コーラングレ入りのミヒャエル・ハイドン:ディヴェルティメント集
2014年9月5日 (金)
ミヒャエル・ハイドン:ディヴェルティメント集
ピッコロ・コンチェルト・ウィーン
ダニエル・ゼペック、クリスティアン・フォン・デア・ゴルツ、ピエル・ルイジ・ファブレッティほか
古楽器アンサンブル「ピッコロ・コンチェルト・ウィーン」が1997年に録音していたミヒャエル・ハイドンのディヴェルティメント集が登場。
【ピッコロ・コンチェルト・ウィーン】
「ピッコロ・コンチェルト・ウィーン」は、コントラバスのロベルト・センシにより1993年に設立されたウィーンのグループで、現在も活動しているグループですが、ここでは初期メンバーによる演奏を聴くことができます。
ヴァイオリンはドイツ・カンマーフィルのコンマスで、ソリストとしても知られるダニエル・ゼペック、チェロは同じくソリストとしても有名なクリスティアン・フォン・デア・ゴルツ、コーラングレはソリストとして活躍するピエル・ルイジ・ファブレッティというメンバーに、現在も「ピッコロ・コンチェルト・ウィーン」で弾いているヴィオラのヨハンナ・ガメリトに、コントラバスで指揮のロベルト・センシというメンバー構成です。
【当時珍しかったコーラングレも使用したディヴェルティメント】
ミヒャエル・ハイドンのディヴェルティメントは室内アンサンブルのために書かれており、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという弦楽に、当時まだ珍しかったコーラングレ(イングリッシュホルン)を組み合わせた編成です。詩情豊かで爽やかな作風、よどみなく流れる旋律が美しい作品が揃っています。
ちなみに「ピッコロ・コンチェルト・ウィーン」は、このアルバムへの録音と同時期に、ミヒャル・ハイドンのディヴェルティメント集のレコーディングをイタリアのシンフォニア・レーベルでもおこなっており、そちらは、BBC MUSIC MAGAZINEの1998年度BEST CDのひとつにも選ばれるなど高い評価を得ていました。しかし残念ながら、現在は廃盤となっているだけに、同趣向のアルバムのリリースは歓迎されるところでもあります。
【ハイドンの弟】
有名なフランツ・ヨーゼフ・ハイドン[1732-1809]の実弟であるミヒャエル・ハイドン[1737-1806]の名は、モーツァルトの交響曲第37番での転用や、レクィエムでの類似といった話題で主に知られていましたが、最近では作品紹介も増えてきて、その非凡な才能が次第に明らかになりつつあります。
【ザルツブルクの作曲家】
ミヒャエル・ハイドンは26歳のとき、レオポルト・モーツァルトがザルツブルクの宮廷楽団の副楽長に昇進したため、その後任としてコンサートマスターに迎えられ、44歳の時には、今度はモーツァルトの後任として、宮廷と大聖堂のオルガニストの任に就きます。
その後、フランス軍によるザルツブルク占領の際には財産を奪われるなどの災難にも遭いますが、彼はザルツブルクに深い愛着を持っており、兄からのアイゼンシュタットの副楽長の提案も断り、結局、69歳で亡くなるまで同地を拠点としていました。まさに「ザルツブルクの作曲家」と呼ぶべき存在です。
【宮廷作曲家としての旺盛な創作】
宮廷作曲家だったミヒャエル・ハイドンは、その生涯に約800曲もの作品を書いたと言われています(→主要作品リスト)。内訳は、宗教音楽が約360曲、交響曲が40曲以上、協奏曲が10曲、弦楽四重奏曲が14曲、弦楽五重奏曲が5曲、ディヴェルティメントが10曲、デュオが4曲、夜想曲が3曲、オペラが4曲のほか、管弦楽曲や室内楽曲、器楽曲、男声四重唱曲、合唱曲などで、その楽曲スタイルは実にさまざま。中でも、大司教のもと、大量に書かれた宗教音楽は、彼の名声をヨーロッパ中に広く行き渡らせることとなりました。
【モーツァルトとの交流】
父レオポルトとミヒャエル・ハイドンが職場仲間だったこともあってか、モーツァルトは子供のころからミヒャエルと関わりがあり、10歳のときのオラトリオ『第一戒律の責務』では、共作も経験しています。
また、15歳のときに聴いたミヒャエルのレクィエムには深く心を動かされ、20年後に書いた自身のレクィエムにもそのイメージを投影しているほど。ミヒャエルのレクィエムは、当時彼が仕えていたザルツブルクの大司教シギスムント・クリストフ・グラーフ・フォン・シュラッテンバッハの死に際して作曲されたものですが、同じ時期に自分のひとり娘が僅か1歳で亡くなっており、その悲しみが作品に込められているとも伝えられています。
モーツァルトのK.291「管弦楽のためのフーガ」として知られていた作品も実はミヒャエルの交響曲ニ長調 P.43でした。後年の『ジュピター』終楽章の構成を思わせるこの曲からは、ミヒャエルがモーツァルトに与えた対位法的な影響の重要さが窺われます。
20世紀初頭まではモーツァルトの交響曲第37番とされていた作品も実際にはミヒャエルの交響曲ト長調 P.16に序奏を付けたというものです。
また、傑作として名高いモーツァルトの弦楽五重奏曲も、ミヒャエルの弦楽五重奏曲をモデルにしたとされており、実際、ミヒャエルの作品も厚いテクスチャーと美しい仕上がりが印象深い傑作です。
一方、ミヒャエルが病気になったときには、すでにザルツブルクから離れていたモーツァルトが、わざわざ代わりに二重奏曲を作曲をするという献身をみせたりもしています。(HMV)
【収録情報】
ミヒャエル・ハイドン:
・弦楽四重奏曲ハ長調 P.115
・ディヴェルティメント 変ホ長調
・ディヴェルティメント ハ長調 P.110
・ディヴェルティメント ハ長調 P.98
ピッコロ・コンチェルト・ウィーン
ピエル・ルイジ・ファブレッティ(オーボエ)
ダニエル・ゼペック(ヴァイオリン)
ヨハンナ・ガメリト(ヴィオラ)
クリスティアン・フォン・デア・ゴルツ(チェロ)
ロベルト・センシ(指揮、コントラバス)
録音時期:1997年8月
録音場所:イタリア、ピサ、プニャーノ
録音方式:ステレオ(デジタル)
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ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
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