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【インタビュー】クレイゲン・ラム / HEATHEN
2022年06月24日 (金) 19:00
|HMV&BOOKS online - ロック , HMV&BOOKS online - 洋楽
10月に来日が決定しているテクニカル・スピード・メタル・バンド、ヒーゼン。現在のサウンドの鍵を握るギタリスト、クレイゲン・ラムに話を聞いてみた。
ー ヨーロッパ・ツアーから戻られたところですよね。いかがでしたか。
クレイゲン:そう、3週間のヨーロッパ・ツアーから戻ってきたところさ。ヘッドライナーでやって、ニュー・アルバム『エンパイア・オブ・ザ・ブラインド』からの曲の反応も良かったよ。もはやニュー・アルバムとは言えないかもしれないけど(笑)。少なくともヨーロッパのファンは、このアルバムの曲をライヴで見るのは初めてだろうから。とても良かった。楽しかったよ。
ー 誰とツアーしたのですか。
クレイゲン:サポート・バンドはトキシック。
ー アメリカのテクニカルなスラッシュ・バンドですよね。
クレイゲン:そう。彼らは7月だったかな、ニュー・アルバムが出るんだよ。
ー ヒーゼンとトキシックというのは素晴らしい組み合わせですね。
クレイゲン:ドラマーは両方のバンドでプレイしているし。彼は大変だろうけど(笑)。
ー そしてまたすぐヨーロッパに戻るんですよね。エクソダスとテスタメントとのツアーで。
クレイゲン:そうなんだよ。2週間後にヨーロッパに戻って、いくつかのフェス、いくつかのヘッドライナー・ショウ、それからたくさんのエクソダスとテスタメントとのショウをやる。
ー コロナの状況はいかがでしょう。もうツアーに支障はない感じですか。
クレイゲン:ないね。ほとんどの国ではもう規制がない。ヨーロッパで入国する時に、ワクチン摂取済みの証明書を提出する必要があったけれど、帰りは何もなかった。ツアー中に規制がなくなったみたいで。だいぶ規制は緩んできているみたいだね。
ー ライヴのセットリストというのは、どうやって決めるのですか。
クレイゲン:決めるのは難しいよ。セカンド・アルバムの『Victims of Deception』からはもっとプレイしたいんだけどね。曲が長いんだ。セットの時間は決まっているから、8分の曲をやると、他の2曲を削ることになってしまう。最近は、ストリーミング・サービスのアナリティクスを使ってるよ。あとは、ファンにどの曲を聴きたいか聞いたり。基本的にはベストの曲プラス新曲という感じ。新曲はプロモートしたいからね。アルバムが出た途端にパンデミックで、全然プロモーションができなかったから。
ー 『エンパイア・オブ・ザ・ブラインド』の評判はいかがでしたか。
ー レビューというのは気になりますか。
クレイゲン:まあ、アーティストとして、ネガティヴなレビューを見ると、できればみんなに気に入ってもらいたいとは思うもの。一方で、このバンドは全員に気に入られるタイプではないからね。何て言ったらいいかな。ヒーゼンはアルバムごとにサウンドが結構違うだろう?それぞれのアルバムが、多かれ少なかれクリエイティヴな力を持っている。ファースト・メタルは、スピード・メタルやパワー・メタルっぽくて、あのアルバムのコアな部分は、ダグ・ピアシーが書いた。前のギター・プライヤーの。セカンド・アルバムは、ある意味『...And Justice for All』っぽい。あれは主にリー(アルタス)が曲を書いた。サード・アルバムは、リーと俺、それから以前のベーシスト、ジョン・トレスで書いた。ニュー・アルバムはすべて俺の手によるもの。敢えてそうした訳でなく、たまたま俺が完成した曲をいくつも持っていたからね。こうやってアルバムごとに異なっていると、すべてのファンを満足させるというのは難しくなるだろう。ファーストが大好きとか、セカンドが大好き、というファンがいる訳だからね。だから、レビューというのはそれほど気にしないよ。俺たちにとって、アルバムはそれぞれ別物だからね。俺たちが聴いて育ったアーティストたちも、アルバムごとにユニークなサウンドを持っていた。ピンク・フロイドもクイーンも、レッド・ツェッペリンも。彼らもアルバムごとに少しずつサウンドが違っただろう?いつも新鮮で新しいものがあって、10枚同じアルバムをリリースしたりはしなかったよね。俺たちも同じで、違ったテリトリーを探索したいし、これからもそうする。もう次のアルバム用のマテリアルは揃っているからね。ツアー・サイクルが終わったら、曲としてまとめていこうと思ってる。
ー もう新曲ができているのですね。
クレイゲン:アルバム2枚分くらいのマテリアルはあって、その中からどれを採用するかとか考えて、アレンジしないといけないけどね。来年の早い時期にはスタジオに入りたい。
ー 今回は(セカンドとサード間のように)10年待ちということはない訳ですね。
クレイゲン:そうならないことを祈るよ(笑)。
ー 前回のインタビューでも、あなたが育った80年代のLAシーンの話がとても興味深かったので、再びその話を伺いたいと思います。当時のシーンはどんな感じだったのでしょう。
クレイゲン:あの時代にLAで育ったのは、とても興味深いことだった。コアなミュージックシーンは、ハードロックやヘア・メタルで、ギタリストとしてはとても気に入っているバンドもいたよ。初期のラットやドッケンの作品には、素晴らしいギター・プレイがあったからね。とても好きだった。それからメタリカや、他のスラッシュを聴いて、とても気に入ってね。もっとアグレッシヴでダークで、10代の頃はそういうものに惹かれるだろう(笑)。当時クールなコンサートをたくさん見られて、とても幸運だったと思う。前回話したスレイヤーとダーク・エンジェルのライヴは、ハイライトさ。個人的に『Darkness Descends』は最高のスラッシュ・アルバムだと思っているから。『Reign in Blood』よりも好き。あの作品のドラミングは、スラッシュというジャンルを定義するものだった。あんなドラミングをやっている人はいなかったよね。ダーク・エンジェルの『Live Scars』は、カントリー・クラブというところで録音されて、そのショウも見たし、リジー・ボーデンの『The Murderess Metal Road Show』もカントリー・クラブで録られて、それも見たよ。メガデスの「イン・マイ・ダーケスト・アワー」のヴィデオの観客の中にも、俺がいる。あれもカントリー・クラブだよ。フェンダーズ・ボール・ルームでは、ダーク・エンジェルとポゼストも見たな。残念ながらベイエリアに育つ幸運には恵まれず、その創世記を見ることはできなかったけれど、LAのスラッシュ・バンドは色々見たし、ベイエリアのバンドも来ていた。ちょっとしたドライヴでLAまで来られるからね。だから、両方のシーンのバンドを見ることができた。音楽のシーンとしてはクールな時代だったよ。今のキッズたちにも体験して欲しかったな。コンサート、環境どちらもね。今は変わってしまったよ。みんなスマホを掲げて撮影していて、音楽を聴いて、体験しなくなっている。モッシュピットからも離れて。フォービドゥンのクレイグが、ギターのアームを掴んできたファンの顔面を蹴り飛ばしたりとか、もうそういうことって、今では起こらないよね。SNSの存在もあるだろうし、ライヴ自体の体験というものを逃してしまっているよ。あの時期の話をするのはとても楽しいんだ。質問があったら何でも聞いてくれ。
ー これはジーン・ホグランから聞いたのですが、当時ジェフ・ハンネマンが、ダーク・エンジェルのことをもの凄く警戒していたと。スレイヤーの地位が奪われてしまうんではないかと。
クレイゲン:そうだろうね。『Darkness Descends』と、その次のアルバムのツアーは何度も見たけれど、本当にブルータルで凄かった。ジーンは完全に時代の先を行っていたよ。
ー スレイヤーとダーク・エンジェル以外に、当時のLAで良かったバンドはいますか。
クレイゲン:うーん、その2バンドはビッグだったからね。俺がバンドをやる頃には、LAにもアンダーグラウンド・シーンが出来上がっていたけれど、他に成功したバンドはいなかったな。良いバンドもいたのだけど、出てくるのが5年遅かったという感じだった。色んなバンドがいたけど、スレイヤー、ダーク・エンジェルみたいに記憶に残るのはいなかったなあ。エクセルはもっとパンク、ハードコアっぽいバンドで、彼らは素晴らしかった。例のスレイヤーとダーク・エンジェルのショウと同じところ、ハリウッド・パラディウムで、クリエイターとモーゴス、エクセルというショウを見た。あれも良いショウだったな。本当にたくさんのショウを見た。だいたいはカントリー・クラブだったけれど。たいていのバンドはあそこでやっていたな。自分のバンド、サイコシスで初めてギャラをもらってプレイしたのは、フォービドゥンとサンクチュアリとのショウだった。素晴らしかったよ。フォービドゥンは『Twisted into Deform』、サンクチュアリは『Into the Mirror Black』の時で。あの当時にこういうバンドを見られただけでも素晴らしいことだった。
ー 当時ハードコアはどうでした。あの頃のLAのハードコア・シーンはギャングとのつながりで非常に危険だったと聞きますが。
クレイゲン:危険だったよ。俺はあまりハードコア・シーンにはハマらなかったのだけど、ギャングたちはスレイヤーのライヴには来ていた。ダンジグもそうだった。ファースト・アルバムのツアーを見に行ったけれど、ファンはMTVで「Mother」のヴィデオを見たメタル・ファンと、ミスフィッツやサムヘインの曲を期待してきたハードコア・ファンが半々でね。お互い気に入らないもの同士、と言うか、主にハードコア・ファンがメタルを嫌いだったのだと思うけど。でも、ギャングがいたのはその2つくらいだったかな。スレイヤーの『Reign in Blood』のツアーのお客さんは激しかったよ。8の字のモッシュピットができて、その中でケンカしているやつがいたり。本当にクレイジーだった。
ー スレイヤーのライヴにはいつも1ダースの救急車が待機しているなんていう噂もありました。
クレイゲン:実際そうだったよ。例のダーク・エンジェルとのライヴでは、救急車だけではなく、機動隊もいた。問題が起こりそうな気配があったからね。その次のツアーで、彼らがLAスポーツ・アリーナでプレイした時も、そうだった。スイサイダル・テンデンシーズはLAではプレイできなかったんだ。ギャングの関係で、プレイできることがなかったよ。ちょうどメタルに寄ってきていた時期で、俺はとても気に入っていたから、残念だった。見たかったのだけど、ずっと後になるまで見るチャンスがなかった。
ー スラッシュ・メタル・シーンもこの30-40年で大きく変わりましたよね。もはやそういうことは起こりそうにもありません。
クレイゲン:みんな年をとったからね。コンサートに行って楽しみたいという気持ちが大きいのだろう。両親に連れてこられて、こういう音楽に興味を持つキッズたちもいるみたいだけれど。環境が変わったことは間違いない。今はとてもフレンドリーだよ。もちろんモッシュピットも起こるし、喧嘩もあるけれど、たいていは酔っ払った結果であり、俺たちが80年代に経験したものとは違う。
ー 80年代のLAというと、ワイルド・ラグス・レコードがありましたよね。
クレイゲン:あったね。確かLAの中心から南に行ったところにあって、多くのアンダーグラウンドのバンドが、あそこに自分たちの音源を置いてもらっていた。俺の場合は、お店に直接行かず、郵送で置いてもらっていたよ。メタル専門のお店だったからね、お気に入りだった人も多かったはず。その後、90年代になってから、ダーク・レルム・レコードというのができてね。おそらく今もあると思うのだけど、サディスティック・インテントというバンドのメンバーがやっている。デス・メタル・バンドで、確かドラマーがポゼストのメンバーなんじゃないかな。彼らはデスのオープニングなんかもやっていたよ。シーンはゆっくりとスラッシュからデスへと移るにつれ、アンダーグラウンドなものになっていった。当時スラッシュ・メタルは少々消えかかって、デス・メタルはもっとアンダーグラウンドなものだったから。ああいうお店はとても重要だったよ。テープトレードのための、フィジカルな拠点だったから。テープトレードもやがてCDトレードに変わっていって。
ー サディスティック・インテントもギャングとのつながりを取り沙汰にされるバンドですよね。
クレイゲン:それは知らないな。彼らとは会ったことがなくて、俺のバンド、プロトタイプはサディスティック・インテントと一度ライヴをやったことがあったと思うけど、面識はないんだ。あの頃子供が生まれて、時間がなくなって、あまりレコード屋にも行けなくなってしまったから。ダーク・レルム・レコードにも行ったことがないと思う。
ー さて、日本でのヒーゼンのステージはどのようなものになるでしょう。
クレイゲン:素晴らしいショウさ。ライヴをやるのはとても楽しいし、他のスラッシュ・バンドができないことをやって見せる。たくさんのメロディ、そしてさっきも言ったように、デイヴはきちんと歌が歌えるからね。今回のツアーやリハーサルでは、レコード同じようなハーモニーも再現した。エネルギーたっぷりの素晴らしいショウをやるよ。みんなが楽しんでくれるといいな。
ー では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
クレイゲン:まず最初に、日本に行くのにこんなに時間がかかってしまって申し訳ない。前回もとても楽しかったので、また日本に行くのが待ちきれないよ。日本の友達に会うのが楽しみだし、ぜひ新しい友達も作りたい。待ちきれないね。
【HEATHEN EMPIRE OF THE BLIND JAPAN TOUR 2022】
2022/10/19(水):SPACE ODD (東京)
2022/10/20(木):SPACE ODD (東京)
2022/10/21(金):ESAKA MUSE(大阪)
2022/10/19(水):SPACE ODD (東京)
2022/10/20(木):SPACE ODD (東京)
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