シモーネ・ヤング/ブルックナー第2番
2007年2月14日 (水)
ドイツの音楽雑誌「Opernwelt(オーパーンヴェルト、オペラの世界)」で、2006年度の年間最優秀指揮者賞を受賞したシモーネ・ヤングは、ウィーン・フィルを指揮した初の女性指揮者でもあります。
彼女の待望のシンフォニー初録音は、味な旋律に彩られた隠れ名作のブルックナー交響曲第2番。しかも初稿による演奏であり、さらに亡きギュンター・ヴァントのお膝元でもあるハンブルクのムジークハレ(現在の名称はライスハレ)で大きな話題を呼んだ記念碑的演奏のライヴ録音、しかも、高音質なマルチチャンネル対応ハイブリッドSACD仕様でリリースされるというのですから、ブルックナー・ファンならずとも注目度の高いリリースといえるのではないでしょうか。
実際、このアルバムで聴ける演奏は、対向配置&優秀録音という好条件を背景に、次々に現れる魅力的な旋律の洪水とも言うべき作品の魅力を、雄大なスケールの中に克明に描きこんだ素晴らしいものなのです。
競合盤のティントナー盤とアイヒホルン盤はやや枯れ気味でしたが、このシモーネ・ヤング盤での生き生きと躍動し、クライマックスでは雄渾な音響を轟かせるパワフルなアプローチは、ブルックナーの初期作品にふさわしいものといえるでしょう。
すごいのは楽員たちの表現力の豊かさで、いったいどれだけさらったのかと思わせるほど細かい部分にまで気持ちが入っており、指揮者との良好な人間関係を思わずにはいられません。第1楽章の第3主題(呈示部[03:17-]、展開部[08:09-]、再現部[14:16-])などほのぼのとした旋律もリズムが良いのでワクワクするほど魅力的に演奏されています。一方、第4楽章では動と静のコントラストも強烈に、指揮者、楽員ともども途切れることのない集中力で力強い音楽を構築してゆきます。
今回、シモーネ・ヤングが、手兵ハンブルク・フィル(ハンブルク州立歌劇場管弦楽団のコンサート活動での名称)と取り上げたブルックナーの交響曲第2番初稿は、オットー・デッソフ指揮ウィーン・フィルによって試演された、作曲者の原意が最も強く反映されたヴァージョンであり、ウィリアム・キャラガンが校訂した楽譜を用いています。
この初稿はやがて、デッソフの「長すぎる」という発言と、ヨハン・ヘルベックの「聴衆に合わせるべき」という助言を受けて、スケルツォの反復省略、終楽章56小節短縮、一部差し替えという形で正式に初演され(第1稿初演版→アイヒホルン[廃盤])、その後、大規模なカットや差し替え、休符の削除といったさまざまな改訂やミックスを経て、現在一般的な第2稿ハース版(朝比奈、バレンボイム&CSO、シャイー、エッシェンバッハ、ハイティンク、インバル、コンヴィチュニー、マズア、スクロヴァチェフスキ、シュタイン、ヴァント、ツェンダー)や、第2稿ノーヴァク版(ジュリーニ、カラヤン、ヨッフム、D.R.デイヴィス、ロジェストヴェンスキー、ショルティ、若杉)、第2稿キャラガン版(バレンボイム&BPO)という形に姿を変えてゆきます。
つまりブルックナーの第2交響曲で最も情報量が多く、かつまた「パウゼ交響曲」ともあだ名されたパウゼの効果がよくあらわれているのがこのヴァージョンなのですが、そもそもこの初稿の校訂を、レオポルト・ノーヴァクがウィリアム・キャラガンに依頼したのが1987年の話で、1990年には簡易な形で出版に漕ぎつけるとは言うものの、正式なヴァージョンの出版は2005年になってしまったという出版事情の問題もあり、録音はこれまでにアイヒホルンとティントナーのものしか存在しませんでした。ということで、今回のリリースは、正式ヴァージョン出版後の演奏という点からも大いに歓迎されるところです。
指揮者のシモーネ・ヤングは、ハンブルク州立歌劇場のインテンダントとフィルハーモニーの音楽監督を務める人物で、オペラのほかコンサート・レパートリーにも強く、ワーグナーからメシアンまで、重厚なスタイルで聴きごたえある音楽をつくりあげることではすでに定評があります。
そのヤングが、実力・真価をブルックナーのシンフォニーでもフルに発揮、1828年創立という長い歴史を持ち、ブルックナー演奏に関してもヨッフムやカイルベルトとの伝統を誇るハンブルク・フィルを指揮、71分以上をかけて雄大に濃厚にうねるような見事な演奏を聴かせてくれているのです。
ちなみにコンサート当日は、前半にシェーンベルクの小品「弦楽とハープのためのノットゥルノ」と、元ベルリン・フィルのヴィオラ奏者で現在は作曲家として活動するブレット・ディーンのヴィオラ協奏曲が演奏されています(ディーンの名はラトルの『惑星』に組み合わされた『コマロフの失墜』で一躍有名に)。
シモーネ・ヤングのエームス・クラシックスへの第2弾録音としては、ハンブルク州立歌劇場の音楽総監督に就任した最初の新演出の上演で取り上げ、大きな話題と高い評価を得たヒンデミットのオペラ『画家マティス』全曲のライヴ・レコーディングの発売が予定されています。
・ブルックナー:交響曲第2番ハ短調 WAB102(1872年稿)[71:22]
校訂:ウィリアム・キャラガン(2005年出版)
第1楽章 Ziemlich schnell [20:40]
第2楽章 Scherzo: Schnell [10:47]
第3楽章 Adagio: Feierlich,etwas bewegt [19:32]
第4楽章 Finale: Mehr schnell [20:23]
ハンブルク・フィルハーモニー
シモーネ・ヤング(指揮)
録音時期:2006年3月12,13日
録音場所:ハンブルク、ライスハレ(ムジークハレ)でのライヴ
プロデューサー:ディーター・エームス
レコーディング・プロデューサー:イェンス・シューネマン
5.0サラウンド・ミックス:イェンス・シューネマン
サウンド・エンジニア:クリスティアン・フェルトゲン
SACD Hybrid
Stereo(2.0)/Multichannel(5.0)
【参考データ:演奏時間】
ヤング :20:40+10:47+19:32+20:23=71:22(2006)
ティントナー:20:50+10:53+18:00+21:19=71:22(1996)
アイヒホルン:19:40+10:59+15:42+20:55=67:16(1991)
【プロフィール】
シモーネ(シモーン)・ヤングは、1961年3月2日、オーストラリアのシドニーに生まれ、そこでピアノと作曲を学びました。貝殻を形どった外観で名高いシドニー・オペラ(ハウス)でアシスタントを務めていた1985年、急病の指揮者に変わり、わずか数時間という予告で見事に代役を務め、センセーショナルなデビューを果たしました。
その後奨学金を得てヨーロッパに留学、ケルン市歌劇場でコレペティ、アシスタント、専属指揮者を務め、パリではダニエル・バレンボイムのアシスタントとしてパトリス・シェローの演出による伝説的なベルク『ヴォツェック』の上演にも携わり、バイロイト音楽祭の『ニーベルングの指環』のアシスタントなどもこなしてその実力を蓄えていきます。
1993年から1995年まで、ベルリン州立歌劇場の専属指揮者を務めるとともに、その間に世界各地の名門歌劇場に客演して短期間のうちに名声を築き上げました。それには1993年、ウィーン国立歌劇場での『ラ・ボエーム』公演で、女性として初めて歌劇場管弦楽団を指揮したこと、パリ・バスティーユ・オペラ、コヴェントガーデン・ロイヤル・オペラ、フィレンツェ五月祭、バイエルンとハンブルクの州立歌劇場が含まれます。
また、コンサート指揮者としてもシュターツカペレ・ベルリン、ミュンヘン・フィル、ハンブルク・フィル、ニューヨーク・フィルなどの指揮台に招かれていますが、1997年には、ウィーン・フィルを2005年11月、ウィーン楽友協会で156年の歴史上はじめて振ったことでも世界的な話題になりました。1999年から2002年までベルゲン・フィルの首席指揮者、2001年から2003年までシドニーとメルボルンのオーストラリア・オペラの首席指揮者兼芸術監督を務め、2005年からハンブルク州立歌劇場のインテンダント兼フィルハーモニーの音楽総監督(GMD)に就任し、精力的な活動を繰り広げています。
わが国でも1997年と2003年にNHK交響楽団に客演指揮して、好評を博しています。また2006年にはハンブルク高等音楽演劇院の教授に就任し、後進の指導にもあたっています。
交響曲最新商品・チケット情報
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
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輸入盤
交響曲第2番(初稿) シモーネ・ヤング&ハンブルク・フィル(ハイブリッドSACD)
ブルックナー (1824-1896)
価格(税込) :
¥3,410
会員価格(税込) :
¥2,967
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初稿
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交響曲第2番(初稿) シモーネ・ヤング&ハンブルク・フィル(ハイブリッドSACD)
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 4.5点 (21件のレビュー)
価格(税込) : ¥2,200
会員価格(税込) : ¥2,024発売日:2007年04月25日
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交響曲第2番(第1稿) ゲオルク・ティントナー&アイルランド国立交響楽団
ブルックナー (1824-1896)
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交響曲全集 ティントナー(11CD)
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 5点 (12件のレビュー)
価格(税込) : ¥10,670
会員価格(税込) : ¥9,283発売日:2002年05月29日
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第2稿ノーヴァク版
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交響曲第2番 ジュリーニ&ウィーン響(1974)
ブルックナー (1824-1896)
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ブルックナー (1824-1896)
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交響曲全集 カラヤン&BPO(9CD)
ブルックナー (1824-1896)
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交響曲全集 オイゲン・ヨッフム&ベルリン・フィル、バイエルン放送響(9CD)
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交響曲全集[第0番−第9番] ショルティ&シカゴ交響楽団(10CD)
ブルックナー (1824-1896)
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交響曲全集 ヨッフム(第1〜9番)、スクロヴァチェフスキ(第0番)
ブルックナー (1824-1896)
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価格(税込) : ¥7,810
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交響曲全集 マズア&ゲヴァントハウス管弦楽団(9CD)
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 4.5点 (20件のレビュー)
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会員価格(税込) : ¥5,455発売日:2004年10月20日
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第2稿ハース版
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交響曲第2番、他 シュタイン&ウィーン・フィル
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 5点 (4件のレビュー)
価格(税込) : ¥2,134
会員価格(税込) : ¥1,857発売日:2006年11月10日
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Sym.2: Skrowaczewski / Saarbrucken.rso
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 5点 (8件のレビュー)
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会員価格(税込) : ¥2,010
まとめ買い価格(税込) : ¥1,732発売日:2003年02月18日
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輸入盤
交響曲第2番 エッシェンバッハ&ヒューストン交響楽団(1996 ウィーン、ムジークフェライン)
ブルックナー (1824-1896)
価格(税込) : ¥2,739
会員価格(税込) : ¥2,520発売日:1996年10月25日
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輸入盤
交響曲全集 シャイー指揮コンセルトヘボウ管、ベルリン放送響(10CD)
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 4.5点 (21件のレビュー)
価格(税込) : ¥10,780
会員価格(税込) : ¥9,379
まとめ買い価格(税込) : ¥8,408発売日:2003年10月25日
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輸入盤
交響曲全集 スクロヴァチェフスキ&ザールブリュッケン放送交響楽団(12CD)
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 4.5点 (21件のレビュー)
価格(税込) : ¥9,889
会員価格(税込) : ¥8,604発売日:2003年02月18日
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交響曲全集 ヴァント&ケルン放送響(9CD)
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 4.5点 (29件のレビュー)
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会員価格(税込) : ¥7,985発売日:2002年04月25日
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交響曲全集[第0番-第9番] ハイティンク&コンセルトヘボウ管弦楽団[1963-1972](9CD)
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 4.5点 (4件のレビュー)
価格(税込) : ¥9,229
会員価格(税込) : ¥8,491発売日:2005年05月13日
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販売終了
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第2稿キャラガン版
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輸入盤
Sym.2: Barenboim / Bpo
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 4点 (1件のレビュー)
価格(税込) : ¥1,540
会員価格(税込) : ¥1,340発売日:2003年08月02日
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交響曲全集 バレンボイム&ベルリン・フィル(9CD)
ブルックナー (1824-1896)
ユーザー評価 : 4.5点 (20件のレビュー)
価格(税込) : ¥3,960
会員価格(税込) : ¥3,445発売日:2005年02月02日
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