無人島 〜俺の10枚〜 【HMVバイヤー 寺町 知秀 編】

2023年07月14日 (金) 18:00

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HMV&BOOKS online - Japanese Pop

現行のアンビエント〜ニューエイジ・シーンの潮流を鮮やかに捉えたコンピレーションシリーズ第4弾となる最新作『幻の湖・永遠の夏 -Lake Of Illusions vol.4-』いよいよ7/19発売。
このコンピレーションをセレクトしたHMVの洋楽バイヤー寺町知秀が満を持して「無人島企画」に登場。
社内外から信頼を集める生粋の洋楽バイヤーが、選ぶ10枚とは?


無人島 〜俺の10枚〜 【HMVバイヤー 寺町 知秀 編】

Jonny Nash 『Make A Wilderness』

夜の無人島のような深い暗闇の黒と水面の緑のコントラストが映えるジャケットがなんとも美しい。現行のニューエイジ/アンビエント・シーンの重要レーベル〈Melody As Truth〉を主宰するJonny Nashが、アムステルダムの名門〈Music From Memory〉からリリースした2019年のアルバム。J.G.バラードや遠藤周作にインスピレーションを得たという本作は、未知なる沈黙の音楽。ガムランのような音響感のある冒頭の「Root」を聴きながら夜の海を眺めぼんやりしたい。

▼オススメ楽曲
Root


Joanna Brouk 『The Space Between』

無人島の夜は長いと思うので瞑想やヨガをはじめるかもしれません。そうなるとBGMが重要になってきますが、真っ先に浮かんでくるのがジョアンナ・ブルーク。彼女はテリー・ライリーやロバート・アシュリーの元で学んだアカデミックな経歴を持つ現代音楽家で、ピアノやムーグによる優雅な旋律をサイケデリックな空間に浮かべる。永遠を思わせる夜に意識が溶けていきそう…。完璧なメディテーション・ミュージック。

▼オススメ楽曲
Golden Cloud Layers



Roedelius 『Wenn Der Sudwind Weht』

クラスター〜ハルモニアの創始メンバーで、ブライアン・イーノとのコラボレーションで知られるハンス・ヨアヒム・ローデリウスですが、何度も繰り返し聴くのはソロ名義によるこのアルバム。シンセサイザーをアコースティック楽器のような音色で紡ぎ、その感触は一貫して柔らかくなめらかでリラックス効果抜群。無人島生活に慣れてきた天気のいい日にこのジャケットのようなシチュエーションで聴きたい。

▼オススメ楽曲
Wenn Der Sudwind Weht



Jurgen Muller 『Science Of The Sea』

エリック・セラの『グラン・ブルー』サントラと並んで、無人島で海に潜った時に脳内再生される海中の音楽といえばこの作品。リリース当時は情報が錯綜して、ドイツのJürgen Müllerによる海洋学者の発掘音源という触れ込みでしたが、実のところはNorm Chambers a.k.a. Panabriteの別名義アルバム。上記のローデリウスの音色にも似た、水中をゆっくりと浮遊していくような緩やかなトーンで綴られています。

▼オススメ楽曲
Sea Bed Meditation



Michel Redolfi 『Sonic Waters Underwater Music 1979-1987』

水中音楽≠フコンセプトでよく知られているフランスのエレクトロ・アコースティック作曲家、ミシェル・ルドルフィの初期音源集。ルドルフィは遠い太平洋へのあこがれのもと制作した『Immersion / Pacific Tubular Waves』という作品があるほど海や水に対する偏愛の持ち主ですが、ここで聴かせる水中音楽の臨場感にその偏愛がぶくぶくと湧き上がっています。箱根の翠泉という温泉で開催されたパーティーアンビエント温泉≠ナ、DJのMau Snigglerさんに教えていただいた1枚。

▼オススメ楽曲
Overture



Emily A Sprague 『Water Memory』

フォーク・バンド、フローリストのフロントメンバーとしても活動するエミリー・A・スプレイグがモジュラー・シンセを使って制作したはじめてのアンビエント作品。島にいる以上海(もしくは水)は切り離せないので、このアルバムはきっと無人島生活の記憶の中心にいるにちがいない。水の記憶≠ニいうアルバムタイトルのイメージをつたうような、瑞々しい感性が湧き水のように流れ出てくる美しい旋律の連なりは、音楽でありながら水そのもの。

▼オススメ楽曲
Dock



Steve Reich 『Four Organs - Phase Patterns』

ライヒから1枚選ぶとしたら『ドラミング』と迷うところですが、今回はジャケットでこちらを。アフリカ音楽/ポリリズムに傾倒していた時期の作品で、ジョン・ギブソンによる反復して刻まれるマラカスのリズムに4台のオルガンが同じフレーズを繰り返し変速して、肉体的なグルーヴを生んでいて面白いです。有機的な音の連なりがひたすら気持ち良い。重なるオルガンのトーンも隅々までデザインされているんですよね。

▼オススメ楽曲
Four Organs



Pale Jay 『Bewilderment』

「ミールス(南インドのカレー幕の内弁当的なやつ)は、全部が美味しいと疲れるから、ひとつふたつ変なものが入っている方が全体として食後の満足感が得られる」とスパイスカレーの先生に教わったのですが、その理論で少し外してペイル・ジェイを。近年のソウル/R&Bは音の使い方やアレンジメントや歌声にアンビエント・ミュージックとの接点があると感じていて、水のような流麗なファルセットを聴かせる彼の音楽にも多分にその要素が詰まっています。

▼オススメ楽曲
By the Lake



V.A. 『Aquapelago』

ニューエイジ/アンビエント・ミュージックといえば水や海をコンセプトに掲げた作品は数多くありますが、これは英国の気鋭レーベル〈Discrepant〉からリリースの、「深海の世界」をテーマにしたコンピレーション・アルバム。日本語と英語のインスタレーションが飛び交う冒頭の怪曲Sugai Ken「Boundary」が異彩を放っていて驚かせますが、無人島ではMike Cooper「Lamma Island」のような架空の南国を想起させる音楽をのんびり聴きたいですね。場所はこのジャケットのような場所が理想です。

▼オススメ楽曲
Mike Cooper/Lamma Island



Gia Margaret 『Mia Margaret』

エミリー・A・スプレイグもそうですが、シンガーソングライターが表現するアンビエント作品には、インストゥルメンタルでも歌っているような独特の温もりがあって惹かれます。ジア・マーガレットのこのアルバムは病気で声を失ってしまった時期に制作されたという。歌い手として歌えないということは想像しただけでもつらく、そんな状況下で生み出された音楽はあまりにもセンシティヴで驚くほど美しく、優しい。無人島生活に行き詰った時に聴きたいアルバム。

▼オススメ楽曲
apathy


無人島 〜俺の10枚〜 とは

音楽好きには、超定番の企画「無人島 〜俺の10枚〜」。なんとも潔いタイトルで、内容もそのまんま、無人島に持って行きたいCDを10枚チョイスしてもらい、それぞれの作品に込められた思い入れを思いっきり語ってもらう。ミュージシャンとしてルーツとなるもの、人生を変えた一枚、甘い記憶がよみがえる一枚、チョイスの理由にはそれぞれのアーティストごとに千差万別だ。

「無人島 〜俺の10枚〜」過去のアーカイブはこちら



シリーズ第4弾
『幻の湖・永遠の夏 -Lake Of Illusions vol.4-』7/19発売



現行のアンビエント〜ニューエイジ・シーンの潮流を鮮やかに捉えたコンピレーション『幻の湖-Lake Of Illusions-』シリーズ第4弾となる最新作が登場。

“Endless Summer”をコンセプトに掲げた第4弾『幻の湖・永遠の夏 -Lake Of Illusions vol.4-』。
前作に引き続きBusmind、ind_fris、今回新たに.daydreamnation.、H.Takahashi、TOMC、Jesus Weekend、Ramza、Am Shhara、Ultrafog、UG Noodleという現行のシーンで活躍する気鋭の10アーティストが参加し、全曲新録となるエクスクルーシヴ・トラックを提供。ゆっくりと感覚が研ぎ澄まされていくような、“Endless Summer”を感じさせる、眩しくて煌びやかな空気感が一貫して流れる素晴らしいコンピレーションとなっている。

Lake Of Illusions vol.4 -Endless Summer-

CDNovelty

Lake Of Illusions vol.4 -Endless Summer-

Illusion Lake

Price (tax incl.): ¥2,500

Release Date: 19 Jul 2023

【先着特典】ロゴステッカー

Lake Of Illusions vol.4 -Endless Summer-

VinylNovelty

Lake Of Illusions vol.4 -Endless Summer-

Illusion Lake

Price (tax incl.): ¥4,400

Release Date: 19 Jul 2023

【先着特典】ロゴステッカー

Lake Of Illusions vol.4 -Endless Summer-

Cassette Tape

Lake Of Illusions vol.4 -Endless Summer-

Illusion Lake

Price (tax incl.): ¥1,980

Release Date: 19 Jul 2023

Cannot order

収録内容

  • 1. .daydreamnation./Firmament Echoes
  • 2. H.Takahashi/Banana
  • 3. TOMC/You Are Balearic
  • 4. ind_fris/Senkei
  • 5. Bushmind/The End Of One
  • 6. Jesus Weekend/Sacred Place Without A Name
  • 7. Ramza/Float
  • 8. Am Shhara/Kawamo
  • 9. Ultrafog/Flavor Of Mirage
  • 10. UG Noodle/Summer Never Ends


寺町知秀(てらまち ともひで)

1999年にHMV渋谷入社。HMV立川など7店舗で店長を務め、計13店舗の勤務を経て現在は本社にて洋楽バイヤーを担当。

バイヤー寺町知秀のわくわくPOPSランド アーカイヴ

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