【インタビュー】FLESHGOD APOCALYPSE

2019年05月31日 (金) 21:00

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ニュー・アルバム『ヴェレーノ』をリリースするイタリアのシンフォニック・デス・メタル・バンド、フレッシュゴッド・アポカリプス。ドラム、ギター、そしてヴォーカルを担当するフランチェスコ・パオリに話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):ニュー・アルバム『ヴェレーノ』がリリースになります。前作と比べた場合、どのような点が進化していると言えるでしょう。

フランチェスコ:今回のアルバムは、以前のものよりもずっと自然で、曲もバラエティに富んでいるよ。それぞれの曲調が違っているので、ダイナミックなアルバムになっていると思う。すべての曲がユニークで、それぞれがまるで別のジャンルを探検しているかのようさ。もちろんメタルの範疇でだけど。テンポもパラエティに富んでいるし。さまざまな雰囲気が出てくるから、アルバムを聴いていてどのような展開になっていくのか、予想がつかないと思うよ。それから、今回はオーケストレーションとメタル・パートが非常に良いバランスになっている。今回もエピックでアトモスフェリックなパートもたくさんあるけれど、アグレッシヴさは失っていないし、デス・メタル的要素もかつてないほどに生き生きとしている。非常にパワフルでアグレッシヴな仕上がりになっているし、よりキャッチーになっている面もあるから、楽しんでもらえるんじゃないかな。サウンド的にも楽曲的にも進化していると言えるね。


川嶋:ギタリストの脱退がありましたが、これはアルバムには何らかの影響を与えたでしょうか。

フランチェスコ:いや、影響はないよ。もともと曲はずっと俺が書いているわけだしね。『Agony』以降はフランチェスコ・フェリーニも、曲作りやアレンジメントを手伝ってくれていて、メインソングライターは俺とフランチェスコだから、大きな変化はない。歌詞の多くも俺が書いているしね。もちろんライヴでは、俺がドラムから以前のギター・ヴォーカル担当へと戻ったから、ダイナミックな変化があったと言えるけど。ライヴではリード・ギターはファビオが、ドラムはデイヴが担当することになった。彼らは音楽的にも才能があるし、人間的にも素晴らしいよ。だけど、アルバムに関しては大きな変化はないので、ファンはアルバムを聴いてメンバーチェンジを感じることはないだろうね。そもそも、いくつかの曲はメンバーチェンジの前に書かれていたものだし。

川嶋:今回タイトルがイタリア語になっています。イタリア語を冠したアルバムは初めてですよね。「ヴェレーノ」というのは「毒」という意味とのことですが。

フランチェスコ:過去にもイタリア語の作品はあるんだよ。残念ながら、世界中で通用する言葉になってしまっているものだけどね。2010年の『Mafia』だよ。実は「マフィア」もイタリア語なのさ。さっきも言った通り、残念ながらイタリアの外でも通用する言葉になってしまっているけど。確かにこれ以外は、すべて英語だね。今回、「毒」という意味を持つイタリア語にしたのは、この単語の語感が気に入っていからさ。”Poison”や”Venom”というよりもね。それから、自分たちの国へのトリビュートという意味もあった。それに、ファンが知らないものに接した時に、これはどういう意味なんだろうと調べてみるというのも素晴らしいことだろ。「毒を盛る」というコンセプトは、すべての曲に繋がりを持たせるのに最適だった。比喩的にも、そうでなくてもね。「ヴェレーノ」という単語には複数の意味があるから、いくつもの主題を扱うことができる。一単語でさまざまなものを結びつけることができるんだ。コンセプト自体は、歌詞を書いていく上で少しずつ固まってきた。関係、例えば人と自然の関わり、人間を取り巻く環境や人間の本性などを分析していくうちに、「毒を盛ること」というテーマが共通することに気づいたんだよ。それぞれの曲には違ったストーリーがあって、人と自然の関わりや人間の本性について違った見方がされているけれど、結局はどれも人類の自己破壊的な本性に関わってくる。人間が作り出すものはすべて、例えば宗教であるとか哲学といったあらゆる鎮痛剤を使って、人間は直面したくない現実から逃げようとしている。自己破壊というのは、つまりは自らに毒を盛っているということ。これを比喩的に表しているんだ。

川嶋:「モナリザ」というタイトルの曲も収録されています。これはどのような内容なのでしょう。

フランチェスコ:さっきも言った通り、「ヴェレーノ」という言葉をさまざまな違ったことに比喩的に使っているんだ。その中に、人間にとっておそらく最も重要な感情である「愛」がある。おそらくみんな、愛というものをポジティヴに捉えているよね?だけど、俺たちはちょっと違った見方をしたかったんだ。確かに愛というのは、最もポジティヴなものだと言えるだろう。人間にとって最も重要な力で、最もエネルギッシュなものだろう。だけど、恋人、友人、家族、あるいは誰であれ、関係を持つということは、相手をコントロールしようということでもある。何らかのルールを設定したりね。つまり、愛というのは非常に恐ろしいものにもなりうるということさ。人間は法やルールを設定することを好む。リスクを減らすために。そうすると、愛はネガティヴなもの、暴力的なもの、異常にヘヴィなものにもなりうる。場合によっては、愛は病的なものになりうるのさ。俺たちは、愛のそういう点について語っているんだ。人間は自然、自分自身、そして他との関係に毒を盛る。他者をコントロールするために、人間は何かを作り出す。そうすると、感情というのは究極的にネガティヴなものになってしまうのさ。恐ろしいことだよね。「モナリザ」はそういうことを歌っている。愛は最も美しい絵画になりうる。しかし、そのことをきちんと尊重すべきだ。そうでないと、愛は邪悪なものにもなりうるのさ。

川嶋:フレッシュゴッド・アポカリプスのアルバム・タイトルは、いつも一単語ですよね。これはなぜなのでしょう。

フランチェスコ:まあ、それが気に入っているんだよ。ずっとこれを続けてきて、今ではそれが俺たちのトレードマークみたいにもなっているしね。みんな気に入ってくれているようだし。一言だと非常にダイレクトだし、それにその一言でアルバムすべてを説明する必要もない。何か意味を持っていればいいのさ。「ヴェレーノ」も俺たちにとってパーフェクトな単語だったし、「キング」もそう。一方で、歌詞にはとても長いものもあるからね。アルバム・タイトルは一単語で十分なんだよ(笑)。

川嶋:フレッシュゴッド・アポカリプスの音楽を、無理やりにでもカテゴライズするとしたら、どうなりますか。

フランチェスコ:俺たちがプレイしてるのはメタルだよ。元々はデス・メタルをプレイしていて、テクニカル・デス・メタルだという人もいたけど、俺に言わせればどんなバンドもテクニカルだからね(笑)。その形容には何の意味もないよ。俺たちがプレイしているのはデス・メタル、というのも俺たちが扱っているテーマやサウンドというのは、いわゆるデス・メタルとされるバンドから影響をされているから。シンフォニックな要素を取り入れるから、シンフォニック・デス・メタル、あるいはオペラ・デス・メタルというのが、最も簡単なカテゴライズの仕方だと思う。だけど、正直なところよくわからないな。さまざまなスタイルを取り入れた音楽だから、曲によっても違うし。ゴシックみたいな曲もあれば、ドゥーム・メタルみたいな曲もある。中にはほとんどパワー・メタルみたいなものもある。曲によってまったく別のジャンルをプレイしているとも言えるね。「シフィリス」や「ザ・ヴァイオレーション」、「ミトラ」、「カーニヴォラス・ラム」、「モナリザ」と言った曲は、それぞれまったく違ったサウンドだろ。だけど、これらの曲を聴いてもらえば、「ああ、これはフレッシュゴッドだ」ってすぐにわかるはず。そこが大切なところさ。アイデンティティがあるということ、ユニークな点があるということがね。俺たち自身のサウンドというものが、明確にあるのさ。まあ、無理矢理にカテゴライズするとすれば、シンフォニック・デス・メタルということになると思う。


川嶋:では、影響を受けたメタル・バンドというのはどのあたりなのでしょう。

フランチェスコ:ヨーロッパのメロディックなバンドから色々と影響を受けているよ。At The Gatesとか、初期のHypocrisyやIn Flamesとか。Sentencedにも最初の頃、大きな影響を受けた。メロディックな部分に関しては、こういうバンドたちだね。アグレシッヴさ、激しさという点では、アメリカのバンドからの影響が大きい。Morbid Angel、Deicideとか。でも、俺たちにとってはメロディが大切なんだよ。デス・メタルの激しさは大好きだけど、やっぱりメロディは重要だね。

川嶋:シンフォニックな要素は、クラシック音楽からの影響なのでしょうか。

フランチェスコ:クラシックはもちろん、シンフォニックな映画音楽からも影響を受けているよ。オペラからの影響も凄く大きい。オペラの作曲家からの影響はたくさん取り入れている。あと、俺たちが大好きなシンフォニックなメタル・バンドからの影響もあるよ。Septic FleshやNightwish、Blind Guardianとか、オーケストラを使っているバンド。Dimmu Borgirからも影響されているし。彼らはもっとブラック・メタル寄りだけど、オーケストラ的要素の使い方、オーケストラとメタルのバランスなどを参考にしているよ。

川嶋:オペラというのは、具体的にどのあたりですか。

フランチェスコ:例えば、とても大好きな作曲家、ヴェルディだね。俺たちの国の遺産だから。現在イタリアは色々な困難に直面しているけど、かつてはもっと良い状況の時もあったんだ。もちろん、今でも文化的な遺産は素晴らしい。だから、俺たちはそんな遺産を尊重し、取り入れているんだよ。デス・メタルであるとか、メタル自体は文化としては新しいものだけど、最近ますます人気が出てきている。そこに俺たちのルーツを取り入れているんだ。俺たちの先祖たちが残してくれた遺産をね。オペラというのはイタリア人が発明したものだから、俺たちにとっては重要なものであり、可能な限りリスペクトすべきものなのさ。

川嶋:自分たちの音楽は、イタリア的であると思いますか。

フランチェスコ:俺としては、俺たちの音楽はとてもヨーロッパ的だとは思っている。俺たちは主にヨーロッパの音楽から影響を受けているから。ファンベースが一番多いのはアメリカかもしれないけど、俺たちのプレイする音楽のメロディのテイストやコード進行、音楽の背後にあるアイデア、アレンジの仕方はヨーロッパ的なものだと思う。もっと複雑で、特にメロディ的な部分についてね。フレッシュゴッドの音楽の80%はヨーロッパの音楽でできていると思うよ(笑)

川嶋:ファンベースが一番大きいのはアメリカなのですか。

フランチェスコ:まあ、ファンは世界中にいるけどね。日本にもたくさんファンがいるし。だけど、アメリカが一番ファンの増え方が早いんだ。アメリカに行くたびに、前回とは様子がまったく違っている。とても良いことだよ。アルバムが出るとすぐに、日本やオーストラリア、南米なんかからもツアーのオファーが来るし。彼らはフレッシュゴッドがやって来ることを心待ちにしてくれているんだ。だから、アメリカも俺たちにとってとても重要な国だけれど、他の国、日本のファンも俺たちのニュー・アルバムをとても楽しみにしてくれていて、なるべく早くライヴを観たいと思ってくれているのさ。素晴らしいね。世界中のファンにとても感謝しているよ。

川嶋:あなたはギターとドラムのどちらもプレイしています。これはエクストリーム・メタルの世界では、わりと珍しいですよね。

フランチェスコ:うん、そうだね。確かに俺はさまざまな楽器を演奏するけれど、メインの楽器となると、ギターを使って曲を書いているからギターかな。ずっとプレイしているし。まあ俺は速弾きやテクニカルなソロをやるタイプではなくて、むしろ曲作りに一番時間をかける、きちんとしたリズム・ギタリストだと思うよ。もちろん、ドラムにも多くの時間は割いている。ドラムをプレイするのも大好きだし。でも、今は俺のドラマーとしての役割は、フレッシュゴッドや他のバンドにおいても、主にスタジオでプレイすることさ。俺は色々なプロジェクトに参加するのが好きなんだ。まあ、俺はライヴが好きなんだよ。ライヴというのは、人とコミュニケーションが図れる場だからね。オーディエンスとストレートにつながることができる。自分のエネルギーを100%与えることができて、そしてオーディエンスはそれを10倍にして返してくれる。とても心が温まるし、大好きなんだ。ライヴをやって、オーディエンスの反応を見るというのは最高の瞬間さ。

川嶋:ところで「フレッシュゴッド・アポカリプス」というバンド名には、どのような意味が込められているのでしょう。

フランチェスコ:バンド名を決めたのは、ベース・プレイヤーなのだけど、これがどういう意味なのかは説明したことがない。意味はあまり明らかにしたくないというのもあって。ファンに色々と考えてもらいたいというのが俺たちのスタイルだからね。少しの情報を与えて、あとは考えてもらうのさ。「フレッシュゴッド・アポカリプス」というのは、「肉体化した神の黙示」ということ。俺たちの音楽、歌詞は、すべて実証主義に基づいている。この考え方では、人間こそがこの世界の中心ということになる。自分自身が神であり、神というのは自分自身が作り出すものであるから、「人間の黙示」ということになるんだ。人間は自然の一部だからね。これがバンド名の1つの解釈になる。もっと複雑に哲学的に説明することもできるのだけど、とりあえず考えるきっかけとしてはこれで十分だと思うよ。

川嶋:お気に入りのメタルのアルバムを3枚教えてください。

フランチェスコ:ワオ、トップ3か。考えるのに1ヶ月必要だよ(笑)。そうだな、俺にとってもっとも大切なアルバムというと、Dream Theaterの『Awake』。メタルでいいんだよね、エクストリーム・メタルでなくても?あとはPanteraかな。『Cowboys from Hell』か『Vulgar Display of Power』、どちらでも。あと1枚、もっとエクストリームなところでいくと、Morbid Angelの『Domination』。とても大きな影響を受けたアルバムさ。ほかにもブラック・メタルやパワー・メタルにも大好きな作品はあるよ。『Awake』は、初めて聞いた非常に強力なアルバムの1つだよ。Panteraは若いころ、ずっと聴いていたね。PanteraかSlayerばかり聴いていた。Morbid Angelは、もうちょっと大きくなってからエクストリームなものを聴くようになってハマった。バンドでもカバーをしたよ。『Domination』からは2−3曲やった。

川嶋:では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

フランチェスコ:まず、インタビューどうもありがとう。日本は俺たちのお気に入りの国の1つさ。ライヴに関してだけではなく、日本の文化や日本人の生き方などをリスペクトしているよ。もっとも興味深い文化を持っている国だからね。美しい国だし、君たちは日本人であることを誇りに思うべきさ。また日本でプレイするのが待ちきれないよ。次回はもっと長いセットリストで、凝ったステージをお見せするよ。ニュー・アルバムも出るから、新曲も披露するし。今年中に行けるかもしれない。ぜひ俺たちを観に来てくれ。サポートしてくれてどうもありがとう。

取材・文 川嶋未来



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