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HMVインタビュー: RADIQ (半野喜弘)

Tuesday, July 3rd 2007

  インタビュー
  RADIQ (半野喜弘)
クラシカルでアコースティックな映画音楽や自身の代表作『Lido』をはじめとする美しいヴォーカル作品を手掛ける一方、田中フミヤと共同運営するレーベル<op.disc>ではグルーヴィーでアヴァンギャルドきわまりないダンストラックをリリースするなど、その柔軟で豊穣な音楽的才能を近年さらに多角的に打ち出している半野喜弘によるRADIQ名義の新作アルバム『Ballads For The Atomic Age』が完成。その作品について半野さんに語って頂きました。

RADIQ (半野喜弘)
  RADIQ (半野喜弘)
―― アルバムの完成おめでとうございます。RADIQ名義でのフルアルバムは2005年に発表された『Tomorrow's Quest』以来、2年振りということになると思います。前作はフランスの<Logistic>、そして今作はご自身のレーベル<Cirque.Mavo>からのリリースですが、その経緯を教えて頂けますか?そしてリリース元のレーベルを変えたことで作品に与えた影響などございますでしょうか?


半野喜弘: レーベルを変えたって事ではないんです。このプロジェクトはRADIQのダンサブルな側面を強調したシングルを3〜4枚リリースして、それをベースにアルバムにまとめるというもので、最初は<Logistic>側からの提案でした。ライブではそういう音もやっていたので良い機会だったし、ダンスミュージックという形態はリスナーとの媒介として非常に素晴らしい機能を持っているから。音楽で踊るって原始レベルでの伝統なんだし、本能の部分なのでボーダレスに国や民族も越えて機能しやすいんです。最初のシングル「Quadrille」は2005年なので、途中に2ndアルバムの『Tomorrow's Quest』を挟んだこともあって、今になってしまいました。


今回は、まず日本でのCDでのリリースだったので、自分たちでコントロールできるという事と、<Cirque.Mavo>を構想していた最中だったので、ちょうどタイミングが合ったって感じです。Cirque本体は、僕の電子音楽や現代音楽っぽいサントラなんかを中心にリリースしてますが、もっと間口を広げた<村>みたいな環境を作りたいと考えていました。Mavoというのは、ダダや未来派の影響なんかをうけた大正時代の現代美術の運動に由来しています。ジャンルや様式はあまり統一されないレーベルになるのでは…。


―― 今作のタイトル『Ballads For The Atomic Age』に込められた意味を教えて頂けますか?それと共に今作のコンセプトを教えて頂けますでしょうか?


半野喜弘: Atomic Age (原子の時代)っていうのは原始と現史の両方のイメージで、それが何となくダンスフロアのイメージと重なったんです。非現実的な人工空間で、<踊る>っていう原始的な事をするから。(笑)RADIQは洗練されたサウンドとワイルドな部分が同居してるし、洗練された野生って感じだと思うんです。そして、RADIQのトラックはダンスフロアで響くバラッドなんじゃないかな?っていうイメージで。


―― 今作は非常に硬質ながら透明感のある柔らかな音色が印象的でしたが、RADIQとしてのトラック制作時に重要視していることは何でしょうか?


半野喜弘: <op.disc>でやってる作品やフミヤ君とのユニットDartriixと違って、RADIQではフロアでの機能性というものをそこまでは重用視していません。勿論、機能すると思ってますが、むしろそこからこぼれ落ちる部分を大切にしています。今作はテクノやハウスに分類される音楽なのかもしれませんが、より生物の体温を感じるものでありたいと思っています、血の味がするような。


―― 今作ではヴォーカルトラックもアクセントとして大きな意味を持っていると思いますが参加アーティストについてご説明頂けますか?それに付随してインストトラックとヴォーカルトラックでの制作面、曲そのものとしての違いはどういったところでしょうか?


半野喜弘: Black Cromはフランスのアンダーグラウンドなラッパー、中央アフリカのガボンという国の出身でフランスへ移民としてきました。彼のライミングにはアフリカ人特有のバネがあります、これは僕たちアジア人とは異質なものですね、まさに野生です。Damiana Terryは日本人の女性シンガーです。とても深い声と表現をもっています。そして凄くセクシャルな何かを。それぞれのソロ・アルバムも僕のプロデュースで進行中です。


―― 半野喜弘名義とRADIQという名義の使い分けについては色んな媒体で聞かれることだと思いますが、音楽を作ることから生まれる様々なアイデアを一つの名義では表現しきれない部分が多分にあると思います。ご自身の名義の使い分けも含め同様に一人の人間が多名義で活動することに対してどのように思われますか?


半野喜弘: パリへ拠点を移すまではさほど気にした事はありませんでした。凄い飽きっぽい性格なので、これまでいろんな事をいろんな名義でやってましたが、真剣に考えた事はありませんでした。(笑)ただ、パリへ移って自分が外国人だという事を認識した事が、RADIQのきっかけになりました。人種/文化/言語なんかのボーダーを飛び越えるようなプロジェクトをやりたいと次第に考えるようなったんです。自我の会話じゃなくて、もっと外との対話を投げかけてみたかったんです。それは半野喜弘という名前より、個人が不透明な名前の方が適してると考えました。2枚目の『Tomorrow's Quest』が、かなり政治というか人種間的な問題をダイレクトに取り上げているのは、そういったスタンスの顕著な例ですね。


差別という言葉にするとあまりに陳腐ですが、世界には階級と断絶があることは事実です。それが全く悪であるとは思いませんが、大きな絶望と閉塞感を与えているとは感じます。あるフランスのメディアがこの音楽を<現代のレベル・ミュージックだ>と評した事は良かったのか、悪かったのかはわかりませんが、自分が投げた石の波紋を見た気がしました。まだまだ、誰も知らない小さな波紋でしかありませんが。


―― 半野さんは日本、そしてフランス、現在スイスといった拠点を移しながら活動をされていますがやはり身を置く土地によって創作に与える影響は大きいと思われますか?もし影響があるとすればどういった点に反映されて来るものでしょうか?


半野喜弘: やはり環境には左右されますね。具体的にどうという事は言えないのですが、曲の着想はほとんど海外が多いですね。東京は都会で便利な街だけれど、情報というノイズが多すぎて集中するのが難しいです。パリは、都会的な猥雑さと静けさのバランスが良いんです、僕には。今のスイスのスタジオはチューリッヒ近郊の田舎街にあって、凄く静かで広々としています。ここにはオーケストラの作品を創る為に6ヶ月間籠っているのですが、目の前の公園は森のようだし、静かで、夜は真っ暗です。クラシックをじっくり創るには申し分ない状況です。作品は8月の当地のフェスティヴァルで初演されて、9月には僕はパリへ戻ります。


―― これまで半野さんは本名名義も含め多くの作品を世に送り出していらっしゃいます、その中には所謂メジャーでの作品と今作のようにご自身のレーベル、インディーでの作品もありますがその違いを半野さん的に簡潔に言うなればどういったことでしょうか?


半野喜弘: メジャーは予算が大きいので、そこでしか創れないサウンドというのがあります、楽器やスタジオの問題で。インディーは音楽の自由度が高く、音楽的な冒険をすべき場所だと思います。個人的にはインディーの方が楽しいですが、メジャーでしかできない事もあるのは事実なので、流れに任せています。(笑)


―― 少し大きな質問になってしまうので大変恐縮ですが、ずばり半野さんの音楽人生に大きな影響を与えたCDを3枚挙げて頂く事は出来ますでしょうか?


半野喜弘: 何百枚とあるから絞れないですね、そのうちの3枚という事で。


武満徹 / 地平線のドーリア
Richard Wagner / Tristan und Isolde
Tom Waits / Swordfishtrombones



―― 今後のリリース予定、ライヴ予定を教えて下さい。


半野喜弘: Dartriixのシングルが7月と9月に、アルバムが10月かな…、これは<op.disc>から。Gadariという僕の新名義のシングルが7月くらい、これは<Them>というイギリスのレーベルからですね。ライブは、8月にスイスでオーケストラ作品の初演と、RADIQのライブがあります。10月に南米のツアーがあって、これはフミヤ君とリカルド・ヴィラロボスと3人です。その後、韓国でのライブがあり、日本は11月です。<Cirque.Mavo>のイベント、<op.disc>のhubもありますから楽しみです。それらを終えて、年末以降はパリでゆっくり過ごしながら次の事を考えたいと思います。


―― 帰国時のライヴも楽しみにしております、ありがとうございました。

(取材協力: Cirque.Mavo)
 
 
 
  RADIQのダンスサイドと呼ぶべき12インチ作品を1枚のCDにコンパイル!  
 
Re-Momentos Introduction

CD Ballad For The Atomic Age
RADIQ

フランスの<Logistic Records>からリリースしているRADIQのダンスサイドとでも呼ぶべき12インチ作品を今回アルバムとしてのリリースにあたってリアレンジ・リマスタリングした、RADIQプロジェクトのベスト盤と言える内容。そして今回が初のCD化。流麗で卓越したプロダクションとその根底を流れる反骨精神が織りなす、半野喜弘にしか作り得ない詩的でワイルド、そしてセクシーなダンスミュージック!
 
 


RADIQ / Yoshihiro HANNO Live Schedule

2007/08/22 Symphoniker plays Yoshihiro HANNO Musikfestwochen (Winterthurer / Switzerland)
2007/08/23 RADIQ feat Allonymous (Vo), Damiana Terry (Vo), Antoine Berjeaut (Tp), Musikfestwochen (Winterthurer / Switzerland)
2007/10/18 Santiago (Chile)
2007/10/19 Buenos Aires (Argentina)
2007/10/20 Sao Paulo (Brazil)
2007/10/28 M2 club (Seoul / Korea)
2007/11/09 ESTETICISMO - Current 10th Annivarsary - at Rockets & club Saomai (osaka)
2007/11/10 Cirque presents. MAVO at O-nest (Tokyo)



DARTRIIX (RADIQ, Fumiya Tanaka) Live Schedule

2007/11/22 Fukuoka
2007/11/23 at Mago (Nagoya)
2007/11/30 op.disc showcase hub at Sunsui (Osaka)
2007/12/01 op.disc showcase hub at Unit (Tokyo)

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