【橋本莉奈 阿部広太郎 渡辺基志】著者&編集者に聞く。本は誰が企画を考えて、どうやって作るの?

2021年05月15日 (土) 08:00

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 本屋で見かけるあの一冊。インターネットで注文するこの一冊。芥川賞、直木賞受賞作として話題になる一冊……etc。本は誰にでも身近な存在である。一方で、誰がどうやって内容を考え、どのように制作されているのか、本ができる過程は意外と知らない。そこで今回は5月28日発売の書籍『それ、勝手な決めつけかもよ?−だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』の著者である阿部広太郎さんと、編集者の渡辺基志さん、橋本莉奈さんに書籍の制作にまつわる話、本づくりに必要な考え方に関する話を聞いた。

(Photo/植田真紗美 インタビュー・文/編集部)



― 今回の書籍は橋本さんが阿部さんに送った一通の手紙がきっかけだったそうですね。
橋本 自分の将来にモヤモヤしたことがきっかけで阿部さんが主宰されている講座「言葉の企画」を受けさせていただいて、自分は本の編集に興味があると気づきました。阿部さんの言葉によって自分に気づきがあったように、似たような悩みを持った人にも何かを伝えられたらと思って、当時は営業部に所属していたのですが、阿部さんにお声がけして、何か企画をできないかと考えました。

阿部 告白を受け取ったような気持ちになりました。胸が熱くなりましたし、橋本さんの気持ちに応えたいと思いました。テーマが明確に決まっていた訳ではないので、最初の打合せは挨拶と雑談という感じでしたね。


― 一緒にテーマを固めていきながら企画を形にしていったわけですね。
渡辺 会社に企画を通すためにも、決裁者がどんな本かイメージできるほうがいいので、書籍をつくるときは最初にある程度、企画が固まっているケースがほとんどです。今回は企画が粗い状態から始まって、毎月1回ずつくらいお話を繰り返して磨いていった感じで、テーマが固まるまで時間がかかりました。


― 本のテーマは「解釈」。物事の受け取り方です。誰にでも身近なテーマですね。
阿部 僕がコピーライターなのもあり、いろいろな事象に「名前をつける」ことに興味があったんです。ワークショップをしたらユニークな名前がたくさん集まりました。たとえば、普段はこの人ちょっとなあ…と思ってもいざというときに頼りになる人なら「映画版ジャイアン」。あるいは、出社時間や会議の開始時間などスタートには厳格なのに終了は気にせずダラダラしている様子は「スタートだけダッシュ」。話し合いを重ねるなかで、その名前をつける行為は「解釈」そのものなんじゃないかとなっていったんです。

渡辺 今回の本は誰にでも当てはまる内容だと思います。ただ、「解釈」という言葉をメインタイトルに入れると、ちょっと硬くなって、万人に受け入れられないんじゃないかと話し合って、問いかけ型のタイトルになりました。タイトルを決めることでターゲットを決めていくというアプローチでした。


― 編集者と著者の間の意見交換から内容が固まり、ブラッシュアップしていくと。
阿部 遠慮はせずに配慮はするということをいつも心がけているのですが、お互いに配慮しながらも本気で対話していくことで、原稿が磨かれていく感覚がありました。

橋本 講座のときは先生と生徒という関係でしたが、編集者としていいものをつくりたいので、遠慮はしないで、お伝えするべきことはお伝えしていました。

阿部 何かをつくりあげようと思ったら、必ず根っこの思いを共有する。伝え合うことで、完成したその時、それぞれが「やり尽くせた」と思えるようにしたかったんです。


―「解釈」という言葉からイメージできる絵はパッとは思いつきません。そうしたなかでカバーデザインを考えるのも、難しいところですね。
阿部 カバーは本の顔ですもんね。僕は書店で、カバーの質感や帯とか、そういうところも見るので、作り手にまわるときは一つひとつ気持ちを込めて、装丁家さんと一緒につくりあげたいと思っています。


― 本屋では手にとれる一方で、今はインターネットで買う人が増えています。時代背景に合わせて意識していることはありますか?
橋本 本を買うときはレビューをチェックしてから買うという人が増えているといいます。なので、読み終わって満足ではなくて、読んだ方が感想を書きたくなる、誰かに話したいと思ってくれるような、そういう感情をつくれる本だったらいいなと思っています。

渡辺 単なる誰かのいい話ではなく、読者の方が自分事としてアクションしていける。他人事で終わらないようにというのは、常に考えていることですね。


― 一通の手紙からスタートした企画が一冊の本になるのは嬉しいですね。
阿部 本のタイトル通り、「勝手な決めつけかもよ?」と思うことはいろいろな場面であって、僕自身、この本をつくりながらも固定観念に縛られていないかなと常に考えていました。勝手な決めつけで自分を縛り付けてしまいがちな時代だと思うので、閉塞感や息苦しさを感じている人に「解釈」を届けたいんです。背中を押すといいますか、心がほどけてだんだん軽くなっていく感覚を分かち合いたいと思っています。

商品詳細
『それ、勝手な決めつけかもよ?
だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』

発売日:2021年5月28日(金)
価格:1,650円(税込)
ディスカヴァー・トゥエンティワン刊
それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習

Books

それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習

阿部広太郎

Price (tax incl.): ¥1,650

Release Date: May/2021



アベ コウタロウ
株式会社電通。コピーライター。BUKATSUDO連続講座「企画でメシを食っていく」主宰。
「世の中に一体感をつくる」を信念に企画をする。
Twitter @KotaroAで日々発信中。

ワタナベ モトシ
株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン、編集部所属。
『ものの見方が変わる 座右の寓話』『才能をひらく編集工学』などを担当。人生のパート ナーになるような本をつくりたい。

ハシモト リナ
株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン、編集部所属。
この春より、新米編集者として奔走中。
「だれかのマイベストになる本」をつくっていきたい。


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