HMVインタビュー: The Orb
2007年8月1日 (水)
インタビュー |
The Orb |
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―続き―
―― あなたたちが活躍していた90年代当時と今のシーンで決定的に違うことはなんでしょうか? Alex Paterson: 90年代は1000年代の終わりで、今は2000年代で新しいスタートを切ったよね。コンピューター、Eメール、インタラクティヴな要素も今と90年代と変わってきたと思う。音楽的に、最近は4つのメジャーなレコード会社が他のレーベルを吸収して、アンバランスな音楽シーンを作っている気がする。バンドを育てて徐々にビッグにしていく昔からのやり方をせずに、すぐにビッグになるバンドを求めているんだ。そしてレコード会社のA&Rがボーイ・バンドやガール・バンドを操っているんだ。今後の音楽業界の見通しは暗いようだけど、きっとまたいつか復興するだろう。もしかしたら5年くらい経ったら、本当にいい音楽を聴きたい、と思う若い子たちがでてくるかもしれない。例えばパンクのムーヴメントがでてきたようなものが今の音楽シーンに必要とされていると思うんだ。 ―― 「Vuja De」、「DDD/DDD」や「The Truth Is」など、今回のアルバムはヴォーカルやヴォイスをフィーチャーした楽曲で構成されています。ヴォーカルというのはひとつのテーマであったと言えますか? Alex Paterson: ヴォーカルのサンプルを使うよりも実際にシンガーにアドリブで歌ってもらったことによって、作品はよりドリーミーな雰囲気をだせたと思うよ。 ―― 前作は再びダビーでスモーキーな作品に仕上がっていましたが、今作はスモーキーな作風ながら、より解放感溢れるポップな前半、「Codes」や「Orbisonia」という超ディープな後半と、これまで以上に流れを強く意識した作品に仕上がっていると思いました。このアイディアはどのようなところから生まれたのでしょうか? Alex Paterson: 片面がダンスで、もう片面がアンビエントだったファースト・アルバムが青写真になっているんだ。当時はレコード・プレイヤーが必要だったけど、最近ではCDをかけるか、iPodで好きな曲だけをダウンロードするから好きでない曲は聴かないというわけだ。 ―― ということは、このニュー・アルバムはレコード盤のようなものだと思いますか? Alex Paterson: CDのようなものだと思う。70分ちょっとの長さで、ダンスっぽいものからアンビエントな曲に移っていくんだ。寝る前に聴くような作品ではないけれど、トーマス(・フェルマン)とは近い将来にアンビエント・レコードを作るつもりでいるし、トーマスは「Vuja De」のリミックスを手掛けることになっていて、この曲がシングル・リリースされることになっているんだ。昨日彼とその話しをしたところなんだ。 ―― 実際今のネットをベースにした爆発的な情報量の増加、聴く環境の変化をあなた自身はどのように捉えているのでしょうか? Alex Paterson: いいことだと思うよ。何かないかと思ってネットをチェックしている人たちがいる、ということはオーディエンスがいることだ。確かに昔とは違うけれどね…。ぼくは初めて携帯電話を購入したその日に、500ポンドのDJの仕事の連絡があったんだ。携帯電話を持っていなければその仕事を受けられなかったかもしれない。携帯電話があったからこそ、仕事を受けられて、その分のギャラで携帯電話代も払えたことになるよね。 コンピューターや携帯電話などのテクノロジーの進化のおかげで物事が早くなってきたという面があるけど、マイナス面もある。例えばスタジオで作業をしていて、何かあったらすぐに対処しなくてはならなくなる。ぼく自身は経験ないけれど、広告の仕事をしている友人が仕事をしている最中に連絡があり、明け方の4時か5時まで作業をして、翌日にはまた全部やり直す、ということがあったというんだ。10年前は何度もミーティングをして話し合いの場を持ってからやっと物事を変えるというやり方だったのに、今は遠いところからも携帯電話やEメイルで連絡ができるから瞬時に対処しなくてはならなくなった。そういう社会になったんだ。まあ、何でもそうだろうけれど、物事には良い面と悪い面とがあるんだよね。昨日、テレビを見ていたら地球上で最も幸せなところというのは、太平洋にある島で日本からそう遠くない島だった。電気が届いていなくて、観光事業もマッチ箱もないというところなんだけど、その島に住む人たちは世界で最もハッピーな人たちだというんだ(笑)。いつか是非その島に行ってしばらくの間滞在してみたいと思っているんだ。 ―― 本作はキャリアの中でもかなり洗練された作品に仕上がっていると感じました。これはあなたの中で集大成的な作品として位置づけられるものといえますか? Alex Paterson: どのアルバムにも至らない点があるものだ…2枚以外はね。このニュー・アルバムにも至らない点はないね。 ―― そして、あなたはPrimal ScreamやThe KLFなど、エレクトロニック・ミュージックのイノヴェーターとしてこれまで果敢な挑戦を繰り広げ、音楽の可能性を拡張してきました。そんなあなたにとってエレクトロニック・ミュージックは今も可能性に溢れた音楽だと言えますか? Alex Paterson: プライマル・スクリームはエレクトロニック・ミュージックでなく、ロック・ミュージックをやるようになった。オウテカの方がダンスやエレクトロニックをやっていると思う。808ステイトはジ・オーブよりもキャリアが長いし、プライマル・スクリームよりも革新的だと思うんだ。ただプライマル・スクリームはエレクトロニック・バンドではなく、ロック・バンドなんだ。カンやクラフトワークのようにコンピューターの前に座って作業をしているわけではないんだ。<Kompakt>レーベルが毎年出している『Ambient Pop』というコンピレーション・アルバムはどれも素晴らしいから、お薦めだよ。 ―― ドイツものがお好きなようですね。 Alex Paterson: うーん、そうかもしれない。偉大な作曲家もドイツ人が多いしね…。数学的だよね。数学ができればだいたい音楽を理解できるものなんだよ。 ―― 本当ですか? Alex Paterson: ぼくは数学も音楽も得意ではないんだ。数学も音楽も勉強をしてきたわけではなく、わからなかったからこそ新鮮な視点で音楽を作ったところ、アンビエントミュージックができたんだよ。ヴァースはどこだ、と考えながら作っていったから、ファースト・アルバムはきちんと構成されていないんだ。それが作りながら学んでいくことの利点だと思う。音楽を勉強していたらそういう発想がなく、きちんとした音楽の作り方をするだろうからね。 ―― ありがとうございました! |
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(取材協力:Traffic / dis)
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