2006年11月28日 (火)


 新機軸のロックバンド!!
  the samos インタビュー!! 1/2
 

the samos  時代の節目節目に現れる言葉。「ロックとダンスの融合」という言葉。時代と共に現れてはまた消えていく言葉。それは、時代がロックを縛り付けてしまった時に、自由を求めてダンス・ミュージックと折衷せざろう得ない時に現れてくる言葉。まさに00年代に入って、その「ロックとダンスの融合」は、新世紀を迎えても何も変わらないという時代の諦念とともに、今まで繰り返された歴史を踏まえ、それを超えるかのような融合が必要不可欠とされ、全世界的に波及し、様々なムーヴメントを起こしはじめて今に至る。07年。しかし、あらゆる手法があらゆるシーンで消化され沙汰されてしまったが故にさらなる閉塞感を感じているリスナーが飽和しているのも否めない。そんなあなたに送る最高のロック&ダンスミュージックを奏でるバンドを紹介しよう。the samosだ!
 活動休止中のSBKのShigeoが主体となって結成されたこのthe samos。メンバーは、Vo/Ba/Gt: Shigeo (SBK, mold)、Electro-Dr: M.I.T.、Key/DJ: Raymond (mold)、 Mixer/DJ: Hitoshi Ohishi (newdeal) の4人からなるバンド。それぞれ、別の活動もしていたが、2005年にヒトシ・オオイシのニューアルバムにSHIGEOとRAYMONDのユニットmoldによる、リミックスが収録され、逆に7月にリリースされたmoldの1stアルバム「PARADISELOST」にヒトシ・オオイシがエンジニアとして参加。そのころから、moldとヒトシ・オオイシの距離が縮まり、お互いの持つバックグラウンドであるロックやダンスミュージックを新たな形として提案していこうということで、the samosが誕生したのだ。
 そんな奇遇とも言える経緯を経て結成されたこのバンドから解き放たれるメロディーとビートは、唯一無二。80’sも90’sも通り抜け、まさに00’sでなければ鳴らせない新たなミュージックとして。本当の意味での「ロックとダンスの融合」というものをリスナーに突きつけるものを生み出すバンドである。そんなthe samosに、HMV ONLINEが直撃インタビュー。アルバム「KAFKA HIGH」のリリースから数ヶ月の時が経ったにもかかわらず、いや、時が経ったからこそ辿り着いた彼らの現在到達最高地点から発せられる言葉の数々を全身で浴びて欲しい!

(テキスト構成:




the samosthe samos / KAFKA HIGH



曲目: No Need / Shooting Star / I 7ost / I.D.W.T.A.I / Satisfy / Usual (Album Ver.) / Muddle Requiem / Don't Know Why / Vanish / Evoke / Two Endings / Fix It / Million Times


 


the samos

-はじめまして。ではまずthe samosというバンドのコンセプトを教えてもらえますか?

Shigeo:「コンセプトは…Do It Yourselfです」

-DIYですか?

Shigeo:「そうなんです。基本となるコンセプトがDIY精神ですね」

Hitoshi Ohishi(以下Ohishi):「今まで裏方のところのギリギリまでやっていたので、俺らが物を売るということになると、DIYになるんです。もちろん自分達以外の要素は絶対に必要なんですけど、パッケージになっていく過程において、マルチな人達が集まって、マルチな事をやる、という。それに線引きがない。この人はギターを弾かなきゃいけない、この人は歌を唄わなくきゃいけないって事が全くないんですよね」

Shigeo:「まあ、ボーダーレスDIYと言うか、クリエイションにここまでと言った線引きは必要ありません」

Ohishi:「極端なことを言ってしまえば、楽器が弾けない人も音楽をする事が出来る、音楽を表現する事が出来るっていう提示というか。楽器の練習をしなくても、音楽を表現できるというか…」

Shigeo:「表現の自由ですかね。それはすごくコンセプトにあると思います。たとえば、ヴォーカリストとして単体で歌唱能力がすごく秀でている訳ではなかったり…。なんかこう、上手い人しか弾いちゃいけないっていうのが僕は今一納得できなくて。そうじゃない、例えばFlaming Lipsとかじゃないですけど、素晴らしきビジョンやアイディアさえあればアーティストとして存在できると思うのです。こういう点がthe samosのコンセプトかもしれないですね。DIYですからクリエイションにおいてセルフディレクションし自分達はどう良いかって事を自らでプレゼン出来ないといけません、それが結果的にDIYになっちゃうっていう…。だからthe samosの場合は必要にかられたDIYだと思います」

Ohisihi:「また、これだけ技術が発達しているので、それが出来る土壌にあると思うんです。何かを表現するのに技術を習得しなくても、直接コンピュータを通す事によって脳とダイレクトに繋がっているっていうのが打ち込み音楽の一番のメリットだと思うんですよ。これを表現したい、じゃあピアノの技術を習得しないといけない、というのをすっ飛ばして、もうここ(脳)とコンピュータがいきなり繋がってイメージを奏でてくれるからわけですから。それが“売り”という訳じゃないんですけど、そういう事もありつつ、もちろんプレイヤーの良さもありつつみたいな。ま、こういう事も出来ますよ、こういものもありまっせ、みたいな(笑)」

SBK
SBK / Red Flash

-(笑)ありまっせ、みたいな感じですか(笑)。なるほど、コンセプトの部分、すごくわかります。ではSBKの活動休止以降、このthe samosというバンドを活動させるに至った経緯を教えて頂けないでしょうか?

Shigeo:「はい。まずなぜ休止したかというところから言うと、SBK自体がミクスチャーというジャンルにカテゴライズされていたのですが、そのミクスチャーというものを、僕は初め自由なものとしてやっていました。それがいつの間にかミックスするもの要素がJPOPの中で限定されていったのが居心地悪くて。もっと自分自身の、新しい“表現する音楽の形”を探すために一度休止して、色々、暗中模索じゃないですけど、例えばダンスミュージックの勉強をしたりとか。それを2年位やっていて、で、やっているうちに、やっぱり自分の中の“歌いたい”という衝動であるとか、身体表現するっていう事をトラックに落とし込むことが難しくなってきて、それでthe samosを始めるに至った訳です。」

-「歌いたい衝動」っていうのがあったんですか?

Shigeo:「ありました。歌いたい衝動っていうか、ずっとトラックを創っていて、同じ事をずっとやっているとまた色々とやりたくなるんですよ。歌ってた時期には“もう歌いたくない”とか、まあ人間ってそういうもんだと思うんですけど、やってないとやりたくなる、というか。SBKを休んでmoldというラップトップのユニットをしばらくやってたんですが、それの反動がthe samosに繋がっていったんだと思います。」

-なるほど…。わかりました。では8月にリリースされた『KAFKA HIGH』というアルバムに関してお聞きしたいのですが、このアルバムはロックとダンスの融合という、とてつもなく壮大かつダイナミックな表現方法に挑んでいて、それをワンアンドオンリーな作品として創り上げた最高のミュージックだと思うのですが、この作品を産み出すに当たって苦労した部分は何かありますか?

Shigeo:「自分達の好きなものを、自分達なりの解釈というか、ちゃんと消化した上で、もう1度一個の形にするのにすごく時間がかかりました。自分達らしさ、the samosというものの“らしさ”がどこにあるのかを探していたんです。それが一番大変だった。でも今は、この音源=『KAFKA HIGH』を通してもライブを通しても、その“らしさ”があるんです。それを確立するまでが、すごく道のりが長かった気がします」

-確かリリースまで2年かかったんですよね?
the samos

Shigeo:「はい、そうなんです。でも今は結果的にそれが良かった気がしていて。1枚目が今のこの形であって、すでに2枚目のアイディアが出てきているから。考えてみると、あるルールがあって、それを壊すのか進化させるのかという、コンピュータ・ツリーじゃないですけどプログラム派生に似ていて、最初に書かれていたプログラムから段々枝分かれしていって、どこに行くのかっていうのを、自分たちで細部に到るまでディレクションしていくやり方に将来性を感じています。どうなるのかは自分達もわからないから面白いですね。多分、一個一個のリアクションで色々な形になっていくと思うんですよ。“あの曲いいよね”と言われると、“あ、じゃああの曲の進化系を創ってみよう”という風になったり。ね、ずっと晴れなかったら…みたいなね?」

Ohishi:「え?(笑)」

Shigeo:「いや(笑)。ずっと天気にならなかったら雨を謳歌する曲を作るのか、もしくはそろそろ天気になってくれっていう曲を作るのかとかね。そういう環境に左右されていくんだろうなと思うし、その環境を踏まえた上で自分達の方向性を創っていくのは面白いところですよね」

Ohishi:
「うん。ルールはないんですけど、でもルールはやはりあるんですよ」

Shigeo:「そう、あるんです」

Ohishi:「暗黙のルールがあって。そこで“うん”と言えるのは、音とか具体的なものじゃなくて、“えーこれは…”とか“これいいじゃん”っていう、なんか他の人には伝えられない部分。言葉として伝えられないのが今ちょっと歯痒いんですけど、その“感覚のルール”に則ったものだと思うんですよ、全て、the samosが出す音楽というものが。そこにルールがないと何でも…ってなっちゃうわけだから。ノールールなんですけど、ルールはある。その感覚…、なんかぼやけているんですけど、でもそのぼやけてる中にも4人で“うん”って頷くポイントが絶対にあるんで。で、そこを通過したものしか出てこないというか」

Shigeo:「多分、点描に近いというか。点を打っていって最終的に離れて見た時に初めて像を成すと言うか、どこに点を打つかという事が多分ルールとかアウトラインになっていくと思うんですよね。それが広げれられるか小さく密な物になるかっていうのは、自分達がオーディエンスから受けたリアクションとかステージ規模によって変わっていくと思います」

 
the samos
-その「暗黙のルール」って、実は共感出来るようで出来ない人もいるんじゃないですか?

Shigeo/Ohishi:「はい」

-でもこの4人は偶然にも共感出来る人達が集まったという感じでしょうか?

Shigeo:「これは熱意の問題で、“この新ルールを導入するんだ”っていう本人の熱意があれば、それは通じるものです。たとえば全く無意識で新しいルールを導入しようとすると、自分以外の人間が全員“ノー”と言うかもしれない。そんな時、“いや、これはこういう新しいルールなんだ”って説明出来なければ、そのルールは導入されないんです。でも熱意があれば、“これは絶対新しいルールとして導入できる”と説明出来る。まあ政治と一緒というか、その人のプレゼンによって、それを“unknown=拒否 ”となるのか、もしくは“やってみよう”となるのか決まると思います。あとは信念があれば物事は進むと思うのです。とにかく説明する。“こうしたいんだ!”、“これは面白い”というプレゼンテーションが全てだと思います。」

  -なるほど…。そういう事なんですね。わかりました。では次の質問なのですが、『KAFKA HIGH』には様々な音がカットアップされサンプリングされていますよね。このような“音使い”に関してオリジナリティを確立するために注意した点はありますか?

Shigeo:「まずはテクスチャーをいじり過ぎないこと。僕は素材をいじって違う形にすれば良いと思ってるふしがあって、でもそうしない方がいいんだなって。そのテクスチャーを生かすとか、、素材をいじリすぎない方が良い時もあるよね?」

mold / Ischia<
mold / Ischia

Ohishi:「ま、それは無いものねだりっていうか、逆の所から派生しているんだと思うんですけど。俺は逆にmoldに対してはそういう所に魅力を感じたので。自分は今までは、いいものはいいからサンプリングして、その素材をそのまま“これはもう生で食った方が美味いでしょ?”っていうやり方をダンスミュージックを通してやっていて、でも同じダンスミュージックなのに逆にmoldは…」

Shigeo:「創作?(笑)」

Ohishi:「創作料理、おー!っていうね。それはお互い、今、言った、無いものねだりだと思うんですよね。例えば俺は色々手を加えたものに魅力を感じるし。手を加えたっていう言い方は変なんですけど…」

Shigeo:「いやいや、わかるわかる」

Ohishi:「で、逆にShigeoくんが俺をみた時には、あ、こんないい加減でいいの? って…」

Shigeo:「いえいえ(笑)。逆に凝ればいいってものでもないし。モノによって、色々な食べ方があっていいんだなって。ちょっとした味付けでもいいし、生のままでもいいし、すごく料理してもいいし。それは別にあんまりこだわらなくてもいいっていうか。ただ全ておいてやりすぎはよくないのかな。生のまま食べ過ぎるのもよくないのかもしれないし、原型を留めないまでに料理するのがいい事なのかっていうのは、僕にとってはすごく重要な課題というか。」

-なかなか興味深いですね。では次の質問なのですが、ダンスミュージックをロックと融合するのにまずぶち当たる壁は、ビートとメロディーの融合性だと思うのですが、the samosはビートにしろメロディーにしろ、どちらも遜色のない力量で作品として成り立っていると思うのですが、その辺りは意識しましたか?

Shigeo:「かなり意識しています。」

Ohishi:「それがウチらの強みであるというか。今までダンス専門にやってきた人がいて、そして、今までロックとは言わないですけど、まあパフォーマンスを専門にやってきた人がいる。で、僕が何故Shigeoというアイコンに魅かれたかというと、ロックの人が、取って付けでやるテクノとかダンスミュージックの取り入れ方ではなくて、自分ですごく勉強しているところがある。なおかつ、ずっとダンスをやってきた僕なんかも唸らせる、さっき言ったみたいな信念が、本人が歌ってなくても伝わってくる。そして、単に流行ってるからウチらも4つ打ちやってみたい、という人達じゃないところ。でもそんな苦しみがSBKを通しても伝わってきていたんですよ。あーこういう事やりたくてこんな事やってて、でもこうなんだなって。じゃあそれ俺にやらせろよ、っていう…ところだけじゃないんですけど」

Shigeo:「まあそういう部分もあり…」

Ohish:「うん。なので両方しっかりするのは必然的ですよね」

the samos

-ではビートに関してなんですが、アルバム全編に渡って繰り広げられる多彩なブレイクビーツが秀逸だと思います。簡略的に4つ打ちのビートでエレクトロミュージックを創り上げることも可能ではあると思うのですが、なぜこのようなブレイクビーツをthe samosは引用して音楽として表現しているのですか?

Shigeo:「ブレイクビーツが…好きだから(笑)。それってコラージュの世代の特徴だと思うんですけど、Ohishiくんが創るテクノのトラックも、やっぱりブレイクビーツが根底にある…。ダンスミュージックにブレイクビーツは欠かせない要素だと思います。テクノやハウスの裏にも使われていてその両方を加味している部分で多分、皆ブレイクビーツが好きなんだと思うんですよ。なので…好きだから、ですね」

-なるほど「好きだから」という事なんですね。

Ohishi:「手癖?(笑)。出ちゃうんですよ(笑)」

-出ちゃうわけですか?(笑)。どうしても…みたいな。

Ohishi:「隠しきれないし、隠したいとも思ってないし…っていう感じですね」




―続く―
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