HMVインタビュー: Mike Banks ダンス&ソウル・インタビューへ戻る

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2007年12月18日 (火)

  インタビュー
  Mike Banks


1989年、デトロイト。ジェフ・ミルズとマイク・バンクスは、音楽だけでなく、さまざまなメッセージを伝えるために、アンダーグラウンドレジスタンス(以下UR)を設立した。以来、ラジオやテレビでつまらない音楽を繰り返しプレイする「プログラマー」たちと闘いつづけてきた。URはこの闘いをソニック・レボリューションと呼んでいる。URはつまらない音楽を、単純に責めているわけではない。その裏に隠されたメンタリティ、そしてこうしたプログラミングが及ぼす悪影響について、彼らはシリアスに考えている。2007年、URは『ELECTRONIC WARFARE 2.0』をリリース。電子闘争と名づけられたこの作品は1995年にGalaxy2Galaxy以来2年ぶりにUR名義としてリリースしデトロイトのゲットー・スタンダードであるエレクトロを好戦的かつファンキーなパーティ音楽として甦らせたとして高い評価を得た2枚組EP『ELECTRONIC WARFARE』の続編である。今回はピカピカの新車の横で撃たれて横たわる少年の写真やUR自身が書いた「スライムからのメッセージ」が加えられ、よりコンセプチュアルで政治性の強いアルバムになっている。いったい、彼らは今、何を想い、このアルバムをリリースしたのだろう?このアルバムにこめられたメッセージとは???今回、URの総帥であるマイク・バンクスにメールでインタビューをする貴重な機会を得ることができた。

―― 11年ぶりに『ELECTRONIC WARFARE』をリリースしたわけですが、続編をつくろうと思ったきっかけは?


Mike Banks: よく、人から『URはワールドワイドに認められて、いまでも戦うべきものがあるのか?』とか『なぜいまだにダークで反抗的なんだ?どうしてハッピーじゃないんだ?』なんて聞かれる。こういう質問には正直嫌気が指すよ。URをはじめて、20年闘ってきたけれど、まったく状況は変わっていない。プログラマーたちはいまだに実権を握っている。貧困、犯罪、麻薬、破滅、教育や医療の欠落、失業・・・希望を持つことができない状況は今も続いている。無知、暴力などがテレビやラジオの電波を使って降り注がれている。この腐敗は我々の未来である子供たちに悪影響を及ぼす。テクノはデトロイトから世界へ広がり、フューチャリズムの先進性をもって人々をつなぎ、ベルリンをはじめ世界中の都市で灰に火をつけることができた。しかし、デトロイトとエレクトリファイン・モジョが持っていた未来への夢は大きな波に取り残されてしまった。これを直視するのは、辛い。そして、URの目的がいまだに理解されていないことも、俺を辛い気持ちにさせる。アメリカのインナーシティで起きている「ネイバーフッドの死」は、URをはじめたころと同じくらい切迫した状況におかれている。我々は変化が起きるまで、レジスタンスをつづけるつもりだ。そして、この作品はドラッグ・カルチャー、大企業、弊害を生み出すことを気にしないメディア。そして、過剰なマテリアリズムや資本主義などに対する警告なんだ。




―― レジスタンスの手段として音楽を選ぶ理由を教えてください。


Mike Banks: アート、音楽、レジスタンスはスピリットを運ぶものであり、スピリットのみが死に打ち克つことができる。抑圧、植民地制度、搾取、強欲などと戦って死んでいった人の作品は永遠に人々を感動させつづけている。たとえ体は死んでも作品でスピリットを伝えることはできる。ギリシャのスパルタン戦士の映画『300』はとてもいい例だ。




―― 「スライムからのメッセージ」ではフランク・ザッパの『I'm the Slime』に言及していましたね?


Mike Banks: 残念ながら、フランク・ザッパは他界してしまったけれど、スピリットは音楽によって残っている。みんなに彼の『I'm the Slime』を買いに行ってほしい。偉大なアーティストだ。俺はガキのころに彼から大きな影響を受けた。彼の音楽は彼について俺よりもずっと雄弁に語ってくれるだろう。歌詞を注意深く聴いてくれ。そして、彼がそれを歌っていた時代のことが現在にどうあてはまるかを考えてくれ。




―― このアルバムでエレクトロビートを中心に使ったのはなぜ?


Mike Banks: ビートを選ぶのは俺じゃない。『過去からの声』なんだ。彼らは心がオープンでクリアなときにだけ現れる。




―― エレクトロはデトロイトテクノ文化にとって、どのようなものでしょう?


Mike Banks: エレクトロはデトロイトの鼓動だ。デトロイトで生まれた「ジット」というダンスのために存在している。今年、Model500がライブをしたときにXmennがダンスしただろ?彼らがデトロイトで一番のジット・バトルのダンスグループだ。俺は『Footwar』というレコードを彼らのためにつくって、バトルで使ってくれているよ。まあ、ジットについては見なければわからないだろう。
(筆者注: YouTubeに“Model500 & the Detroit X-men (Jit Crew)という映像があるので興味がある人はぜひチェックしてみてください)




―― ジャケットには、ピカピカの新車の横で死んでいる少年の写真が使われています。この写真を使った理由を教えてください。


Mike Banks: 死は言葉より雄弁だ。死は人間が敬う自然の一部であり、人為的にどうすることもできない。死は目に見えるどんな人間よりも強いんだ。




―― この写真の中で死んでいる少年のようにドラッグ売買に手を染めて命を失う人もたくさんいると思います。彼らがポジティブに生きるために、何をすべきでしょう?


Mike Banks: まず、(ドラッグディーラーの抗争のように)利益のために人を殺すことは許されない。まるで同胞を奴隷として売り飛ばして稼いだアフリカ人のような考え方じゃないか。現在のアメリカ黒人の状況は祖先に比べればずっとマシだ。それは祖先が大きな犠牲をともなう勇敢な闘いを挑み、もたらされたこと。それを忘れてはいけない。しかし、勇敢な祖先たちに小便をかけるようなことをする奴らがいる。飼いならされ、人生を築くことは「できない」が、ギャングスターのような人生は「できる」と思ってしまっている奴らがいる。我々の祖先は決して「できない」とは口にしなかった。我々の祖先は6週間も鎖につながれ、自分たちの小便や糞にまみれて連れてこられた。そして、400-500年もただ働きをさせられた。それでも、それに耐えてきたんだ!だから、その遺伝子を受け継いでいるってだけで強いスピリットを持つことができる。俺たちはなんだって「できる」んだ!URは不可能を成し遂げた祖先たちのように強く影響力をもった存在でありたいと思っている。そして、俺たちに「できない」と言ってくる人間を拒否しつづけるんだ!「できない」って?もう俺たちはやってるぜ!キッズはもっと「できる!」というメッセージを発する人々を必要としている。すべての人々が「できる」、「やった」、「キミたちにもできる」ということを伝えていくべきだ。子供だけじゃない、俺たちがどんなクソな状況からやってきたのか忘れているセルアウトたちもそれを知るべきだ。




―― じゃあ、もしあなたが1億ドルもらったらどうします?


Mike Banks: もし1億ドルあったら、俺は映画をつくって、隠された歴史のヴェールをはがしてみたい。教科書には、アフリカ人が奴隷として連れられてきたときは、虐げられ、反抗は許されなかったと書いてある。でも、公民権運動以前に黒人が勝利を収めたこともある。奴隷制度の頃にジョン・ホースという男がいた。彼はマルーン(逃げた黒人奴隷)だが、セミノル族(アメリカ先住民)としても知られていた。アメリカ政府は彼のように英語と独自の言語の両方を話せるブラック・セミノルを恐れ、強制収容したり、誘拐して奴隷として売り飛ばされていた。ホースはそんなブラック・セミノルを救い出していた。脱獄不可能といわれた刑務所に入れられても、逃げ出して仲間を救いつづけた。ホースたちは戦いつづけ、勝利を収めた。実際、ホースがブラック・セミノルを逃がしたメキシコのコーヒリアという街には、いまでもブラック・コミュニティがある。しかし、この歴史のことは誰も知らない。だから、このように自分たちより強大な相手に立ち向かうことを学べる話を伝えていきたい。




―― 最後にこのアルバムについて、加えておくことがあれば?


Mike Banks: 答えはアルバムの中に秘められている。行間を読むように、聴いてくれ。




―― ありがとうございました。

(インタビュー&テキスト:Takamori Kadoi  協力:Cisco International)
 
 
 
  URの新たな闘争の幕開け!  
 
Electronic Warfare 2.0

CD Electronic Warfare 2.0
Underground Resistance

UR復活の一撃『Electronic Warfare』から10年、デトロイトの生ける伝説、Mike Banksが指揮を取るUnderground Resistanceによる『Electronic Warfare』第2弾が遂に解禁!レジスタンス精神に貫かれたラディカルなメッセージと共に届けられるハードコア・デトロイト・エレクトロが炸裂!URの新たな闘争の歴史が幕を開ける。
 
 

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