ピーター・ブルック最新作がパリで開幕&世界初演レポート

2015年09月26日 (土) 13:00

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90歳を迎えた現代演劇界の巨匠 生きる伝説 ピーター・ブルックが30年の年月を経て、再び挑んだ大叙事詩「マハーバーラタ」。9月15日、遂に世界初演となるパリ公演初日を迎えた。

今、なぜなのか?その答えが見えた
ピーター・ブルック最新作


今年11月25日から新国立劇場中劇場で上演されるピーター・ブルックの最新作『Battlefield(バトルフィールド)』が、去る9月15日にフランス・パリにて世界初演となる幕を開けた。その模様をいち早く開幕レポートとしてお届けする。

パリ公演開幕レポート


 9月15日、パリのブッフ・デュ・ノール劇場で、ピーター・ブルックの最新作『Battlefield』世界初演の幕があいた。1985年にアビニョン・フェスティバルで初演され、以後日本を含む世界各地で上演された伝説的偉業『マハーバーラタ』に、御年90歳のブルックが再び挑む注目の舞台だ。
 「再び」といっても、前回と今回では様相はだいぶ異なる。全18編、約10万の詩句から成るインドの長大な叙事詩『マハーバーラタ』を徹底的に読み解いたブルックと脚本のジャン=クロード・カリエール、マリー=エレーヌ・エティエンヌ(共同演出も)は、前作ではこれを「賭け」「追放」「戦争」の三部作に集約し、全9時間かけて上演した。今回は、すべての戦いが終わり、無数の骸(しかばね)で大地が覆われた戦場(battlefield)が舞台。これ以上ないほど簡潔で、深い示唆に富み、穏やかでいて研ぎ澄まされた、あっと言う間の珠玉の80分だ。
 後方の朽ちた赤い壁に数本の竹が立てかけられ、壁と同じ色の地面に黒い箱が2つ置かれただけの「なにもない空間」。『マハーバーラタ』でも音楽監督をつとめた土取利行がひとりジャンベの音を響かせるなか、4人の俳優が、何色かの大きなショールを使い分けて、さまざまな人や動物を演じ分けてゆく。
 真理を突く寓話や金言の数々に、観ていて思わず吹き出したり、うなったり。大量殺戮によって勝者となったパーンダヴァ軍の総帥ユディシュティラが「この勝利は敗北だ」と吐き捨て、悔恨や罪悪感にさいなまれる姿を、身近な為政者の姿に重ねない観客はいないだろう。
 熱いカーテンコールが何度も繰り返された初日の翌日、取材に応じたブルックは言った。
「沈黙に耳を澄ませていたら、今やるべきなのはシェイクスピアでもオペラでもなく、これだろう。そう時代に促されたのだよ」 今、なぜ彼がふたたび「マハーバーラタ」に向き合ったのか、その答えは是非劇場で体験してほしい!!

10月17日まで、パリのブッフ・デュ・ノール劇場。
その後日本を含むワールドツアーとなる。
パリ公演劇評
「バトルフィールド」は、叡知と詩の軌跡だ・・・・・レ・エコー Les Echos

見事な考案、演出、上演。「バトルフィールド」を見るものは、その先に何があるのかを浮かびあがらせるようなシンプリシティ と純粋さを体験する。・・・・・ ル・フィガロ Le Figaro

ピーター・ブルックはあたかも禅師のように、その演劇をさらに洗練させ、凝縮する。一つの物語を別の物語へと転がし、 人生の探求を蒸留しているようだ。アフリカの村の広場で演じられているかのようでもあり、シェイクスピア時代の音や激情 のようでもありながら、決してギリシャ悲劇の基礎を否定しない。魔術師ブルックは、見事なシンプリシティとともに、洗練を 増していく。・・・・・ル・モンド Le Monde

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ピーター・ブルック


1925年ロンドンに生まれる。その長いキャリアを通じて、演劇、オペラ、映画、著作等、様々なジャンルで優れた業績を収める。最初の舞台演出は1943年。その後、ロンドン、パリ、ニューヨークで70を超えるプロダクションを演出。1971年、国際演劇研究センターをパリに設立、1974年、テアトロ・デ・ブッフ・デュ・ノ―ルの恒久基地をオープンし、『鳥の会議』『桜の園』『テンペスト』『マハーバーラタ』など話題作を発表。主な著書に、15か国以上に翻訳された『なにもない空間』『秘密は何もない』、自伝『ピーター・ブルック回想録』など。昨年公開となったドキュメンタリー映画『タイト・ロ―プ(邦題:ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古)』が話題に。

写真:9月16日 ピーター・ブルックのアトリエにて撮影

公演概要


公演タイトル:Battlefield 『マハ―バ―ラタ』より
脚本:ピーター・ブルック ジャン・クロード・カリエール マリ―=エレ―ヌ・エティエンヌ
演出:ピーター・ブルック マリ―=エレ―ヌ・エティエンヌ
音楽:土取利行/照明:フィリップ・ヴァラット
出演:キャロル・カルメラ ジェア・マクニ―ル エリ・ザラムンバ ショーン・オカラン
世界初演:2015年9月15日 パリ ブッフェ ドゥ ノ―ル劇場

日本公演


公演日程:2015年11月25日(水)〜11月29日(日)
会場:新国立劇場中劇場
入場料金:7,000円(全席指定・税込)
     U-25チケット:3,500円
     (観劇時25歳以下対象・当日指定券引換・要身分証明書)
※U-25チケットはチケットぴあ・前売り販売のみの取り扱い。
※日本語字幕付き上演
前売開始:2015年9月26日(土)
チケットに関するお問合わせ:サンライズプロモーション東京 TEL:0570-00-3337
総合お問合わせ:パルコ TEL:03-3477-5858 http://www.parco-play.com/

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