ニケ&ルーアン・ノルマンディ歌劇場/サン=サーンス:『フリネ』

2021年12月25日 (土) 09:00 - HMV&BOOKS online - クラシック


忘れられたサン=サーンス晩年の傑作、
歿後100周年の録音はニケ指揮による申し分ない仕上がり


長命で多作ながら限られた作品ばかりが注目され、見過されている傑作も多いサン=サーンス。近年はヴェネツィアに本拠を置くロマン派フランス音楽センター「Palazetto Bru-Zane」が忘れられた彼の重要作品の復権に情熱を注ぎ、注目すべき成果を上げてきました。作曲家歿後200周年の2021年に最新録音がなされた今回の新譜もその一つ。
 『フリネ』は古代ギリシャの伝説的娼婦フリネが不当な辱めまがいの裁判を経て救われる伝説をもとに、1861年に上り調子の大画家ジェロームが描いた有名な絵画にインスピレーションを得てまとめられた歌劇。1893年、台詞朗読を伴うオペラ=コミークとして上演され大成功を収めながら、20世紀以降は顧みられなくなった不遇の傑作です。ここでは原作の台詞部分も音楽で埋めるべく、初演3年後に若手世代の人気作曲家アンドレ・メサジェ[1853-1929]がレチタティーヴォを追補したヴァージョンで演奏(この版での世界初録音)。
 台本の弱さを補って余りある見事さが特筆されるサン=サーンス自身の音楽も含め、才人エルヴェ・ニケのタクトはここでも本領を発揮。注目度の高いプロジェクトの数々で知られるルーアン歌劇場のオーケストラが、古楽器演奏を出発点としたニケの解釈を鮮やかに音にしてゆきます。ヴァリケット、デュボワ、コンスタンスら最前線の名歌手たちも存在感たっぷり各登場人物の個性を演じ歌い、「Bru Zane」レーベルならではの充実ブックレットとともに、当時のサン=サーンスの作風充実を知るにうってつけのアルバムとなっています。(輸入元情報)

【収録情報】
● サン=サーンス: 歌劇『フリネ』全曲(メサジェ作曲のレチタティーヴォを伴う1896年版)


 娼婦フリネ…フロリー・ヴァリケット(ソプラノ)
 執政官の甥ニシアス…シリル・デュボワ(テノール)
 執政官ディセフィル…トマ・ドリエ(バス)
 女奴隷ランピト…アナイス・コンスタンス(ソプラノ)
 シナロペクス…フランソワ・ルジエ(テノール)
 アゴラジーヌ、伝令…パトリック・ボレール(バス)
 ル・コンセール・スピリチュエル合唱団
 ルーアン・ノルマンディ歌劇場管弦楽団
 エルヴェ・ニケ(指揮)

 録音時期:2021年3月31日〜4月2日
 録音場所:フランス北部ノルマンディ地方ルーアン、ルーアン・ノルマンディ歌劇場
 録音方式:ステレオ(デジタル)
 1896年版世界初録音