HMVインタビュー: Jan Jelinek
2007年4月9日 (月)
☆『Personal Rock』再発記念インタビュー!ドイツのエレクトロニックミュージックシーンを牽引する人気レーベル<scape>の中でも唯一無二の才能を誇る Jan JelinekがGramm名義で1999年に発表した傑作アルバム『Personal Rock』が待望のリイシュー!
エレクトロニカムーヴメントの先駆けとなった重要作であり、長らく入手困難で、Jan Jelinekのファンも捜していた人気盤!緻密でセンスのあるサンプリング、繊細にして大胆なエディット、美しいレイヤーとグルーヴ、まさにJan Jelinekの真骨頂!
Farben名義で革新的なクリック〜マイクロハウスのオリジネイターの一人として活躍していた90年代末に、もう一つの側面としてリスニングとしてのエレクトロニックミュージックにフォーカスして制作され、エレクトロニカの先駆的なアルバムともなったのが、この『Personal Rock』。Jan Jelinek名義の傑作『Loop-Finding-Jazz-Records』と並び賞される一枚です!
その再発に際し、今回再発することとなった経緯や、『Personal Rock』のアルバムそのものについてなど、いろいろとお話をお聞きしました。
Interview with Jan Jelinek
○まず今回『Personal Rock』が再発することとなった経緯を教えていただけますか?
Jan Jelinek(以下:J): 実際のところ僕のアイディアじゃないんだ。<corde>の2人がこの再発のアイディアを持って来たんだ。はじめはあんまり再発についていい感じには思っていなかった。というのは Grammが出たのはそんなに昔の話ではないし、再発に関して自分としては複雑というか微妙な気持ちだったんだ。最近はいろんなものが再び手に入り、過去の音楽への興味というのが依然として大きくあり続けている。それはある意味では良いことだと思うけど、一方では現在の音楽への興味を削いでしまっているのかもしれない。昔はアヴァンギャルドミュージックとして定義付けられていたエレクトロニックミュージックを扱うほとんどのレコードショップですら、再発ものを重要な商品に位置づけている。ひどい話だと思うよ。たぶん古い音源に対する関心の広がりは文化的な悲観主義のサインなのかもしれない。だけれども、Grammが入手困難で、もう一度再発することによって他のいろいろな人が聞くチャンスを得られるという<corde>の2人の考えは正しいかなっていう風にも思えたんだ。実際、そこが自分がこの再発を受け入れた一番のポイントだったんだ。
○本作につけられたタイトル『Presonal Rock』が意味するものを教えてください。
J: このアルバムの本質は、Farbenというプロジェクトの、より身近な、より内省的、パーソナルなヴァージョンという風に考えていたんだ。またその頃、ベルリンではロックというものはどうでもいいような言葉で、誰もロックという表現を扱おうという感じはなかったし、ロックバンドでプレイするなんていう連中もほとんどいなかったんだ。ただ、2000年になった途端に、みんなロックをもてはやし始めて、そこで、僕はそういった連中に皮肉を込めて、ロックの要素がまるでない自分のアルバムにロックという言葉を使ったんだ。
○本作がもつ世界観やテーマについて解説していただけますか?
J: このアルバム自体のバランスが整ってるように聞こえたとしても、実際そこに明確なアイディアがあったわけではなかったんだ。その頃はデトロイトテクノをよく聞いていたから、そこからインスパイアされていたかもしれない。このアルバムはクラブミュージックという厳格なアイディアから抜け出す最初の一歩だったかもしれないね。
Gramm 『Personal Rock』
1. Legends / Nugroove
2. St. Moritz
3. Type Zwei
4. Non-Relations
5. Ment
6. 70gr
7. Type Eins
8. Siemens.Bioport / music as music
Bonus Track
9. Eridan Rouge
○近年の音響/エレクトロニカシーンにおいて思うことはありますか?
J: 全てはより確立されてしまって、そこから何か特別なものが飛び出て来るようには感じないし、アヴァンギャルドなアプローチは再び小さなグループへと収束していって る。ただ他の音楽ジャンルといっしょで、確立されたということは一方では良いこと でもあると思うよ。クリエーター達の数というのはどんどん減っていて、みんな辞め てしまっていったりしているけれどね。
○アナログフォーマットの衰退、そして音楽配信の広がりという中、 今後の音楽流通について憂慮していることはありますか?
J: いまのところは特にないね。
○今後の予定について教えていただいてもよろしいでしょうか?
J: 今は、Hanno Leichtmann、Andrew Peklerと僕でアルバム作りをしていて、3人によるインプロヴィゼーション・アルバムになると思うよ。それから新しいソロ・プロジェクトの作業を始めていて、それでは3台のモノ・シンセだけを使っているんだ。エフェクトやシーケンサーは一切使わない。短い2分くらいの楽曲で、Robert HoodとRaymond Scottの間のようなサウンドを作ってるんだ。
○ありがとうございました!
協力: corde
Jan Jelinek 作品 左から 1. 『Loop-finding-jazz-records』(2001年) / 2. 『1+3+1』(2003年) / 3. 『Kosmischer Pitch』(2005年)/ 4. 『Tierbeobachtungen』(2006年) / 5. 『Improvisations And Edits Tokyo, 09/26/2001』(2002年)
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