【インタビュー】 藍坊主 『燃えない化石』

2019年07月09日 (火) 14:05

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結成20周年を迎え、常に現在を更新し続ける藍坊主。
1年半ぶりの新作『燃えない化石』は、今ではない、と大切にとってきた藍坊主の原石が詰まった、何処を切り取っても「藍坊主らしい」、昔からファンの方にも、はじめましての方にも、燃やしても消えないような、心に残る1枚となっている。

『燃えない化石』について、Vo.hozzyさんからお話を伺いました。

--- まずは『燃えない化石』というタイトルをつけた理由を教えてください。


藍坊主にとって結成から今まで色々な変化や分岐点があった中で、それでも変わらない音楽的な芯の部分を今回の作品にパッケージできた手応えがあったので、もしバンドが燃え尽きることがあったら、そのあとに残るものはきっとこんな音楽たちかなと。
もし燃え尽きても残るだろうもの、変化しても残ってきたもの、ということで『燃えない化石』というタイトルをつけました。


--- 前作『木造の瞬間』とはまた色が違う印象を受けました。胸を突き刺すというよりは、全体的にやさしく、あたたかく、寄り添ってくれる感じがします。メンバーのブログやコラムで、『燃えない化石』は、藍坊主の原石、大事にしてきたもの、捨てられないもの、とのことが書いてあったように、今までの楽曲との繋がりがあるように思いました。『燃えない化石』はどのような意図で制作されたのですか?


意図というよりは制作の根源的なモチベーションとして、これまでずっとバンドを支えてくれているファンやスタッフ、身近な友人や親族に向けて「聴いてもらいたい!」と心から思えるような楽曲を作りたかったというのがありました。藍坊主はずっと音楽的実験を繰り返してきたバンドでもあるので、これまでの実験の成果や答えみたいなものを、一番藍坊主らしい部分を通して、できる限り届けたいという想いで制作していきました。


--- 1曲目のリード曲にもなっている「アンドロメダ」は、藍坊主"らしさ"が、最初から発揮されていますね。イントロのピアノから、宇宙に星が散らばっている様子が浮かびます。聴けば聴くほど、胸がきゅっと切なくなり、短編映画が制作できそうな、すごくストーリー性を感じます。先月(2019年6月)まで行われていたhozzy & 田中ユウイチ 弾き語りツアー2019 “半月酒場〜星巡りのたび〜”のときに、「アンドロメダ」は「星のすみか」(2011年4月27日 発売)のアンサーソングだとおっしゃっていましたが、アンサーソングを作ろうと思って作られたのですか?


星のすみかとの繋がりについては当初全く考えてなかったです。出来上がってみたらアンサーソングっぽくなっていたので驚きました。おっしゃる通り「アンドロメダ」は音楽の切なくなる部分をとにかく磨いて、そこに一点集中して作っていきました。あとは歌詞を一人称の口語風な展開で書きつつ、できるだけ風景や展開が平たくならないような方法を探っていきました。今作で一番時間をかけて作りました。


--- 胸がきゅっとなったあとの「ランドリー」は、一気に気持ちがあたたかくなります。"君"が私たちリスナーで"僕"が藍坊主だと思うと、すごく身近で、なんてやさしいんだろう、と。作詞がhozzyさんで作曲が藤森さんとのことで、どのように共作されたのですか?


昨年に藤森が作ってきたメロディーを、スタジオに入って二人で詰めていったのが始まりです。仮タイトルはその時から「ランドリー」で、曲のアレンジも大枠が完成品と変わらないくらい出来上がっていました。曲自体がとても暖かく、でもどこか寂しいような雰囲気があったので、そこから歌詞を組み立てて、実際にコインランドリーに行ったりしながら詞を完成させてました。夏に降る大雨と、止んだ後の空気感がブワッと湧き上がってくるような原曲でした。


--- 配信限定シングルの「レタス」ですが、何故、題材がレタスになったのですか?


ファミリーマートのシャキシャキレタスに感動したのがきっかけです。信じられないくらいシャッキシャキで、二日酔いが少し治りました。その感動を歌にしました。


--- 初めて聴いたとき、楽曲の展開がおもしろく、次はどう展開されるのだろう? とわくわくしました。先へ広がり突き抜ける、一歩踏み出させてくれるナンバー。さわやかで、どこか懐かしいような、そういう曲調は今までもあったと思いますが、「レタス」は藍坊主の新たな顔を見た気がします。


最近シリアスめな曲を多く作っていた気がするので、もう少し遊び心のある曲を作りたいなあと思っていた時期に作りました。感動的、というよりは、もっと気軽に、なんか気持ちが楽になったなあ、レタス食いてえなあ、という感じを目指しました。あとは普通にBメロへ行くと見せかけて転調させてメロディーを転がして行く展開などは、とても藍坊主らしいのかなと思います。


--- 藤森さん(Ba.)作詞作曲の「マザーツリー」の歌詞は、藤森さんのやさしさと真面目さ、そして強さを感じます。イントロの虫の音、ピアノがまた美しい。霧がかかった森の中にいるようなところから、霧が晴れていき、最後には生きる希望、力を与えてくれる。"忘れないで/僕たちは/愛される為に/この世に生まれた/泣く為じゃない"という部分が特に、「伝言」(2010年1月13日 発売)と共通しているように思いました。


本当に藤森らしい曲で、自分には絶対に書けない詞曲。曲の展開に関してもコードワークが緻密で、色々盗ませてもらっています(笑)。前述の「アンドロメダ」のイメージも、「マザーツリー」に影響を受けている部分があると思います。
「伝言」との繋がりも確かに感じますね。今回はもっと長いスパン、広い空間の中で命の繋がり、重層性を歌っているのかなと。ピアノのフレーズ、星空が見えるようで自分も大好きです。


--- 「伝説的トリップ」は、久しぶりにこの手のサウンドがきたな、と。異空間で、ハマったら抜け出せなくなる中毒性がありますね。


こんな曲ばっかり入れていたら「実験的アルバム」ってなるのでしょうけど、今回は一曲に留めておきました。原曲に関しては、結構面白い転調をしながらも、難しくないものができたんじゃないかと思います。その状態からギターのユウイチにより面白い感じになるようにアレンジをしてもらいました。サビ前のギターフレーズとか最高です。


--- 異空間から日常、現実へ引き戻される「魚の骨」。ほっとするのと同時に、少しさみしく切ない気持ちにもなりますが、周りの人たちを大切に、日常を大切にしたい、と思えます。


夜を徘徊するのが個人的にとても好きで、よく缶ハイボール片手に散歩しているんですが、その時の空気感がアイディアの大元でした。冬にはだんだん暖かくなる内側が心地よく、泳いでいるような気持ちになります。原曲をメンバーに提出して真っ先にアレンジ担当で手を上げてくれたのがドラムの渡辺でした。イントロのシンセと間奏のピアノのリフレインがお気に入り。


--- hozzyさんが書かれる言葉のセンスが、他のアーティストでは出会わない表現が多く、独特でおもしろいなとずっと思っていたのですが、今回もまた「レタス」と「魚の骨」が特に気になりました。藍坊主だからこそ、hozzyさんだからこそ成り立つ楽曲だなと。


特に藍坊主で歌詞を書く時、文字で「書いてあること」よりも「書いていないこと」の方を意識している気がします。詞には文字数に限界があるので、文字の行間から風景や匂いが立ち上がってくるように言葉を配置できたら、といつも考えています。


--- 『燃えない化石』を締める「胸を打つのは」。イントロからAメロの展開が予想外でした。パンク調なのも久しぶりですね。ライブで、泣きながら笑って盛り上がっているフロアの様子が目に浮かびます。たくさんの人が背中を押されるのではないでしょうか。


この曲は「アンドロメダ」を書く直前に書いた曲で、まさに自分に向けて歌っているような曲でもあります。もう限界だ。これ以上、曲書けない。どうしよう。という気持ちの時に無理矢理にでもテンションをあげるために書いた曲です……。その結果、「アンドロメダ」が書けたので、やっぱりまずは情熱ありきだなと改めて思いました。ライブでぜひ盛り上がって欲しいです!


--- 8月からはツアーが始まります。どのようなツアーになりそうですか?


今作はライブでも威力を発揮する曲を目指して作ってきたので、ライブならではのパワー感を上乗せして伝えられればと思います。バンドで直接音を鳴らした時、『燃えない化石』の楽曲たちをまた違った視点で楽しんでもらえると思います。


--- 最後に『燃えない化石』を手にしてくださった方へメッセージをお願いします。


今回初めて藍坊主を聴いてくれた方も、ずっと応援し続けてくれた方も、昔から変わらない部分がこのアルバムには詰まっているので、今作を気に入ってくれたなら、これが「藍坊主」というバンドのコアです。昔の作品も是非聴いてみてください!これからも色々な曲を作りつつ、ライブを重ねていくと思いますが、これからもどうぞよろしくお願いします!


藍坊主 リリース情報

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藍坊主 ツアー情報


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