マリー=クレール・アラン2度目の『フーガの技法』が復活
2017年1月3日 (火)
バッハ:フーガの技法(2CD)
マリー=クレール・アラン2度目の録音が復活!
バッハの権威として知られたオルガニスト、マリー=クレール・アランはバッハの『フーガの技法』を2回録音しています。1回目は、最初のオルガン曲全集(1959-1967)と、二度目のオルガン曲全集(1978-1980)のあいだの1974年に録音されており、2回目は三度目のオルガン曲全集(1985-1993)の制作期間中である1992年に録音されています。
アランの三度目の全集は、それまでと違って歴史的な楽器を用いて演奏がおこなわれたという点に特徴がありましたが、この『フーガの技法』では、アルザス地方の高名なオルガン製作家アルフレッド・ケルンが1975年に建造したオルガンが使用されています。これはアランがアルザス・オルガン・フェスティヴァル出演を機に同地でのレコーディングをおこなったためで、『フーガの技法』の作品としての可能性を追求するために非常に有効な選択とも思えます。
アランはここで、「基本主題による単純フーガ」→「反行フーガ」→「カノン」→「鏡像フーガ」→「転回対位法による二重フーガ」→「三重フーガ」→「未完のフーガ」という流れで曲順を決め、新しいオルガンならではの豊富なレジストレーション機能などを最大限生かしてこみいった書法を明らかにしていきます。その演奏スタイルは、来日公演で『フーガの技法』を暗譜で披露して称賛されていたことを想起させる見事なもので、各声部の明晰さ、色彩の豊かさがとても印象的です。
ちなみに1974年録音でのグループの順番は、「基本主題による単純フーガ」→「反行フーガ」→「転回対位法による二重フーガ」→「三重フーガ」→「カノン」→「鏡像フーガ」→「未完のフーガ」となっていたので、アランの曲順に対する考え方はだいぶ変わったことになりますが、各曲のテンポなどはそれほど大きく変わってはおらず、楽器や響きの違いによるものも大きいとも思われます。
総じて新盤の方が若干遅め、もしくはわずかに速めとなっていますが、中ではコントラプンクトゥス11(4声による三重フーガ)が旧盤6分57秒に対し、新盤8分32秒とかなり遅くなっているのが目につきます。この「三重フーガ」グループに含まれるコントラプンクトゥスの曲順は、旧盤が、コントラプンクトゥス8[7:00]→コントラプンクトゥス11[6:57]で、似た構造を持つ両曲の演奏時間がほぼ同じになっていたのですが、新盤では、コントラプンクトゥス11[8:32]→コントラプンクトゥス8[6:48]となり、4声のフーガのじっくり度が高まって、逆に3声のフーガではわずかに速くなっているのがアランの解釈の変化を伝えています。
【プロフィール】
1926年8月10日、パリ近郊のサン・ジェルマン・アン・レイに誕生。父アルベールは作曲家でアマチュアのオルガニスト製作者、若くして亡くなった兄のジャンも作曲家という家庭に育ち、幼少からオルガンとピアノに親しんで育ち、11歳で父の代役として教会でオルガン演奏をおこなうなど、特別な環境でオルガンのセンスを磨いて行きました。
1944年、連合軍によってパリが解放されると、彼女はパリ音楽院に入学、モーリス・デュリュフレに和声学を、シモーヌ・プレ=コサードにフーガを、マルセル・デュプレにオルガンと即興演奏を師事し、1950年にオルガン科を首席で卒業すると、ほどなくジュネーヴ国際コンクールに出場して首位を獲得、すぐにパリでオルガン・リサイタルを開いて注目されるようになり、翌1951年にはパリでバッハ賞を受賞しています。
以後、パリの聖マリア教会を拠点に、オルガニストとして世界的な活動を展開、実演だけでなくレコーディングにも熱心に取り組みますが、一方で、フランス・オルガン音楽についての研究書も著し、さらに後進の指導にもあたるなど、その多彩な活躍ぶりには驚くべきものがありました。
そうした活動が評価され、1974年に、レジョン・ドヌール勲章を授けられ、さらに翌年にはドイツのリューベック市からブクステフーデ賞を授与されてもいます。
アランの演奏は、その驚異的な記憶力により、長期に渡って蓄積された膨大な知識と経験に基づく、曖昧さや曇りのない明快なスタイルに特徴があり、対位法にせよ和声にせよレジストレーションにせよ、常に明確な表現が志向されているのが印象的でした。
レパートリーはバロックから20世紀作品までと幅広く、おこなったリサイタルの数も2000を超えていたといいますから相当なもの。
アランは研究熱心なオルガニストでもあり、楽譜や楽器についての考察を欠かすことがなく、生涯に3度もバッハのオルガン曲全集を録音することになったのも、背景には、アラン自身の解釈の変化を反映させるという目的がまずあったものと思われます。また、そうした知識や技能を買われ、歴史的なオルガン本体の修繕や改修に際しても助言を求められることが多く、まさにマルチなオルガニストとして、20世紀オルガン界を代表する重要な存在となっていました。
活動が国際的だっただけに、1970年代のはじめから日本もたびたび訪れており、常に暗譜で演奏するその姿はおなじみにもなっていました。(HMV)
【収録情報】
● J.S.バッハ:フーガの技法 BWV.1080
Disc1
基本主題による単純フーガ
1. コントラプンクトゥス1 BWV1080.1 [4:36]
2. コントラプンクトゥス3 BWV1080.3 [3:51]
3. コントラプンクトゥス2 BWV1080.2 [2:54]
4. コントラプンクトゥス4 BWV1080.4 [3:58]
反行フーガ
5. コントラプンクトゥス5 BWV1080.5 [4:47]
6. コントラプンクトゥス6 BWV1080.6(4声のフーガ) [4:21]
7. コントラプンクトゥス7 BWV1080.7(4声のフーガ) [3:31]
カノン
8. 12度のカノン BWV1080.17 [3:51]
9. 8度のカノン BWV1080.15 [4:25]
10. 反行と拡大によるカノン BWV1080.14 [3:50]
11. 3度の転回対位法による10度のカノン BWV1080.16 [4:20]
鏡像フーガ
12. コントラプンクトゥス12 BWV1080.12(4声のフーガ) [4:10]
13. コントラプンクトゥス12 BWV1080.12 [3:34]
Disc2
1. コントラプンクトゥス13 BWV1080.13(3声のフーガ) [3:05]
2. コントラプンクトゥス13 BWV1080.13 [3:00]
転回対位法による二重フーガ
3. コントラプンクトゥス9 BWV1080.9(4声のフーガ) [3:06]
4. コントラプンクトゥス10 BWV1080.10(4声のフーガ) [6:27]
三重フーガ
5. コントラプンクトゥス11 BWV1080.11(4声のフーガ) [8:32]
6. コントラプンクトゥス8 BWV1080.8(3声のフーガ) [6:48]
未完のフーガ
7. コントラプンクトゥス19 BWV1080.19(3つの主題による4声のフーガ)[12:49]
マリー=クレール・アラン(オルガン/A.ケルン製オルガン)
録音時期:1992年9月
録音場所:マスヴォー、聖マルタン教会
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
古楽最新商品・チケット情報
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
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輸入盤
フーガの技法 マリー=クレール・アラン(オルガン)(2CD)
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価格(税込) :
¥2,310
会員価格(税込) :
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まとめ買い価格(税込) :
¥1,732
入荷日未定
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