カルテット・アロド/ヴェーベルン、シェーンベルク、ツェムリンスキー

2019年08月19日 (月) 16:02 - HMV&BOOKS online - クラシック


カルテット・アロドのセカンド・アルバムは、
クールで抑制されたロマン派末期の様相による作品


このアルバムのテーマとなっているのは、作曲家ツェムリンスキーの妹でシェーンベルクの妻となったマティルデ・ツェムリンスキー[1875-1923]という女性です。1895年、ツェムリンスキーが結成したオーケストラ「ポリュヒュムニア」にチェリストとして入団してきたシェーンベルク。ツェムリンスキーはシェーンベルクに対位法を教えるなど、彼らは親しい友人となります。やがてシェーンベルクはツェムリンスキーの妹マティルデと結婚(1901年)、しばらくは幸せな結婚生活を送りますが、1908年にシェーンベルクが絵画の手ほどきを受けていた画家リヒャルト・ゲルストルとマティルデが駆け落ちをするという大事件が起きてしまいます。この頃、シェーンベルクが作曲していたのが、第3楽章と第4楽章にソプラノの独唱が加わるというユニークなスタイルによる『弦楽四重奏曲第2番』でした。もともと「妻へ」と賛辞がつけられていましたが、この曲には当時のシェーンベルクの不安定な感情が反映されているとも言われています。結局マティルデは、シェーンベルクの弟子であったヴェーベルンらの説得もあり、数週間後にシェーンベルクの元に戻りましたが、全てを失ったゲルストルは25歳で自らの命を絶つという悲劇的な結末を迎えることとなります(この一件に衝撃を受けたシェーンベルクは、のちに音楽劇『幸福な手』でその心情を伝えています)。
 カルテット・アロドのデビュー・アルバムは「メンデルスゾーンの若さ」という言葉からイメージされるエッジの効いた疾風怒濤的な激しさによる演奏でした。この2枚目のアルバムは、拡大された和声法に基づき表現主義的なロマン派末期の様相による作品ということで、クールでバランスある抑制と歌心を失わずにアンサンブルとしての音が奏でられています。彼らの真の魅力は知的さと繊細で緻密な表現であり、4つの弦楽器がときにお互いの音に寄り添い、融合し、あるときは断固として主張を貫いていきます。シェーンベルクでは、ヨーロッパで注目を浴びてきている新鋭ソプラノ歌手のエルザ・ドライジグが参加し、調和に満ちた声で歌い上げます。
 カルテット・アロドは2013年結成。14年FNAPECヨーロッパ・コンクール第1位、2015年コペンハーゲンで行われたニールセン国際室内楽コンクールでは第1位ならびにカール・ニールセン賞および新作演奏賞を受賞、さらに2016年ミュンヘン国際音楽コンクールで優勝し、大きな注目を集めています。ジャン・シュレム(ロザムンデ四重奏団・元ヴィオラ奏者)の指導を受け、2014年よりブリュッセルのエリザベート王妃音楽大学においてアルテミス・カルテットの下で研鑽を積んだほか、ドビュッシー四重奏団、エベーヌ四重奏団、タカーチ四重奏団、東京クヮルテット等の指導も受けています。2016年にはエクサン・プロヴァンス音楽祭アカデミーにおいてジャン=ギアン・ケラスの指導も受けています。2016年にはブリュッセルのパレ・デ・ボザール、パリのサル・コルトー室内楽センターのシーズン・オープニング公演、ベルリンおよびケルンでのデビュー公演、デンマーク・ツアーを行うほか、ヴェルビエ音楽祭、モントルー音楽祭、ブレーメン音楽祭、そしてサロン・ド・プロヴァンス室内楽音楽祭を始めとする様々な音楽祭に出演。すでに、フランス・ミュジックやラジオ・クラシックの複数のラジオ番組に定期的に出演するなど、世界的に活躍する弦楽四重奏団として注目をあびています。(輸入元情報)

【収録情報】
1. ヴェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
2. シェーンベルク:弦楽四重奏曲第2番嬰ヘ短調 Op.10
3. ツェムリンスキー:弦楽四重奏曲第2番 Op.15


 カルテット・アロド
 エルザ・ドライジグ(ソプラノ:2)

 録音時期:2019年4月23-29日
 録音場所:スイス、ラ・ショー・ド・フォン、サル・ド・ミュジック
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
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