【インタビュー】新海誠 月刊HMV&BOOKS 2020 5.15号 掲載

2020年05月20日 (水) 18:45

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『天気の子』Blu-ray&DVD 発売記念!
新海誠監督 スペシャルインタビュー


何か小さくてもいいから発見がある映画にしたいと思っています

社会現象にもなった『君の名は。』から3年。新海誠監督の新作『天気の子』は、雨が降り続ける東京で出会った少年と少女の“特別な”ラブストーリー。世界中で異常気象が続く今の時代にこれほど響く物語はない。

「ここ数年は世界中で気候変動のことが大きなニュースになっていて、身近な問題だけに心配にもなる。でも今後、天気に関して暮らしづらい時代に入っていくのは、ほとんど確定した未来として(新作の構想を考え始めた)2016年の時点で感じていました。なので3年後に公開する映画を作るなら“天気”をテーマにしようと」

3年の月日をかけて制作された『天気の子』は、日本だけでなく世界各国でも公開され大きな反響を呼んだ。

「国ごとに受け取り方が違うのが印象的でした。アメリカの西海岸やヨーロッパでは、はっきりと気候変動の映画として受け取られていました。ヨーロッパのジャーナリストからは、“陽菜は環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんとよく似ているが、インスピレーションがあったのか?”という質問を受けたほどです。一方で、ロシアや中国では、一切、気候変動のことは聞かれませんでした。両国とも内陸部で、気候変動が少ない国というのもあるのでしょう。特に中国は経済的な好況も反映してか、恋をしたい人たちが恋をするために観る映画として受け止めてくれたようです。“この映画を観たら彼女ができますか?”という無邪気な質問もたくさんもらいました。愛おしい映画の見方をしてくれているんだなと感じました」

世界中で受け止め方が違うというのは、それだけ新海作品には普遍性があるということ。いったいその秘訣はどこにあるのだろうか?新海監督の中だけに存在している面白さの基準があるのだろうか?

「やっぱり、観終わったときに観客に“面白かった”と思ってもらえる映画にするのはとても大事なことだと思います。そういう前提があって、なおかつ“何かを教えてくれる映画”、あるいは“何か小さくてもいいから発見がある映画”にしたいと思っています。例えば『天気の子』であれば、“僕と彼女だけが知っている世界の秘密の物語だ――”というモノローグから始まりますが、主人公の帆高にとっての世界の秘密はなんだったのか?とか観客が考えられるような。それはヒロインの陽菜という存在だったのかも知れませんが、そんな風に、観客にとって知らなかった感情を提示できたり、未知の部分が映画のなかに含まれたりしているのが面白い映画かなと思います」

『 天気の子』で大きな部分を占める“雨”だが、新海作品にはこれまでにも多くの“雨”が登場している。その“雨”も決してワンパターンではなく、小雨から豪雨まで“雨”の演出だけでもワクワクするような表現を魅せてくれる。

「以前、『言の葉の庭』という映画を作ったんですけど、あの作品も雨の映画でした。あのときは自分自身がコンピュータソフトを使って、コンポジット合成をして、たくさんの雨の表現を作りました。今回はそのときの表現をサンプルにしたり、雨が印象的な実写映画を参考に“こんなイメージでお願いします”とスタッフに伝えながら作っていきました」


5月27日に発売されるBlu-rayコレクターズエディションには、新海監督によるビデオコンテやメイキングドキュメンタリーなど、豪華な特典がつく。

「今は基本的に配信で観るという方が増えていると思うので、パッケージを買ってくださる方は『天気の子』を手元に置いておきたいという人が多いのではないかと思います。なので、パッケージ版にはより『天気の子』を深堀りできる要素をたくさん入れてもらいました。有働由美子さんとの対談や、主演の醍醐虎汰朗くんや森七菜ちゃんがRADWIMPSのメンバーと語るコメンタリーも入っていて、かなり面白い内容になっています」

なかでも、新海監督が『天気の子』の着想から、物語の構想、制作の流れを語る講演会の映像が収録されているのは貴重。帆高と陽菜の設定や、帆高の面倒を見ることになるライターの須賀の職業についての変遷など、まさに物語の起点を知る、とっておきの話が聞ける。

「『天気の子』は、こうやって発想していきましたということをたっぷり話しています。須賀は実は気象研究者だったとか(笑)。コレクターズエディションの特典映像は、物語を作りたい、マンガを描きたい、小説を書きたい、と思っている人にはとても興味深い内容になっているんじゃないかと思います」

裏の設定や気づかなかった伏線を知ることでまた新たな発見と出会えるかも知れない。

「まずは、劇場でたくさんの人に観てもらえて嬉しかったです。一方でもっとできることがあったのではないかと悩んだりしたこともありました。ただ、そういうアップダウンを経て、やはり『天気の子』という映画は2019年に公開することができて本当に良かったと思えるようになりました。作るべき時期に、作れた映画だったと思います。パッケージ版も、面白いものになっていると思うので、ぜひ、ご覧になってください」

シンカイ マコト

’73年、長野県出身。’02年に個人で制作した短編作品『ほしのこえ』でデビュー。その後、『言の葉の庭』など数々のヒット作を手掛け、’16年公開の『君の名は。』は社会現象にもなった。


インタビュー・文/高畠正人
Photo /山本倫子
構成/月刊ローチケ編集部 5月15日号より転載



『天気の子』ブルーレイ&DVD 2020年5月27日(水)発売

『天気の子』DVD&ブルーレイ5/27(水)発売

今や世界的に注目されるアニメーション監督・新海誠の最新作『天気の子』がBlu-ray&DVDで遂に発売!

HMV&BOOKS online-アニメ|2020年05月26日 (火) 13:00




映画『天気の子』作品情報

©2019「天気の子」製作委員会

【STORY】

「あの光の中に、行ってみたかった」

高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、
怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。

彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。
ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らす少女・陽菜。
彼女には、不思議な能力があった。

【CREDIT】

醍醐虎汰朗 森七菜
本田翼 / 吉柳咲良 平泉成 梶裕貴
倍賞千恵子 / 小栗旬

原作・脚本・監督:新海誠
音楽:RADWIMPS
キャラクターデザイン:田中将賀 作画監督:田村篤 美術監督:滝口比呂志
演出:徳野悠我 居村健治 CGチーフ:竹内良貴 撮影監督:津田涼介 助監督:三木陽子
音響監督:山田陽 音響効果:森川永子
製作:市川南 川口典孝 企画・プロデュース:川村元気 エグゼクティブプロデューサー:吉澤佳寛
プロデューサー:岡村和佳菜 伊藤絹恵 音楽プロデューサー:成川沙世子
製作:「天気の子」製作委員会(東宝 コミックス・ウェーブ・フィルム STORY KADOKAWA ジェイアール東日本企画 voque ting ローソンエンタテインメント)
制作プロデュース:STORY inc. 制作:コミックス・ウェーブ・フィルム 配給:東宝

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