22本が公開されます。秋以降には、残りの約20本が数ヵ月にわたって公開される予定です。具体的なスケジュールは、「今後のDCH中継」をご覧ください。

カラヤン・アーカイブ:スケジュールと詳細内容はこちらから

内容:
ベートーヴェン:交響曲全集(67〜72年)
ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》(66年。インタビュー、リハーサル、演奏)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》(77年)
ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス(79年)
ブラームス:交響曲全集(1973年)
ブラームス:ドイツ・レクィエム(78年)
チャイコフスキー:後期三大交響曲(73年)
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番(67年。ピアノ:ワイセンベルク)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番(73年。ピアノ:ワイセンベルク)
ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界》(66年。インタビュー付き)
R・シュトラウス:《ドン・キホーテ》(75年。チェロ:ロストロポーヴィチ)
フランス管弦楽曲集(78年。《海》、《牧神の午後への前奏曲》、《ダフニスとクロエ》第2組曲)
バッハ作品集(67〜68年。ブランデンブルク協奏曲第3番、管弦楽組曲第2番)
序曲集(75年。《エグモント》、《コリオラン》、《魔弾の射手》、《ウィリアム・テル》、《タンホイザー》の各序曲)
ジルベスター・コンサート1978

ヴェルディ:《オテロ》(73年)
ワーグナー:《ラインの黄金》(78年)

ドキュメンタリー「ヘルベルト・フォン・カラヤン〜セカンド・ライフ」(2012年)
ドキュメンタリー「カラヤン、私の見る美」(07年)
ドキュメンタリー「ヘルベルト・フォン・カラヤン」(1978年)
ドキュメンタリー「マエストロ・フォー・ザ・スクリーン」
新作ドキュメンタリー(2014年。ベルリン・フィル制作)

カラヤンの映像芸術作品について
〈特別寄稿:ベルリン・フィル広報部〉

 ここでは、ベルリン・フィルの広報部が作成したカラヤンの映像作品についての記事を、全訳します。カラヤンの発想や方法論を手際よく要約しているだけでなく、その映像作品の意味合いを興味深く指摘しています。

 ヘルベルト・フォン・カラヤンは、今日に至るまでクラシック音楽の代名詞と言えるでしょう。彼は完璧さの象徴であり、その息の長いレガート、磨きぬかれた響きは、没後25年を経た現在、伝説となっています。彼の楽器となったのが、1956年より没年の89年まで首席指揮者を務めたベルリン・フィルでした。彼らの芸術は、1963年からは、建築としても一級の存在であるベルリン・フィルハーモニーで育まれました。
 カラヤンの解釈は、単なる表面の美しさに留まるものではありませんでした。むしろ彼は、彼自身の手本とも言えるアルトゥーロ・トスカニーニとヴィルヘルム・フルトヴェングラーの美点を、ひとつに統合することを試みたのです。カラヤンはトスカニーニの明晰さと直截性を愛していましたが、「彼には繊細さ、巧緻さが欠けていた」同様にカラヤンは、トスカニーニには、フルトヴェングラーの特徴が欠けていると考えていました。「彼には、ラインが不足している。行間に潜むもの、うねりはフルトヴェングラーのものだ。私は、このふたつの要素を融合させることができるのではないかと考えた。両者は、決して対立するものではない」
 カラヤンは、この目標を達成するために、忍耐強く努力しました。彼は驚異的なオーラでオーケストラを支配しましたが、同時に団員に自由を与えなければいけないことを理解していました。彼は乗馬を例に引いて説明しています。「柵を越えるためには、馬を持ち上げようとしてはいけない。馬の方が私を持ち上げるのだ」彼はリハーサルでは、すべてを厳密に練習することはありませんでした。そうではなく(フルトヴェングラーと同様に)、事故が起きやすい個所、とりわけテンポの転換句に集中して訓練したのです。つまり団員を特定の点で指示はするものの、実際に「跳ぶ」ことは、彼ら自身に任されていました。この綿密なプランと自発性は、明確なコンセプトと自在な響きの広がりを持ったカラヤンの録音のなかに、はっきりと聴き取れるでしょう。
 カラヤンの映像作品は、彼の音楽作りのもうひとつの側面、すなわち指揮者とオーケストラの融合を示すものです。彼はこれらの映像で、ライブ演奏会の記録とは異なった、美学的コンセプトを狙っていました。カメラのアングルは綿密に計算され、多くの場合で音声と映像が別々に収録。多くの場合において、すべてはスタジオで撮影されています。その際、団員は個人というよりは、均質な楽器群として感じ取られるように撮られています。つまりベルリン・フィルは、ひとつの巨大な楽器として表現されているわけです。そしてカラヤン自身は(やや非現実的かつ象徴的に)、オーケストラの前ではなく、真ん中に立っています。
 このすべては、人工的でこの世のものとは思われない雰囲気を漂わせていますが、同時に指揮者とオーケストラの合一を示していると言えるでしょう。それはまぎれもなく、カラヤンとベルリン・フィルの最も幸福な時期を象徴しています。この映像が収録された時代は、両者がお互いを支え合った最も実り大きな時期でした。ベルリン・フィルがカラヤンの理想を献身的に実現した一方、カラヤンはベルリン・フィルの能力から強いインスピレーションを受けたのです。この映像の魅力は、その様子を鮮烈に表現していることに違いありません。

カラヤン・アーカイブ:スケジュールと詳細内容はこちらから

HMVだけの特別キャンペーン:HMVオンラインでシューマン交響曲全集をお求めの方に、抽選で10名様に非売品DVD「ラトル指揮マーラー交響曲第3番」をプレゼント

 レーベル・スタートを記念して、HMVオンラインでシューマン交響曲全集(輸入盤・国内盤不問)をお求めの方から、抽選10名様にベルリン・フィルの特別DVD「ラトル指揮マーラー交響曲第3番」をプレゼントいたします。

【演奏曲目】
ブラームス:《ハープが豊かに響きわたる》
ヴォルフ:《妖精の歌》
マーラー:交響曲第3番

ソプラノ:アンケ・ヘルマン
アルト:ナタリー・シュトゥッツマン
ベルリン国立大聖堂少年合唱団
ベルリン放送合唱団女声団員
指揮:サー・サイモン・ラトル

2011年2月11日、ベルリン・フィルハーモニーでの収録
演奏時間:162分

 この録音は、2011年2月にマーラー全曲演奏ツィクルスの一環として行われた演奏会の収録映像で、これまで一般に発売されたことがない貴重なDVDです。ラトルの指揮のもと、ナタリー・シュトゥッツマン(アルト)、ベルリン放送合唱団女声団員、ベルリン国立大聖堂少年合唱団が参加。ラトルの曲目解説映像も付いた、ファン垂涎のタイトルとなっています。
 この演奏について、『レコード芸術』誌海外レポートでは、「ベルリン・フィルは、ラトルを信頼して素直に身を任せた結果、自らの能力を最大限に出し切っていた。さり気ないフレーズに込められる表現密度が並ではなく、聴いていて“まぎれもなく世界一のオケだ”と震撼させられる。その演奏精度、響きの豊麗さは、両者が1段上の次元に達したことを伝えていた」と評されています。
 応募方法は以下の通り。メールにお客様の住所、氏名、またシューマン交響曲全集(輸入盤・国内盤不問)をご購入になった際の注文番号をご明記の上、hmv@berliner-philharmoniker.deまでお送りください。必ず実名でご応募いただけるよう、お願いいたします(お預かりした個人情報は、当キャンペーンのためだけに使用され、他の目的には当てられません)。締切は、8月31日。皆様のご応募をお待ちしております。

応募はこちらから

交響曲全集 ラトル&ベルリン・フィル(2CD+ブルーレイ)

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シューマン:交響曲全集 ラトル&ベルリン・フィルハーモニー(2CD+ブルーレイ)

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発売日: 2014年06月30日

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【連載】「ベルリン・フィル・レコーディングス」制作の舞台裏
インタビュー:クリストフ・フランケ(録音プロデューサー)

 当コーナーでは、ベルリン・フィルの自主レーベルからリリースされた「シューマン交響曲全集」の制作背景についてお届けしています。今回フォーカスされるのは、録音の収録。DCHおよび「ベルリン・フィル・レコーディングス」の芸術プロデューサー兼トーンマイスターを務めるクリストフ・フランケ氏に話を聞きました。
 今回の録音は、ハイレゾ・フォーマットで収録されており、オーディオ的な観点からも注目を集めています。フランケ氏がどのようなフィロソフィーをもとに録音を行ったかが、伺える内容ですが、同時にそれが、実際にどのような音になったかを確認することも、聴き手にとっては興味深いでしょう。「シューマン交響曲全集」を聴かれた方、ハイレゾ・ファンには、必読の内容です。

クリストフ・フランケ:
 我々のシューマン全集は、特別なものとなったと思います。録音と編集作業は、もう数ヵ月前にになりますが、私にとってはエキサイティングなプロジェクトで、まだとても興奮しています。
 一般に録音では、音楽の「アウラ」が伝わることが重要です。「アウラ」とは、ドイツの哲学者ヴァルター・ベンヤミンの概念で、「何ものにも代え難い一回性の特別な雰囲気」のことを指します。しかし「アウラ」は、レコードのように「複製」されることで、失われる可能性があります。我々は録音で、演奏の手に取るようなリアリティとマジック、つまり「アウラ」が維持されることを最大の目標としました。
 このように言うと、非常に哲学的な感じがしますが、実際には具体的な状況と結びついています。音楽の聴き手には、3つの種類があると思います。まず「音楽そのものを聴く」タイプ。例えばスコアの形式や展開、技術的な完成度を聴くリスナーです。2番目は、「響きを聴く」タイプ。個々の楽器や全体の響きに注視するリスナーです。そして3番目は、録音の技術的側面を聴くタイプ。ダイナミックレンジ、響きの透明感、ピアニッシモ、フォルティッシモのクオリティ、完全な静寂等に注目するタイプです。ここで我々は、どのグループも満足させることを狙っています。
 音楽的には、我々は作曲家、そして指揮者の意図を、できるかぎり忠実に再現することを目指します。音楽の流れを理解できるようにし、個々の楽器が聴こえるようにします。くわえて技術的な完成度。ライブでは、メンバーに感情の赴くままに自然で生気に満ちた演奏をしてもらいます。そこでライブの雰囲気をとらえ、その後で修正セッションを設けて、細部を直す、というプロセスを取るわけです。
 響きという点では、「フォーカス&リング」という考え方にのっとってミキシングを行います。これは、聴き手がある楽器に意識を集中=フォーカスする一方で、その周り=リングの響きも聴いている、という状況を指します。つまり、個々と全体のバランスをはかり、その両方をミックスするかたちで、聴き手にとって最も自然に音楽に没入しやすい音場を作り上げるのです。具体的には、オーケストラのプレゼンス、個々の楽器の明瞭さ、空間そのものが感じられること(とりわけサラウンドでは、フィルハーモニーの音場が再現されること)が重要な基準となります。
 これを実現するために使用する技術は、もちろん「目的に至る手段」ですが、非常に重要な手段でもあります。私とエンジニアルネ・メラーは、もちろん技術が大好きですので、新しい技術を試すことは楽しいのですが、ここでは最先端の技術水準を実現するべく、努力をしました。今回の録音は192kHz / 24bitのフォーマットで行われています。同時に、未来の録音技術を先取りするシステムを導入しました。つまり「ネットワーク」の使用です。「ネットワーク」とは、パソコンの世界で使われている言葉ですが、大量のデータを送信できるシステムのことです。オーディオの世界では、これまで大量のデータを送ることは難しかったのですが、最近それを可能にするプロトコルが作られました。192kHz / 24Bitのデータとは、1秒に数メガバイトというもの大量のデータですが、現在では、たったひとつのネットワーク・ケーブルで送信することができます。これを高速プロセッサーで処理し、記録することが可能になりました。このことにより、(場合によっては何十本にもなる)音声のチャンネルを、正確にミックスすることができるようになりました。今回の録音では、その成果が表れています。
 また、音を収録する源であるマイクも重要です。フィルハーモニーでは、マイクをオケの上に吊ることができます。音は、最高の音質を保ったままADコンバーターに送られ192kHzで収録されるのです。音像の全体、つまり90%の音は、原則的にできるだけ少ないマイクで録るようにしました。残りの10%は、サポートマイクを使って楽器の近くで録ります。これは、個々の音を、明瞭に収録するためです。
 こうしたハイレゾの音質がダウンロードという形で一般のリスナーに届くことは、非常にエキサイティングです。私にとっては夢が叶ったという感じです。私が子供の頃は、アナログが全盛でした。192kHzかつ6チャンネルの音声が家庭で聴けるなどということは、驚異的だと思います。皆さんにも、このクオリティをぜひ楽しんでいただきたいと思います。
 同様にブルーレイ・オーディオにも、ハイレゾ音声が収録されています。CDも、決して負けてはいません。収録がハイレゾで行われているため、音質が底上げされています。元々のレベルが高いので、ダウンコンバートしてもそのメディアで最高の音が得られるのです。
 映像について、ひと言付け加えましょう。ビデオは、ライブの雰囲気を伝えるものだと考えています。コンサートでは、個々の小さなミスや、聴衆の雑音といった要素が、どうしても入ってきてしまいます。しかし、それが演奏会という「出来事」の真実の姿であり、ライブ映像は、ある演奏会の生々しい姿をとらえた写真のようなものだと思います。一方オーディオでは、芸術品としての完成度が追求されます。スコアの指示や響きのバランスを、理想化された形で再現しています。今回のエディションにはその両方が入っているわけで、ライブの生気とオーディオの完成度が、共に楽しめます。
 さらにLPも発売されます。LPを手に取るのは、楽しいものです。私はデジタルな人間ですが、LPの魅力には抗し難い。LPは、モノとして手に持てると同時に、デジタル・データのようにコピーすることができません。それはベンヤミンの「アウラ」に通じる、特別な感覚かもしれません。数回聴いた後に針音が生じたとしても、LPが棚に入っているという所有の喜びは、代え難いでしょう。「LPがデジタルよりも優れている」というわけではありませんが、そこにはデジタルとは違った喜びがあります。我々はLPが可能な限り素晴らしいものとなるように、あらゆる努力をしました。
 我々はラトル指揮ベルリン・フィルのシューマン交響曲全集を収録する際に、きわめて大きな喜びを感じました。皆さんにもその喜びを感じ取っていただけることを、心から祈っています。

 最新のDCHアーカイブ映像

カラヤン・シリーズ第1弾は、《新世界》とブラームス交響曲全集

【演奏曲目】
ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界》(1966年収録。インタビュー付き)
ブラームス:交響曲第1〜4番(1973年収録)
ジルベスター・コンサート1978
ドキュメンタリー「ヘルベルト・フォン・カラヤン〜セカンド・ライフ」(2012年)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 カラヤン・シリーズの第1段では、一挙に7つのタイトルが紹介されます。1966年の白黒映像によるドヴォルザーク《新世界》は、スタジオにおける収録。テレビ撮影用の空間と思われる場所で、比較的小編成で演奏されています。カラヤンが「指揮の芸術」について語るドキュメンタリーも見ものです。
 一方、ブラームス交響曲全集は、すでにフィルハーモニーでの収録となっています。聴衆が入ってのコンサートですが、ライブという雰囲気は薄く、カラヤンと団員のアップが多い彼の美学が面目躍如する映像です。演奏は、さすがに全盛期のこのコンビだけあって、完成された響きが強い印象を与えます。
 ジルベスター・コンサート1978は、ポピュラー名曲をあしらった内容。またドキュメンタリー「セカンド・ライフ」は、2012年の視点から、ベルリン・フィル団員やアンネ・ゾフィー・ムター、プロデューサーの証言をまとめた見ごたえのある内容です(英語字幕付き)。

ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界》をDCHで聴く
ブラームス:交響曲第1〜4番をDCHで聴く
ジルベスター・コンサート1978をDCHで聴く
ドキュメンタリー「ヘルベルト・フォン・カラヤン〜セカンド・ライフ」をDCHで観る

カラヤン・シリーズ第2弾:ベートーヴェン《英雄》&交響曲第7番

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第3番《英雄》
交響曲第7番
(1971年収録)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン


 カラヤンは1967年から71年にかけてベートーヴェンの交響曲全集を映像収録しました。これはカラヤンの美学を徹底させたもので、完全にスタジオでのレコーディング。《英雄》と「第7番」は、ひな壇のような三角形のボックスのなかにオーケストラを配し、カラヤンが中央に立って指揮するという人工性の極致のような映像となっています(当時、前衛的な手法で知られた映像監督フーゴー・ニーベリングによるもの)。これはある意味で彼の最もラディカルな映像と呼べるでしょう。さすがにその後は、このスタイルでは制作されませんでしたが、現在観ることができるのは、彼の発想を知る上で重要な一側面であるように思われます。

ベートーヴェン:《英雄》&交響曲第7番をDCHで聴く

カラヤン・シリーズ第3弾:ベートーヴェン《田園》&「第9」

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第6番《田園》(1967年収録)
交響曲第9番《合唱付き》(1968年収録)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 カラヤンは、日本でのものを含めて「第9」の映像をいくつか残していますが、これはその最初のもの。何とカラヤン自身が映像監督を務めたものですが、フィルハーモニーの客席に合唱を配置するという、前代未聞のコンセプトとなっています。その人工性は、時代を感じさせるとも言えますが、映像としては完成されており、逆光で撮影する方法も、独特の美学を放っています。

ベートーヴェン:交響曲第6番《田園》をDCHで聴く
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱付き》をDCHで聴く
カラヤン・シリーズ第4弾:ベートーヴェン交響曲第2・8番

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第2番
交響曲第8番
(1971年収録)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 カラヤンのベートーヴェン交響曲全集のなかでも後期の映像です。実験的な方向性は影をひそめ、比較的通常の収録に近づいています。それまでの極端な接写や、カットのめまぐるしい変動は少なめになり、ある意味で音楽に集中して観ることができます。しかし、全景を避けたり、譜面台が極力画面に入らないようにするなど、カラヤンが微妙な点に拘ったことが感じられ、その意味で彼の思考のエッセンスが見えるようです。

ベートーヴェン:交響曲第2・8番をDCHで聴く

カラヤン・シリーズ第5弾:ベートーヴェン交響曲第1・4番

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第1番
交響曲第4番
(1971年収録)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 交響曲第1番がスタジオ、第4番がフィルハーモニーでの収録となっています。スタジオ版は、当然のことながら人工性を感じさせますが、それは背景が明るく、コンサートの状況と相当に異なっているためでしょう。一方フィルハーモニー版は、それに比べればはるかに現実的な印象です。この映像は、観客が写っていますが、実際にはすべてがライブで収録されたのではなく、スタジオ環境で映像が別にテイクされています。

ベートーヴェン:交響曲第1・4番をDCHで聴く

カラヤン・シリーズ第6弾:ベートーヴェン《運命》
2014年8月8日

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》(1972年収録)
ドキュメンタリー「カラヤン、あるいは私の見る美」(2007年制作)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 カラヤンによるベートーヴェン全集の最後のタイトルは、《運命》です。1972年フィルハーモニーでの収録ですが、全9曲のなかでも、最も自然な映像に仕上がっているようです。第4番と同じ状況での収録らしく、フィルハーモニーで観客が入った状態で撮影されています。しかし、もちろん完全にライブではなく、多くの部分が演奏会後に観客なしで追加収録されており、その雰囲気は部分的に感じ取れると言えるでしょう。
 ドキュメンタリー「カラヤン、あるいは私の見る美」は、2007年に制作されたドキュメンタリーで、彼に接したアーティストや関係者の証言を網羅しながら、カラヤンの姿に迫ります。数々の当時の映像、リハーサル光景なども紹介されています(英語字幕付き)。

ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》をDCHで聴く
ドキュメンタリー「カラヤン、あるいは私の見る美」をDCHで観る
カラヤン・シリーズ第7弾:ワイセンベルクとのチャイコフスキー&ラフマニノフ
2014年月8月15日

【演奏曲目】
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番(1967年収録)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番(1973年収録)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ:アレクシス・ワイセンベルク
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 アレクシス・ワイセンベルクとのチャイコフスキーとラフマニノフのピアノ協奏曲は、このシリーズのなかでも白眉と言えるものでしょう。とりわけ後者は、カラヤンの美意識がもっとも徹底したもので、純粋のその映像美に酔わされます。人工的ではありますが、その人工性が一種の芸術性と感じられるところが、この魅力の秘密。何か非現実的で、神聖な儀式に参加しているような気分にさせられます。ワイセンベルクも、ソリストというよりは「カラヤンの楽器」というイメージです。

チャイコフスキー&ラフマニノフのピアノ協奏曲をDCHで聴く

 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ローマ歌劇場、閉鎖の危機を回避
 閉鎖の危機に立たされていたローマ歌劇場が、組合との合意の結果、存続することになった。同劇場は、数年来経済的に破綻しているとして、危機的状況にあったが、この初夏、イタリア連邦政府が特別助成金を支給する解決策が浮上。それによって、累積赤字を解消するという。しかし組織改革、賃金カット等の条件が掲げられ、職員および労働組合は、7月末までに条件承諾の署名をすることが求められていた。それに際し、ふたつの労組がサインを拒否したため、劇場閉鎖が深刻に懸念されていた。
 この状況を受けて、ふたつの労組のうちひとつが28日に署名を承諾。これにより、閉鎖は一時的に回避されることになった。しかし、最後の労組FIALSは、依然態度を硬化させており、1ヵ月後には同様に決断を迫られることになる。
 なお、終身音楽監督のリッカルド・ムーティは、この議論の期間、コメントを行うことは避けていた。この解決策を実現させた場合は、同劇場は、「首都ローマ歌劇場」と改名されるという。

ヒラリー・ハーンが6週間静養
 ヒラリー・ハーンが筋肉の炎症により、6週間休養することになった。これにより、アメリカとカナダでの演奏会がキャンセルとなる。該当するのは、ストラトフォード夏期音楽祭、ロサンゼルス・フィルのハリウッド・ボウルでの演奏会だという。

カタリーナ・ワーグナーがバイロイト音楽祭の契約を延長
 カタリーナ・ワーグナーのバイロイト音楽祭における総監督の契約が、現在の2015年から20年まで延長されるという。カタリーナは、異母姉妹のエーファ・ワーグナー=パスキエと同職にあるが、後者は今年2月、契約を延長しない意向を発表していた。同音楽祭の財務局長であるハインツ=ディーター・ゼンゼによると、カタリーナの契約内容は、ほぼ従来通りのもので、ドイツ連邦、バイエルン州、バイロイト市、音楽祭友の会からなる役員会により承認された。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2014年8月29日(金)発行を予定しています。

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