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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第9号:ラトルのティンパニー演奏、映像公開! ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

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2009年10月28日 (水)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

ラトルのティンパニー演奏、映像公開!
 右のヴィデオでは、ラトルがティンパニーを叩く姿がご覧いただけます。ラトルは音楽大学で打楽器を学びましたが、今年5月、ジークフリート・マットゥス「5人のための協奏曲」初演で冒頭のティンパニー・ソロを担当。ベルリンでは、これまでピアノを聴かせることはありましたが、打楽器を公開演奏したことはありませんでした。1分ほどのソロの後、ラトルはティンパニから指揮台にすばやく移動し、本編の指揮に入っています。

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ハーディング・ビシュコフの定期が、デジタル・コンサートホールにアップ!
 10月の話題は、ダニエル・ハーディングがベルリン・フィル定期に8年ぶりに登場したことでした。この演奏会で彼は、バルトーク「弦楽のためのディヴェルティメント」、ブリテン「ヴァイオリン協奏曲」、R・シュトラウス《死と変容》という玄人好みのレパートリーを颯爽と指揮しています。ブリテンのソロで登場するジャニーヌ・ヤンセンのドラマチックな演奏ぶりも、映像映えする迫力満点のものです。
 一方昨年に続いて登場したセミョン・ビシュコフの回(ストラヴィンスキー「管楽器のための交響曲」、シェーンベルク《浄夜》、ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」)では、ガイ・ブラウンシュタインのヴァイオリン・ソロが賞賛されています。「このような演奏は、いまだかつてないものである。ベルリン・フィルは、ソリストの音楽を知りつくしており、ルバートを先読みして演奏するほどであった(『ベルリナー・モルゲンポスト』)。」

ハーディングの演奏会の予告編映像を観る(無料)
ハーディングの演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く!
ビシュコフの演奏会の予告編映像を観る(無料)
ビシュコフの演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く!

室内楽シリーズ「統一されたクラシック」がスタート
 10月21日、フィルハーモニー室内楽ホールでは、ベルリンの壁開放20周年を記念する「統一されたクラシック」の初回演奏会が行われました。これはベルリン・フィル(旧西)とコンツェルトハウス(旧東)が共同で開催する室内楽シリーズで、6回の演奏会は東西アーティストにより両ホールで交互に開催されます。毎回ベルリン在住の作曲家の作品も初演されますが、第1回はフィルハーモニア四重奏団(旧西)とフォーグラー四重奏団(旧東)が、エアハルト・グロースコプフの新作、メンデルスゾーンの「弦楽八重奏曲」などを演奏しています。

 次回のデジタル・コンサートホール演奏会

ラトルのブラームス「第2」、再び!
(日本時間10月31〜11月1日深夜)
 ラトルとベルリン・フィルは、昨年10月にブラームスの交響曲を全曲演奏していますが(デジタル・コンサートホールで鑑賞可能)、この度「第2番」が再び取り上げられることになりました。これは11月のアメリカ・ツアーに備えてのもので、旅行では当晩第2曲目のシェーンベルク「室内交響曲」も上演されます。CDでも聴くことのできる昨年の解釈との差を、ぜひ比較検証したいところです。
 一方冒頭に演奏されるハンス・クラーサは、1899年にプラハで生まれたチェコ=ドイツの作曲家。ユダヤ人としてナチスの迫害を受け、テレジン収容所に送り込まれた後、アウシュヴィッツで非業の死を遂げました。80年代に子供のためのオペラ《ブルンジバル》が発掘され、ルネッサンスを迎えましたが、ベルリン・フィルでは今回の「メゾ・ソプラノと小オーケストラのための交響曲」で初めて演奏されます。

【演奏曲目】
クラーサ:メゾ・ソプラノと小オーケストラのための交響曲
シェーンベルク:室内交響曲
ブラームス:交響曲第2番

メゾ・ソプラノ:エーファ・フォーゲル
指揮:サー・サイモン・ラトル


放送日時:11月1日(日)午前3時(日本時間・生中継)

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 アーティスト・インタビュー

オラフ・マニンガー
(ベルリン・フィル、ソロ・チェロ奏者兼ベルリン・フィル・メディア取締役)
新世代メディアの誕生:デジタル・コンサートホールができるまで(後半)

聞き手:ゲアハルト・フォルク(ベルリン・フィル、コミュニケーション部門)

フォルク 「以前のベルリン・フィルのテレビ中継は、舞台後方でカメラマンが行き来するなど、ホールの聴衆にとってはかなり煩わしいものでした。デジタル・コンサートホールではそういうことはないのですね?」

マニンガー 「そうです。我々の中継では、本質的なことだけに集中して収録を行っています。6台のカメラを使用していますが、これでフィルハーモニー内のすべてのアングルがキャッチできるのです。もちろん飛行カメラのように凝った映像ではありませんが、そうした要素は、音楽を楽しむ上では必ずしも必要のないものでしょう。我々の装備は、水準以上の機能を備えていると思います」

フォルク 「ホールのなかには、カメラマンはいないのですね?」

マニンガー 「デジタル・コンサートホールで素晴らしいのは、観客が収録作業に気がつかずにすむことです。すべてはリモコンで、建物の上部にあるスタジオから操作されています。照明の点でも、客席をギラギラに明るくすることはなく、通常の光で収録できる状態です。カメラも本当に小型で、お客さんはホールに変化が生じたとは思わないでしょう。聴衆にとっては、外見的にはこれまでの演奏会とまったく変わりません」

フォルク 「これらの装置には、たいへんなお金が掛かったと思いますが、特別なスポンサーはいるのでしょうか?」

マニンガー 「オーケストラの長年のパートナーであるドイツ銀行が、サポートしてくれています。ドイツ銀行はこのプロジェクトの意義を理解し、我々に大きな信頼を寄せてくれたのでした。最初の数年間の資金をいただいているのですが、それがなければ、中継を実現することは到底不可能だったと思います。その際大きな力となったのは、すでにパートナーとして、人間的な信頼関係ができあがっていたことでした。昨年、ヨーゼフ・アッカーマン氏(注:ドイツ銀行頭取。ドイツでは経済界のリーダーとして広く知られている)が自らゴー・サインを下し、プロジェクトが実現したのです」

フォルク 「デジタル・コンサートホールでは、ライヴとアーカイヴの両方が観れることなっていますが、同時に教育プログラムの映像も視聴可能ですね。今後、ジャンルはさらに広がるのでしょうか?」

マニンガー 「それは広げてゆく予定です。現在の枠組みは、あくまでスタート時点でのものであって、将来的にはより多くのコンテンツがご覧いただけるようになります。最初のシーズンでは、正直なところ生中継自体を実現することが第一で、今後の計画についてはやや手付かずになっている部分がありました。しかし今後、教育プログラムを大々的に紹介してゆくことを考えています」

フォルク 「ベルリン・フィルには、様々な室内アンサンブルがあります。それらの演奏会を、デジタル・コンサートホールで中継する可能性はありますか?」

マニンガー 「それはまだ検討していません。むしろ考えているのは、大ホールで行われるベルリン・フィル以外の演奏会を中継することです(注:すでに早稲田大学交響楽団の演奏会が中継されている)。例えば我々が招待するオーケストラやソリストの演奏会ですが、この件はカメラが大ホールにしか入っていないことと関係しています。つまり室内楽は通常室内楽ホールで行われるので、現時点では収録できないのです。しかしデジタル・コンサートホールの成功如何によっては、室内楽ホールにカメラを導入することもあるかもしれません」

フォルク 「デジタル・コンサートホールでは、シーズン会員券、1回券(ライヴ中継/アーカイヴ)等、数種類のチケットを用意していますね。その際生中継は完全にリアルタイムで、スタートから時間をずらして観ることができないそうです。映像は、後日改めてアーカイヴにアップされます」

マニンガー 「その通りです。これは、圧縮方式の違いに起因しています。ライヴ時の圧縮システムは、アーカイヴ映像の圧縮システムとはまったく別のものなのです。しかしそのことによって、利点もあります。アーカイヴ・コーナーでは、コンサート全体だけでなく、プログラムの一部のみを聴くこともできます。特定の曲だけを聴きたい方は、その曲だけを割引料金でご鑑賞いただけるのです。このように価格設定はフレキシブルですので、ユーザーの方々にはご希望に合わせて利用していただければと思います」

このインタビューの前半を読む

 ベルリン・フィル演奏会批評(現地新聞抜粋)

定期演奏会(2009年9月14・15日)
曲目:シュレーカー:室内交響曲(演奏:ベルリン・フィル・オーケストラ・アカデミー奨学生)
ブルックナー:交響曲第9番
指揮:サー・サイモン・ラトル


 ドイツものでの解釈が批判されがちなラトルですが、ベルリンでは近年着実な成果を挙げつつあるようです。昨年のブラームスもそのひとつに数えられますが、同年9月に上演されたブルックナー「交響曲第9番」も、ベルリンの各紙から一致した評価を得ています。普段は辛口のヴォルフガング・フーアマン氏(『ベルリナー・ツァイトゥング』)が、感動を熱っぽく語っているところが印象的。ブラームスの名演に「おやっ」と思わされた方には、ぜひ聴いていただきたい演奏です。

「サイモン・ラトル指揮のブルックナー交響曲第9番は、類例のないほど説得力のある演奏となった。この曲では、彼はすでに2002年にも印象的な演奏を聴かせているが、今回の出来はそれ以上のものと言える。ラトルはテンポをほとんどまったく揺らすことなく指揮したが、それは全体に見事な統一感を与えていた。そこで彼は、作品の多声的な性格をマーラー指揮者の視点からとらえる。ささくれ立った不協和音が鳴り響き、崩壊が訪れた後、視界には黙示録的な地平が開けるのである。ラトルは終楽章の第2ヴァイオリンのモチーフに、マーラーの交響曲第9番を思わせる告別の身振りを聴きとる。ブルックナーの第9は彼の交響曲のなかでも最も黙示録的な性格を持つが、ラトルとベルリン・フィルは、マーラーが後に実現することになるカタストロフを、ここで予見したのである(2008年9月16日付け『ベルリナー・ツァイトゥング』、ヴォルフガング・フーアマン)。」

「ラトルがブルックナーの交響曲第9番を演奏するのは、今回が初めてではない。しかし当晩の演奏は、前回をさらにパワーアップしたものとなっていた。ブルックナーの後期作品、とりわけ第5番以降ではカタストロフが連続的に起こるが、第9ではそれはよりコンパクトで、複合的な様相を見せる。第2楽章は怒りに燃えるようで、焼ける岩が火花を散らすような調子を持っていた。ラトルは顔を真っ赤にし、腕を高々と掲げたが、そこからは震撼するようなイメージが放散された。このような激しさは、これまでに一度も経験したことのないものである。休憩の前に演奏されたシュレーカーの室内交響曲も秀演で、ラトルは奨学生の演奏に見るからに満足している様子であった(2008年9月16日付け『クルトゥーア・エクストラ』、アンドレ・ソコロフスキ)。」

ブルックナー交響曲第9番の予告編映像を観る(無料)
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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ベルリン国立歌劇場、バレンボイム&ドミンゴの《シモン・ボッカネグラ》プレミエ
 10月24日、ベルリン国立歌劇場でプラシド・ドミンゴ主演の《シモン・ボッカネグラ》が上演された。ドミンゴがバリトン役を歌った例はこれまでに皆無ではないが、ヴェルディの本格的な主役を演じたのは今回が初めてのことと思われる。音色はテノール的なものの、歌唱に不自然さはなく、また声にも輝きがあった。指揮のバレンボイムは、劇的なヴェルディを披露。アニヤ・ハルテロスの美しいアメーリア、クヮンチュル・ユンのノーブルなフィエスコも含め、音楽的にきわめて水準の高い公演が実現した。なお常套的なフェデリーコ・ティエッツィの演出には、ブーが集中している(写真:©Monika Rittershaus)。

ポゴレリッチ、ショパンのピアノ協奏曲第2番で久々のコンチェルト
 イーヴォ・ポゴレリッチが、ブラウンシュヴァイクとミュンヘンで久々のコンチェルト演奏を行った。ロイヤル・フィルのドイツ・ツアー(デュトワ指揮/10月23日)、バイエルン放送室内管(指揮者なし/25日)でのプログラムは、ショパンの「ピアノ協奏曲第2番」。前者は、今秋のコンサートをすべてキャンセルしたアルゲリッチの代役としてであったという。演奏は特に第1楽章がエキセントリックで、濃厚な情感を湛えていた。

ハンブルク国立歌劇場、ヤング&グートの《ジークフリート》プレミエ
 ハンブルク国立歌劇場の《ジークフリート》が、新演出プレミエを迎えた(10月18日)。クラウス・グートの演出は、タイル貼りの壁で囲まれたガレージを舞台とし、ジークフリートは洗濯機の上でノートゥングを鍛錬する。クリスティアン・フランツの題名役は、役の繊細な側面も歌いだして好評。ブリュンヒルデのキャサリン・フォースターも、豊かな声量が高く評価されている。シモーネ・ヤング指揮のハンブルク・フィルも、豊麗かつ明晰な音響を聴かせ、上演は総じて成功のうちに幕を閉じた。

デイヴィッド・ジンマン、チューリヒ・トーンハレ管の契約を2014年まで延長
 チューリヒ・トーンハレ管弦楽団の首席指揮者デイヴィッド・ジンマンが、同オケとの契約を2014年まで延長することになった。ジンマンは10月22日の調印式で、「トーンハレ管は私の最後の恋です」と語り、良好な関係を示唆。CD録音では、マーラー交響曲全集の完結後、シューベルトの交響曲が計画されているという。


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