【訃報】ラウタヴァーラさん 点鬼簿へ戻る

2016年7月29日 (金)

エイノユハニ・ラウタヴァーラさん死去
シベリウス以後、もっとも有名なフィンランドの作曲家

フィンランドの作曲家、ラウタヴァーラさんは、2004年に大動脈解離を発症、集中治療室で約6か月を過ごしたのち、作曲活動に復帰していましたが、手術の後遺症に苦しみ、合併症によって、7月27日に亡くなられました。心よりご冥福をお祈りいたします。

　ラウタヴァーラさんは多彩な形式を駆使してさまざまなスタイルの作品を書いています。シベリウス以後、最も成功したフィンランドの作曲家と言われるラウタヴァーラさんの作品は、楽譜出版点数も多く、演奏会やCDでも取り上げられることが多かったようです。
　初期の作品では、セリーのイディオムも用いていましたが、作風はどこかブルックナー風ともいえる親しみやすいものも多かったようです。タングルウッドでコープランドに学んでいたころに作曲した第1番、現代的語法による第2番、ブルックナーをモデルにしながらも技法は十二音に基づくという第3番、音列技法による第4番『アラベスカータ』。
　やがてラウタヴァーラさんの音楽は宗教的なキーワードと神秘的で澄んだ美しさや、フィンランドの民俗的な音楽なども盛り込んだものが多くなり、不協和音程とコントラストを形成する協和音程の雰囲気が特徴的で、特に美しさが前面に出されているような部分では、神々しい雰囲気すら漂ってきます。それまでのスタイルを融合し、新たな展望をも見いだした単一楽章の第5番、ゴッホを題材とするオペラ『ヴィンセント』に基づく第6番『ヴィンセンティアーナ』、自由に流れる表現的なメロディが鮮やかな第7番『光の天使』、大海原に導くかのような第8番『旅』。
　特に、1994年の交響曲第7番『光の天使』は国際的な成功を収めてラウタヴァーラさんの名を世界的なものとします。その音楽は非常に美しいもので、活発な第2楽章以外は、どこかブルックナーを思わせるような瞑想的で厚みのある響きが印象的な壮大な音楽に仕上がっており、癒しの効果も十分です。
　その4年後に書かれたピアノ協奏曲第3番は『夢の贈り物』と題された作品で、幻想的で流麗なピアノ・パートと、それを包みこむ柔らかいオーケストラの響きが魅力的な音を紡ぎだします。

【プロフィール】
1928年10月9日、オペラ歌手の息子としてヘルシンキに誕生。1948年から1952年までヘルシンキのシベリウス・アカデミーで作曲家メリカントに師事した後、シベリウスの勧めでジュリアード音楽院に入学、作曲家パーシケッティに師事、タングルウッドではセッションズとコープランドのレッスンも受け、1954年にはトール・ジョンソン・コンテストに『我らの時代のレクィエム』を出品して優勝、注目を集めています。
　スイス、ケルンでの研究を経てフィンランドに戻ったラウタヴァーラは、1957年から1959年までシベリウス・アカデミーで講師を務め、1959年から1961年までヘルシンキ・フィルハーモニックで音楽記録の保管係として働き、1965年から1966年までは、ヘルシンキ・カピラ音楽院で学長を務めました。
　1966年からは再びシベリウス・アカデミーで講師として働き、1971年には教授となり、1976年から1990年までは、作曲学教授として活躍していました。（HMV）

　
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