【第4回】バイヤー寺町知秀のわくわくPOPSランド

2016年09月08日 (木)　10:20

HMV&BOOKS online - ロック

洋楽の森からオススメ作品をピックアップ
あの番組、覚えてますか？
このコーナーでは、わくわくせずにはいられない海外の良質POPSをお届けします！

寺町知秀（てらまちともひで）

1999年にHMV渋谷入社。HMV立川など7店舗で店長を務め、計13店舗の勤務を経て現在は本社にて洋楽バイヤーを担当。

【第4回】まるでイチローのような、いつまでもみずみずしいプレースタイル。

　みなさん、こんにちは。わくわくPOPSランド第4回目は、ティーンエイジ・ファンクラブ（以下TFC）『ヒア』にズームイン。

　唐突ですが、ロックバンドってもう流行らないのですかね。特に洋楽で言えば、人気バンドはベテランばかりで新世代の逸材がなかなか出てこないし、そのベテラン勢もライブでオーディエンスに期待されているのは、過去の代表曲だったり…。確かにロックを新しくする手法はずいぶん減ってきたけど、そんな単純な話ではない気がします。そういうスタイル／ジャンルの古い、新しいとは別次元で、良いバンドはまだまだいるものだと感じさせてくれたのがこのTFC新作。

　かくいうTFCも80年代後半に結成し、ノーマン、レイモンド、フランシスの3人は、前身バンド、ザ・ボーイ・ヘアドレッサーズから数えると、もう30年も一緒に活動していて、ここでも3人のソングライティングは、初期の頃からちっともみずみずしさを失っていないことにすぐさま気づかされます。多くが陥ってしまう安直なレイドバック感もないし、むしろ重ねてきた音楽的経験が新たな響きをもたらしているかのよう。珠玉のメロディ＆ギター・アンサンブルから湧き出る高揚感ったらない。メロディセンスや感情表現、こういうものの素晴らしさはいつの時代も揺るぎなくマスターピースになりうるものかと。

　今月の胸が高鳴るもう１枚は、アヴァランチーズ新作『ワイルドフラワー』。かの大名作『シンス・アイ・レフト・ユー』以来16年ぶりですし、正直どうなのかなと思っていましたが、ハニー・コーン「ウォント・アズ」サンプリング使いの「ビコーズ・アイム・ミー」の冒頭から放たれる高揚感で、アヴァランチーズの華麗なる復活を確信。とびっきりの傑作ですよ、これは。アヴァランチーズと言えば、ハードコアな（彼らの出発点はノイズ／パンクバンド）サンプリングの応酬で一世を風靡しましたが、彼らもまた稀有なメロディセンスとグッド・ヴァイブレーションを持ち合わせたクラシックな存在ですね。

　それでは、わくわくポップスランドでまた来月お会いしましょう。