ナッセン&BBC響/ヘンツェ:管弦楽作品集

2019年06月10日 (月) 12:10 - HMV&BOOKS online - クラシック


現代音楽界の名指揮者オリヴァー・ナッセン追悼盤
世界初録音や最期の作品などを含む、ヘンツェ節全開の管弦楽曲集
作曲家からの信頼も厚かったナッセンの超ハイレベルな演奏!


2018年に惜しくも世を去った指揮者オリヴァー・ナッセンは作曲家としても活躍した現代音楽のスペシャリスト。ハンス・ヴェルナー・ヘンツェは自作や他の作曲家の作品を彼の指揮で聴いたとき、その素晴らしさに衝撃を受け、大いに賞賛したといいます。このアルバムではナッセン指揮によるヘンツェの中期から後期にかけての管弦楽曲を収録。『皇帝ヘリオガバルス』『イギリスの愛の歌』は他に録音がない貴重なもの。さらに『劇場のための序曲』はヘンツェが最期の年に書いた作品であり、どの曲も作曲者と高い信頼関係にあったナッセンのきめ細やかな演奏で聴けるのは注目に値します。
 同名のゴヤのエッチングから着想を得た『ロス・カプリチョス』は導入部と主題、7つの変奏からなる音楽で、9つの部分それぞれにゴヤの絵のタイトルが付けられています。グロテスクで風刺の利いたゴヤの一連の作品を音楽で描くにあたり、ヘンツェは敢えて現代的な特殊奏法を抑え、幻想的でメランコリックな美しい響きを選択。歌うようなメロディもあり不思議な世界観を持っています。
 『皇帝ヘリオガバルス』は30分に及ぶ大規模なオーケストラ作品で、ローマ史上最悪の君主マルクス・アウレリウス・アントニヌス・アウグストゥスの渾名をタイトルとしています。暴君の生と死を描いた強烈な音楽で打楽器も大活躍、血沸き肉躍る凄まじいエネルギーに圧倒されます。ふと現れる恐ろしい暗さも印象的。
 『イギリスの愛の歌』はチェロ協奏曲の体裁をとり、もともと『7つの愛の歌』というタイトルでハインリヒ・シフの独奏により初演されたもの。イギリスの詩に基づいて書かれましたが、初演時には「誰の何の詩によるものか」をヘンツェは明らかにしませんでした。その後、手が加えられこのCDの形に落ち着きました。チェロを弾くカルットゥネンは現代音楽を多く手掛けてきたフィンランドの名手で、レンジの広い自在な演奏が音楽の魅力を的確に伝えています。
 『劇場のための序曲』はベルリン・ドイツ・オペラ創立100周年記念の委嘱作品として書かれたもので、初演後間もなくヘンツェが亡くなったため最後の作品となっています。快活な曲想、突進するような力強いアレグロ、喜びに満ちた大胆な管弦楽法とヘンツェの醍醐味が詰まった音楽で、最晩年になっても勢いを緩めなかった創作意欲に打たれます。(輸入元情報)

【収録情報】
ヘンツェ:
1. ロス・カプリチョス (1963)〜管弦楽のための幻想曲
2. 皇帝ヘリオガバルス (1971/72, rev. 1986)〜音楽による寓話
3. イギリスの愛の歌 (1984/85)〜チェロと管弦楽のための
4. 劇場のための序曲 (2012)〜管弦楽のための


 アンッシ・カルットゥネン(チェロ:3)
 BBC交響楽団
 オリヴァー・ナッセン(指揮)

 録音時期:2014年2月7日(1,3,4)、2014年2月24,25日(2)
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション:1,3,4 ライヴ:2)
 世界初録音(2,3)